東京弁護士会所属。
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法人税は、借金など一般の債権と同様に、時効により消滅します。
法人税の無申告の時効期間は、原則として法人税申告期限から5年です。
ただし、偽りその他不正の行為によって税額を免れた場合、法人税の消滅時効は7年とされています。
つまり、法人税の無申告が10年間続いている法人でも、10年前までさかのぼって法人税を課されるわけではありません。
上述の通り法人税の時効期間は5年なので、法人税無申告の会社が申告する場合、基本的に5年間さかのぼって申告する必要があります。
偽りその他不正の行為によって税額を免れている場合、消滅時効の期間が7年なので、7年さかのぼる必要があります。
たとえば、申告すべきところを知らずに無申告でいた会社が令和3年5月に初めて法人税を申告する場合、平成28年までさかのぼって申告しなければなりません。
もし同じ会社が、偽りの行為など悪質に税を免れている場合には、平成26年までさかのぼって申告する必要があります。
なんとか経営を黒字にしようと考えるあまり、計上しそびれる経費や収入があるかもしれません。
経営者の意図がどうであれ、悪質であると税務署に判断された場合には、7年間さかのぼって申告・納税しなくてはならないということです。
それでは、法人税は時効が到達したら払わなくてよいのでしょうか?
時効になった場合は、法人税は免除されます。
ただし、「差し押さえや仮処分」や「債権者による請求」、「債務者の承認」があった場合は、時効が中断されます。
その時点までの日数はリセットされ、そこから再び時効になるまで5年間かかります。
意図的かそうでないかは別として、法人税の無申告は様々な理由でバレてしまいます。
どんな理由でバレるのか見ていきましょう。
法人税の無申告がバレる理由
それでは1つずつ解説します。
反面調査により、無申告やその結果としての脱税などがバレることがあります。
反面調査とは、税務調査の対象企業の取引先への調査のことをいいます。
たとえば、A社が、法人税の過小申告などが疑われて税務調査が決定されたとします。
しかしA社が税務調査に協力的でないケースなど、A社の取引先に税務署の調査がはいることがあります。
これが反面調査です。
ただし、反面調査はどんな場合でも無制限に認められるわけではありません。
現況調査は必要最小限か、事前の通知がなされているかなど、国税庁により一定のルールが定められています。
近年、ECサイトで自社製品を売っている法人が多くなっています。
インターネット上の取引も少額ならば無申告でかまわないだろうと、法人税の無申告状態に陥っている会社もあるかもしれません。
しかし、国税庁には情報技術専門官というインターネット取引に目を光らせている職員がいます。
ECサイトでの取引についても、情報技術専門官に探知されてしまう可能性が高いのです。
インターネット上での取引分がバレて、法人税全体の無申告まで指摘を受けるケースもあります。
個人投資家が節税のために法人を設立した場合などに多いのが、法人名義で投資用マンションを購入して、法人税無申告がバレるケースです。
法人で投資用マンションを買えば、家賃収入について申告しなくてもかまわないだろうと思うかもしれません。
しかし、法務局から税務署への通知により、法人が不動産を購入したことが知られるところとなり、法人税の無申告がバレることがあります。
不動産の所有権移転登記がおこなわれると、法務局から税務署にその旨が通知されるからです。
従業員や取引先からの通報により、法人税無申告がバレることもあります。
税務署では、課税・徴収漏れに関する情報提供という制度を用意しているためです。
国税庁のホームページや、税務署の面接・電話・郵送で情報が受け付けられています。
今までの情報提供の例をあげると、租税を回避するスキームや、各国の税制の違いを利用した税逃れなど、様々な情報提供がなされています。
法人を設立して登記すると、税務署に様々な書類を提出します。
税務署への届出書類により法人税無申告が発覚するケースもあります。
たとえば、法人設立届出書、源泉所得税関係の届出書、消費税関係の届出書、青色申告の承認申請書などの書類です。
これらの書類により、法人の決算期も明らかです。
決算期のあと数か月経っても法人税申告がおこなわれなければ、税務署は無申告に気がつくことも多いでしょう。
次に、法人税の無申告がバレたときのペナルティを見ておきましょう。
法人税無申告の法人には、無申告加算税が課されます。
法定申告期限等の翌日から調査通知前までは5%、調査通知以後から調査による更正等予知前までは10%で、加重される部分(50万円を超える部分)の加算税は15%となっています。
調査による更正等予知以後の加算税は15%ですが、加重される部分(50万円を超える部分)は20%です。
ただし、正当な理由がある場合や、法定申告期限から1月以内にされた一定の期限後申告の場合には、無申告加算税は課されません。
期限後申告等があった場合、その申告があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、無申告加算税が課されたことがある場合、さらなるペナルティが科されることがあります。
短期間で無申告を繰り返す法人に対する制裁といえるでしょう。
法人税の無申告加算税に代わり、40%という高い税率が課されるのが重加算税です。
この重加算税も、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課されているケースでは、10%加算されることがあります。
短期間での無申告を繰り返している場合には、さらに重いペナルティが用意されているということです。
ただし、重加算税の適用は、納税者が課税要件事実を隠ぺい又は仮装したなどの、厳しい要件に当たる場合のみとされています。
法人税には申告期限があります。
法人税の無申告ということは、申告期限を守っていないことになりますので、申告期限に遅れた法人に課される延滞税が発生します。
また、事業年度を2期連続して期限内に申告書の提出がない場合には、法人税の青色申告を取り消されてしまうことがあります。
青色申告は税制上のメリットを受けることができる制度です。
法人税申告をしていたのに、途中で申告をしなくなって青色申告を取り消されたりしないよう、注意してください。
なお、法人税の青色申告が取り消されるのは、2事業年度目の事業年度以後の事業年度についてです。
法人税の無申告による税務調査の期間は、3~6か月ほどかかる場合があります。
先述のとおり、法人税の時効は5年または7年です。
つまり、税務所は5年または7年分さかのぼって法人税を徴収するために調査します。
法人税の時効期間を考えると、無申告による税務調査期間が長くなる可能性があるのも、理解しやすいのではないでしょうか。
税務調査の期間が繁忙期と重なったり、経営が苦しいときと重なったりすれば、税務調査による事業への影響も出かねません。
法人税無申告の状態は、早期に解決すべきでしょう。
国税庁は積極的に無申告法人の調査をおこなっており、その例をご紹介します。
国税庁は、事業を行っているにもかかわらず法人税の申告をしていない法人は、国民の公平感を著しく損なうという考え方をもっています。
そこで行われているのが、稼働無申告法人に対する国税庁の実地調査です。
令和元年度の稼働無申告法人への調査実績は次のようになっています。
稼働無申告法人への調査実績(令和元年度)
稼働無申告法人 | 152件 |
---|---|
追徴 | 法人税3億円(同37.5%) 消費税3億円(同33.3%) |
参照:令和元事務年度における法人税等の申告(課税)事績・調査事績の概要|国税庁
この年、法人税と消費税合わせて6億円もの追徴課税がなされています。
なお、無申告法人の中には意図的に無申告を行っている法人もありました。
国税庁は、法人税の無申告に対して「国民の最低限の義務さえも履行していない」と厳しく対峙しています。
法人税の無申告の時効期間や、無申告がバレる理由、バレたときのペナルティなどを見てきました。
法人税の無申告状態が続いている理由は、企業によって様々でしょう。
経営で忙しくて法人税申告まで手がまわらなかったり、小規模な法人だから申告義務がないと思っていたりなど、色々な理由で無申告状態が続いているかもしれません。
「何年も放っておいたのだから、このまま放っておいても問題ないのではないか」
「5年か7年分もさかのぼって法人税を払うのは経営的に不安がある」
このように思う経営者の方もいるでしょう。
しかし、ご紹介したとおり、国税庁は稼働法人の無申告に対して厳しい姿勢をとっていますので、バレる可能性も十分にあります。
もし実地調査により法人税無申告が税務署にバレてしまうと、税務署の心証が非常に悪くなります。
また、調査に協力するための帳簿の提出などの手間もかかります。
無申告に高額のペナルティが科せられれば経営にも支障を来しかねません。
法人税無申告の状況が続いていることに気付いたら放置せず、思い切って申告することをおすすめします。
その際、何年分もの申告手続きを自社でおこなうのは大変です。
税理士など専門家にまかせて事業に専念すると良いでしょう。