東京弁護士会所属。
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債務超過などによって会社の経営が行き詰まった場合は、企業を再生するための方法を模索することになりますが、方法の1つとして民事再生という手続きがあります。
民事再生とは、債権者の同意を得ながら「今後の再建計画」を立てて、会社の立て直しを目指す手続きのことです。
企業経営を再建するための手立てとして、民事再生の概要やメリットなどをご紹介します。
民事再生とは、民事再生法という法律に基づいて裁判所によって実施される、企業の経営再建のための手続きです。
資金繰りの悪化や債務超過などによって経済的に困難な状況となった企業について、企業の現在の経営者の主導の下で、企業に対する債権者などの利害関係者の同意の下で再生計画を策定します。
その後、まとめられた再生計画を実施することで、債権者などの利害関係を適切に調整しながら企業の事業の再建を図ろうとするものです。
民事再生手続きの特徴として、手続を利用することができる債務者の範囲について制限がないことが挙げられます。
株式会社をはじめとする法人だけでなく、個人も利用することができます。
また、民事再生は企業の規模としては主として中小企業の再生を想定していますが、上場企業などの大企業も制度を利用することができます。
実際に、大手の百貨店や電気通信事業者などが民事再生手続きを利用した例もあります。
民事再生法が制定される以前に運用されていた和議法においては、手続きを開始するために破産原因が存在することが要件とされていましたが、民事再生法ではより早い段階で手続を開始できるようになっており、再生の円滑化が図られています。
民事再生では企業の再建のための再生計画を策定することになりますが、再生計画にはいくつかの型が存在します。
事業の収益から債権を弁済し、企業が自力で再建しようとする自力再建型、他企業などのスポンサーから資金の援助を受けながら再建を図るスポンサー型などです。
型の1つである清算型は、営業譲渡などを実施することで営業の全部または一部を新会社に移管し、旧会社の清算を行うという方法です。
民事再生を利用する場合、手続きを開始して裁判所の許可を得ることで営業譲渡が可能になります。
民事再生を申し立てると銀行などの金融機関の融資を受けることが非常に困難になることから、手続き中の運転資金を投入してくれるスポンサーをあらかじめつけておいて信用を高めるプレパッケージ型もあります。
ここからは民事再生のメリットを紹介します。
民事再生における最大のメリットは、事業を継続させられることです。
会社の経営状況が悪くなると「破産」という選択肢も浮かびますが、破産は事業どころか法人格が消滅します。
一度事業を消滅させてしまうと、同じような事業を立ち上げて軌道に乗せるまで時間や手間もかかります。
同じ事業に挑戦した場合でも、以前にように成功するかはわかりません。
ビジネスは周囲の環境によって大きく左右されるものなので、今後も事業を続けたいのであれば、民事再生を選んだ方がいいでしょう。
自社の事業を手放すことなく、継続を前提に立て直しを行えるのは、他の手段にはないメリットです。
民事再生を適用して経営再建を行うメリットは、従来の経営陣が引き続き事業の経営を続けながら債務の一部免除や弁済猶予の恩恵を受けられることです。
企業の現経営者は民事再生を利用しても原則として退陣する必要はありません。
再生手続の中には経営から退かなければならないものも少なくないところ、経営を続けながら再建を図れることは大きなメリットになっています。
また、企業の手元に残っている資金を確保できるようになっていることもメリットとして挙げられます。
具体的には、民事再生の申立てを行ったことを債権者である各金融機関に通知することで、通知後に金融機関に入金された債務者の預金は金融機関による相殺が認められなくなります。
それによって、債務者である企業は手元に残った財産を資金繰り等に有効利用できるようになります。
民事再生の申立てを実施すると、再建に向けた手続きとはいえ法的な債務整理を開始したことが公になります。
それによって社会的な信用が失墜する可能性があり、信用不安などのリスクが生じるおそれがあります。
次に、債権者が優先的な弁済を確保するための法的制度として抵当権や質権などの担保権がありますが、民事再生の手続きにおいては担保権は再生手続外で権利行使することが可能となっている点に注意する必要があります。
担保権を有する担保権社は、再生手続の内容に関わらず担保権を実行することが可能なので、事業を継続するための資産に担保権が設定されている場合は、再生手続とは別に権利者との間で別除協定を締結する必要がでてきます。
また、再生計画によって債務が免除がされると、免除された額について課税が発生することになりますが、課税されることを前提に事前にきちんと対策をしておく必要があります。
民事再生は、下記のような流れになります。
民事再生手続きは、半年ほどの期間が必要になります。
主な流れとしては、裁判所に申立を行い、財産・債権の調査・再生計画の認可を受けて、実際に計画を遂行していきます。
ポイントは裁判所への申立・債権者集会での計画案決議になります。
民事再生は手続きの条件があり、条件をクリアしないと、そもそも申立を受けてくれません。
また債権者集会で計画案を見せるのですが、過半数以上が反対すれば、手続きがストップします。
この2つのポイントをクリアすることで、スムーズな民事再生手続きを実現します。
ここからは、民事再生を成功させるためのポイントを紹介します。
では詳しくみていきましょう。
民事再生を進めるには、債権者の同意が必要になります。
もし債権者の過半数以上が反対すれば、そもそも民事再生手続きが進みません。
そのため「どうすれば債権者の同意が得られるか?」を最優先で考えてください。
具体的には、債権者に対してのメリットを提示しましょう。
例えば会社を破産させるよりも、民事再生した方が債権者への配当が増やせるといったアピールが有効です。
ただし現状とかけ離れていたり、あまりにも達成不可能なプランだと、同意を得られません。
あくまでも「達成可能は範囲で、債権者へのメリットが大きい計画を立てる」ことを意識しましょう。
民事再生は、手続きに半年程度かかります。
また民事再生手続が始まると、銀行からの融資は難しくなります。
つまり民事再生の手続き期間である半年を、銀行からの融資なしで乗り越えなければいけません。
資金がある場合は大丈夫ですが、半年間の運転資金がない場合は、スポンサーを探しておきましょう。
「民事再生中に会社が破産した」という事態にならないように、運転資金には注意してくだい。
民事再生手続が無事に終わったとしても、その後の会社経営で失敗するかもしれません。
民事再生が必要になったしまった原因を考えて、会社の経営・事業そのものを改善しましょう。
経費や無駄な支出をなくして、利益が出やすい体質にしたり、不要な事業をストップさせたりすることも大切です。
民事再生を経て、無事に会社が立て直せるように、抜本的な改革が必要です。
民事再生を成功させるには、1日でも早く弁護士へ相談するのがおすすめです。
「民事再生した方がいいのかな?」とズルズル悩んでしまうと、どんどん会社の経営状態が悪くなっていきます。
民事再生自体に費用や期間もかかるため、少しでも余裕のあるうちに手続きを始めた方がいいでしょう。
ただ法的な専門知識がない状態で判断するのは難しいと思うので、プロである弁護士への相談が必須です。
無料相談を受け付けている弁護士事務所も多いため、まずは気軽に相談してみましょう。
民事再生法が施行されたのは2000年で、経済的に苦境にある債務者の事業または経済生活を再生することを目的に制定された法律です。
日本における倒産法の1つとして位置づけられています。
1922年から同様の目的で施行されてきた和議法に代わるものとして、同法の特徴である簡素な手続きの仕組みを維持しつつ、再生計画を可決するための要件が緩和されているのが特徴です。
また、履行が確実になされるように手続き面を強化するなど、使い勝手の向上も図られています。
民事再生と同じような再生手続きに「会社更生」があります。
どちらも混同しがちですが、実際には下記のような違いがあります。
項目 | 民事再生 | 会社更生 |
---|---|---|
対象 | 法人・個人ともに可能 | 株式会社のみ |
経営者の継続 | 経営者がそのまま経営できる | 基本的に全員退任 |
管財人の選任 | 基本的に必要なし(例外的に選任されるケースあり) | 管財人が選任され、経営権・処分権を持つ |
権利変更の対象 | 手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で無担保かつ優先権のないもの(再生債権) | ・手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(更生債権) ・担保権付の請求権(更生担保権) ・株主の権利 |
担保権の扱い | 担保権は再生手続きが行われていても、実行できる。ただし、競売手続の中止命令および担保権消滅制度がある。再生計画認可後は担保権が実行可。 | 担保権は会社更正手続きが開始されると実行できない。更正計画認可後も実行できない。 |
株主の扱い | 原則、株主の権利は維持される。 | 100%減資が前提。既存の株主は権利を失う。 |
租税の扱い | 再生手続に関係なく、随時返済しなければならない。 | 再生手続に関係なく、随時返済しなければならない。 |
計画の成立 | ・再生債権者の決議による再生計画案の可決 ・裁判所の認可 | ・更生債権者、更生担保債権者、株主による構成計画案の可決 ・裁判所の認可 |
大きな違いは、手続きできる会社の範囲になります。
民事再生は法人・個人問わず、誰でも利用できます。
しかし会社更生は株式会社のみが対象になっているため、それ以外の企業・個人は利用できません。
なぜなら会社更生は、手続きに膨大な費用・時間がかかるので、規模の大きな会社に向いている手続きだからです。
民事再生以外にも、企業再生の方法はあります。
民事再生以外の企業再生方法を知っておくことで、適切な方法が選べます。
ここからは民事再生ではない、企業再生方法を紹介します。
私的整理とは、裁判所が関与せずに、債権者と交渉して企業再生を目指す手続きです。
民事再生のように、法的なルールが細かく決まってないため、自由に手続きできるという特徴があります。
私的整理のメリットは、自分で対象の債務を選択できることです。
民事再生などの法的整理の場合は、すべての債務が対象になります。
そのため、自分が債務を選択して、交渉ができません。
しかし私的整理の場合は、「この債務だけ優先して返済したい」「この債務については話し合って利息を減らしてほしい」といった細かい交渉ができます。
デメリットは、下記の2つになります。
私的整理は債権者が全員同意しなければ、手続きが進みません。
法的整理の場合は、債権者の一定数が賛成すれば手続きを進められます。
それに比べて私的整理は「どうやって債権者の同意を得ていくのか?」が非常に重要な手続きです。
また私的整理は裁判所の介入がありませんが、その分手続き自体が不透明になるかもしれません。
特定の債権者に有利な条件になっていないか?など、弁護士にチェックしてもらいながら進めましょう。
特定調停とは、裁判所が仲介して債権者と債務者の話し合いを進める方法です。
個人の債務整理・離婚などで調停が使われることもありますが、企業でも特定調停スキームというものが利用できます。
特定調停スキームは規模の小さい企業を対象としており、年収20億円以上・負債額10億円以上の企業は利用できません。
特定調停のメリットは、下記の3つになります。
特定調停スキームは、債権者との直接交渉になります。
交渉相手が金融機関だと、金融機関は守秘義務があるため、特定調停をしていることを公表できません。
そのため民事再生のように、「この会社は再建手続きをしている」という事実が広まりにくいです。
そのため変な風評被害を受けにくく、会社の信用を守ることができます。
次に特定調停は、債権者との交渉だけで終わるため、手続き期間が短くなります。
金融機関との特定調停の場合は、事前に合意を得ているケースも多く、調停自体は数回で終わります。
会社によって異なりますが、3~4ヶ月が目安だと言われてます。
個人の特定調停などは、自分だけでも手続きできますが、法人の特定調停スキームの場合は弁護士への依頼が必須です。
また特定調停スキームの手続きをできるのは、国から認定を受けた弁護士だけです。
経営の継続が困難になっている企業が再生を図るための方法として、裁判所に申し立てて手続きを行う民事再生があります。
民事再生法という法律に基づいて実施されるもので、債権者の利害を調整しながら再生計画の策定と実施を行うものです。
民事再生によって経営再建を図ることの大きなメリットとして、引き続き経営を続けながら債務の一部免除や弁済猶予を受けられることが挙げられます。