東京弁護士会所属。
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しかし、早期的に適切な手段で破産を行えば、多くの場合、少ないダメージで済みます。
経営が悪化している状況の中で、交渉ごとを本人でまとめようとすることは非常に大変です。
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一日でもはやく立ち直るためにも、お気軽に弁護士にご相談ください。
Contents
会社が倒産状態になった場合の手続きの一つとして、事業再生があります。
事業再生とは、会社の経営が悪化した場合に、立て直す行為です。
残す価値のある事業があり、資金繰りも回復可能な場合にとることができる方法です。
可能な限りの自己再生措置を講じますが、金融機関からの負債がある場合は、交渉して負担を軽減してもらうこともできます。
事業再生のために金融機関に交渉するコツについて、解説します。
会社は、債務の弁済が困難になった場合、営業の継続ができなくなり倒産に至ります。
事業再生は、会社が倒産状態になってしまった際の対処法の一つです。
倒産に陥った際の処理は、大きく2種類に分かれます。
一つは、会社の資産を処分して債権者に配分し、会社を消滅させる精算手続きです。
もう一つが事業再生で、清算するのではなく、債務の一部免除や弁済期の繰り延べなどを行いながら、収益力や競争力がある事業を再生する手続きです。
精算手続きをすると会社が消えてなくなってしまうのとは異なり、事業再生は、事業価値があり再建の見込みがある場合に、再建計画を立てた上で事業の再生を行うものです。
会社の資産すべてを処分してしまえば、まだ発展の可能性や将来性のある事業の価値まで失ってしまうことになります。
このため、再建の見込みや将来的な収益性が見込まれる事業の場合には、負債の削減や返済のリスケジュールなど債務整理について対策を施しながら、収益力や競争力のある事業へ再生する努力を行います。
事業再生によって、長年築き上げてきた事業や会社の名前を残すことが可能です。
また、会社が再生すれば、雇用を維持することも可能になります。
熟練社員や育て上げてきた部下を失わずに済むことになります。
債権者にとっても、現状の資産を処分して配分する「清算」よりも、多くの金額の回収が見込めるというメリットがあります。
事業再生の道を選ぶためには、再生に値する事業があること、また、負債の圧縮や繰り延べができれば資金繰りが可能となることが必須条件です。
資金繰りができるようになるためには、リストラによる営業キャッシュフローの黒字化、資金力や信用のある会社や個人にスポンサーになってもらう方法があり、事業再生では少なくとも片方は必要な条件となります。
黒字化が見通すことのできない事業や、スポンサーがつかない事業の場合、事業再生を行うことはできません。
事業再生は、会社の再建を目指す手続きを意味します。
事業再生の具体的な方法は、下記の3種類あります。
詳しくみていきましょう。
会社更生とは、会社更生法に基づいて進める再建型の手続きになります。
多額の費用や時間がかかることから、株式会社しか利用できません。
裁判所が介入して「更生管財人」を選出し、管財人が手続きを進めます。
会社更生の手続きが始まると、債権者が担保権を実行できなくなるため「担保にしている不動産を守りたい」という場合には、会社更生がおすすめです。
また会社更生を利用すると、経営者は退任しなければいけません。
民事再生は、民事再生法に基づいて進める再建型の手続きです。
会社更生法と内容は同じですが、民事再生法は株式会社でなくとも利用できます。
具体的には、下記のような違いがあります。
項目 | 民事再生 | 会社更生 |
---|---|---|
対象 | 法人・個人ともに可能 | 株式会社のみ |
経営者の継続 | 経営者がそのまま経営できる | 基本的に全員退任 |
管財人の選任 | 基本的に必要なし(例外的に選任されるケースあり) | 管財人が選任され、経営権・処分権を持つ |
権利変更の対象 | 手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権で無担保かつ優先権のないもの(再生債権) | ・手続き開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(更生債権) ・担保権付の請求権(更生担保権) ・株主の権利 |
担保権の扱い | 担保権は再生手続きが行われていても、実行できる。ただし、競売手続の中止命令および担保権消滅制度がある。再生計画認可後は担保権が実行可。 | 担保権は会社更正手続きが開始されると実行できない。更正計画認可後も実行できない。 |
株主の扱い | 原則、株主の権利は維持される。 | 100%減資が前提。既存の株主は権利を失う。 |
租税の扱い | 再生手続に関係なく、随時返済しなければならない。 | 再生手続に関係なく、随時返済しなければならない。 |
計画の成立 | ・再生債権者の決議による再生計画案の可決 ・裁判所の認可 | ・更生債権者、更生担保債権者、株主による構成計画案の可決 ・裁判所の認可 |
民事再生は法人だけでなく個人も利用できるため、会社更生よりも間口の広い手続きになっています。
私的整理とは、裁判所を介入させずに債権者との話し合いで再建手続きを進めます。
今回紹介している金融機関との交渉も「私的整理」の中に入ります。
会社更生・民事再生は、金融機関だけでなく、すべての債権者が対象になります。
そのため手続きが始まると「あの会社は再建手続きをしている」という事実が広まります。
しかし私的整理だと、金融機関との交渉のみで解決できるため、手続きの事実が広まることはありません。
金融機関も守秘義務があるので、安心して手続きに取り組めます。
事業再生の方法を検討するときは、まず私的整理を行い、難しければ法的整理である会社更生・民事再生に進みます。
企業再生は、会社更生・民事再生・私的整理の3種類あります。
この中から、自分の会社に適切な方法を選ぶのは難しいかもしれません。
手続きの特徴・自社事業の状況など、いろんなことを考慮して決める必要があります。
「自分が適切な方法を選べるかどうか不安だ」という人は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士なら法的な専門知識があるため、会社の状況に応じて適切な方法を選択できます。
弁護士事務所では初回の相談を無料で受け付けているため、誰でも気軽に相談できるのも嬉しいポイントです。
自分だけで悩まず、弁護士に相談してアドバイスをもらうのが事業再生のコツになります。
ここからは事業再生の失敗を避けるための方法・ポイントを紹介します。
事業再生の失敗を避けるには、経営者の覚悟が重要になります。
なぜなら事業再生は手続きに時間・費用もかかり、債権者からの同意を得なければ、手続きが進められません。
そのため債権者との交渉や同意を得るための説得も必要になります。
事業再生をしているときも、同時に会社の経営をしなければいけないため、非常にハードです。
経営者自身が「この会社を立て直すんだ!」という覚悟をしておかなければ、事業再生は失敗するでしょう。
事業再生は、会社を立て直す行為です。
事業再生手続きが無事に終わったとしても、そのあとも会社の経営は続いていきます。
事業再生が終わったら、事業を黒字化できるという見込みがないといけません。
会社の収支状況を確認して「どうすれば黒字化できるのか?」を明確に考えておきましょう。
赤字になっている部署をリストラしたり、人件費の削減など、見直すべき項目はたくさんあります。
事業再生を行う前に「そもそも事業は再生できるのかどうか?」も確認しておきましょう。
事業を再生するうえで、重要な資産や人材が不足している場合は、そもそも再生自体ができないかもしれません。
周囲の環境が変わることで、事業を軌道にのせられなくなっているケースもあります。
また事業を再生するときに無駄なコストの削減も重要ですが、「これ以上コストの削減ができない」という状況になっているかもしれません。
自社の事業だと思い入れもあるかもしれませんが、冷静に「再生できるのかどうか?」と考える必要があります。
事業再生では、債権者の同意が必要になります。
手続きを進めていくうえで、債権者の同意が基準以下だと、手続きが止まります。
そのためどうすれば債権者から同意を得られるのか?を考えて、交渉・説得しなければいけません。
事業再生を選ぶためには、再生に値する事業があること、また、負債の圧縮や繰り延べができれば資金繰りが可能となることが必須条件です。
借入先の金融機関に交渉する際のコツについて確認しましょう。
事業再生は、資金がなくなってしまう前に行うことが不可欠であり、迅速な判断と対応が必要です。
まず、財務状況を把握する必要があります。
資金や借入金などの実態を把握しておきます。
会社が倒産状態になると、だれしも気持ちが焦りますが、事業を再生するためには、まず実態の把握が不可欠です。
財務状況や資金繰りの見通し、金融機関ごとの借入金残高、担保の状況などを確認し、見直すべきものは見直します。
倒産状態に陥った原因を突き止め、対応策を検討します。
必要に応じて税理士など専門家に相談することも大切です。
つぎに、財務諸表など事実を示す資料をもとに、客観的な視点で、債務の免除がなくても再生が可能か判断します。
金融機関からの借入金の返済期間や金額を見直す「リスケジュール」があれば資金繰りの改善が可能なら、金融機関に対する負債の削減やリスケジュールについて交渉します。
リスケジュールでは対応できず、債務免除が必要な場合でも再生を考えるのであれば、債権の譲渡や株式化など免除についての方針を決めます。
交渉は、資金繰りにまったく目途が付かなくなってからでは遅すぎます。
必要と判断したら、少しでも早めに交渉を始めます。
また、交渉を開始したら、金融機関への返済を停止します。
返済ができているようでは、金融機関も真剣に受け取らない恐れがあるからです。
負債の削減や返済の猶予について金融機関と交渉し、負担を軽減することが可能です。
ただし、会社側としては、不採算部門を整理して事業の採算性を回復させる努力が必要になります。
金融機関としては、破産状態に追い込まれ、負債の削減や返済のリスケジュールを申し込んだ会社について、資金繰りが悪化した要注意先に分類することになります。
したがって、新たに追加融資を受けることは困難になります。
金融機関にも経営状況に余裕はありません。
簡単に負債の削減や返済のリスケジュールに応じることは期待できません。
しかしながら、金融機関は実際問題として、大企業からの数百億円もの巨額な債務の削減や返済のリスケジュール要請に応じていることが実情です。
これは、会社が裁判所へ破産を申し立ててしまえば、金融機関はその手続の範囲でしか、回収することができなくなるためです。
金融機関としては、破産手続きで回収できる額よりも、実現性のある返済プランを立てることができる事業再生であれば、破産よりも多くの返済を受けることができる見込みが立つことになります。
つまり、実現性のある返済プランを立てることができる事業再生なら、負債の削減や返済のリスケジュールに応じてもらうことができる可能性が、期待できることになります。
より多くの回収が見込めるのなら、金融機関が要請に応じないまま破産を待つことは考えにくいと言えます。
事業を再生したいと考えるのであれば、より実現性のある再生後の事業計画の策定やスポンサー探しに注力して、金融機関に説明できるようにすることが重要です。
負債の削減や返済のリスケジュールを交渉する際は、交渉相手となる金融機関の口座残高をゼロにします。
また、販売先からの売掛金の振込先が、交渉相手となる金融機関の場合は、別の金融機関を振込先に指定し直し、口座の残高がゼロになる状態にします。
交渉相手の口座に残金があれば、金融機関から負債との相殺や融資の貸し剥がしを受ける危険があり、それを避けるために行っておきます。
相殺では、負債を帳消しにするために、残高から負債分が回収されてしまいます。
貸し剥がしは、金融機関が融資を返済期限前に回収することで、一度でも返済が滞ることになれば、強制的に回収されてしまいます。
融資を受ける際に、不動産を担保にすることもよくあります。
このような場合、金融機関は担保となっている不動産を競売にかけるなどの圧力をかけてくることがあります。
競売手続きは時間と費用がかかり、手続きも簡単ではありません。
このため、金融機関としても積極的に進めたいと考えている訳ではありません。
事業再生の計画を練り上げ、金融機関との交渉を成立させることに注力することが得策です。
交渉の余地は十分にあります。
債権の内容を変えずに債権を移転する債権譲渡は、債権の買収や債権回収の方法として、一般的に用いられる方法です。
金融機関は、債権譲渡によって、貸し付けを放棄する不良債権処理を選択することが可能となっています。
2001年の債権管理回収業に関する特別措置法の成立によって、不良債権処理をスムーズに進めることができる仕組みが設けられています。
この特別措置法により、サービサーと呼ばれる債権回収会社の設立が認められています。
金融機関は、債権をサービサーへ売却することによって、不良債権処理が可能となっています。
この法律が成立する以前は、貸付を放棄した場合には金融機関が株主から訴訟を提起される恐れや、負債を免除した場合には金融機関が贈与として課税される恐れがあり、貸付を放棄する不良債権処理は普及していませんでした。
金融機関が持つ5,000万円の債権を、サービサーに債権の1割に当たる500万円で譲渡するケースを見てみましょう。
金融機関は、4,500万円を売却損として計上し、不良債権を処理することができます。
サービサーは、譲受額の500万円以上の回収ができれば、利益となります。
したがって、負債のある会社が、債権の1割以上の額を支払う場合は、サービサーに利益が生じることになります。
金融機関からサービサーへの債権譲渡は、負債のある会社からすれば、負債額が大幅に減ることと同じ効果を持っていることになります。
なお、サービサーへの支払額についても、交渉の対象となります。
金融機関がサービサーへ売却する債権の譲渡額は、債権の対象となる会社の経営状況を基に、両者で決定します。
会社からの資金回収の可能性が低ければ、債権の価値も下がることになります。
売却額は、負債のある会社側が知ることはできませんが、金融機関への支払いを停止している場合や、返済のリスケジュールをしている場合など、回収の可能性が低いと判断される会社の債権は、通常、サービサーからの請求額も低くなります。
債権譲渡以外にも、債務の株式化や劣後ローンへの借り換えによって、負債を軽減する方法があります。
いずれにしても、再生可能な事業計画を練り、債権の見通しを立てることが最優先となります。
この方法は、デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap 略して、DES))と呼ばれています。
債務者である会社は、借入金を返済する代わりに、債権者である金融機関に株式を発行する方法です。
DESが適用されることによって、負債は資本に移行するため、借入の返済が不要となるとともに、自己資本率が高まることから、会社の財務内容が向上することになります。
金融機関にとっても、多額の貸倒引当金を計上する必要がなくなるため、負担が減ることにつながります。
また、負債を株式に替えた場合でも、金融機関は事業の再生後に融資を回収することができれば、DESに応じるメリットがあります。
金融機関は会社の経営権を持つことになりますが、発行する株式を無議決権株式にすれば、株主としての経営参加を回避することも可能です。
この方法は、デット・デット・スワップ(Debt Debt Swap 略して、DDS)と呼ばれています。
現在の債務よりも、支払順位が劣る劣後ローンへ借り換えることで、短期的な負担を軽減することが可能です。
DDSの対象は、中小企業基本法に定める中小企業です。
借り換えには、金融機関など債権者の同意が必要となります。
金融機関は、企業が債務超過に至った経緯を調査し、再生が可能と判断すれば、この仕組みを利用して会社を支援します。
事業の再生計画によって黒字が確保され、再生への見通しが認められる会社が適用を受けることができます。
金融機関から見れば、将来的な利益が期待できる事業なら、将来的に回収できることになります。
DDSが適用されることになれば、元本の返済を長期化することになるため、リスケジュール以上の効果が期待できます。
また、金融機関からの新規融資が可能となるメリットもあります。
ここからは、事業再生の流れを説明します。
具体的には、下記のように進みます。
まずは、会社の財務状況・負債金額などの現状把握をします。
事業再生が必要な状態に陥った原因・問題点を知ることで、改善に繋げます。
会社の資金・銀行から借入など、細かく調査して再生方法を考えます。
会社の現状・問題点が分かれば、適した再生方法を決めます。
事業再生は、法的整理・私的整理など様々な方法があるので、そこから自分の会社に適した方法を選ぶのが大切です。
しかし「自分だけでは、最適な再生方法がわからない」という人もいるでしょう。
少しでも不安な人は、専門家である弁護士に依頼して、アドバイスをもらうのが大切です。
事業再生の実績がある弁護士であれば、会社の状況を見て、最適なアドバイスをくれるでしょう。
事業再生の方法が決まったら、次は再生後の計画を考えます。
再生後3年程度の財務計画・事業計画を具体的に記載します。
また事業計画書は、金融機関・スポンサー交渉の資料として活用します。
そのため、しっかりと事業計画書を作り込むことが重要です。
事業再生計画書を作成するときには、実現可能で具体的な数値を記入しましょう。
希望的観測だけで、実現の難しい数値を記入してしまうと、資金確保の時点で困るかもしれません。
企業再生では、資金確保が重要なポイントになります。
いくら再生計画を立てたとしても、新たな資金がなければ、再生実現も難しいでしょう。
また再生手続きを行っているときは、資金を確保するのが難しくなります。
なぜなら再生の事実を知っている金融機関からは、新規の融資を受けにくいからです。
自分で資金提供してくれるスポンサー企業を探すといった努力が必要になります。
最後は、再生手続きの準備・実行になります。
選んだ手続きによって準備の内容は異なりますが、法的整理の場合は、裁判所に提出するような細かい準備物が必要になります。
私的整理の場合は、裁判所への申立が必要ありません。
債権者との話し合いになるため、交渉の場をセッティングしたり、手続き終了に向けて話を進めたりします。
手続きについては自分でやるよりも、専門家である弁護士に依頼するのがいいでしょう。
事業再生のために金融機関へ交渉するコツについて紹介しましたが、会社側の努力が必要不可欠です。
債務の負担を軽減できたとしても、その後の事業再建を果たすには、会社側としても身を切る努力が求められることになります。