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子どもが交通事故に遭っても逸失利益を請求できる!計算方法や相場について

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 子どもも後遺障害の逸失利益を請求できる理由がわかる
  • 子どもの逸失利益の計算方法がわかる
  • 子どもの逸失利益の相場がわかる

不幸にして交通事故の被害者となった場合、むちうちなどの後遺障害が残ってしまうケースがあります。

後遺障害等級に認定されると逸失利益を請求できるので、事故前の収入や、労働能力の喪失率などを考慮して金額を決定します。

収入がない幼児や小中学生など、子どもに後遺障害が残った場合も逸失利益を請求できますが、「何を基準に金額を計算するのか?」といった疑問が生じてきますね。

追突事故によって同乗していた子どもがむちうちになる、あるいは子どもが車にひかれた場合、重い後遺障害が残る可能性もあるでしょう。

そこで今回は、子どもの逸失利益がいくらになるのか、計算方法などをわかりやすく解説します。

子どもが交通事故に遭っても逸失利益を請求できる

逸失利益は後遺障害で失った将来の収入のため、働いて収入を得ていた人に請求が認められます。

働いていない子どもに収入はありませんが、将来的には就労する可能性が高く、後遺障害によって本来得られた収入が減るようであれば、逸失利益を請求できます。

なお、逸失利益は事故前の収入がベースとなるため、働いている人は源泉徴収票や確定申告書を参考にしますが、未就労の子どもにはどちらもありません。

子どもの逸失利益は収入の考え方が特殊になるので、以下の計算方法を参考にしてください。

子どもの逸失利益の計算方法

子どもも働いている大人も、逸失利益の計算方法は共通しており、以下の計算式で金額を求めます。

後遺障害逸失利益:基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数

未就労の子どもには収入がないため、厚生労働省が公表する賃金センサス(賃金構造基本統計調査の結果)の平均賃金を基礎収入とします。

賃金センサスは年齢や性別、産業別などに分かれていますが、子どもの年齢によって参照データが異なるので注意してください。

なお、男性の平均賃金は500万円を超えますが、女性は300万円台となるため、格差解消として男女計の平均賃金400万円台を基礎収入とする傾向もあるようです。

子どもの逸失利益の相場

逸失利益は後遺障害の等級や年齢を考慮するため、特に決まった相場はありません。

しかし、計算方法がわかれば失った収入を把握できるので、10歳の小学生と22歳の大学生をモデルケースとして、逸失利益がいくらになるか計算してみます。

なお、両者とも計算手順は変わりませんが、基礎収入の考え方が異なるので注意してください。

10歳小学生の逸失利益の計算方法

幼児や児童の逸失利益は以下の手順で計算します。

  1. (1)賃金センサスを参照して基礎収入を計算
  2. (2)労働能力喪失率の確認
  3. (3)ライプニッツ係数を乗じて逸失利益を計算

具体的な内容は、以下のようになります。

賃金センサスを参照して基礎収入を計算

小学校に通う生徒の場合、基礎収入は全労働者の平均賃金をもとにするため、賃金センサス第1表の産業計、企業規模計、男女計・学歴計を参照します。

賃金センサスのデータはe-Stat(政府統計)に掲載されているので、以下の手順でダウンロードしてください。

  1. (1)表番号1の「学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」をダウンロード
  2. (2)産業計のシートから男女計・学歴計の全年齢を参照
  3. (3)きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額で年収を計算

令和3年の賃金センサスで10歳小学生の基礎収入を計算すると、以下のようになります。

基礎収入:33万4,800円×12ヶ月+87万5,500円=489万3,100円

参考:令和3年賃金構造基本統計調査(政府統計:e-Stat)

労働能力喪失率の確認

労働能力喪失率は後遺障害等級と連動しており、事故前の労働能力を100%とした場合、どの程度の割合で低下(喪失)したかを確認します。

【後遺障害等級と労働能力喪失率】

  • 第1級:100%
  • 第2級:100%
  • 第3級:100%
  • 第4級:92%
  • 第5級:79%
  • 第6級:67%
  • 第7級:56%
  • 第8級:45%
  • 第9級:35%
  • 第10級:27%
  • 第11級:20%
  • 第12級:14%
  • 第13級:9%
  • 第14級:5%

今回は10歳の小学生に第8級の後遺障害が残り、45%の労働能力を失ったものとして逸失利益を計算してみます。

参考:労働能力喪失率表(厚生労働省)

ライプニッツ係数を乗じて逸失利益を計算

逸失利益は将来的な収入を一括で前渡しすることになるため、ライプニッツ係数を使って利息分(運用で発生する中間利息)を差し引きます

10歳小学生の場合、18歳から67歳までの57年間に対応するライプニッツ係数から、10歳から18歳までの8年間に対応したライプニッツ係数を差し引いて計算します。

  1. (1)18歳から67歳までの57年間に対応したライプニッツ係数:27.151
  2. (2)10歳から18歳までの8年間に対応したライプニッツ係数:8.530
  3. (3)逸失利益の計算に用いるライプニッツ係数:27.151-8.530=18.621

最後に逸失利益の計算式に当てはめてみましょう。

後遺障害逸失利益:489万3,100円×45%×18.621=4,100万1,486円

次に22歳大学生のケースを計算しますが、基本的な考え方や手順は同じです。

参考:就労可能年数とライプニッツ係数表(国土交通省)

22歳大学生の逸失利益の計算方法

22歳の大学生であれば卒業後の就労がほぼ確実となるため、労働能力喪失期間は原則として45年(67歳-22歳)になります。

ただし、むちうちの労働能力喪失期間は5~10年程度になるケースが一般的です。

基礎収入は大学卒の男女計(全年齢)の平均賃金を参照するので、具体的な計算手順は以下のようになります。

賃金センサスを参照して基礎収入を計算

20歳大学生の場合も、基礎収入の計算方法は幼児や児童と変わりませんが、参照する平均賃金が異なるので注意してください。

基礎収入の計算式:きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額

平均賃金を確認する場合、賃金センサスの産業計シートから男女計・大学の全年齢を参照し、以下のように計算します。

基礎収入:38万7,300円×12ヶ月+116万7,400円=581万5,000円

なお、22歳で大学生になっていない人(浪人生など)でも、大学卒の基礎収入から逸失利益を計算できるケースもあります。

詳しくは、交通事故問題の解決が得意な弁護士に尋ねてみるとよいでしょう。

労働能力喪失率の確認

労働能力喪失率の確認方法は共通しているので、今回は後遺障害第6級を想定し、労働能力67%を喪失したケースで逸失利益を計算してみます。

ライプニッツ係数を乗じて逸失利益を計算

22歳大学生の場合、労働能力の喪失期間は45年、対応するライプニッツ係数は24.519となるので、逸失利益は以下のようになります。

逸失利益:581万5,000円×67%×24.519=9,552万7,249円

まとめ

交通事故の被害によって後遺障害が残った場合、失ってしまう将来的な収入は高額になるため、逸失利益を請求しなければなりません。

被害者が子どもであっても変わりはないので、賃金センサスを参照して正確に逸失利益を計算しておきましょう。

ただし、保険会社が請求どおりに支払ってくれるとは限らないので、注意が必要です。

慰謝料や逸失利益の額は示談交渉次第になるケースが多いため、交渉力が最大のポイントになります。

保険会社の提示額が不十分だったときは、交通事故問題に詳しい弁護士に相談しておきましょう。

弁護士に相談した場合、適正な後遺障害等級に認定される可能性も高くなります。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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