東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
目次
後遺障害がなければ得られたであろう収入を「逸失利益」といい、無職や失業中の人でも請求できるケースが一般的です。
逸失利益は被害者の年収や労働能力の低下レベル、昇進や失業への影響を考慮しますが、無職や失業中の場合、就職の可能性や就労意欲があれば請求が認められます。
無職や失業中の人は過去の職歴や年齢、就労能力なども考慮されるので、就職の可能性が高ければ、将来の収入が後遺障害によって減少したと判断されるでしょう。
ただし、以下のようなケースは逸失利益を請求できない可能性が高いので注意してください。
逸失利益を請求できるのは基本的に就職(就労)している人、または就職の見込みがある人です。
以下のように就職の可能性が低い、または就労への意欲が乏しいと判断された場合、逸失利益の請求は認められないでしょう。
定年退職した被害者が求職活動をしてない場合、逸失利益の請求が認められない可能性があります。
年金収入や家賃収入などで生活が成り立っている高齢者であれば、後遺障害による減収がないため、逸失利益の発生はないものと判断されるでしょう。
被害者が求職活動をほとんど行っておらず、就労への意欲が乏しいと判断された場合も、逸失利益の請求は認められないケースがあります。
たとえば、年齢30歳の被害者で、就労経験がまったくないようなケースであれば、今後就労する可能性も極めて低いため、逸失利益は請求できないと考えた方が無難でしょう。
病気などを理由に被害者が長期間就労していなかったときも、今後就職する可能性が低く、就労への意欲も乏しい場合は逸失利益を請求できない可能性があります。
後遺障害による逸失利益を請求する場合、働いている人は事故に遭った前年の年収(基礎収入)がベースとなり、以下の計算式で金額を算出します。
無職や失業中の人も事故の前年等に収入があれば同じ考え方になりますが、就労していない場合は以下のように、賃金センサスを参考として逸失利益を計算します。
後遺障害の等級も影響するので決まった相場はありませんが、獲得できる金額は保険会社との交渉次第になるため、基本的な計算方法を理解しておきましょう。
無職や失業者の逸失利益を計算する場合、前年等の収入がなければ賃金センサスを参考にします。
賃金センサスとは、厚生労働省が実施している賃金構造基本統計調査を指しており、性別や学歴別などで平均賃金を確認できます。
賃金センサスの詳細データはe-Stat(政府統計)に掲載されていますが、参照方法がわかりづらいので、以下の手順を参考にしてください。
では、賃金センサスの一例をみてみましょう。
参考:令和3年賃金構造基本統計調査(政府統計:e-Stat)
令和3年の賃金センサス(企業規模計10人以上)から25~29歳の平均賃金をみると、大学卒で勤続年数0年の場合は以下のようになります。
賃金センサスは必ず最新年のデータを参照してください。
では次に、後遺障害によって失った労働能力喪失率の確認方法を解説します。
労働能力喪失率は後遺障害の等級に応じており、事故前の状態を100%として、どれだけの割合で労働能力を失ったか確認します。
労働能力喪失期間は後遺障害の症状固定日を始期(起算日)とし、原則として就労可能年齢の上限となる67歳を終期とします。
なお、後遺障害がむちうちの場合は、等級に応じて以下のように労働能力喪失期間が変わります。
では最後に、ライプニッツ係数を乗じて逸失利益の金額を計算してみましょう。
逸失利益は将来的な収入を前倒しで受け取ることになるため、本来得るはずの収入と異なり、利息が発生します。
利息は必要以上の利益になるので、ライプニッツ係数を使って増額した利息(中間利息)を差し引き、現在の価値に換算しなければなりません。
ライプニッツ係数は法定利率をもとにしており、民法改正があった2020年4月1日以降は中間利息が5%から3%へ引き下げられました。
控除する金額が減るため、法改正以後は受け取る逸失利益が増えることになります。
では最後に、以下の条件で無職や失業中の人の逸失利益を計算してみましょう。
事例無職や失業中の人の逸失利益の計算
2020年4月1日以降のライプニッツ係数を適用すると、逸失利益は以下のようになります。
ちなみに法改正前(2020年3月31日以前)に発生した事故の場合、ライプニッツ係数は「17.423」が適用されるため、請求できる逸失利益は以下のようになります。
後遺障害による逸失利益は無職や失業中の人でも請求できるので、賃金センサス(賃金構造基本統計調査)やライプニッツ係数の見方を理解しておくとよいでしょう。
ただし、請求する際には就職の可能性が高いことや、十分な就労意欲があることを証明しなければなりません。
ハローワークに通って求職活動している、企業の面接を受けているなど、将来的な収入の発生が見込める状況にしておく必要があります。
最終的な支払額も保険会社との交渉次第になるため、確実に逸失利益を獲得したい方は、交通事故問題に詳しい弁護士に相談しておくことをおすすめします。