交通事故の加害者にとって起訴されるか否かは最大の関心ごとです。
一定の資格取得・剥奪や就職に影響を及ぼしかねません。
しかし、加害者に対して処罰感情を抱いている被害者にとっても起訴・不起訴は大変重大な問題です。
厳罰を望むのであれば、被害者側も自ら動き出さなければなりません。
そのためには、加害者の起訴・不起訴についての動向を注視する必要があります。
「加害者が不起訴になったら、被害者宛になにか通知されるのだろうか?」
「いったいどこに問い合わせをするべき?」
このような疑問を抱いている被害者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、加害者が不起訴になったときに被害者宛に通知が為されるか否か、また問い合わせ先などについてみていきたいと思います。
この記事が、少しでもお役に立てば幸いです。
目次
結論からいえば、残念ながら被害者に対して“加害者の不起訴について”の通知は来ません。
そもそも起訴・不起訴を決定するのは「検察官」です。
交通事故事件において、たとえどんなに悪質な加害者であっても、被害者が起訴し刑事裁判を起こすことはできません。
なにか方法はないのでしょうか?
端的にいえば、事件の「管轄検察庁」を調べれば起訴・不起訴についての結果を聞くことができます。
では、いったいどのようにして調べればよいのでしょうか
普段生活をする上では、ほとんどの人には全く縁のない場所である検察庁に問い合わせることが必要であることがわかりました。
あまり、馴染みのない場所であり犯罪を扱うイメージが大きく、ご不安を抱かれるかと思いますがご安心していただいて大丈夫です。
一つ一つ手順を踏んで、加害者の状況を確認していきましょう。
それでは、手順を説明します。
まずは、「交通事故証明書」に書かれている警察署に問い合わせを行い、交通事故証明書に記載されている事故の内容と被害者である旨を伝えます。
そして、事件が検察庁に送致(別名:送検)されたか否かを聞いてください。
もし、この時点で警察署内にまだ留まっており検察に送致されていなければ当然のことながら処分は確定していません。
その際は、検察庁に送致されるときに連絡が欲しい旨を担当警察官にしっかりと伝えておきましょう。
もし、事件が既に送致されていれば、どこの検察庁に送致されたか(管轄検察庁)を確認してください。
また、その際に「検番」といわれる事件を管理するための番号を聞いておきましょう。
後に、検察庁に問い合わせをする際にスムーズです。
次に、管轄検察庁に問い合わせを行います。
検番や加害者の氏名などを伝えて起訴・不起訴の結果を確認しましょう。
この時点で、もし起訴が確定していれば「裁判」が確定しているかどうかも確認してください。
裁判が確定しているということは、刑事処分の結果についても聞くことができます。
これら2点の情報は、供述調書や実況見分調書などを取り寄せる際に必要となる大切な情報となりますので、漏れなく聞きましょう。
また、抜け漏れなくするための方法として知っておいていただきたい制度があります。
管轄検察庁に対して、刑事処分の結果について通知してもらいたい旨の希望を伝えておくことができますので、活用されてみてはいかがでしょうか。
この制度のことを「被害者通知制度」といいます。
加害者の対応が酷く、被害者が憤りを感じることは現実ではよくあることです。
自己保身のために嘘の供述をする、謝意や誠意を全く感じることができない加害者に対して厳罰を望むことは、もはや当然の感情といえるのではないでしょうか。
そのような中で、もし加害者の「不起訴」を知ることとなればなおさらです。
たとえば、死亡事故などで愛する家族をある日突然失ってしまった場合などは、不起訴のままにしておけないのではないでしょうか。
何かしらの方法を考えなくてはなりません。
そのようなときは、「検察審査会」に訴える方法があります。
「検察審査会」とは、被害者が加害者に対して下された「不起訴」の決定に対して不服がある場合に検察審査会に申し立てることができるものです。
検察審査会の審査員は以下のように組織されています。
この11人の人のことを「検察審査員」と呼びます。
検察審査員の仕事は、“検察官が判断した不起訴処分の妥当性を審査するもの”です。
加害者に対する「不起訴決定」に不服がある被害者は「検察審査会」に対して訴えます。
その後、審査会が開かれて“不起訴の妥当性”について判断することとなります。
ここで「起訴相当」と判断されれば、その旨が検察官に通知され、検察官により“再度起訴するか否か”の判断が為されます。
もしこの時点で「再度不起訴処分」の判断が下されれば、被害者は「再度検察審査会」に不服の申し立てを行うことが可能です。
ここでも「再度起訴相当」と判断されると、この後は検察官の関与はなく「裁判所が指定した弁護士」により「強制起訴」することができます。
この指定弁護士は、検察官と同様の任務つまり通常の起訴や公判などを行うことができ、必要に応じて警察や検察に対して捜査を嘱託することが可能となります。
たとえ加害者が起訴されたからといっても必ず「有罪」になるとは限りません。
しかしながら、悪質な加害者を刑事裁判の法廷に引っ張り出すことができます。
言葉にするのは簡単ですが、実際の手続きを被害者本人が自力で行うことは現実的ではありません。
なぜなら、不起訴処分を起訴に転じさせるだけの「合理的な理由や客観的な証拠」を揃えなければならないからです。
検事の判断を覆すだけの理由や証拠を集め適切に準備していかなければならず、一般の方にはかなりの労力を要してしまうでしょう。
また、もし準備ができたとしてもそれらをスムーズかつスピーディに行うことはかなり難しくおすすめできません。
法律のプロである弁護士に依頼して、共に事件解決に向けて歩みを進めることが賢明といえるのではないでしょうか。
ご相談される際は、交通事故に精通した弁護士を選ぶことを忘れないでください。
交通事故に関する刑事事件はもちろんのこと、民事上の損害賠償請求など示談交渉についても抜け漏れなく請求することができ、慰謝料のアップが期待できます。
一般的な刑事事件の被害者になった場合、加害者を相手に刑事罰を与えたいと思われたら、まずは警察に対して「告訴」を行わなければなりません。
一方で、交通事故による刑事事件の場合は、交通事故発生時に警察に「人身事故」で届け出をし、事故状況を報告することが相当します。
稀に、交通事故に遭った際に加害者側から「物損事故で示談しないか」などと威圧的に持ちかけてくることがあります。
ときには、その場で金銭のやり取りを要求され口頭で示談成立をしようとするケースもあります。
しかしながら、このような悪質な要求に応えてはなりません。
なぜなら、物損事故で解決しようとする加害者にとってメリットとなり、被害者にとってはデメリットしかないからです。
人身事故でなければ、治療費や慰謝料など怪我に対する人事情の損害賠償の請求ができません。
物損事故で処理してしまえば、後から人身事故に切り替えることは難しいでしょう。
また、加害者にとっては物損事故で示談することにより慰謝料などの示談金の支払いから免れることができるため経済的な損失がありません。
さらに、刑事罰からも免れることにもなりますので前科がつくこともなく通常どおりの日常を取り戻すことができてしまいます。
交通事故の被害に遭ったら、必ず「人身事故」で届け出をして「事故証明書」を作成してもらう必要があります。
事故証明書は、実況見分調書や供述調書をもとに作成されるものです。
後に、これらの資料が「証拠」となり刑事手続き上で重要な判断材料となります。
故に、交通事故証明書の重要性についても、しっかりとおさえていただきたいポイントです。
交通事故の被害に遭い、加害者に対する厳罰を望むのであれば「示談交渉」の時期は慎重に検討してください。
なぜなら、示談交渉を進めて「合意」に至り示談が成立してしまうと、加害者を起訴することができなくなる恐れがあるからです。
また、刑事事件では、示談が成立してしまうと加害者への処分が軽くなってしまいます。
少なくとも、加害者に厳罰を望むのであれば刑事裁判が終結するまでは示談に合意するべきではありません。
今回みてきたとおり、加害者に対して厳罰を望むのであれば、まずは「刑事告訴」から進めることとなります。
弁護士の適切なアドバイスを受けながら“被害者本人の気持ちに寄り添って”事件を解決することが賢明といえます。
一度、弁護士にご相談だけでもされてみてはいかがでしょうか。
時間はあまりありません。