記事の要約
- 普通養子縁組と特別養子縁組の大きな違いは、実親との法律上の親族関係が残るかどうか
- 特別養子縁組と普通養子縁組は制度の目的が異なり、一般的な相続対策の選択肢になるのは実質「普通養子縁組」のみ
- 普通養子縁組を活用する際は「法定相続人に含められる養子の数の制限」など、事前に把握しておくべき注意点が存在する
「相続対策のために養子縁組を考えているものの、普通養子縁組と特別養子縁組の違いがわからない」
このような疑問をお持ちの方に向け、この記事では「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の違いについて、相続に関する要素を中心に解説します。
「普通養子縁組」と「特別養子縁組」は制度の目的が異なり、相続対策の選択肢になるのは実質「普通養子縁組」だけです。
また、相続対策として普通養子縁組を選ぶ場合でも、「法定相続人に含められる養子の数の制限」や「孫を養子にしたときの相続税の2割加算」など、見落とすと想定外の税負担につながる注意点があります。
2つの養子縁組の違いを比較表で整理したうえで、相続の場面での注意点等も取り上げますので、ぜひ参考になさってください。
目次
相続対策の選択肢としては実質「普通養子縁組」のみ
相続対策として養子縁組を行う場合、選択肢となるのは基本的に「普通養子縁組」のみです。
そもそも特別養子縁組は、「実親による養育が困難な子どもが、新しい家庭のもとで安定した生活を送るための福祉制度」です。
そのため、節税や財産承継などを目的とした申請は認められません。
これに対し、普通養子縁組が相続対策で選ばれるのには、以下の3つの理由があります。
- 実親と養親の両方から財産を相続できる点
- 普通養子縁組では実親との法的な親子関係が維持されるため、養親からの相続権を得られるだけでなく、将来実親が亡くなった際にも引き続き相続人となれます。
- 養子となる人が成年であっても縁組できる点
- 相続税対策では「孫を養子にして基礎控除枠を広げる」手法がよく検討されますが、普通養子縁組であれば、孫がすでに成人していても問題なく手続きが可能です。
- 手続きが比較的シンプルである点
- 特別養子縁組のように家庭裁判所での厳しい審査や審判を必要とせず、原則として市区町村役場へ「養子縁組届」を提出するだけで成立します。
※養子が直系卑属(孫など)以外の未成年者である場合を除く
このように、制度自体の目的や、実務上の柔軟性、手続きのしやすさ等の理由から、相続対策においては「普通養子縁組」だけが選択肢となります。
普通養子縁組と特別養子縁組の8つの違い
普通養子縁組と特別養子縁組は、どちらも養親と養子の間に法律上の親子関係を結ぶ制度ですが、目的や内容が大きく異なります。
- 普通養子縁組
- 実親との法的な親子関係を維持したまま、新たに養親との法的な親子関係をつくる制度
- 特別養子縁組
- 子の利益のために、実親との法的な親子関係を完全に解消させたうえで、養親との新たな親子関係をつくる制度
普通養子縁組と特別養子縁組の違いは、下表のとおりです。
| 普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
|---|---|---|
| 親子の関係 | ■実親との法的な親子関係が存続する | ■実親との法的な親子関係が終了する |
| 養親の要件 | ■20歳以上 ■独身者も可能 |
■養親は配偶者のある者で、夫婦共同で縁組が必要 ■夫婦のうち一方が25歳以上、もう一方が20歳以上 |
| 養子の要件 | ■年齢の上限制限なし ※養親より年上の者は不可 |
■原則として、家庭裁判所への申立て時に15歳未満 |
| 手続き | ■市区町村への届出のみ ※未成年者を養子とする場合は、原則として市区町村への届出の前に家庭裁判所の許可が必要 |
■家庭裁判所への申立てが必要 |
| 相続の権利 | ■実親と養親の両方の財産を相続できる | ■養親の財産のみ相続できる |
| 相続税の計算 | ■法定相続人の数に含める養子の数に制限あり | ■法定相続人の数に含める養子の数に制限なし |
| 戸籍の表記 | ■続柄欄に「養子」と記載 ■実親の氏名も記載される |
■続柄欄に「長男(長女)」などと記載 ■実親の氏名は記載されない |
| 離縁の可否 | ■合意による協議離縁で可能 ■裁判での離縁も可能 |
■原則不可(子の利益のために特に必要な場合等、例外的な審判に限られる) |
ここからは、それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
違い1. 親子の関係
普通養子縁組は、実親との親子関係を維持したまま、新たに養親との親子関係を結ぶ制度です。
普通養子縁組を結んだ場合、養子は実親と養親の双方の子として扱われ、両方の家系と法的なつながりを持つことになります。

一方で特別養子縁組は、実親との法的な親子関係が完全に終了し、養親とのみ新たな親子関係を結ぶ制度です。
普通養子縁組とは異なり、実親との法的なつながりが断たれることから、養親の実子と同じ扱いになります。

違い2. 養親の要件
普通養子縁組と特別養子縁組では、養親となれる要件が以下のように異なります。
| 普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
|---|---|---|
| 養親の年齢 | 20歳以上 | 原則25歳以上 ※夫婦の一方が25歳以上なら、 もう一方は20歳以上であれば可 |
| 養親の婚姻 | 独身でも可能 | 配偶者がいることが必須 ※原則として夫婦共同で縁組 |
普通養子縁組では、養親は20歳以上であれば独身者も可能です。
ポイント
結婚している人が養子縁組をする場合は、配偶者の同意が必要です。特に養子が未成年者のときは、原則として夫婦そろって養親になる必要があります。
対して特別養子縁組の場合、養親になれるのは配偶者のいる人のみで、必ず夫婦共同で養子縁組を行わなければなりません。
加えて、夫婦のうちどちらか一方が25歳以上、もう一方が20歳以上であることが必要条件となります。
違い3. 養子の要件
普通養子縁組と特別養子縁組では、養子となる側に求められる要件も大きく異なります。
普通養子縁組では大人であっても養子になれるため、年齢の上限はありません。
一方、特別養子縁組では「子の保護」を目的としているため、原則として「15歳未満」という厳しい年齢制限などが設けられています。
ここからは、それぞれの縁組における「養子の要件」について詳しく見ていきます。
| 普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
|---|---|---|
| 年齢制限 | 上限なし ※養親より年下であること |
原則として申立て時に15歳未満 |
| 実親の同意 | 不要 ※15歳未満は法定代理人が承諾 |
原則必要 ※虐待等があった場合の例外あり |
| その他の要件 | 未成年の場合は原則として家庭裁判所の許可が必要 | 6カ月以上の監護実績が必要 |
普通養子縁組の場合の養子の要件
普通養子縁組の場合、養親よりも年長者でない限り、養子となる側に原則として年齢制限はありません。
注意点
たとえ自身より年下であっても、養親の尊属(叔父や叔母など、家系図上で前の世代に属する血族)は養子にすることはできません。
養子となる側の年齢や状況に応じて、以下のような手続きのルールが定められています。
- 養子が15歳以上の場合
- 養子本人の意思で縁組の合意を行います。
なお、養子本人に配偶者がいる場合は、原則としてその配偶者の同意が必要です。 - 養子が15歳未満の場合
- 本人が単独で法律上の意思表示を行えないため、親権者などの法定代理人が代わりに縁組を承諾します。
※父母が離婚して一方が「親権者」、他方が「監護者」となっている場合は、監護者の同意も必要となります。
また、養子となる人が未成年者の場合は、子の利益を守るため、原則として家庭裁判所の許可が必要となります。
ただし、「自身または配偶者の直系卑属(自分の孫や、配偶者の連れ子など)」を養子にする場合は、家庭裁判所の許可は不要です。
特別養子縁組の場合の養子の要件
特別養子縁組の場合、普通養子縁組とは異なり、養子となる側の要件が厳格に定められています。
特別養子縁組を家庭裁判所に申し立てる際、養子となる子の年齢は原則として15歳未満でなければなりません。
年齢要件の例外
15歳に達する前から引き続き養親候補者に監護(養育)されていた場合や、やむを得ない事情で15歳までに申し立てができなかった場合は、15歳以上でも申し立てが認められる場合があります。
ただし、この例外のケースに該当していても、家庭裁判所による審判確定時に18歳未満でなければならず、18歳に達した人は特別養子縁組を成立させることができません。
また、特別養子縁組では原則として、養子となる子の実親の同意が必要です。
実親の同意要件の例外
「実親が意思を表明できない」「実親による虐待や育児放棄がある」など、子の利益を著しく害する特別な事由がある場合は、家庭裁判所の判断で実親の同意が不要となることもあります。
なお、条件を満たしている場合であっても、すぐに特別養子縁組が成立するわけではありません。
特別養子縁組を成立させるには、養親候補者が養子となる子をあらかじめ6カ月以上同居させて監護した実績が必要です。
家庭裁判所は、その監護状況を考慮したうえで審判を下します。
違い4. 手続き
普通養子縁組と特別養子縁組では、成立までに必要な工程や管轄機関が大きく異なります。
普通養子縁組は当事者の合意と役場への届出で成立する、比較的シンプルな手続きです。
一方、特別養子縁組は、家庭裁判所への申立てと審判が必要な厳格な手続きです。
| 普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
|---|---|---|
| 手続きの窓口 | 市区町村役場(戸籍課) | 児童相談所・養子縁組あっせん事業者、家庭裁判所 |
| 家庭裁判所の関与 | 原則不要 ※孫・連れ子以外の未成年者は許可が必要 |
必須 |
| 必要な実績 | 当事者間の合意 | 6カ月以上の同居・監護実績 |
ここからは、それぞれの縁組における「手続きの概要」について詳しく見ていきます。
普通養子縁組の場合の手続き
普通養子縁組の手続きの流れは、以下のとおりです。
- 養親と養子の合意
- 市区町村役場へ養子縁組届の提出
まず、養親となる人と養子候補者が、養子縁組について合意を行います。
- 養子が15歳未満の場合
- 親権者などの法定代理人が代わりに承諾を行います。
- 養子が未成年者の場合
- 原則として家庭裁判所の許可を得る必要があります。
ただし、「配偶者の子(連れ子)」や「自身の孫」など直系卑属を養子とする場合は、家庭裁判所の許可は不要です。
家庭裁判所の許可が必要なケースでは、許可を得たうえで、市区町村役場へ養子縁組届を提出します。
一方、家庭裁判所の許可が不要なケースでは、当事者の合意に基づき養子縁組届を提出します。
届出の提出先は、養子または養親の「本籍地」もしくは「住所地」の市区町村役場です。
特別養子縁組の場合の手続き
特別養子縁組の手続きを進める相談先は、行政機関である「児童相談所」、または都道府県知事等の許可を受けた「民間あっせん団体」の2つがあります。
- 「児童相談所」を通じた場合
- 相談、研修、家庭環境の調査を経て、養子縁組里親として登録を行います。
その後、子どもとの面会や交流を経て委託(養育)へと進みます。 - 「民間あっせん団体」を通じた場合
- 団体が定める研修、家庭の環境調査、個別面談などを経て、育ての親候補者としての登録・待機を行い、養子候補の子どもとの適合を待ちます。
養子候補の子どもとの適合が成立すると、実際の委託が始まり、法律で定められた「6カ月以上の監護期間」に入ります。
ポイント
特別養子縁組の成立には、養親となる人が養子候補の子どもをあらかじめ6カ月以上監護していることが必要です。
家庭裁判所は、この期間中の実際の監護状況を考慮した上で、最終的な縁組の決定を下します。
監護期間中、あるいは監護期間を経てから、養親となる人の「住所地」を管轄する家庭裁判所へ手続きを行います。
この際、養親となる人が申し立てる場合は、「特別養子適格の確認」と「特別養子縁組の成立」という2つの審判を同時に申し立てなければなりません。
申立てを受けた家庭裁判所は、以下の点などについて慎重に調査します。
- 実親の同意が得られているか
- 特別養子縁組の成立には原則として実親の同意が必須です。
ただし、虐待や育児放棄など、子どもの利益を著しく害する事由がある場合は例外的に同意不要とされます。 - 養親となる人の養育適性
- 経済状況や住環境、夫婦関係など、子どもを健全に養育するための適性があるかを確認します。
このように、特別養子縁組は養親の適性などを厳格に審査するため、手続きに相応の期間を要するのが特徴です。
違い5. 相続の権利
普通養子縁組の場合、新しく養親との間に親子関係を結んだ後も、実親との親子関係がそのまま継続します。
そのため、養子は「実親」と「養親」という二重の親子関係を持ち、実親と養親双方の財産を相続する権利を有します。

一方、特別養子縁組の場合は、家庭裁判所の審判によって縁組が成立すると、実親との親子関係が完全に終了します。
したがって、養子は実親側の財産の相続権を失い、「養親」の財産のみを相続することができます。

違い6. 相続税の計算
養子縁組を行うと、相続税を計算する際の「基礎控除額」や「非課税枠」に影響し、税負担の軽減につながる場合があります。
- 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
- 死亡保険金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数
- 死亡退職金の非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数
具体的には、被相続人の養子は一定の範囲で「法定相続人の数」にカウントされるため、基礎控除額や死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額に影響を及ぼします。
ただし、普通養子縁組の場合は、「法定相続人の数に含められる人数に制限がある」点に注意が必要です。
- 被相続人に実子がいる場合:1人まで
- 被相続人に実子がいない場合:2人まで
一方、特別養子縁組の場合は、相続税法上「実子」と同等に扱われるため、人数制限なしで法定相続人の数としてカウントできます。
孫養子の場合は「相続税の2割加算」に注意する
自身の孫を養子にした場合(孫養子)は、原則として相続税額の2割加算の対象となる点に注意が必要です。
ただし、「子が既に亡くなっていて孫が代襲相続人となっている場合」や、「孫以外の第三者や子の配偶者等を養子にする場合」は、この2割加算は適用されません。
違い7. 戸籍の表記
普通養子縁組と特別養子縁組は、戸籍における記載内容が異なります。

普通養子縁組の場合、養子の続柄欄には「養子」と記載されます。
また、戸籍内には養親の氏名だけでなく実親の氏名も記載され、実親と養親双方とのつながりが戸籍上で確認できます。

一方、特別養子縁組では、実親との親子関係が完全に終了するため、戸籍に「実親の氏名」は記載されません。
加えて、養子の続柄も「長男(長女)」などと表記され、養親の実子と同等の扱いで記録されます。
違い8. 離縁の可否
普通養子縁組と特別養子縁組では、離縁の条件や難易度も異なります。
普通養子縁組の場合は、原則として当事者の合意による離縁が可能です。
また、合意に至らない場合でも、「縁組を継続し難い重大な事由」等がある場合には、家庭裁判所に離縁の訴えを起こすこともできます。
一方、特別養子縁組の場合は、原則として離縁は認められません。
ただし、「養親による虐待や悪意の遺棄がある」などの理由で、「子の利益のために特に必要がある」と家庭裁判所が認めた場合に限り、例外的に審判による離縁が認められます。
養子縁組の手続きの進め方は専門家に相談しよう
この記事では、普通養子縁組と特別養子縁組の違いについて、相続に関する要素を中心に解説しました。
相続対策として養子縁組をする場合、一般的に「普通養子縁組」が選ばれます。
普通養子縁組を結んだ場合、「相続税の基礎控除」や「法定相続人の範囲」に大きく影響する一方で、「誰を養子にするか」「いつ縁組をするか」によって、相続税の負担や相続人の顔ぶれが変わってきます。
ご自身のケースで「普通養子縁組が本当に相続対策になるのか」「どのような影響が出るのか」を正しく判断するには、専門的な知識が欠かせません。
そのため、養子縁組を活用した相続対策を検討している場合などは、相続を専門とする税理士に一度ご相談ください。
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