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交通事故に精通している弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > 交通事故弁護士コラム > 休業損害 > 無職の人も逸失利益を請求できる!相場や計算方法について解説

無職の人も逸失利益を請求できる!相場や計算方法について解説

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/

この記事でわかること

  • 無職や失業中の人でも逸失利益を請求できる理由がわかる
  • 逸失利益を請求できないケースがわかる
  • 無職の人の逸失利益相場・計算方法がわかる

交通事故の被害によって後遺障害が残った場合、事故前よりも労働能力が低下するケースがあるため、収入が減ってしまう恐れがあります。

眩暈や手足のしびれ、首回りなどに痛みが残れば、現場作業や長時間のオフィスワークにも支障をきたすでしょう。

後遺障害のレベルによっては休職や退職、あるいは廃業になる可能性もあるため、失ってしまう利益は計り知れません。

将来的に得られたはずの収入は逸失利益として加害者へ請求できますが、被害者が就労していなかったときはどうなるでしょうか?

今回は、無職や失業中の人が逸失利益を請求できるケース、できないケースをわかりやすく解説しますので、交通事故の被害に遭われた方はぜひ参考にしてください。

無職や失業中の人でも逸失利益を請求できる

後遺障害がなければ得られたであろう収入を「逸失利益」といい、無職や失業中の人でも請求できるケースが一般的です。

逸失利益は被害者の年収や労働能力の低下レベル、昇進や失業への影響を考慮しますが、無職や失業中の場合、就職の可能性や就労意欲があれば請求が認められます

無職や失業中の人は過去の職歴や年齢、就労能力なども考慮されるので、就職の可能性が高ければ、将来の収入が後遺障害によって減少したと判断されるでしょう。

ただし、以下のようなケースは逸失利益を請求できない可能性が高いので注意してください。

逸失利益を請求できないケース

逸失利益を請求できるのは基本的に就職(就労)している人、または就職の見込みがある人です。

以下のように就職の可能性が低い、または就労への意欲が乏しいと判断された場合、逸失利益の請求は認められないでしょう。

定年退職後の求職活動をまったくしていなかったとき

定年退職した被害者が求職活動をしてない場合、逸失利益の請求が認められない可能性があります。

年金収入や家賃収入などで生活が成り立っている高齢者であれば、後遺障害による減収がないため、逸失利益の発生はないものと判断されるでしょう。

就労への意欲が乏しいと判断されたとき

被害者が求職活動をほとんど行っておらず、就労への意欲が乏しいと判断された場合も、逸失利益の請求は認められないケースがあります。

たとえば、年齢30歳の被害者で、就労経験がまったくないようなケースであれば、今後就労する可能性も極めて低いため、逸失利益は請求できないと考えた方が無難でしょう。

病気などで長期間就労していなかったとき

病気などを理由に被害者が長期間就労していなかったときも、今後就職する可能性が低く、就労への意欲も乏しい場合は逸失利益を請求できない可能性があります。

無職の人の逸失利益相場・計算方法

後遺障害による逸失利益を請求する場合、働いている人は事故に遭った前年の年収(基礎収入)がベースとなり、以下の計算式で金額を算出します。

後遺障害逸失利益:年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

無職や失業中の人も事故の前年等に収入があれば同じ考え方になりますが、就労していない場合は以下のように、賃金センサスを参考として逸失利益を計算します。

後遺障害の等級も影響するので決まった相場はありませんが、獲得できる金額は保険会社との交渉次第になるため、基本的な計算方法を理解しておきましょう。

賃金センサスから年収を確認する

無職や失業者の逸失利益を計算する場合、前年等の収入がなければ賃金センサスを参考にします。

賃金センサスとは、厚生労働省が実施している賃金構造基本統計調査を指しており、性別や学歴別などで平均賃金を確認できます。

賃金センサスの詳細データはe-Stat(政府統計)に掲載されていますが、参照方法がわかりづらいので、以下の手順を参考にしてください。

  1. (1)表番号1の「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」をダウンロード
  2. (2)勤続年数計に応じた性別・学歴別・年齢別の給与額等を参照
  3. (3)所定内給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額で年収を計算

では、賃金センサスの一例をみてみましょう。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査(政府統計:e-Stat)

賃金センサスの一例:25~29歳の場合

令和3年の賃金センサス(企業規模計10人以上)から25~29歳の平均賃金をみると、大学卒で勤続年数0年の場合は以下のようになります。

  • 女性:所定内給与額24万7,400円×12+年間賞与その他特別給与額6万1,200円=303万円
  • 男性:所定内給与額26万5,700円×12+年間賞与その他特別給与額7万1,700円=326万100円

賃金センサスは必ず最新年のデータを参照してください。

では次に、後遺障害によって失った労働能力喪失率の確認方法を解説します。

労働能力喪失率を確認する

労働能力喪失率は後遺障害の等級に応じており、事故前の状態を100%として、どれだけの割合で労働能力を失ったか確認します。

  • 1級:100%(両眼失明や常時要介護等)
  • 2級:100%(一眼失明や常時要介護等)
  • 3級:100%(言語機能の喪失等)
  • 4級:92%(両耳の聴力喪失等)
  • 5級:79%(両足の足指の全部を失う等)
  • 6級:67%(言語機能の著しい障害等)
  • 7級:56%(外貌に著しい醜状を残す等)
  • 8級:45%(脊柱の運動障害等)
  • 9級:35%(両眼の半盲症等)
  • 10級:27%(言語機能の障害等)
  • 11級:20%(両眼まぶたの著しい運動障害等)
  • 12級:14%(貌に著しい醜状を残す等)
  • 13級:9%(一眼の半盲症等)
  • 14級:5%(三歯以上の歯科補綴等)

労働能力喪失期間を確認する

労働能力喪失期間は後遺障害の症状固定日を始期(起算日)とし、原則として就労可能年齢の上限となる67歳を終期とします。

なお、後遺障害がむちうちの場合は、等級に応じて以下のように労働能力喪失期間が変わります。

  • 12級:5年から10年
  • 14級:5年以下

では最後に、ライプニッツ係数を乗じて逸失利益の金額を計算してみましょう。

ライプニッツ係数とは?

逸失利益は将来的な収入を前倒しで受け取ることになるため、本来得るはずの収入と異なり、利息が発生します。

利息は必要以上の利益になるので、ライプニッツ係数を使って増額した利息(中間利息)を差し引き、現在の価値に換算しなければなりません。

ライプニッツ係数は法定利率をもとにしており、民法改正があった2020年4月1日以降は中間利息が5%から3%へ引き下げられました。

控除する金額が減るため、法改正以後は受け取る逸失利益が増えることになります。

参考:就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)

ライプニッツ係数を乗じて逸失利益を計算する

では最後に、以下の条件で無職や失業中の人の逸失利益を計算してみましょう。

無職や失業中の人の逸失利益の計算

  • 事故発生日:2020年4月1日以降
  • 後遺障害と労働能力喪失率:11級、20%
  • 被害者の年齢:25歳の男性
  • 被害者の基礎収入:326万100円(賃金センサスを参照)
  • 就業可能年数:67歳-25歳=42年
  • ライプニッツ係数:23.701

2020年4月1日以降のライプニッツ係数を適用すると、逸失利益は以下のようになります。

逸失利益:326万100円×20%×23.701=1,545万3,526円

ちなみに法改正前(2020年3月31日以前)に発生した事故の場合、ライプニッツ係数は「17.423」が適用されるため、請求できる逸失利益は以下のようになります。

民法改正前の逸失利益:326万100円×20%×17.423=1,136万144円

まとめ

後遺障害による逸失利益は無職や失業中の人でも請求できるので、賃金センサス(賃金構造基本統計調査)やライプニッツ係数の見方を理解しておくとよいでしょう。

ただし、請求する際には就職の可能性が高いことや、十分な就労意欲があることを証明しなければなりません。

ハローワークに通って求職活動している、企業の面接を受けているなど、将来的な収入の発生が見込める状況にしておく必要があります。

最終的な支払額も保険会社との交渉次第になるため、確実に逸失利益を獲得したい方は、交通事故問題に詳しい弁護士に相談しておくことをおすすめします。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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