

東京弁護士会所属。
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しかし、早期的に適切な手段で破産を行えば、多くの場合、少ないダメージで済みます。
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社会保険料には原則2年の消滅時効がありますが、督促状や納入告知によって時効が更新されるため、実務上は時効の成立が極めて困難です。
時効だけでなく、滞納による延滞金の加算や、会社の口座・売掛金への差し押さえ、取引先からの信用低下などのリスクにも注意が必要です。
裁判所を通さず財産を差し押さえられる点も、通常の借金とは異なります。
支払いが難しい場合は、まず分納や猶予について年金事務所へ、解決が難しければ弁護士へ相談してください。
本記事では、社会保険料を滞納した場合の影響について詳しく解説します。
Contents
社会保険料の徴収権は、原則として納期限の翌日から2年で時効にかかります。
ただし、年金事務所から督促状や納入告知が届くたびに時効が更新されるため、実務上は時効の成立が非常に難しくなっています。
逃げ切りを狙って放置するのは危険です。
健康保険料・厚生年金保険料の徴収権は、原則として2年を経過した時点で時効によって消滅します(健康保険法92条1項[注1]、厚生年金保険法102条1項[注2])。
同様に労働保険料の消滅時効も、労働保険徴収法41条[注3]により2年です。
毎月発生する保険料の性質上、短い期間で速やかな決済と管理を促す設計になっていますが、短い期間だからこそ滞納者に有利にはなりません。
年金事務所や労働局は期限管理を徹底しており、時効が完成する前に督促を行うのが通例です。
年金事務所から督促状や納入告知があると、社会保険料の時効は更新されます(健康保険法92条2項[注1]、厚生年金保険法102条2項[注2]、労働保険徴収法41条2項[注3]等)。
時効が更新されると、時効期間はリセットされ、再び最初から数え直しです。
民間の借金であれば裁判を通じて時効が更新されますが、社会保険料は行政庁が督促状を発するだけで、自動的に時効が更新される点に大きな違いがあります。
納期限から2年以上が経過していても、督促状や納入告知が届いていれば、時効はまだ成立していない可能性があります。
複数年にわたって社会保険料を滞納・未納にしていても、督促状や納入告知が発せられるたびにリセットされるため、時効の成立は、実務上ほとんど期待できません。
年金事務所や労働局は、時効の完成前に督促状を機械的かつ定期的に発する運用を徹底しています。
事務処理ミスなどの極めて例外的な場合を除き、何年も督促がなかったからといって、滞納が時効で消えるとは限りません。
時間の経過によって、社会保険料の支払い義務が当然になくなるわけではなく、放置している間も延滞金は日々加算され続けます。
滞納総額は雪だるま式に膨らんでいくため注意が必要です。
社会保険料の延滞金にも、原則として2年の消滅時効が適用されます(健康保険法87条[注1]、厚生年金保険法87条[注2])。
ただし、労働保険料の延滞金については、労働保険徴収法28条[注3]等により一部異なる規定があります。
延滞金は保険料本体の主債務に従属する性質を持つため、督促状によって本体の時効が更新されれば、延滞金の時効も自動的に連動して更新されます。
延滞金だけ先に時効で消えないため、時効の成立を期待して滞納を放置するのは危険です。
督促状を受け取るたびに、延滞金の負担も改めて増え続けます。
徴収漏れや過少申告があった場合も、原則2年の時効が問題になります。
時効にかかっていない不足分や未加入分については、さかのぼって請求される可能性があります。
年金事務所の調査や従業員からの通報がきっかけで発覚するケースも少なくありません。
徴収漏れや過少申告があった場合、本来納める保険料との差額を追加で請求される可能性があります。
未加入が発覚した場合は、原則として過去2年分の保険料をさかのぼって請求される可能性がありますが、必ず2年分になるとは限りません。
実際の請求範囲は、通知の内容や個別の事情によって異なります。
従業員負担分についても、事業主が一旦全額を立て替えて納付する義務があります。
対象の従業員がすでに退職し、連絡が取れない場合は、本人分を回収できないまま会社の負担として残るでしょう。
差額請求や遡及請求は、想定外の資金繰り悪化につながります。
年金事務所から請求を受けたら、まず対象期間、対象となる従業員、標準報酬月額、加入時期を一つずつ確認します。
特にアルバイトなど短時間労働者は、週の労働時間が正社員の4分の3未満であれば加入対象外となる場合があります。
対象外の従業員が誤って合算されていないか、賃金台帳やタイムカードを照らし合わせて確認する必要があります。
通知内容や算定根拠をもとに、請求額や請求範囲が妥当かどうかを慎重に判断してください。
確認の結果、一括での納付が難しい場合は、放置せず、早めに年金事務所へ分納や猶予を相談してください。

差し押さえは、送付される督促状の指定期限までに完納しない場合に進む可能性があります。
滞納から差し押さえに至るまでの期間は一律ではなく、滞納額や財産状況、年金事務所への対応状況によって大きく異なります。
督促状は、健康保険法86条[注1]、厚生年金保険法86条[注2]、労働保険徴収法27条[注3]等の規定に基づき、原則として納期限からおよそ1週間程度で送付されます。
督促状に添付された納付書には、発行日からおよそ10日後の非常にタイトな期限が指定されています。
指定された期限を過ぎると次の財産調査の段階に進む可能性が高まるでしょう。
督促状の送付後、電話や訪問による指導が入る場合もありますが、単なるアドバイスとして軽視せず、指定期限内に誠実に対応しましょう。
指導の段階を無視すれば、不誠実な滞納者として扱われかねません。
督促や指導に応じないまま滞納が続くと、年金事務所は国税徴収法141条[注6]に基づき、預貯金口座の残高照会など財産調査を行います。
金融機関への照会は全国規模で行われ、会社や代表者名義の口座状況が把握されます。
財産調査に非協力的な場合や、差し押さえる財産を確認できない場合には、同法142条に基づく立ち入り調査や捜索に発展するケースもあるでしょう。
財産の状況について虚偽の説明をしたり、財産を隠したりすると、刑事責任を問われる恐れがあるため、財産調査には誠実に対応する姿勢が重要です。
捜索は財産の把握が難しいケースでとられる補足的な手段です。
差し押さえの対象となる財産には、預貯金、取引先への売掛金、不動産などが挙げられます(国税徴収法47条1項[注6])。
差し押さえの前には、差押予告通知書が送付されるのが一般的です。
予告通知書が届いた段階で滞納分の全額、または誠実な返済を前提とした一定額の支払いをしなければ、数日後には差し押さえが執行されます。
口座が差し押さえられれば入出金が凍結され、売掛金が差し押さえられれば取引先からの信用にも影響します。
一度執行された差し押さえは、通常の話し合いだけで解除はほとんどなく、実務上は極めて厳しい対応となります。

社会保険料を滞納すると、延滞金によって支払総額が膨らむだけでなく、差し押さえによって資金繰りや取引先との関係にも影響が出る恐れがあります。
放置すればするほど、会社の経営自体が立ち行かなくなりかねません。
督促状(納付書)に記載された期限までに納付しない場合、延滞金が発生します。
延滞金は、本来の納期限の翌日から納付日までの日数に応じて加算される点に注意が必要です。
| 納付期限からの日数 | 延滞金の年利率※1 |
|---|---|
| 納期限後3カ月を経過するまで | 年2.8% |
| 納期限後3カ月を経過した後 | 年9.1% |
※1令和8年度(1月1日~12月31日)の延滞金利率です。
延滞金の利率は年利です。
以下の計算式によって延滞金を求めます。
延滞金の計算式
延滞金=滞納社会保険料額×年利率÷365日×納付期限の翌日からの経過日
納付期限の翌日から3カ月を経過していない場合は、年利2.8%の計算だけで構いませんが、3カ月を超える場合は、それに加えて3カ月以降の経過日に対して年利9.1%分の延滞金が加算されます。
社会保険料の滞納が続くと、取引先への売掛金が差し押さえの対象になる場合があります(国税徴収法[注6])。
差し押さえが実行されると、取引先には差押通知書が送付され、以降の支払いは会社ではなく年金事務所へ直接行うよう求められます。
差押通知書の送達によって、取引先は滞納の事実を把握し、支払い能力に不安がある会社と受け止めかねません。
信用不安から取引条件の見直しや、最悪の場合は取引停止・契約解除につながる恐れがあり、事業の継続自体が難しくなる可能性があります。
売掛金の差し押さえは、資金繰りだけでなく取引先との関係にも直接影響を及ぼします。
社会保険料を滞納すると、預貯金や売掛金が差し押さえられ、資金繰りが一気に悪化する恐れがあります。
会社の口座が凍結されると、仕入代金や外注費、従業員の給与、家賃などの事業継続に欠かせない支払いが一切できなくなります。
そのため数日のうちに支払不能(破産法15条1項[注4])に陥る可能性があります。
手形を利用している場合は不渡りにつながる場合もあり、既存の融資についても期限の利益(民法136条[注5])を失い、残債の一括返済を求められかねません。
資金繰りの崩壊は、仕入先や従業員との信頼関係を含め、事業の継続自体を困難にします。
社会保険料の滞納が発覚すると、金融機関・従業員・取引先それぞれから信用が低下する恐れがあります。
金融機関からは返済能力に疑問を持たれ、新規融資や条件変更の交渉が難しくなります。
従業員は、督促状の到着や役所の立ち入り調査を目にした場合、給与の支払いや雇用の継続に不安を抱き、優秀な人材が離職してしまう場合もあるでしょう。
取引先も、滞納の事実を知れば取引継続に慎重になり、条件の見直しを求められる場合があります。
信用の低下は、会社の継続性自体に影響を及ぼしかねません。
今後の資金調達や人材確保にも支障が生じる恐れがあります。
社会保険料の差し押さえを避けるには、まず年金事務所へ分納や猶予を相談してください。
すでに差し押さえを受けている場合でも、解除を相談できる場合があります。
支払いの見通しが立たない場合は、法人破産について早めに弁護士へ相談してください。
社会保険料の一括納付が難しい場合は、放置せず早めに年金事務所へ相談してください。
分納の交渉では、健康保険・厚生年金保険は毎月、雇用保険・労災保険は年1回の通常の納付を続けたうえで、滞納分を上乗せして支払う計画が求められます。
経常利益から、通常分と滞納の分割分の両方を継続して捻出できるかを、根拠のある数字とともに示さなければ、分納は認められません。
単に「待ってほしい」と伝えるだけでは交渉は進まないため、資金繰りの実態を反映した現実的な支払い計画を、あらかじめ整理しておく必要があります。
相談は早いほど選択肢が広がります。
厚生年金保険料等の納付が困難な場合、要件を満たせば「換価の猶予」や「納付の猶予」を受けられる場合があります。
換価の猶予は、一時の納付が事業の継続を困難にする恐れがあり、納付の意思が認められる場合に、納期限から6カ月以内に申請できます。
認められると保険料を分割納付でき、猶予期間中の延滞金の一部も免除されます。
納付の猶予は、災害や病気、事業の休廃業などにより納付が一時的に困難な場合に、納付が一定期間猶予される制度です。
いずれも申請すれば必ず認められるわけではないため、早めに管轄の年金事務所へ相談してください。
すでに財産の差し押さえを受けている場合でも、年金事務所への申請によって解除を相談できる場合があります。
国税徴収法75条[注6]以下では、生活に最低限必要な現金や、事業の継続に欠かせない一定の器具など、差し押さえが制限される財産(差押禁止財産)が定められています。
差し押さえによってかえって事業の継続自体が不可能になり、結果的に滞納分の回収が困難になると認められれば、差し押さえが解除される場合もあります。
ただし、申請すれば必ず解除されるわけではないため、資金繰りの状況や事業継続の必要性を具体的に示しながら、粘り強く交渉する必要があります。
分納や猶予を利用しても支払いの見通しが立たない場合は、法人破産が有効な解決策になります。
支払不能(破産法15条1項[注4])や債務超過(同法16条1項[注4])を経て、破産手続きが完了し会社が消滅すれば、法人名義の社会保険料の滞納債務も法的に消滅します。
社会保険料は、金融機関からの借入とは異なり、代表者は連帯保証をしていません。
一部の第2次納税義務が生じるケースを除き、法人破産の完了によって代表者個人が滞納分を肩代わりして支払う義務は生じません。
支払いの見通しが立たない場合は、早めに弁護士へ相談してください。
[注1]健康保険法/e-Gov
健康保険法
[注2]厚生年金保険法/e-Gov
厚生年金保険法
[注3] 労働保険徴収法/e-Gov
労働保険徴収法
[注4]破産法/e-Gov
破産法
[注5]民法/e-Gov
民法
[注6]国税徴収法/e-Gov
国税徴収法
社会保険料の徴収権には原則2年の消滅時効があります。
しかし督促状や納入告知が届くたびに時効はリセットされるため、実務上時効の成立はほとんど期待できません。
滞納を放置すれば、延滞金が加算され続けるだけでなく、預貯金や売掛金の差し押さえによって資金繰りや取引先との関係にも深刻な影響が及びます。
支払いが難しい場合は、まず年金事務所へ相談し、分納や猶予を利用しましょう。
それでも支払いの見通しが立たない場合は、法人破産について弁護士へ相談してください。
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