東京弁護士会所属。
破産するということは社会的な信用や財産を失うと恐れている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、早期的に適切な手段で破産を行えば、多くの場合、少ないダメージで済みます。
経営が悪化している状況の中で、交渉ごとを本人でまとめようとすることは非常に大変です。
誰にも相談できないと思わずに弁護士に破産手続きを依頼することで、心身の負担を減らすことができます。
一日でもはやく立ち直るためにも、お気軽に弁護士にご相談ください。
法人・会社に関連する税金を見ていくと法人税、法人住民税、固定資産税、消費税、源泉所得税、事業税など多種多様なものがあります。
また、支払う時期もそれぞれに違いがあり、一年中何かの税金を支払っていることになります。
この税金には、個人の債権債務とは違う効力があります。
それを回収の場面で見ていくことにします。
通常、個人の債権を回収したい場合は裁判にかけて判決(債務名義)を取り、強制執行にかけていくという手順を踏みます。
ところが、税金の場合は、裁判所に訴えて債務名義をとる必要がなく、いきなり法人の財産に滞納処分による差押えがかけられます。
この点が民事の債権との大きな違いです。
また、民事で強制執行などの執行手続をとっていても、債務者が破産手続を開始すれば強制執行等の手続は停止され、場合によっては取り消されます。
ところが、滞納処分による差押えは債務者に破産手続が開始しても停止も取消もされることはありません。
法人が破産手続を開始すると通常の民事上の債権は強制執行等が停止されますが、税金には影響を及ぼさないのです。
税金にはこのような優先的効力があります。
破産した場合に、滞納していた税金はどうなるのでしょうか?
個人と対比しながら、その違いを見ていきます。
まず、個人の場合について見ていきます。
個人の場合は破産手続が終結して負っていた債務の支払義務が無くなったとしても、滞納していた税金の支払い義務は無くなりません。
これを非免責債権といいます。
その債権の中には贈与税、相続税などの国税の他に固定資産税や自動車税などの地方税、さらには国民健康保険の保険料や年金などが含まれます。
対して、法人が破産した場合はどうなるのでしょうか?
税金の支払いは憲法にも明記された国民の義務のため、支払義務があるように思われます。
しかし、法人は破産すると滞納していた税金の支払義務も消滅します。
これは、法人が破産すると法律上解散する形となるため、権利義務の帰属主体としての地位を失うからです。
すると法人の代表者が二次的に税金の支払義務を負うように思えますが、法人と個人は別人格であるため法人の消滅と同時に個人が支払義務を負うことはありません。
たとえその個人が破産した法人の代表者であっても理由は同じです。
ただし、これにも例外があります。
この法人と個人の人格は別であることを悪用して財産を隠したような場合です。
このような場合、破産管財人が否認権を行使して隠した財産を取り戻すことが考えられますし、税務署も個人の財産という主張を否認して課税してくることがあります。
このような行為は単なる財産移動を通り越して、財産隠しと評価されて犯罪を構成することがあります。
破産とはいろいろな事情が重なった結果、選択する最後の手段と言えるかもしれません。
事情の中には税金の支払いが苦しかったという事情もあるのでしょう。
ここでは、破産の手続きの流れについて概略を見ていきます。
はじめに破産の申立てを管轄の地方裁判所に行います。
すると、破産手続開始決定が出され破産管財人が選任されます。
個人の破産であれば、同時廃止といって破産手続開始と同時に手続きは止まる場合がありますが、法人・会社の破産の場合はほぼ管財の手続きに移行します。
その後、破産管財人との打合せ等が続いて債権者集会が開かれた後に債権者の債権額の割合に応じて配当が行われます。
最後に一連の破産手続が終了し、負っていた債務の支払義務がなくなるのです。
ここまで、法人・会社の破産と税金の取り扱いについて見てきました。
破産したときの税金の支払義務は依然あるのかないのか、法人と個人では大きな違いがあります。
裏を返せば法人と個人は別々の人格であるからです。
破産するような極端な局面では、時に財産の変動が激しくなり、それが後日になって財産隠しと評価され課税されたりすることがあります。
日頃から、法人と個人どちらに財産が帰属するのか明確に区別することが必要です。