この記事でわかること
- 相続で請求できる寄与分とはどのようなものか知ることができる
- 被相続人と同居していた相続人が寄与分を請求できるケースがわかる
- 同居していた相続人が寄与分を認めてもらう方法がわかる
相続が発生して遺産分割を行う時、法定相続分を目安として分割することがあります。
ただ、被相続人と同居していた相続人は、身の回りの世話を行うなど、被相続人のために様々なことをしてきた人もいます。
このような相続人がいる場合、法定相続人で遺産分割を行うことが必ずしも平等とは言えません。
そこで、同居していた相続人が寄与分を主張できるのはどのような場合なのか、説明していきます。
目次
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の遺産の維持や増加に貢献した相続人がいる場合、その人がより多くの遺産を受け取れるようにする制度です。
被相続人の残した財産は、すべての相続人による遺産分割協議により、個別の財産を誰が相続するか決定します。
しかし、被相続人が残した財産の金額は、相続人の働きによって増減することがあります。
被相続人の遺産の維持や増加に貢献した相続人は、その貢献により増えた分の財産を、寄与分を主張することで受け取ることができます。
ただ、寄与分の主張が認められるかどうかは、他の相続人や裁判所の判断によります。
そのため、生前に被相続人の財産や生活を守るために様々な働きをした相続人がいたとしても、絶対に認められるわけではありません。
同居が理由で寄与分を請求できるケース・できないケース
被相続人と同居していた相続人がいると、その相続人が寄与分を主張できる場合があります。
ただ、同居していれば誰でも寄与分を主張できるわけではありません。
どのような場合に寄与分を主張でき、どのような場合は寄与分を主張できないのか、確認していきましょう。
寄与分を主張できるケース
寄与分を主張できるパターンには、大きく5つのパターンがあります。
事業従事型
被相続人が営んでいた事業に、相続人が無償で従事していたケースです。
まったくの無償ではなくても、給料が極めて低い場合には、寄与分が認められる可能性があります。
ただ、休日だけ手伝ったような場合は、特別の寄与があったとはいえず、対象外とされてしまいます。
金銭出資型
被相続人に対して、事業の開業資金や自宅の購入資金を提供したようなケースです。
相続人が金銭を出資した結果、被相続人の財産が減少せずに済んだものと考えられます。
なお、相続人が出資した効果が、相続開始時点で残っていなければなりません。
療養看護型
被相続人が介護を必要とする、あるいは被相続人が病気になった場合に、被相続人の面倒をみたケースです。
また、被相続人が介護ヘルパーや介護施設を利用した場合に、その費用を相続人が支払った場合も含まれます。
同居していた相続人が該当することが一番多いのが、この療養看護型の寄与分と言えます。
扶養型
相続人が被相続人の生活費を援助していたケースです。
基本的に、同居している相続人または被相続人に仕送りをしていた相続人が、該当する可能性があります。
ただ、親子間や夫婦間では相互に助け合って生活する義務があり、寄与分が認められることはそれほど多くありません。
財産管理型
相続人が被相続人の財産の管理を行った結果、財産が維持されたケースです。
特に賃貸用の物件を所有している被相続人が、相続人にその管理を任せている場合が多く該当します。
なお、株式や投資信託の運用により財産が増加しても、その増加分は寄与分とは認めなかった裁判例があります。
この5つのうち、いずれか1つに該当すれば寄与分を主張できます。
同居していた被相続人は、特に③療養看護型に該当することが多いでしょう。
長期間にわたり介護や看護を行っており、その対価を受け取っていなければ、寄与分を主張することができます。
また、介護にかかる費用を負担していた場合は、誰にどれだけの支払いをしたか明らかにし、寄与分を主張しましょう。
寄与分を主張できないケース
療養看護型の寄与分を主張する場合、以下のようなケースがあります。
- 週に何回か、被相続人の自宅に様子を見に来ていた
- 同居しながら被相続人の世話をしていたが、仕事は通常通り続けていた
- 被相続人の介護を行い、その対価として金銭を受け取っていた
これらの場合、相続人は相互に扶助義務がある被相続人の日常的な世話をしていただけと考えられます。
また、介護をしていたとしても、その対価を受け取っていた場合には、財産の維持に貢献していません。
そのため、これらの場合には、寄与分を主張しても認められないと考えられます。
同居による寄与分の計算方法・相場
同居している相続人が寄与分を請求する場合、どのように寄与分の金額を計算するのでしょうか。
また、寄与分の相場はいくらくらいなのでしょうか。
寄与分の計算方法
被相続人と同居していた相続人が、療養看護型の寄与分の金額を計算する際、以下の算式でその金額を計算します。
計算式
療養看護型の寄与分=付添介護人の日当額×療養看護日数×裁量的割合
療養看護型の寄与分の考え方は、相続人が介護を行ったことで、相続人の財産が減らずに済んだというものです。
そこで、相続人が被相続人の介護・看護を行った結果、どれだけの財産を維持することができたのかを計算します。
この計算の基になっているのは、付添介護人の日当額です。
この額は、介護保険における介護報酬基準額を参考にして決められます。
これを基準にして、被相続人の要介護度や相続人が提供していた介護サービスの種類により、介護報酬基準額が定められます。
ただ、相続人は介護士や看護師の資格を有しているわけではありません。
そのため、介護報酬の金額より低い金額になると考える方が自然です。
また裁量的割合とは、相続人と被相続人との関係性や、相続人の身体的な状況などを考慮し、金額を減額するものです。
特別の寄与があったとしても、その貢献の度合いに応じて、寄与分の額が減額調整されます。
裁量的割合の決定方法は明確ではないため、様々な要素を考慮して決定する必要があります。
寄与分の相場
介護療養型の寄与分についてどれくらいの金額になるか、明確にこの金額ということはできません。
付添介護人の日当額がいくらになるのかは、それぞれの相続の事例により異なるためです。
そこで、過去の裁判例で認められた相続人の寄与分の計算の基である1日あたり8,000円を基に、寄与分の計算をしてみましょう。
なお、介護を行った期間は2年間、裁量的割合は70%として、次の計算を行いましょう。
この結果からもわかるように、数年程度の貢献でも、その金額は莫大になることがあります。
付添介護人の日当額をいくらにするかでその総額は大きく変わるので、根拠を明確にして、その金額を算定しておきましょう。
相続時に同居による寄与分請求を認めてもらう方法
被相続人と同居していた相続人が、同居による寄与分請求を認めてもらうには、いくつかのコツがあります。
どのような点に注意すべきか、そのポイントをご紹介します。
証拠書類をそろえておく
同居していた相続人が、被相続人に対する寄与分を認めてもらうためには、特別の寄与があったことを認めてもらう必要があります。
この時、口頭で説明するだけでは、他の相続人は寄与分の存在を認めてはくれません。
そこで、被相続人の財産の維持に貢献した事実や、被相続人に状況がわかる資料、介護に関する書類などを保管しておきましょう。
そして、寄与分の主張をする時には、これらの書類で、他の相続人に特別の寄与があったことを認めてもらうようしましょう。
扶養義務の範囲を超えていることを明らかにする
被相続人と相続人は、夫婦や親子の関係にあるため、同居している場合は相互に扶助しなければなりません。
そのため、被相続人のために行動した相続人がいたとしても、それは扶養義務の1つに過ぎないと言われてしまうことがあります。
特別な寄与があったと言うには、長期間にわたる貢献があったこと、その介護の程度が大きなものであることが必要です。
扶養義務の範囲を超える貢献であり、通常の扶養義務とは異なることを理解してもらうようにしましょう。
まとめ
被相続人と同居していた相続人は、被相続人の身の回りの世話をし、あるいは介護にかかる費用を負担することがあります。
このような事実があると、相続人に寄与分が認められ、遺産分割協議の際にその分多めに遺産を受け取れることがあります。
寄与分を受け取るためには、相続人自ら、寄与分があったことを主張しなければなりません。
遺産分割協議が成立すると寄与分の主張はできなくなるため、できるだけ早く、他の相続人に話をするようにしましょう。
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