東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
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自動車保険に加入している人のおよそ7割が「弁護士費用特約」に加入しているというデータがあります。
しかしながら、実際に交通事故に遭い「弁護士費用特約」を利用した人は1%に満たないともいわれています。
利用率が低い原因として「弁護士に頼むことに気が引ける」「そもそも弁護士費用特約がついていること自体知らなかった」「利用の仕方がいまいちよくわからない」「保険料が上がってしまうのでは?!」などが挙げられます。
確かに、人生のうちで個人の方が弁護士に依頼をすることはなかなかありませんので、気が引けてしまうのも無理もありません。
しかしながら、交通事故問題は弁護士の力を借りることで得られるメリットが大変大きい分野でもあります。
特に慰謝料請求の場面では自力で解決しようとする場合に比べて驚くような差が生じます。
少しでも交通事故問題でお悩みの方のご参考になれば幸いです。
「弁護士費用特約」とは、自動車保険やバイク保険、傷害保険などに付帯して加入できる「特約」のことです。
交通事故に遭った際に、弁護士費用を一定の限度額まで保険会社が負担してもらうことができます。
一概にはいえませんが、一般的な保険会社の目安は以下のとおりです。
「弁護士費用特約」は交通事故被害者救済のためのものであり、特に過失割合が10対0などの「もらい事故」などの場合を想定しています。
※被害者に過失割合がない場合は、被害者の加入している保険会社が示談交渉を行うことができないため。
弁護士費用特約の適用範囲は広く、契約者(被保険者)だけではなく契約者の家族も使うことができる大変便利なものです。
同居していれば適用される家族の範囲 | 例 |
---|---|
契約者(被保険者)本人 | 夫 |
契約者(被保険者)の配偶者 | 妻 |
契約者(被保険者)の同居の親族 (6親等内の血族・3親等内の姻族) | 義両親や兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪、従姉妹 |
別居でも適用される家族の範囲 | 例 |
---|---|
契約者(被保険者)の別居の未婚の子 | 遠方に居住している大学生の息子 |
※「別居している」親や兄弟姉妹、甥姪には適用外となります。
子どもであっても婚姻していれば適用外となります。(離婚歴があれば適用外)
家族以外で適用される範囲 | 例 |
---|---|
契約車に搭乗中の者 | 友人・知人 |
契約車の所有者 | 契約車に「所有者」が別にいるケースでは、所有者も補償対象となる |
以下の6つが弁護士費用特約を利用できない主なケースとなります。
この中でも、「被害者の過失が大きい場合について」わかりにくいという声がよく聞かれますので下記で見ていきましょう。
度々ニュースなどでも取り上げられることが多いので、よく見聞きする内容なのではないでしょうか?
弁護士費用特約を利用する場合のメリット・デメリットとはいったいどのようなものなのでしょうか?
しっかりと確認しておきましょう。
弁護士費用特約の加入を懸念されている方のご参考になれば幸いです。
「交通事故のことを思い出したくない」
「加害者の声なんか聞きたくない」
などと思われる方も多く、加害者側との話し合いは思っている以上に骨が折れるものです。
当事者同士の主張が食い違い揉めることも珍しくなく、訴訟へと発展することもあります。
できれば、時間もお金もかかる訴訟をやらずに解決したいと思われる方が多いのではないでしょうか。
訴訟沙汰になることを回避するためにも、弁護士が介入することで穏やかに済ませられることが期待できます。
仮に訴訟に発展したとしても、よほどの大事故ではない限りは補償の範囲内(300万円以内)で弁護士費用をカバーすることができる点も安心です。
慰謝料の計算をする基準には3種類あります。
なぜ“弁護士費用特約の活用”がおすすめされるのかがおわかりいただけるかと思います。
それでは「3つの算出基準」がどのようなものなのか見ていきましょう。
自賠責保険基準 | 必要最低限の補償を目的としており、車両所有者全員に加入が義務付けられている保険。 |
---|---|
任意保険基準 | 保険会社が各社独自に定めている基準。 保険会社ごとに基準が異なり計算基準は非公開。 (任意で加入する保険) |
弁護士基準(裁判基準) | 過去の裁判例に基づき裁判所や弁護士に依頼した時に採用される基準。 ※いわゆる「赤本」(東京三弁護士会の交通事故処理委員会により公表)と呼ばれる本に記載されている基準。 ※弁護士に依頼しなくても自力で主張することはできるが、事実関係や過去の裁判例など専門的かつ正当な根拠を主張立証していく必要があるため一般的には困難。 |
どの基準を用いるかにより、慰謝料受取額に3倍ほどの差が生じてしまいます。
後になって後悔をしないためにもしっかりと知識を備えておきたいものです。
3つの基準を比較して見ていきましょう。
※任意保険基準は加入している保険会社によって異なり、金額等も非公開ですが、平成11年7月以前は統一基準があったためその金額を参考にしていますので実際と異なるケースがあります。
(caseむち打ちで通院したケース)
通院期間 | 自賠責保険 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
3か月 | 25.8万円 | 37.8万円ほど | 53万円 |
6か月 | 51.6万円 | 64.2万円ほど | 89万円 |
8か月 | 68.8万円 | 76.8万円ほど | 103万円 |
※自賠責基準は日額4,300円を元に月間の通院日数を10日間として計算しています。
上記表をご覧いただければ一目瞭然ですが、自賠責保険基準と任意保険基準では金額にあまり差がありません。
一方で、弁護士基準で算出された金額は他の2つの基準に比べてかなりの差が生じていることが明らかです。
自賠責保険基準は日額4,300円を元にして計算されますが、任意保険基準と弁護士基準では算定表のようなものを用いて算出されます。
(任意保険基準)
(単位:万円)
入院 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 | 7か月 | 8か月 | 9か月 | 10か月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | |
1か月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2か月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3か月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.0 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5か月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6か月 | 64.2 | 83.2 | 102.0 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7か月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8か月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9か月 | 82.0 | 99.6 | 116.0 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10か月 | 87.0 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
(弁護士基準 軽傷のケース)
単位:万円)
入院 | 1か月 | 2か月 | 3か月 | 4か月 | 5か月 | 6か月 | 7か月 | 8か月 | 9か月 | 10か月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | |
1か月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 |
2か月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 |
3か月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 |
4か月 | 67 | 955 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 |
5か月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 |
6か月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 |
7か月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 |
8か月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 |
9か月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 |
10か月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 |
※弁護士基準では軽傷のケース(むち打ちなど)と重症のケース(骨折など)で用いる表が異なります。
重症のケースではさらに金額がアップします。
交通事故によるお怪我に後遺症が残ってしまった場合に「後遺障害等級認定」の手続きを任意で行うことができます。
国土交通省が定めている後遺障害等級認定の手続きを行い“認定”されれば「後遺障害慰謝料」を請求することができます。
症状別に第1級〜14級まで詳細に分類されており「等級」ごとに金額が異なります。
この後遺障害慰謝料の場面でも「3つの慰謝料基準」により驚くような差が生じます。
比較してみましょう。
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|---|
1級 | 1,150万円(要介護1,650万円) | 1,600万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円(要介護1,203万円) | 1,300万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,100万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 900万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 750万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 600万円 | 1,670万円 |
7級 | 419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
※任意保険基準は、非公開となっているため一般的な数値を入れています。
たとえば14級を見てみましょう。
およそ3倍の差が生じていることがわかります。
慰謝料は被害者にとって事故後の生活再建の一助となる大切なものです。
受け取る慰謝料額にこれだけの差額が生じてしまうわけですから、営利企業である保険会社としては弁護士に介入されたくないといっても過言ではありません。
稀に、保険会社に弁護士特約は使えないといわれてしまうことがあるかもしれません。
「なぜ使えないのか?」
「保険約款のどこに記載があるのか?」
を確認してみてください。
保険会社が考える“弁護士特約を使わせたくないケース”の一例は以下のとおりです。
「争いがないならそのまま示談すればよい。弁護士を入れなくてもよいのではないか?」
などといわれることがあるでしょう。
しかしながら、たとえ争いがないケースでも煩雑な手続きや各所への対応を一任できます。
怪我の治療が必要であれば治療に専念することができます。
したがって、たとえ争いがなくても弁護士特約を使うことはできますし、使う必要性は十分あるといえるのではないでしょうか。
物損事故の場合でも、1万円でも多く示談金を受け取ることができれば被害者の方にとっては十分有益なことです。
結論からいえば、弁護士費用特約を利用しても特段気になるデメリットはありません。
保険料が年間1,000〜2,000円ほどかかるくらいでしょうか。
弁護士費用特約を利用する際に躊躇してしまう理由として下記の2点が挙げられます。
Q.翌年の保険料は上がるのではないか?
A. 弁護士特約を利用したからといって保険料は上がりません。
Q.保険の等級が下がるのではないか?
A. 弁護士特約のみを利用するのであれば、「ノーカウント事故」として扱われるので心配はいりません。保険会社により異なることがありますのでご心配な方はご加入されている保険会社に確認するか約款をご確認ください。
むしろ、利用しなければ損といえるほど弁護士特約を利用することによるデメリットはありません。
「小さな事故だから使えないのでは?」
「物損だから使えないのでは?」
などと心配される方がいらっしゃいますが、あまり心配なさらずに利用されることをおすすめします。
「弁護士特約がなくても弁護士に相談するべきか否か?」
と問われれば答えはYESです。
なぜなら、たとえ弁護士費用を払ったとしても、得られる示談金がアップすれば被害者の方にとっては有益だからです。
“初回相談料0ゼロ(無料)、着手金を取らずに成功報酬制“
をとっている弁護士事務所も最近は増えてきましたので、ご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか?
すでに保険会社から示談金について提示を受けている場合でしたら以下の点についても妥当性の判断をしてもらうことができます。
事故態様やお怪我の状態など様々な角度について、専門的な見地から見て交渉の余地があれば弁護士に依頼されることもご検討なさってみてはいかがでしょうか。
ここまで見てきたとおり、弁護士が交通事故の問題解決にとても大きな力を発揮できることがおわかりいただけたのではないでしょうか?
慰謝料アップや示談交渉のストレスなどから解放されることを考えるととても大きなメリットといえます。
事故に遭ったご本人が加入していなくても、ご家族が加入していれば適用されることもあります。
「弁護士費用特約」に加入していることを忘れていたり、ご家族が加入していることを知らなかったりするケースもあります。
是非この機会にご確認されてみてはいかがでしょうか。
いざという時のために、大切な家族を守るお守り代わりとして備えておくことをおすすめします。