東京弁護士会所属。新潟県出身。
交通事故の影響で怪我や病気になってしまうと、体調の不安に加えて、経済的な不安も発生します。
慰謝料を請求するためには、法律上の知識や、過去の交通事故被害がどのような慰謝料額で解決されてきたかという判例の知識が必要です。
我々はこういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって、妥当な損害賠償金を勝ち取ることが期待できます。是非一度ご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
目次
弁護士費用特約とは、自動車保険に任意で付けることができる特約で、交通事故の損害賠償について弁護士に依頼したい場合に、必要な弁護士費用を保険会社が負担してくれるものです。
弁護士に法律相談や書類作成を依頼した場合は最大10万円まで、示談交渉や裁判を依頼した場合は最大300万円まで保険会社が補償してくれます。
ほとんどの場合は利用者の自己負担なしで弁護士を利用できるので、加入しておけば万一の時にも安心できるでしょう。
なお、この特約は「弁護士特約」と略して呼ばれることもありますが、正式には「弁護士費用特約」といいます。
自動車保険の契約者が弁護士費用特約を利用すると、保険会社から嫌がられ「このケースでは使えない」「使わなくてもいいのでは」などといわれることもあります。
なぜこ保険会社が弁護士費用特約の利用を嫌がるかというと、安くない弁護士費用を保険会社が負担しなければならないからです。
利用する必要性が高い場合はやむを得ませんが、必要性が乏しいと保険会社が判断するようなケースでは、できる限り利用してほしくないと考えているのが実情なのです。
具体的に、どのような場合に保険会社が弁護士費用特約の利用を嫌がるのかについては、後ほどご紹介します。
弁護士費用特約は、契約者にとっては大きなメリットがあります。
デメリットについてもご紹介しますが、圧倒的にメリットの方が大きいので、契約者としては弁護士費用特約を積極的に活用したいところです。
まずは、弁護士費用特約を使うメリットをご紹介します。
交通事故の損害賠償では通常、加害者側の保険会社が慰謝料などの損害賠償金を算出し、示談案として被害者に提示します。
しかし、この損害賠償金は「任意保険基準」と呼ばれる算定基準で慰謝料などが計算されており、多くの場合は本来の金額よりも低く抑えられています。
弁護士に依頼すれば、本来の賠償額を算出できる「弁護士基準」(裁判基準)と呼ばれる算定基準を適用することが可能になります。
この基準で計算すると、任意保険基準で計算した場合よりも賠償額が大幅に増額されます。
保険会社の提示額よりも倍以上の金額になることも少なくありません。
自己負担で弁護士に依頼すると費用倒れになるおそれもありますが、弁護士費用特約を使えばその心配がありません。
示談交渉で加害者側の保険会社と何度もやりとりをすることは、大きな精神的負担となりますし、時間も要します。
弁護士費用特約を使えば、弁護士が被害者の代理人として示談交渉を代行してくれるため、精神的な負担を軽減することができます。
過失割合や慰謝料の計算、後遺障害の問題など専門的な知識が必要な交渉も弁護士が適切に行ってくれるため、交渉を有利に進めることもできるのです。
示談交渉だけでなく、保険金請求などの面倒な手続きもすべて弁護士が行ってくれるため、被害者は安心して治療に専念することができます。
一方、弁護士費用特約を使うデメリットは特にありません。
特約を使うことで保険の等級が下がり、翌年の保険料が上がってしまうと考えている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
弁護士費用特約を使っても事故としてカウントされることはないので、保険の等級には影響がなく、翌年の保険料が上がることもありません。
唯一、弁護士費用特約にデメリットがあるとしたら、付帯するために保険料がかかることです。
特約保険料は自動車保険によって異なりますが、年間で1,500円~3,000円程度が相場です。
保険会社が利用を嫌がるかどうかとは関係なく、そもそも弁護士費用特約が使えない場合もあります。
以下のようなケースでは弁護士費用特約を使うことはできないので、注意しておきましょう。
弁護士費用特約の約款では通常、「故意または重過失がある場合」は適用できないことが定められています。
被害者にある程度の過失があっても弁護士費用特約は使えますが、事故の発生について被害者の責任が重い場合は、特約を使うことができません。
また、事故における過失割合が重い場合の他にも、以下のような場合には被害者の責任が重いといえるため、弁護士費用特約を使うことはできません。
被害者の責任が重い場合
弁護士費用特約は、交通事故の加害者とのトラブルの解決をサポートするための特約です。
したがって、次のように加害者とのトラブルとは無関係の場合にも特約を使用することはできません。
加害者とのトラブルとは無関係の場合
その他にも、車両保険や人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険など、自分が加入している自動車保険の適用に関するトラブルも加害者とは無関係のため、これらの場合も弁護士費用特約を使うことはできません。
自動車保険に付帯する弁護士費用特約は、自動車事故の損害賠償に関するトラブルの解決をサポートするための特約で、ここでいう「自動車」にバイクや原付は含まれますが、自転車は含まれません。
したがって、自転車同士の事故や自転車と歩行者との事故、自動車が絡まない日常事故の場合は自動車保険の弁護士費用特約を使うことはできません。
保険会社によっては、業務中の事故や事業用車両で事故にあった場合に弁護士費用特約を使えない場合もあります。
こういう場合には労災保険に申請すべきと考えられているためです。
しかし、必ずしも労災に認定されるとも限りませんし、認定されても完全な賠償を受けられるわけではありません。
したがって、業務中の事故や事業用車両での事故で弁護士費用特約を使えない保険会社への加入はお勧めできません。
交通事故の発生日において弁護士費用特約に加入していなければ、その後に加入しても特約を使うことはできません。
ただし、家族が加入している保険に弁護士費用特約がついている場合はそれを使うことが可能な場合もあります。
もし、自分が弁護士費用特約に加入していなかった場合は、家族の保険の内容と約款も確認してみましょう。
上記の場合に該当せず、弁護士費用特約が使えるはずなのに保険会社が嫌がるケースがあります。
ここでは、どのような場合に保険会社が特約の使用を嫌がるのかをご紹介します。
加害者側の任意保険会社が提示してきた示談案について特に争いがなく、被害者との間で一応の合意ができているケースもあります。
このような場合、被害者側の保険会社は弁護士費用の負担を嫌がり、「わざわざ弁護士に相談する必要はないのでは」などということがあります。
しかし、保険会社から見て妥当な示談案であっても、素人である被害者にとって本当に妥当な賠償金額であるかどうかを判断するのは難しいものです。
そんなとき、弁護士に相談して示談案の妥当性を確認することが無意味だとはいえません。
弁護士に依頼して「弁護士基準」で慰謝料などを計算し直すと、賠償額が大幅に増額されることもよくあります。
念のためではあっても、示談案の妥当性を確認するために、弁護士費用特約を使って弁護士に相談することには大きな価値があります。
軽微な物損事故や、人身事故でも軽傷の場合は、弁護士に相談・依頼しても結果として賠償額がそれほど変わらないことが多いものです。
このような場合も、保険会社は弁護士費用の負担を嫌がることが少なくありません。
しかし、被害者にとっては少しでも賠償金が増額されるのであれば価値がありますし、過失割合を正さなければ納得して示談できない場合もあるでしょう。
このような場合に費用倒れのリスクなしで弁護士に依頼できるのが弁護士費用特約のメリットです。
したがって、保険会社が嫌がるからといって特約の使用を遠慮する必要はありません。
実際には弁護士費用特約を使えるのに、一般的に使えないと勘違いしやすいケースもあります。
以下のケースでは、弁護士費用特約を使えないと思っている方も多いですが、実際には使うことができます。
先ほどもご説明しましたが、契約者の故意または重過失によって事故が発生した場合は、ほとんどの保険会社で弁護士費用特約の適用が除外されています。
しかし、大多数の交通事故では、被害者にもある程度の過失はあるものです。
具体的に過失割合が何割までなら使えると明確に決められているわけではありませんが、5割程度であれば弁護士費用特約を使うことに問題はありません。
事故態様が悪質でなければ7割以上の過失があっても特約を使える場合もあります。
契約者の心情としては「自分にも過失がある以上、使えないのでは」と考えてしまうかもしれませんが、あきらめずに特約の使用を保険会社に申し出てみましょう。
先ほどもご説明したように、軽微な物損事故や、人身事故でも軽傷の場合は、弁護士に相談・依頼しても賠償金をそれほど増額できるわけではありません。
そのため、契約者の中には弁護士費用特約は使えないと勘違いしたり、あるいは使っても意味がないと考えたりしてしまう方もいます。
しかし、たとえ少額でも弁護士に依頼することで賠償金を増額できるケースは多くあります。
被害額の大小は弁護士費用特約を使えるかどうかには関係ありません。
少額だからといって、特約の使用を遠慮する必要はありません。
保険会社が弁護士費用特約の使用を嫌がる場合は、上手な言い回しで契約者に特約の使用をあきらめるように仕向けてくるものです。
一般の方は、保険会社の担当者から「使えない」「使いにくい」「このまま示談した方がよい」などといわれると、鵜呑みにして特約は使えないと思ってしまいがちです。
しかし、実は単に保険会社が嫌がっているだけで実際には特約の使用が可能なケースが大半です。
特約を使えるかどうかは約款に記載してありますので、保険会社の担当者のいうことを鵜呑みにしないように注意しましょう。
約款で使用が認められている限り、どのようなケースでも弁護士費用特約を使うことができます。
特に、加害者との言い分が対立していて保険会社の提示する示談金が不当に低い場合は弁護士費用特約を使うべきです。
その他にも、以下のようなケースでは特約を使用する必要性が高いといえます。
軽微な事故でも、多くの場合は弁護士に依頼することで過失割合を正したり、慰謝料などの賠償金を増額させたりすることが可能です。
この場合、自己負担で弁護士に依頼すると費用倒れになってしまう可能性が高いですが、弁護士費用特約を使えば自己負担はゼロになります。
被害者が無過失の場合は、保険会社の示談代行サービスを利用できないため、自分で加害者側の保険会社と示談交渉をする必要があります。
しかし、保険会社の担当者は示談交渉のプロなので、一般の方が対等に交渉するのは難しいものです。
そこで、このような場合は弁護士費用特約を使って、示談交渉を弁護士に依頼すべきといえます。
加害者が無保険の場合は、加害者本人と示談交渉をしなければなりません。
しかし、このような加害者には理屈が通用しないことも多く、話し合いに応じてもらえなければ被害者が泣き寝入りせざるを得ないケースもよくあります。
このような場合は、弁護士費用特約を使って、弁護士から加害者に対して適切に損害賠書を請求すべきです。
弁護士費用特約の使用を保険会社が嫌がるケースは少なくないのが実情です。
契約者としても、弁護士費用を保険会社に負担してもらうことを申し訳なく感じてしまい、特約の使用を躊躇している方が多いかもしれません。
しかし、弁護士費用特約を付けているのであれば特約保険料を支払っているのですから、使用を遠慮する必要はありません。
弁護士に相談・依頼することで賠償金が増額されるケースは多いので、まずは気軽に特約を使って弁護士に相談してみることが大切です。