この記事でわかること
- 準確定申告の期限が過ぎたら加算税がかかることがわかる
- 準確定申告を期限内に行うために何をしたらいいかがわかる
- 準確定申告をしなければならないケースがわかる
所得のある人が年の途中で亡くなった場合、本人の代わりに相続人が所得税を申告しなければなりません。この申告のことを準確定申告といい、相続人全員に対して申告・納税義務が発生します。
準確定申告および納税には、相続開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内という期限が設けられています。
申告期限を過ぎてしまった場合には、延滞税や加算税というペナルティが課せられることがあります。
ここでは、準確定申告の期限を過ぎた場合の加算税の内容や、期限内に申告するための方法を解説していきます。
目次
準確定申告の期限を過ぎたら加算税が課される
準確定申告は、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内が期限となっています。
もし被相続人が12月に死亡した場合、通常の確定申告の期限(3月15日)は過ぎてしまいますが、4カ月の期限に変わりはありません。
申告期限を過ぎてしまった場合には、延滞税・加算税というペナルティが課されます。
また、期限内に準確定申告を行なっている場合であっても、
- 税務調査で指摘されて修正申告をしたことによるペナルティ
- 追加税額分の納税が遅くなったことによるペナルティ
これらの事由により加算税・延滞税がはかかります。
ペナルティの追徴課税にはいくつかの種類があり、期限後申告となった状況に応じて適用されます。具体的に見ていきましょう。
無申告加算税
申告義務があるにも関わらず、期限内に申告・納税しなかった場合には、期限後に申告・納税した際に、無申告加算税が課されます。
無申告加算税は、期限後申告により発生した税額に一定の税率を乗じて計算します。
- 発生した税額が50万円までは15%
- 50万円を超える部分については20%
なお、申告義務があることを知っていたかどうかは、ペナルティの有無には影響しません。
亡くなった人の申告義務については、すぐには判断がつかないことも想定されますが、そのような事情も考慮されません。
知らなかったからといって逃れることはできないため、しっかりと申告義務の有無を判定することが重要です。
延滞税
延滞税は、期限後に納税した場合に発生する利息のようなものです。
本来の納期限から実際に納税した日までの日数に応じて、延滞税の計算を行います。
したがって、期限後に納付した税額が多いほど、また期限後納付となった期間が長いほど、多くの延滞税が発生します。
なお、令和5年の延滞税率は納付期限の翌日から2カ月までは年率2.4%、2カ月が経過した後は年率8.7%です。
納付するまでの期間が長くなると、税率も高くなることに注意しなければなりません。
準確定申告の手続きが可能な人
準確定申告の手続きが可能な人は法定相続人、または包括受遺者です。
法定相続人は一定範囲の親族を指しますが、以下のように相続順位が決まっているため、一般的には配偶者と子どもが準確定申告の納税義務者になります。
- 被相続人の配偶者:常に相続人となる
- 第1順位の法定相続人:被相続人の子ども
- 第2順位の法定相続人:被相続人の父母
- 第3順位の法定相続人:被相続人の兄弟姉妹
相続順位が上位になる親族がいる人や、相続放棄した人には相続権がないので、納税義務者になることはありません。
包括受遺者は遺言書で相続財産の取得割合が指定されており、相続財産のすべて、または相続財産の1/2などを取得する人です。
準確定申告は原則として連名による申告となります。各自が別々に申告書を作成するときは、申告内容に間違いがないかどうか事前に確認しておきましょう。また、納税額は取得した相続財産の割合に応じて負担します。
準確定申告を期限内にすませる方法
準確定申告を期限内に行わなければ、ペナルティが課されることがわかりました。
余分な負担をしないようにするためには、期限内に申告することがとても重要です。
準確定申告を期限内に行うためには、どうしたらいいのでしょうか。
準確定申告が必要かどうか確認する
準確定申告が必要になるケースは、死亡した年に所得が発生しており、所得税を納税していない場合です。
すべての人が準確定申告しなければならないわけではなく、該当する人も決して多くありません。そこで、家族が亡くなったときには、準確定申告しなければならないかどうかをまず確認しましょう。
前年までの申告書を探す
亡くなった人が前年まで確定申告していた場合、亡くなった年も準確定申告しなければならない可能性が高いでしょう。
そこで、前年まで確定申告した申告書の控えが残されていないか確認してください。
前年の申告内容を見ると、どのような収入・所得・控除などがあったかわかるので、準確定申告する際の参考資料になります。
資料を早めに整理する
被相続人に所得が発生するかどうかを知るためには、お金の動きや不動産の状況を確認する必要があります。
迅速に対応するためにも、被相続人名義の預金口座や不動産、有価証券などの資料を早めに確認しましょう。
所得や資産に関する資料は、準確定申告だけでなく、遺産分割や相続税申告のためにも必要です。早めに確認しておけば、その後の手続きもスムーズに進めることができます。
準確定申告が必要なケース
ここでは、準確定申告が必要となる状況について解説します。具体的には、「年末調整を行っていないとき」や「医療費控除を適用できるとき」などが該当します。
年末調整を行っていないとき
年末調整を行っていないときは、準確定申告が必要になることが多いです。具体的な例としては、以下のような場合です。
- 給料が2,000万円を超える場合
- 2か所以上から給料を受け取っている場合
- 公的年金の収入が400万円を超える場合
- 公的年金の所得以外に20万円を超える所得がある場合
- 事業所得や不動産所得がある場合
- 土地や建物を売却した場合
- 有価証券を売却して所得税が源泉徴収されていない場合
これらのケースは、いずれも所得金額が発生しているものの、納めるべき所得税を納付していない状態にあります。
年末調整を受けている場合のように、源泉徴収で税金を納めていれば準確定申告を行う必要はありません。
また、準確定申告は不要であるものの、還付を受けるために準確定申告をした方がよいケースもあります。準確定申告の期限は相続発生日の翌日から4カ月以内ですが、期限を過ぎても、5年以内であれば還付申告は受け付けられます。
医療費控除を適用できるとき
準確定申告に医療費控除を適用すると、所得税が還付されるケースがあります。被相続人が死亡した年に、生前以下のような医療費を支払っており、その金額が10万円(※)を超えていることが医療費控除の要件です。
(※)その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額となります。
- 病院や歯科医院の診療費や治療費
- 介護施設に支払った介護費や食費など
- 医薬品の購入費
- 入院費用
- 通院のための交通費
- おむつ代(おむつ使用証明書が必要)
通院のための交通費は、原則として公共交通機関の料金のみ医療費控除の対象です。
準確定申告の流れ・必要書類
準確定申告書を提出する際には、相続人代表者を決定して申告する方法と、各相続人が個別に申告する方法があります。
いずれの方法でも構いませんが、代表者が準確定申告するときは、まず代表者の決定を優先しておきましょう。
なお、相続人代表者を決定した場合は、税務署に他の相続人の委任状を提出しなければなりません。
必要書類を収集する
被相続人の所得金額を計算するため、必要な書類を集めます。 給与や公的年金を受け取っている場合は、源泉徴収票は必須です。
また、事業所得や不動産所得がある場合は、収入金額と必要経費の額を計算するために、通帳や領収書などが必要となります。
その他にも、被相続人の所得状況に応じて準備する書類があるので、早めに収集するようにしましょう。
所得金額と所得税額を計算する
準確定申告に用いる申告書は、通常の確定申告書と同じです。国税庁が作成する申告書の手引きなどを参考に、収入金額から必要経費を差し引いて、所得金額と税額の計算を行いましょう。
また、準確定申告書には準確定申告の確認書を添付しなければならないので、一緒に作成してください。
なお、確定申告書は従来AとBの2種類がありましたが、令和5年1月以降に申告する分から申告書Bに一本化されます。
所得の種類に関わらず、1種類の申告書を使って計算することとなります。
申告する
税務署に準確定申告書を提出する際は、税務署に持参する、郵送する、電子申告する、のいずれかの方法を選択できます。 利用しやすい方法で税務署に申告書を提出してください。
ただし、電子申告の場合でも書面による委任状が必要ですので、その点だけ注意しましょう。
なお、新型コロナウイルスの影響を受けて期限内に準確定申告と納付が行えない場合は、税務署から承認を受けることで期限の延長が認められます。
承認を受ける場合は、準確定申告書を提出する際に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を一緒に提出してください。
準確定申告の期限を過ぎたときの還付申告
準確定申告の期限(4カ月)を過ぎた場合、相続発生から5年以内であれば、還付申告を受け付けてもらえます。
被相続人に所得がなければ準確定申告は不要です。ただ、医療費控除を適用すると税金が戻ってくる可能性があります。高額な医療費を支払っていたときは還付申告しましょう。
ただし、還付金には相続税がかかるので要注意です。
相続税の申告期限は「相続発生日の翌日から10カ月以内」になっており、期限後申告や申告漏れがあると、延滞税や加算税などのペナルティが発生します。税額還付を受けられるときは、早めに準確定申告を済ませてください。
まとめ
準確定申告の期限は、相続発生日の翌日から4カ月以内です。
家族が亡くなった後は葬儀や法要が続き、年金や健康保険などの手続きにも時間を取られるため、4カ月はあっという間に過ぎてしまうでしょう。
所得の調査には時間がかかるので、早めに行動を開始しないと、期限内に申告できなくなってしまう可能性があります。
準確定申告はすべての相続人の協力が不可欠となるため、相続人同士で連携しながら準備を進めていきましょう。
申告書の書き方がわからないときや、準確定申告の期限に間に合わないときは、ぜひベンチャーサポート税理士法人の無料相談も活用してください。
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