東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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目次
逸失利益は後遺障害で失った将来の収入のため、働いて収入を得ていた人に請求が認められます。
働いていない子どもに収入はありませんが、将来的には就労する可能性が高く、後遺障害によって本来得られた収入が減るようであれば、逸失利益を請求できます。
なお、逸失利益は事故前の収入がベースとなるため、働いている人は源泉徴収票や確定申告書を参考にしますが、未就労の子どもにはどちらもありません。
子どもの逸失利益は収入の考え方が特殊になるので、以下の計算方法を参考にしてください。
子どもも働いている大人も、逸失利益の計算方法は共通しており、以下の計算式で金額を求めます。
未就労の子どもには収入がないため、厚生労働省が公表する賃金センサス(賃金構造基本統計調査の結果)の平均賃金を基礎収入とします。
賃金センサスは年齢や性別、産業別などに分かれていますが、子どもの年齢によって参照データが異なるので注意してください。
なお、男性の平均賃金は500万円を超えますが、女性は300万円台となるため、格差解消として男女計の平均賃金400万円台を基礎収入とする傾向もあるようです。
逸失利益は後遺障害の等級や年齢を考慮するため、特に決まった相場はありません。
しかし、計算方法がわかれば失った収入を把握できるので、10歳の小学生と22歳の大学生をモデルケースとして、逸失利益がいくらになるか計算してみます。
なお、両者とも計算手順は変わりませんが、基礎収入の考え方が異なるので注意してください。
幼児や児童の逸失利益は以下の手順で計算します。
具体的な内容は、以下のようになります。
小学校に通う生徒の場合、基礎収入は全労働者の平均賃金をもとにするため、賃金センサス第1表の産業計、企業規模計、男女計・学歴計を参照します。
賃金センサスのデータはe-Stat(政府統計)に掲載されているので、以下の手順でダウンロードしてください。
令和3年の賃金センサスで10歳小学生の基礎収入を計算すると、以下のようになります。
参考:令和3年賃金構造基本統計調査(政府統計:e-Stat)
労働能力喪失率は後遺障害等級と連動しており、事故前の労働能力を100%とした場合、どの程度の割合で低下(喪失)したかを確認します。
【後遺障害等級と労働能力喪失率】
今回は10歳の小学生に第8級の後遺障害が残り、45%の労働能力を失ったものとして逸失利益を計算してみます。
逸失利益は将来的な収入を一括で前渡しすることになるため、ライプニッツ係数を使って利息分(運用で発生する中間利息)を差し引きます。
10歳小学生の場合、18歳から67歳までの57年間に対応するライプニッツ係数から、10歳から18歳までの8年間に対応したライプニッツ係数を差し引いて計算します。
最後に逸失利益の計算式に当てはめてみましょう。
次に22歳大学生のケースを計算しますが、基本的な考え方や手順は同じです。
22歳の大学生であれば卒業後の就労がほぼ確実となるため、労働能力喪失期間は原則として45年(67歳-22歳)になります。
ただし、むちうちの労働能力喪失期間は5~10年程度になるケースが一般的です。
基礎収入は大学卒の男女計(全年齢)の平均賃金を参照するので、具体的な計算手順は以下のようになります。
20歳大学生の場合も、基礎収入の計算方法は幼児や児童と変わりませんが、参照する平均賃金が異なるので注意してください。
平均賃金を確認する場合、賃金センサスの産業計シートから男女計・大学の全年齢を参照し、以下のように計算します。
なお、22歳で大学生になっていない人(浪人生など)でも、大学卒の基礎収入から逸失利益を計算できるケースもあります。
詳しくは、交通事故問題の解決が得意な弁護士に尋ねてみるとよいでしょう。
労働能力喪失率の確認方法は共通しているので、今回は後遺障害第6級を想定し、労働能力67%を喪失したケースで逸失利益を計算してみます。
22歳大学生の場合、労働能力の喪失期間は45年、対応するライプニッツ係数は24.519となるので、逸失利益は以下のようになります。
交通事故の被害によって後遺障害が残った場合、失ってしまう将来的な収入は高額になるため、逸失利益を請求しなければなりません。
被害者が子どもであっても変わりはないので、賃金センサスを参照して正確に逸失利益を計算しておきましょう。
ただし、保険会社が請求どおりに支払ってくれるとは限らないので、注意が必要です。
慰謝料や逸失利益の額は示談交渉次第になるケースが多いため、交渉力が最大のポイントになります。
保険会社の提示額が不十分だったときは、交通事故問題に詳しい弁護士に相談しておきましょう。
弁護士に相談した場合、適正な後遺障害等級に認定される可能性も高くなります。