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最終更新日:2023/7/21

相続税の未成年者控除の計算方法【適用要件や遺産分割協議の注意点も紹介】

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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相続税の未成年者控除の計算方法【適用要件や遺産分割協議の注意点も紹介】

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この記事でわかること

  • 相続税の計算を行う際に適用される未成年者控除の内容がわかる
  • 未成年者控除が適用された場合の相続税の計算方法がわかる
  • 未成年者が相続の手続きを行う際に特別代理人が必要な理由がわかる

相続が発生した時に、未成年者が相続人となる場合があります。

このような場合、未成年者がそのまま相続しても相続税の計算に影響がないかといえば、そうではありません。

未成年の相続人がいる場合、その相続人に対して発生する相続税について未成年者控除が適用されるからです。

どのような場合に未成年者控除が適用されるのか、そしてその額はいくらになるのか、確認していきましょう。

相続税の未成年者控除とは

相続により被相続人の遺産を未成年の相続人が引き継いだ場合、その相続人について未成年者控除が適用されます。

未成年者控除の計算方法は「(20歳-相続時の年齢)×10万円」となっており、未成年者が納付する相続税額から控除されます。

未成年の人でも税金が発生するのであれば、その納税義務が免除されることはありません。

未成年者でも遺産を相続すれば、成年の相続人と同じく相続税が発生します。

これは、相続によって労せず財産を得ることができるため、富の再分配を目的にその一部について税金が課されることがあるのです。

ただ一方で、未成年者が相続人となる場合はその未成年者を扶養する人が亡くなっていると考えられます。

この先、成年者になり自立するまでは相続した財産から生活費や教育費を負担しなければならないことも考えられます。

そこで、未成年者に対する相続税については控除を行うことで相続後の未成年者に対する配慮がされているのです。

相続税の未成年者控除の適用要件

相続税の未成年者控除の適用要件

未成年者控除の適用を受けることができる人には、いくつかの要件が定められています。

その要件に該当しなければ、未成年者控除の適用を受けることはできません。

要件として定められているのは、次の3つです。

  • ①財産を取得した時に日本国内に住所がある
  • ②財産を取得した人が法定相続人である
  • ③財産を取得した時に20歳未満である

上記の3つの要件のすべてを満たす必要があります。

このうち①については大抵の場合満たすことができるでしょう。

②については、いわゆる孫養子も法定相続人であるため未成年者控除の適用を受けられます。

しかし③の年齢については、その数え方に注意しなければなりません。

未成年者控除の対象となるのは、相続開始の時点での満年齢が20歳未満となっています。

たとえば、20歳になる誕生日の前日に相続が発生した場合でも、相続開始時点では未成年者であるため、適用を受けられます。

なお、2022年4月1日に施行される改正民法では、成人年齢が18歳に引き下げられます。

これに伴い、未成年者控除の適用を受けられる要件も、2022年4月1日以降は「18歳未満」とされるのです。

なお、民法には結婚している未成年者について成年とみなすこととする「成年擬制」の規定があります。

未成年者でも成年とみなされるのであれば、相続税における未成年者控除が適用されないようにも思われますが、相続税に関しては婚姻している未成年者でも未成年者控除の適用を受けられます

2022年3月31日以前は満20歳未満、2022年4月1日以後は18歳未満が年齢に関する要件となるのです。

未成年者控除の控除額・相続税計算方法

それでは、実際に未成年者控除が適用できる場合の控除額の計算方法をご紹介します。

また、実際に相続税の税額からどのように控除するのかについても解説していきます。

未成年者控除の控除額の計算

未成年者控除の額は「(20歳-相続時の年齢)×10万円」の計算式で求めます。

この中で「相続時の年齢」は、相続人の満年齢をいいます。

たとえば、相続が発生した時の相続人の年齢が15歳3か月である場合、満年齢は15歳となります。

そのため、(20歳-15歳)×10万円=50万円が未成年者控除による控除額となるのです。

未成年者控除の適用を受ける場合の相続税の計算

相続税の計算方法は、相続財産の額から全相続人が負担する相続税の額を計算し、その後相続人ごとに配分します

その計算方法は分かりにくいため、実際の計算例を見ながら、未成年者控除の適用による影響についても確認しておきましょう。

ここでは、夫が亡くなり、妻と子ども2人(21歳、15歳)の3人が法定相続人になったものとします。

また、相続財産は自宅建物800万円と自宅土地4,000万円、預貯金その他で4,200万円の合計9,000万円とします。

また、遺産分割協議の結果、母親が5分の3、子どもがそれぞれ5分の1を相続するものとします。

①課税対象となる金額を求める

この場合、9,000万円が相続財産の金額となります。

ただし、自宅土地については小規模宅地等の特例が適用できるため、その80%の減額を受けられます

その結果、自宅土地の評価額は3,200万円減少し、相続財産の額は5,800万円まで減少するのです。

相続財産の額を計算したら、次に基礎控除の額を求めます。

「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算するため、このケースでは4,800万円となります。

相続財産の額から、基礎控除の額を差し引いた1,000万円が課税対象となります。

②相続税の合計額を計算する

課税対象となる金額を求めたら、その金額を法定相続分に分割し、その分割した額ごとに相続税を計算します

このケースでは、法定相続人が妻と子ども2人となります。

1,000万円を法定相続分に分割すると、妻の分として500万円、子どもの分として250万円が2人分となります。

500万円に対する相続税は500万円×10%=50万円、250万円に対する相続税は250万円×10%=25万円となります。

そのため、相続税の合計額は50万円+25万円×2=100万円となります。

③各相続人の相続税額を計算する

それぞれの相続人が納付する相続税額は、実際に相続した遺産の額に応じて按分して求めます

このケースでは、妻が5分の3を相続しているため、100万円×3/5=60万円となります。

また、子どもは5分の1を相続しているため、100万円×1/5=20万円となります。

④相続税の税額控除を適用する

税額控除の適用がある場合は、それぞれの相続税額を求めた後に、その額から控除します。

妻が相続した場合は、配偶者の税額軽減が適用できるため、60万円の相続税額はゼロとなります。

また、未成年者である15歳の相続人は未成年者控除の適用を受けられます。

未成年者控除の額は50万円であるため、20万円から控除してゼロとなります。

また、控除しきれない金額30万円については、その未成年者の扶養義務者の相続税から控除することができます。

この場合、妻は相続税額がゼロとなっていますが、もう1人の子どもが扶養義務者に該当すれば控除することができます。

相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議

相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議

前提として、被相続人(亡くなった人)の法定相続人に未成年者がいる場合、その年齢に関係なく遺産の継承は可能です。
相続人が行う遺産分割協議は法律行為の1つになり、遺産分割協議の成立には、未成年者も含めて全員の同意が必要になります。
しかし民法上、未成年は原則として法律行為をすることができません。
したがって、相続人として遺産を継承するなどの法律行為を行う場合には、代理人の同意が必要になります。

そしてこの代理人には「法定代理人」と「特別代理人」があり、遺産分割においては「特別代理人」の選任が必要になります。

どうして特別代理人が必要とされるのか、そしてどのように特別代理人を選任するのか、確認しておきます。

特別代理人が必要とされる理由

未成年者が法律行為を行う際、法定代理人となる親が代理人としてその行為を行います。

しかし、遺産分割を行う際は法定代理人もまた相続人となるため、親が自身の相続と子どもの相続の双方の当事者となってしまいます。

もし、親が自身の相続分を増やしたいと考えるのであれば、子どもの相続分を減らせばいいこととなります。

このような状況では、平等な遺産分割ができない可能性があるため、特別代理人を選任する必要があるのです。

特別代理人の選任方法

特別代理人は、家庭裁判所で選任します

特別代理人には、特別な利害関係がなければ誰でもなることができます。

特別な資格を有している必要はありませんが、裁判所で選任されることが条件となります。

特別代理人の選任手続き

特別代理人を選任するためには、相続人の住所地を所轄する家庭裁判所に申立てを行います。

未成年者の親権者や利害関係者が、候補者を立てて申立てを行う必要があります。

申立書、未成年者の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票などの書類を提出しなければなりません。

まとめ

相続人が未成年であることを理由に相続税が控除されるのは、その未成年者の相続後の生活に必要な財産を確保する狙いがあります。

孫養子の場合も法定相続人に該当するため、未成年者控除の適用を受けることができますので、相続税の節税のために孫養子を利用する1つの要因となります。

ただ未成年者が遺産分割協議を行うためには、特別代理人を家庭裁判所で選任してもらわなければなりません。

そのため、手続き面での負担が増える他2割加算の適用もありますから、慎重にその効果を考えておく必要があります。

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