この記事でわかること
- 相続税の未成年者控除の概要
- 相続税の未成年者控除の適用要件
- 相続税の未成年者控除の計算方法
被相続人の財産を相続したときに相続税が発生した場合、たとえ相続人が未成年であっても相続税を納付しなければなりません。しかしながら、未成年者は成人になるまでの間に多額の教育費や養育費が必要となります。
そこで、そのような未成年者の相続税負担を減らす目的で、相続税には未成年者控除という特例が存在します。
この記事では、相続税の未成年者控除の概要をはじめ、適用要件や計算方法などを解説します。
目次
相続税の未成年者控除とは
被相続人の財産を未成年者の相続人が相続した場合、適用要件を満たせばその相続人は未成年者控除を適用することができます。
被相続人の財産を相続して相続税が発生する場合、相続人が未成年であっても相続税を納めなくてはなりません。
しかしながら、未成年者が自立するまでは多額の生活費や教育費を負担しなければならないことも考えられます。
そこで、未成年者に対する相続税の控除を行うことで、相続後の未成年者に対する配慮がされているのです。
令和4年4月1日以後の贈与・相続から対象年齢が18歳未満に引き下げ
2022年4月1日から、成人年齢が18歳に引き下げられました。これに伴い、未成年者控除の適用を受けられる要件も、2022年4月1日以降は「18歳未満」に引き下げられました。
相続税の未成年者控除の適用要件
相続税の未成年者控除が適用されるのは、未成年者の相続人が相続または遺贈によって財産を取得した場合に限られます。
被相続人の配偶者がすべての財産を相続したケースなど、未成年者が相続財産を全く取得していない場合は適用されません。
そのうえで以下3つの要件に該当しなければ、未成年者控除の適用を受けることはできません。
- 未成年者が財産の取得時に日本国内に住所がある
- 財産を取得した未成年者が法定相続人である
- 未成年者が財産を取得した時に18歳未満である
未成年者が財産を取得した時に日本国内に住所がある
1つ目の要件として未成年者が財産取得時に、日本国内に住所がある人ではなければなりません。
なお、対象となる未成年者が一時居住者かつ被相続人が外国人被相続人もしくは非居住被相続人のケースだと、適用対象から除かれます。
- 一時居住者とは
- 「一時居住者」とは、相続開始時に在留資格を保有し、その相続の開始前15年以内に日本国内に住所がある期間の合計が10年以下の人。
- 外国人被相続人とは
- 相続開始時に在留資格を保有しているうえで、日本国内に住所を有していた人。
- 非居住被相続人とは
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相続開始時に日本国内に住所を有していなかった被相続人で、以下の①もしくは②に当てはまる人
- 相続開始前10年以内のいずれかの時において日本国内に住所を有していたことがある人のうち、そのいずれの時においても日本国籍を有していなかった人
- その相続開始前10年以内に日本国内に住所を有していたことがない人
財産を取得した未成年者が法定相続人である
2つ目の適用要件が、財産を取得した未成年者が法定相続人であることです。
たとえば、被相続人の子が健在という状況で遺言によって被相続人の孫に財産を遺贈した場合、その孫が未成年者であっても法定相続人ではないため未成年者控除を適用できません。
なお、その孫が被相続人と養子縁組をしていた場合は法定相続人となるため、未成年者控除が適用できます。
未成年者が相続放棄をしていた場合の注意点
未成年者が相続放棄をした場合でも、相続税の計算時はその放棄がなかったものとして相続人扱いとなるため、遺贈などで何らかの財産を受け取っていれば未成年者控除の適用対象となります。
たとえば、相続放棄をした未成年者が被相続人の死亡保険金を受け取っていた場合、未成年者控除の適用が可能になります。
未成年者が財産を取得した時に18歳未満である
3つ目の適用要件が、未成年者が財産を取得した際に18歳未満であることです。なお、令和4年3月1日以前の相続や遺贈で財産を取得していた場合は、20歳となります。
未成年者が婚姻している場合でも未成年者控除の適用を受けられる
民法では未成年者が婚姻している場合に成年に達したとみなす「成年擬制」の規定がありますが、相続では婚姻している未成年者でも未成年者控除の適用を受けられます。
未成年者控除の計算方法
未成年者控除の額は以下の計算式で求めます。
計算例
未成年者控除の計算式(原則)
(18歳 – 相続開始時の年齢)×10万円
この内、「相続開始時の年齢」は、相続人の満年齢をいいます。たとえば、相続が発生した時の相続人の年齢が15歳3か月である場合、1年未満の端数を切り捨てて15歳となります。
事例
令和4年5月に相続が開始し、相続人が15歳の場合
「(18歳 – 15歳)× 10万円 =控除額:30万円」
未成年者が過去に未成年者控除を受けている場合
未成年者が過去に未成年者控除の適用を受けている場合、控除額が「前回の未成年者控除の控除額の残額」に制限される可能性があります。
計算例
未成年者控除の計算式(未成年者が過去に未成年者控除を受けている場合)
以下の①もしくは②のいずれか少ない方の金額が控除額となります。
①(18歳 – 今回の相続開始時の年齢)×10万円
②(18歳 – 前回の相続開始時の年齢)×10万円 – 前回の相続時に相続税額から控除した未成年者控除額
たとえば、相続人の中に未成年者である相続人Aが含まれており、相続開始時の年齢が15歳5カ月かつ相続税額が20万円とします。加えて、相続人Aは4年前にも財産を相続しており、15万円の未成年者控除額を既に受けているとします。
この場合の計算式は以下のような形となり、①と②のいずれか少ない方となります。
事例
未成年者が過去に未成年者控除を受けている場合
①(18歳 – 15歳)×10万円 = 30万円
②(18歳 – 11歳)×10万円 – 15万円 = 55万円
①の方が金額が少ないため、この事例のケースの未成年者控除額は30万円となります。
未成年者控除額を控除しきれない場合
未成年者控除額が未成年者本人の相続税額を上回り、控除額の全額を引ききれない場合は、その余った控除額を扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。
扶養義務者とは、未成年者の父母や祖父母、兄弟姉妹のほか、一定の条件下で三親等以内の親族も含まれます。
たとえば、母親が亡くなって26歳の長男と6歳の次男が財産を相続し、長男の相続税額が100万円、次男が50万円だとします。
この場合に次男に未成年者控除を適用すると計算式は以下のような形となり、控除しきれない相続税分を長男の相続税額から控除できます。
事例
未成年者控除額を扶養義務者に振り分ける場合
①次男(6歳)の未成年者控除額
(18歳-6歳)×10万円=120万円
②次男の相続税額
50万円-120万円=【▲70万円】
※次男の相続税額よりも未成年者控除額の方が70万円分大きい
③長男(26歳)の相続税額
100万円-70万円※=30万円
未成年者控除の適用時の申告手続き
未成年者控除を適用したうえで、本人の相続税の課税額が基礎控除を下回った場合、相続税申告は不要です。
また、未成年者控除を適用したうえで相続税申告をする場合、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」に必要事項を記入し、未成年者の戸籍謄本を添付して提出します。
相続人に未成年者がいる場合の注意点
相続人に未成年者が含まれている場合、以下のような注意点があります。
- 特別代理人を選任する必要がある
- 未成年者が胎児でも相続権がある
それぞれ詳しく解説します。
特別代理人を選任する必要がある
未成年者が法律行為を行う際、通常は法定代理人となる親権者が代理人としてその行為を行います。
遺産分割協議も同様に未成年者が単独で参加することはできませんが、相続では法定代理人である親権者も相続人となるため、利益相反の状態が生じます。
つまり、親権者が自身の利益と子どもの利益を同時に考慮できることになり、客観的な判断が難しくなる可能性があります。
そのため、家庭裁判所に選任申し立て手続きをしたうえで、特別代理人を選任する必要があるのです。
未成年者が胎児でも相続権がある
被相続人が亡くなった時に配偶者が妊娠している場合、胎児は相続においてすでに生まれたものとみなされ、無事に生まれれば相続人となります。
その胎児には未成年者控除の適用も可能で、未成年者控除額は一律で180万円となります。
なお、相続開始が令和4年3月31日以前の場合、未成年者控除額は200万円です。
未成年者控除に関する疑問は専門家への相談がおすすめ
相続税の未成年者控除の適用には要件を満たす必要があるうえに、2回目以降の相続時に未成年者控除を適用する場合など、状況によっては計算が複雑になる可能性があります。
また、相続人に未成年者が含まれているケースは、特別代理人の選任が必要となるなど、通常の遺産分割に比べて手間がかかります。
したがって、相続人に未成年者が含まれている場合に疑問が生じたときは、相続専門税理士のような専門家への相談がおすすめです。無料相談を設けている場合も多いため、ぜひご検討ください。
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