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交通事故の示談交渉は、弁護士に依頼するのが安心です。
しかし、弁護士に依頼すると、弁護士費用がかかりますので、費用が心配で弁護士への依頼を躊躇してしまう方も多いことでしょう。
こうした不安を解消して、交通事故の被害者が十分な補償を受けるための保険特約が、弁護士費用特約というものです。
弁護士費用特約とはどのように付帯し、どのような条件でどのくらいの範囲がカバーされるのでしょうか。
この記事では、弁護士費用特約についてご説明します。
弁護士費用特約は、平成12年に日本弁護士連合会が保険各社と協力して開発した任意保険の特約商品です。
弁護士費用特約は、主たる損害保険契約のオプション契約として、加入者が希望する場合に付帯することができる特約です。
大手の損害保険会社では、のきなみ弁護士費用(担保)特約を発売しています。
弁護士費用特約によってカバーされる範囲は、付帯する特約や提供する任意保険会社によって異なりますが、基本的には以下のような費用が補償の対象になります。
被保険者が、交通事故被害により、怪我をしたり車破損したりするなどの損害を被った場合に、相手方に対する損害賠償請求をする場合、またはその逆に被保険者に法律上は賠償責任がないにもかかわらず、相手方から損害賠償請求されてしまったときの弁護士費用をカバーします。
補償の対象は、弁護士費用として、弁護士報酬、司法書士報酬、行政書士報酬、訴訟や仲裁、和解、調停などの法的手続きに必要となる費用が300万円までカバーされます。
弁護士報酬は、着手金と成功報酬にわけて支払われることが多いですが、多くの交通事故被害では、300万円以内に収まることがほとんどですので、弁護士費用特約をつけている場合は、自費負担はなく弁護士に依頼できる場合も多くあります。
ただし、重篤な後遺症が残ってしまった場合など、慰謝料額が大きくそれに比例して弁護士費用が高額となる場合は、300万円を超える可能性もありますので、依頼前に弁護士に費用感についても相談をしておきましょう。
また、弁護士、司法書士、行政書士への法律相談や書類作成代として10万円までカバーされます。
デフォルトで弁護士特約を進める保険会社も増えつつあり、また日本の社会も、以前よりは訴訟に対する抵抗感が減りつつあるため、弁護士費用特約の負荷率は年々増加しつつあるようです。
たとえば、セゾン自動車火災保険で公表している弁護士費用特約の加入率は7割超と半数を超えています。
しかし、弁護士費用特約に加入している契約者が事故にあった場合、必ずしも弁護士費用特約の利用をしていないことが、利用率が加入率と比べて低いことからわかっています。
加入はしているものの、弁護士に依頼するような法的な面倒ごとはなるべく避けたいと考える人もいるでしょうし、弁護士費用特約に加入していることをすっかり忘れてしまっている方もいるでしょう。
しかし、これは非常にもったいないともいえます。
弁護士がつくと、慰謝料交渉は弁護士基準で行われ、基本的には個人で交渉するよりも高額な慰謝料を勝ち取ることができる傾向にあります。
ぜひ一度ご自身の加入状況を確認してみましょう。
詳しく知りたい方は、「交通事故にあってしまったら 弁護士に相談するタイミングを教えて」を参照してください。
損害保険契約では、記名被保険者という主たる補償対象が指定されることになっています。
補償の対象は、記名被保険者本人と、記名被保険者と密接な関係性を持っている人となります。
具体的には、弁護士費用特約でカバーされるのは、記名被保険者本人、配偶者、本人または配偶者の同居の親族、別居の未婚の子、それ以外で契約自動車に搭乗していた人、契約自動車の所有者となります。
ただし、所有者の弁護士費用のカバー範囲は、保険契約たいしょうの自動車の被害事故に関する損害賠償請求や法律相談を行う場合に限られます。
このように、仮に自分が弁護士費用特約に加入していなくても、例えば別居している親や配偶者が加入していれば、弁護士費用特約が使えます。
また、契約自動車に乗っていれば、契約者と血の繋がりは問われませんので、友人や恋人、近所の人がたまたま契約者の車に乗せてもらっていたり借りたりして事故にあった場合でもカバーの対象です。
契約自動車の所有者とは、運転者と所有者が別の場合で、例えば車を貸していた間に事故に遭ってしまったようなケースを指します。
弁護士費用特約が利用できる補償の範囲は、上記のようにかなり広いですので、国民全体の加入率の高さから考えると、多くの人が何かしらの形で弁護士費用特約の対象である加入可能性があります。
自身で加入した記憶がなくても、上記の中で何かあてはまるものがないか確認しておきましょう。
被保険者の帰責性が大きい場合は、弁護士費用特約が使えないこともあります。
例えば、被害者が無免許運転、麻薬やアルコールをおびての運転だったようなケースや、事故をおこして闘争行為や自殺を図ろうとした場合など、被保険者の故意または重大な過失によって、被保険者本人に生じた損害については、自業自得という側面も大きいですので、保険金は支払われません。
また、台風、洪水、高潮などの自然災害や、自然の摩耗による事故、運転方法が異常でそれにより事故となってしまった場合なども支払いの対象外となります。
しかし、このように明らかに弁護士費用特約の趣旨から反するようなケースを除き、多くの場合はカバーがされます。
事故があった際にカバーの対象となっているか不安な時は、対象の弁護士費用特約を提供している保険会社の窓口に確認してみましょう。
弁護士費用特約を付帯していると、弁護士費用を心配することなく、交通事故の解決を弁護士に依頼することができます。
特に軽い事故の場合は、弁護士に依頼して増額される示談金よりも依頼する費用のほうが高くつく、いわゆる費用倒れの懸念から弁護士相談を躊躇する方が多いと思います。
こうした場合でも弁護士費用特約をつけていれば安心です。
弁護士に交渉を依頼すれば、自ら任意保険会社と交渉するストレスから解消されますし、被害者にとって最も有利な弁護士基準での示談交渉がしてもらえるため、有利な結果となることが期待できます。
いかがでしたでしょうか。
弁護士費用特約の特徴、利用できる範囲などについてご参考になれば幸いです。
詳しく知りたい方は、「交通事故の示談交渉 弁護士特約は利用できる?」を参照してください。