東京弁護士会所属。
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社会保険料は、発生から2年間請求などがない場合に時効となります。
ですが、実際は納付期限後すぐに督促状が届くため、時効の期間はリセットされます。
つまり、督促状・電話・訪問など、時効をリセットする行為が必ず行われるので基本的に時間が経っても時効が成立することはありません。
社会保険料を滞納したら、次のようなことが起こります。
滞納した場合のリスクについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
支払うべき社会保険料を滞納してしまった場合は、どうなるでしょうか?
ここでは、滞納開始から、財産を差し押さえられるまでの流れを紹介します。
財産を差し押さえられるまでの流れ
各段階の詳細について説明していきます。
社会保険料の納付期限を過ぎた場合、基本的に、郵便、電話、訪問の順で督促を受けます。
本来納付すべき期限から約1週間後に、保険料納付を催促する郵便物が届きます。
いわゆる督促状です。
差出人は、滞納しているのが健康保険か厚生年金であれば年金事務所、雇用保険または労災保険の場合は労働局です。
督促状には、納付書が添付されているため、この納付書に従って納付しなければなりません。
なお、添付されている納付書の期限は、発行日から10日後です。
督促状が届いた頃、または督促状の納付期限を過ぎても納付がない場合、電話による催促があります。
督促状や電話による催促を受けても支払いがない場合は、年金事務所または労働局の職員が事業所などを訪問し、社会保険料納付についての「指導」を行います。
本来の納付期限を過ぎて督促を受けた場合でも、督促状(納付書)に記載された期限までに支払えば、延滞金は発生しません。
しかし、この期限も過ぎてしまった場合は、下記の延滞金利率に基づいて計算された延滞金が発生します。
延滞金の計算における納付期限とは、本来の納付期限日のため注意が必要です。
納付期限からの日数 | 延滞金の年利率※1 |
---|---|
納期限後3か月を経過するまで | 年2.5% |
納期限後3か月を経過した後 | 年8.8% |
※1 令和3年度(1月1日~12月31日)の延滞金利率です。
延滞金の利率は年利です。
以下の計算式によって延滞金を求めます。
延滞金の計算式
延滞金=滞納社会保険料額×年利率÷365日×納付期限の翌日からの経過日
納付期限の翌日から3ヵ月を経過していない場合は、年利2.5%の計算だけで構いませんが、3ヵ月を超える場合は、それに加えて3ヵ月以降の経過日に対して年利8.8%分の延滞金が加算されます。
督促を受けても社会保険料を納付しない場合、さらに年金事務所または労働局の職員による財産調査が行われます。
調査対象となる財産・資産は、法人または個人事業主が所有する現金、預貯金、不動産、売掛金などで、基本的に個人事業主、法人代表者への聞き取り調査となります。
しかし、この聞き取り調査で成果が出ない場合は、本格的な捜査に切り替わります。
聞き取り調査は、あくまでも任意で行われるものですが、捜査の場合は、強制力を持った調査となるため、拒否することはできません。
捜査では、個人事業主もしくは法人代表者の自宅への立ち入り調査、取引金融機関の口座残高調査、また取引のある企業に直接連絡し、売掛金などの債権の有無を確認されます。
なお、この聞き取り調査や捜査において意図的な虚偽の説明や、財産隠しをした場合、処罰の対象となるだけでなく、悪質と判断された場合は労働基準法違反として書類送検される可能性もあるため注意してください。
財産調査が終わり差し押さえ対象となる財産があった場合、実際の差し押さえ執行前に予告通知が届きます。
予告通知の時点で、滞納していた社会保険料を延滞金とともに支払えば、差し押さえを一旦中止できる可能性があります。
支払うべきお金を準備できないとしても、状況と相談内容によっては、差し押さえが一旦解除となる可能性もあるため、支払いの意思がある場合は年金事務所や労働局へ相談することをおすすめします。
社会保険を滞納していると、最終的には差し押さえによって財産を没収されますがそれ以外にもデメリットはあります。
ここでは、差し押さえ以外のデメリットについて説明します。
社会保険料滞納により、預貯金などの財産が捜査されたり、差し押さえ対象となった場合、当然その金融機関には、社会保険料滞納の事実が知られることとなります。
資金繰りが悪いことも露見するため、金融機関からの融資を引き揚げられ、新たな融資も受けられない事態になる可能性があります。
会社に財産調査や捜査が入った場合、経理担当だけでなく他の従業員にも社会保険料滞納の事実が知れ渡ります。
当然、会社の代表者に対する信頼度も下がるため、不信感をもった従業員が離職する可能性があります。
社会保険料滞納により、最終的に差し押さえまで進んだ場合、差し押さえの対象は取引先への売掛金にも及ぶことがあります。
取引先に社会保険料滞納の事実を知られることとなるため、取引中止を求められることもあるでしょう。
やむを得ず社会保険を滞納してしまった場合、どうすれば良いでしょうか?
社会保険を滞納したまま放置していると、最終的には会社の財産を差し押さえられ、事業の継続が困難となってしまいます。
支払うことが難しい場合は以下のような対処を検討してください。
一括での社会保険料の滞納分の支払いが難しい場合、分納の相談をおすすめします。
相談先は、健康保険・厚生年金の場合は年金事務所へ、労災保険・雇用保険の場合は労働局です。
まずは、しっかりと相談先に納付の意思を伝えましょう。
その上で、一括では支払いが難しいことを正直に話します。
相談の際に、支払いの意思を伝えることは重要ですが、どのくらいの期間でいくらなら支払えるのかについてある程度の計画も必要です。
分納の相談に行く際には、会社の資産・負債・キャッシュフローの状況などを示す資料を準備し、現実的な相談ができるようにしましょう。
金額や支払日といった具体的な分納方法は、年金事務所・労働局の担当者との相談で決まります。
注意したいのは支払うのは滞納分だけではないことです。
当然、滞納分と並行して通常の社会保険料を納付期限内に支払わなければなりません。
各社会保険料の支払いには、以下のような期限が設けられています。
各社会保険料の支払い期限
うっかりミスの滞納以外は、資金繰りがうまくいっていないことをあらわしているため、税理士などの専門家に相談しましょう。
会社の財務状況の確認とともに、滞納している社会保険料の支払いについてアドバイスがもらえるはずです。
社会保険料の支払いがうまく回るよう専門家に相談しながら、少しずつでも状況の改善を図ることが大切です。
社会保険料を滞納している状態のまま倒産・破産した場合、社会保険料の滞納分の債務はどうなるのでしょうか?
法人破産の場合、破産手続き終了後、会社は法人格を失い消滅します。
債務者である法人が消滅するため、法人が負っていた金融機関からの借金、税金の未納・滞納、社会保険料の滞納全ての債務が消滅します。
また、法人破産の場合、原則として会社の代表者が法人の支払義務を負わされることはありません。
ただし、破産手続の管財業務において、税金や社会保険料といった債権は、他の借金などの債権よりも優先されます。
管財業務において換価する財産があれば、税金などの債権は優先的に弁済・配当を受けることができます。
特に、破産手続き開始前に発生し、納付期限になっていない未納分、及び納付期限から1年経過していない税金などの場合、その他の債権よりも優先的に弁済されます。
会社が社会保険料を滞納したまま倒産して、法人破産手続きによって社会保険滞納分が消滅した場合、従業員の厚生年金の受給に影響を及ぼすのではないかと心配になる経営者もいるでしょう。
しかし、一般的に社会保険料は、従業員が負担する分はあらかじめ天引きされているためこのような事態となっても、従業員が不利益を負うことはありません。
社会保険料の支払い義務はあくまでも会社にあり、従業員の年金の受給額が減ることもありません。
個人事業主が自己破産の手続きにより免責決定が下されると、基本的に全ての債務は免責され、支払義務はなくなります。
しかし、社会保険料などの租税債権に準じる債権はこの免責の対象外となっているため自己破産後に免責決定を受けても、社会保険料滞納の債務を負い続けることになります。
法人破産と異なり、破産手続きが終了しても支払い義務が消滅するわけではないため注意してください。
法人はもちろん、個人事業主でも雇用する従業員の人数によって各種社会保険への加入義務があります。
社会保険を滞納してしまった場合、まず年金事務所または労働局から督促状が届き、放置した場合は、電話・訪問指導を受けることになります。
督促状に記載された納付期限までに支払わない場合は、延滞金も発生するため注意しましょう。
社会保険料を滞納したまま放置すると、財産調査が行われ強制的捜査へ発展する場合があり、最終的には、財産調査や捜査によって明らかとなった預貯金や売掛金などの財産が差し押さえられます。
社会保険料の滞納分は、時効で消滅することは基本的にありません。
督促状が届いた時点で一括納付が難しい場合は、健康保険・厚生年金保険なら年金事務所、労災保険・雇用保険なら労働局に、分納や支払日延期の相談をしましょう。
また、会社の資金繰りについて、税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。