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最終更新日:2025/12/12

外国人が起業するときに使える助成金は?スタートアップビザについても解説します

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

外国人が起業するときに使える助成金は?スタートアップビザについても解説します

この記事でわかること

  • スタートアップビザについて
  • 外国人を雇用した場合の助成金
  • 不正受給のリスクについて

日本で起業する外国人や、外国人労働者を雇用している事業者は、国や自治体の助成金や支援制度を活用できます。

この記事では、外国人起業家の支援制度として全国展開された「スタートアップビザ」の概要から、外国人労働者を雇用したときに利用できる各種助成金まで詳しく解説します。

さらに助成金利用の注意点として、実際にお金がもらえるタイミングや起業資金との相性、不正受給のリスクについても説明します。制度の特徴を理解し、計画的な活用を目指しましょう。

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外国人起業活動促進事業とは

外国人起業活動促進事業は、日本に経済活動の拠点を作るためにできた制度です。

日本が世界経済の中で競争力を強化していくためには、国内だけでなく海外からも優れた人材やアイデアを呼び込み、新しい産業の拠点となる取り組みが不可欠です。

外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)は、そうした人材を国内に受け入れ、日本の国際競争力を高めるために作られました。海外の起業家が日本で事業基盤を築きやすくなり、国内産業や地域経済の活性化につながることが期待されています。

外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)について

外国人起業活動促進事業は通称「スタートアップビザ」と呼ばれています。これは日本国内にビジネスの拠点を置くことを目的とした制度で、外国人が起業する際の条件が最大で2年猶予されるというものです。

グローバルな世の中においては、海外の優れた技術やビジネスモデルを持っている外国人起業家を日本に誘致して国際的な経済拠点としての地位を強化することが求められます。

スタートアップビザの利点は、起業の準備段階から支援が受けられる点にあります。

通常、外国人が日本で会社を設立するためには、在留資格の確保だけでなく、拠点の確保や人員配置、登記など、さまざまな作業があり負担が大きくなりますが、条件が緩和されることでこの負担が軽減されます。

スタートアップビザを利用する流れは、以下のとおりです。

スタートアップビザを利用する流れ

  • STEP1地方公共団体や民間事業者が「外国人起業活動管理支援計画」を策定し、経済産業大臣の認定を受ける
  • STEP2認定を受けた団体(外国人起業促進実施団体)が、外国人起業家からの「起業準備活動計画」を受付
  • STEP3告示で定める要件を満たしているかを審査し、専門家の意見も踏まえて「起業準備活動計画確認証明書」を交付
  • STEP4外国人起業家は証明書と必要書類を地方出入国在留管理局へ提出
  • STEP5在留資格「特定活動」を取得し「特定外国人起業家」として起業準備を開始

事業計画段階から専門的支援を提供することで、日本でのビジネス展開のハードルを下げ、国際的な人材・技術・資本を国内に誘致しているのです。

スタートアップビザの全国展開

スタートアップビザは2025年1月1日から全国で展開されるようになりました。

全国展開の狙いは、都市部だけでなく地方にも国際的な経済拠点を作ることです。

外国人起業家が地域に定着し、地元企業や住民と協働することで、経済だけでなく文化・教育面にも好影響をもたらすことが期待されています。

参考:外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)|経済産業省

全国展開されたスタートアップビザの概要

スタートアップビザの制度を利用すれば、在留資格「経営・管理」で求められる事業所の確保と事業規模の要件が一定期間猶予されます。

この緩和期間の間に国内で起業のための準備をすることができます。

お金がもらえる助成金制度ではありませんが、外国人が国内で起業する際の支援制度として機能しています。

対象 外国人起業家
主な申請要件 出入国在留管理庁に必要な確認証明書を添えて書類を提出し審査を受けたもの

外国人を雇用した際の助成金

外国人労働者を雇用する場合、日本人社員と同様の待遇や安全な労働環境を確保するだけでなく、言語・文化の違いに配慮した就業環境を整備することが求められます。こうした取り組みを行う事業主に対しては、国や自治体からさまざまな助成金制度が用意されています。

ここでは、外国人を労働者として雇用した場合に利用できる助成金制度を紹介します。制度を正しく理解し、適切に活用することで、外国人労働者と企業双方にとって良好な雇用関係を築くことができます。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者に対して技能訓練などを行った場合に事業者に支給される助成金です。

雇用しているのが外国人労働者でも、所定の訓練を行えば支給の対象となります。

対象 職務に関連する専門知識や技能を習得するための訓練を行った事業主
対象経費 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部 等
金額 賃金助成:(1人1時間あたり)760円 等
※コースによって異なる
主な申請要件 「OFF-JT」を10時間以上実施 等
問い合わせ先 都道府県労働局の受付窓口

参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース)

この助成金は、外国人労働者が長く安心して働ける職場環境を整備するために事業主が行う取り組みを支援する制度です。

外国人特有の問題となる言語の壁、文化の違いなどの対策を行った場合に助成金が支給されます。

対象 外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備と外国人労働者の職場定着に取り組む事業主
対象経費 通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士や社会保険労務士等への委託料、社内標識類の設置・改修費
金額 支給対象経費の2/3(上限72万円)※賃金要件等を満たす必要あり。満たさない場合は1/2(上限57万円)
主な申請要件 外国人労働者を雇用している事業主で外国人雇用状況届出を提出している
問い合わせ先 都道府県労働局の受付窓口

参考:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の社員を正社員に登用した場合に申請できる助成金です。飲食店開業後には、有能なアルバイトや契約社員、パートを正社員にするというケースがありますが、そのようなときに利用できます。

対象 非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップに取り組む事業主
対象経費 対象となる有期雇用の労働者等を正社員にした場合等
金額 有期雇用契約の社員を正社員にした場合1人あたり最大80万円(障害者の場合は120万円)
主な申請要件 非正規雇用労働者の正社員化 等
問い合わせ先 管轄の都道府県労働局もしくはハローワーク

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、一定期間のトライアル雇用を行う事業者に対して支払われる助成金です。外国人も要件を満たせば対象であり、特例としてウクライナ避難民も追加されています。

対象 一定期間のトライアル雇用を行う事業者
対象経費 対象となる人件費
金額 支給対象者1人につき月額4万円
主な申請要件 ハローワーク等の紹介により雇い入れる・原則3カ月のトライアル雇用 等
問い合わせ先 労働局
ハローワーク
支給申請窓口

参考:トライアル雇用助成金|厚生労働省

助成金についての注意点

助成金には、外国人が起業する際に利用できるものも外国人を雇用する際に利用できるものもあります。正しく計画的に利用すれば有益な制度ですが、注意点もあるためチェックしましょう。

お金を使った後で助成金が下りる

多くの助成金制度は「先払い」ではなく、申請して採択されたあとに支払われます。申請から採択、実際に入金されるまでには、数カ月程度の時間がかかります。

具体的には、まず自分の資金で対象経費となる機材の購入を行います。そして領収書や契約書などの証拠書類をそろえて助成金を申請し、採択されてからお金が振り込まれるのです。そのため、実際にお金をもらえるまでに制度によっては半年以上かかることもあります。

この仕組みを理解せずに「必要経費は助成金で支払えばよい」という資金計画を立てると、支払い時点で資金が足りないということになってしまいます。

当面の支払いは自己資金や融資で賄える資金力を確保した上で、助成金を組み込む計画性を持ちましょう。

起業時の資金調達には向いていない

助成金は、一定の条件や実績を満たした事業者を対象に交付されるものです。

つまり、起業の際の資金調達の方法としては適切ではありません。また、助成金は審査や交付決定まで時間がかかるため「すぐに資金が必要」というケースには不向きです。

起業段階で必要な開業資金や運転資金については、自己資金や日本政策金融公庫の融資制度、自治体の創業支援など、即時性のある調達手段を選ぶのが望ましいでしょう。

助成金はあくまで「事業を後押しする補助的な資金」であり、起業のスタート資金ではないのです。

不正受給にならないように注意

補助金や助成金は、国や自治体が特定の事業や活動を支援するために交付する公的資金です。その目的は、経済や地域の活性化、雇用の創出、技術革新の促進など、社会的な効果を広くもたらすことにあります。

しかし近年、一部の事業者による不正受給が問題視されており、制度の信頼性を損なう深刻な事態を招いています。

不正受給とは、本来の交付要件を満たさないにもかかわらず、虚偽の申請や不正な方法で補助金を受け取る行為を指します。

代表的な手口には、以下のようなものがあります。

代表的な手口

  • 虚偽申請:実際には行っていない事業を実施したと偽って申請する
  • 架空請求:存在しない取引や経費を計上して補助金を請求する
  • 水増し請求:経費や人件費を実際よりも多く計上して請求する
  • 目的外使用:補助金を承認された事業以外の用途に流用する

これらは、単なる契約違反や事務的ミスではなく、公金の不正取得という重大な違法行為です。

補助金の不正受給が判明した場合、事業者は厳しい処分を受ける可能性があります。主な措置は次のとおりです。

不正受給が発覚した場合のペナルティー

  • 返還命令:受給した補助金の全額返還。加算金や延滞金が課されるケースもある
  • 罰則:刑事告発の可能性
  • 企業名の公表:行政機関のウェブサイトなどで社名が公表される

こうしたペナルティーは事業継続に深刻な打撃を与えることとなります。

助成金や補助金は、正しく活用すれば事業の発展の支えとなります。ですが、不正受給をすると大きなペナルティーがあります。

助成金の制度を利用する際は、すべての申請や報告において事実を正確に記載し、承認された事業計画に沿った誠実な運用を徹底することが求められます。

万一、事業計画に変更や中止が生じた場合には、速やかに交付機関へ相談・報告し、指示を受ける必要があります。

補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第二十九条

第二十九条 偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者は、五年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の場合において、情を知つて交付又は融通をした者も、また同項と同様とする。

参考:e-Gov 法令検索

外国人が起業する場合に利用できる助成金がある

外国人が起業する場合に利用できる支援制度として外国人起業活動促進事業(スタートアップビザ)があります。日本での事業準備を支援し、国際的な人材や資本を呼び込む制度です。

また、外国人労働者を雇用している事業者に対しては、人材開発支援助成金、人材確保等支援助成金、キャリアアップ助成金、トライアル雇用助成金といった制度が運用されています。対象になる場合は、条件などを確認して申請しましょう。

助成金は経営の支えになる制度ですが、不正受給は返還命令や罰則など重大なペナルティーが科されるため、制度を正しく理解し誠実に運用しましょう。

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