この記事でわかること
- 共有分割とは、不動産などの遺産を複数の相続人で共有する分け方のこと
- 共有状態の不動産は将来的に処分しづらくなることから、基本的に共有分割は避けたほうがよい
- 円満に遺産分割するには、共有分割ではなく「現物分割・代償分割・換価分割」のいずれかを検討すべき
「相続した不動産は、とりあえず相続人全員の共有にしておこう」
このように遺産分割する方法を、「共有分割」といいます。
共有分割は、たしかに平等感のある分割方法ですが、事前に知っておくべき注意点もあります。
ここでは、その注意点や円満に遺産分割する方法を一緒に見ていきましょう。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関する相談を無料で受け付けております。ご不明なことがございましたら、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
共有分割とは?
共有分割とは、亡くなった方(被相続人)の財産を「複数の相続人」で共同して相続することです。
一般的には、土地や家屋といった「不動産」の相続で選ばれる分割方法です。
共有分割の最大のメリットは、「遺産を公平に分けられる」ことです。
たとえば、相続財産が「故人の自宅」と「少額の預貯金」のみの場合、一人の相続人が自宅を相続すると、ほかの相続人との間で不公平が生じます。
そこで、自宅を「共有」にすることで、相続人同士の不平等が解消されます。
基本的に共有分割は避けるべき理由
平等な遺産分割を実現できる「共有分割」ですが、基本的には、分割方法として選ぶべきではありません。その理由は、以下の3つです。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
理由1:不動産が「塩漬け」資産になる
共有名義の不動産を「売却・取り壊し」などしたいときには、共有者「全員」の同意が必要です。
そのため、将来的に「家を売って現金化したい」と考えても、ほかの共有者が一人でも反対すると、身動きが取れません。
こうなると、何もできないまま固定資産税だけを払い続ける、「塩漬け」の不動産になってしまいます。
理由2:将来、権利者が増えて問題が複雑になる
一度、不動産を共有にしてしまうと、次の相続でも「前がそうだったから」という理由で共有分割が選ばれやすくなります。
こうして、何世代も共有分割され続けたことで、共有者が数十人になっているケースも珍しくありません。
そのような状態は「メガ共有」と呼ばれ、共有者全員を把握することさえ難しくなります。
メガ共有になっている不動産で、登記の手続きなどが放置されていることは、社会問題にもなっています。
理由3:相続税が高くなる可能性がある
共有分割をすることで、相続税が高くなる可能性があります。
これには、土地の評価額を最大で80%減額できる「小規模宅地等の特例」が関係しています。
小規模宅地等の特例を使えるのは、「亡くなった方と一緒に住んでいた親族」などの要件を満たした相続人に限られます。
共有者のなかに要件を満たしていない方がいる場合、その人の持分には特例が適用されません。
結果として、「要件を満たす方が一人で相続したとき」と比較して、課税対象の財産額が大きくなり、相続税の負担も重くなります。
円満に遺産分割をする方法
遺産分割の方法には、「共有分割」以外にも、次の3つがあります。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
円満に遺産分割をするためには、基本的に共有分割は選ばず、ご自身の状況に合わせてこの3つのいずれかを選択することをおすすめします。
具体的なケースごとに適した分割の方法は、次のとおりです。
ケース | おすすめの分割方法 |
---|---|
相続財産のなかに、「不動産」以外にも「預貯金」などの財産が十分にある | 現物分割 |
不動産を相続する人が、ほかの相続人に「代償金」を払えるほどの資産を持っている | 代償分割 |
亡くなった人の不動産を誰も使う予定がなく、売却して公平に分けたい | 換価分割 |
それぞれの分割方法の詳細は、下記の記事でお伝えしています。
ただし、「相続財産の大部分が自宅」で「その家に住み続けたい人がいる」ようなケースでは、どうしても共有分割を選ばざるを得ないこともあります。
もしご自身の状況で、どのように遺産分割をすべきか迷ってしまったら、お気軽に弊社までご相談ください。状況をお伺いしたうえで、最適な対応をご提案いたします。
共有分割に関するよくある質問
最後に、共有分割に関してよくある、次の質問にお答えします。
Q1:共有状態を解消する方法は?
財産の共有状態を解消するための手続きのことを、「共有物分割請求」といいます。
共有物分割請求の手続きは、共有者の全員に「共有状態を解消したい」旨の意思表示をしたうえで、話し合いをすることから始まります。
この「共有物分割協議」がまとまらないときは、「裁判所での調停」や「共有物分割訴訟」によって解決することも検討しなければなりません。
以上のように、共有状態を解消するのには多大な労力がかかるため、はじめから共有は避けることをおすすめします。
Q2:共有名義の不動産の固定資産税は、誰が払う?
法律上、共有者は連帯して固定資産税を納付する義務を負い、負担割合は「それぞれの持分」に応じることが一般的です。
ただし、実際には「代表者に納税通知書が届き、その方が全員分を立て替えて支払う」ことが多いです。
Q3:あえて共有分割を選ぶべきケースはある?
「相続した自宅を、近いうちに売却する」ことが確実な場合は、あえて共有分割を選ぶのも一手です。
これは、家を売却したときにかかる「譲渡所得税」に対して、「空き家特例」をそれぞれの共有者が使えて、税負担を軽くできるからです。
ただし、この判断は専門的な知識が求められるため、検討される際は税理士に相談することをおすすめします。
Q4:共有分割でも相続登記は必要?
令和6年4月1日より、不動産を相続したときは、分割方法に関わらず、名義変更の手続き(相続登記)をすることが義務化されています。
正当な理由なく登記を怠った場合には、10万円以下の過料が科される可能性がありますので、ご注意ください。
なお、不動産を売却することが決まっているのであれば、手続きをスムーズに進めるために、あえて「代表者一人」の名義にすることもあります。
安易に「共有分割」を選ぶことは避けましょう
ここでは、「共有分割の概要」や「基本的には避けるべき理由」をお伝えしました。
この記事を参考にしながら、ご家族にとって最適な遺産の分割方法を検討してみてください。
もし、どの分割方法を選ぶべきか迷ったり、ご不安な点があったりするときは、一人で抱え込まず、弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
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