この記事でわかること
- 市街地農地とはどのようなものをいうのか知ることができる
- 市街地農地と市街地周辺農地の見分け方を知ることができる
- 市街地農地の評価方法や宅地造成費の求め方がわかる
田や畑などの農地を相続する時には、その相続税評価額を求めなければなりません。
農地の中には、今後も農地としてしか利用できない土地もあれば、農地以外に転用することが望まれる土地もあります。
そのような違いがある農地を同じ評価方法で評価することは不公平なため、農地を分類していくつかの評価方法が定められています。
ここでは、市街地農地とはどのような農地なのか、またどのように相続税評価額を求めるのか、ご紹介します。
目次
市街地農地とは
市街地農地とは、市街化区域にある農地をいいます。
また市街化区域とは、すでに市街化されて栄えている地域や今後開発により市街化が進められる地域をいいます。
このような地域にある農地は、宅地化されて別の用途に利用されることが見込まれます。
そのため、純粋に農地に利用するしかない土地とはその利用価値は大きく異なるので、評価方法も異なるのです。
なお、市街化区域にある山林を市街地山林、市街化区域にある原野を市街地原野と呼び、市街地農地とまとめて市街地農地等といいます。
市街地農地と市街地周辺農地の違い・見分け方
市街地農地とよく似た農地の区分に、市街地周辺農地と呼ばれるものがあります。
この両者はどのような違いがあるのか、そしてその見分け方のポイントはどのようなものか、ご紹介します。
市街地農地と市街地周辺農地の違い
市街地農地は「市街化区域にある農地」以外にも、以下のような農地が該当し、農地以外の用途に転用する際に、ハードルが一切ない農地をいいます。
- 農地法4条または5条に規定する許可を受けた農地
- 農地法等の規定により転用許可を要しないものとして、都道府県知事の指定を受けた農地
これに対して市街地周辺農地は、第3種農地を指します。
また第3種農地に該当しない農地でも、第3種農地に準ずる農地と認められれば、市街地周辺農地となります。
なお第3種農地とは、市街化区域に該当しなくても鉄道の駅が300m以内にあるなど、市街化が著しい地域にある農地をいいます。
転用の申請を行えば原則として許可されますが、市街地農地と同一ではないことから市街地周辺農地としているのです。
市街地農地と市街地周辺農地の見分け方
市街地農地と市街地周辺農地の見分け方として、まずはその農地が市街化区域にあるのか、それ以外の市街化調整区域にあるのかを確認します。
市街化区域にあるものは、この段階ですべて市街地農地となります。
市街地農地とならなかったものについては、次に第3種農地に該当するかどうかを確認します。
第3種農地に該当すれば、その農地も市街地農地ということになります。
また、第3種農地に準ずる農地に該当するかは、鉄等の駅の他道路や下水道などの整備状況に応じて判断しなければなりません。
国税庁ホームページで公表されている評価倍率表でも、地域ごとの農地の区分を確認することができます。
該当する地域の農地の欄を確認すると、「純」「中」「周比準」「比準」「市比準」と書かれているのがわかります。
このうち市街地農地については「比準」「市比準」となっています。
また、市街地周辺農地の場合は「周比準」と書かれています。
【具体例付】市街地農地の評価方法
市街地農地の相続税評価額の評価方法は、純粋な農地よりは高くなるものの、宅地とも異なります。
具体例を紹介しますので、これに従って市街地農地の評価方法を確認していきましょう。
市街地農地の評価方法は宅地比準方式か倍率方式
市街地農地の評価方法は、宅地比準方式または倍率方式によることとなります。
このうち宅地比準方式は、以下の算式で計算されます。
(その農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額-1㎡あたりの造成費の金額)×地積
この算式が意味するところは、市街地農地は農地といっても、その実質は宅地と変わらないものであるということです。
ただし、農地をそのまま宅地として使うことはできません。
宅地化するための造成工事が必要となるため、その費用を評価額から差し引くのです。
その農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額とは、具体的には路線価をいいます。
また、路線価がない地域の場合は、最も近接する宅地で接道状況や形状が似た土地の相続税評価額を用います。
具体例
それでは、実際の市街地農地の計算例をご紹介します。
事例
市街地農地の計算例
ここでは、東京都内にある以下のような市街地農地の相続税評価額を計算します。
- 宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額 100,000円
- 1㎡あたりの造成費 10,200円
- 地積 200㎡
この市街地農地の相続税評価額を計算すると、以下のようになります。
(100,000円-10,200円)×200㎡=17,960,000円
それでは次に、造成費の内訳とその金額について見ていきましょう。
市街地農地の宅地造成費の内訳・金額
市街地農地の評価額を計算する際には、1㎡あたりの造成費を計算しなければなりません。
この造成費の金額は、農地の状況により必要となる造成工事が異なるため、農地の状況を確認しながら決定する必要があります。
具体的にどのような内容となっているのか、ご紹介します。
平坦な農地の宅地造成費
造成費の金額は、都道府県によって異なります。
東京都の令和3年分の造成費は、以下のようになっています。
工事費目 | 造成区分 | 金額 | |
---|---|---|---|
整地費 | 整地費 | 整地を必要とする面積1㎡あたり | 700円 |
伐採・抜根費 | 伐採・抜根を必要とする面積1㎡あたり | 1,000円 | |
地盤改良費 | 地盤改良を必要とする面積1㎡あたり | 1,600円 | |
土盛費 | 他から土砂を搬入して土盛りを必要とする場合の土盛り体積1㎥あたり | 6,900円 | |
土止費 | 土止めを必要とする場合の擁壁1㎡あたり | 76,200円 |
これらの内容は以下のようになります。
- 整地費:デコボコになっている土地を平らにしたり、土盛工事を行った後に地面をならしたりするための工事費
- 伐採・抜根費:樹木が生えている土地について、樹木を伐採した上でその根を除去するための工事費
- 地盤改良費:田のように軟弱な土地を宅地に造成するにあたって、地盤を安定させるために行う工事費
- 土盛費:道路より低い位置にある土地を、宅地として利用できる高さまでかさ上げするための工事
- 土止費:土地をかさ上げする際に、土盛りした土砂の流出や崩壊を防ぐために作る擁壁の工事費
実際の農地の状況から必要な工事とその面積や体積を計算し、宅地造成費を求める必要があります。
傾斜地の宅地造成費
傾斜地については整地費、土盛費、土止費のすべての費用を含めて算定します。
東京都の令和3年分の造成費は、以下のようになります。
傾斜度 | 金額(1㎡あたり) |
---|---|
3度超5度以下 | 19,200円 |
5度超10度以下 | 23,300円 |
10度超15度以下 | 35,600円 |
15度超20度以下 | 50,300円 |
20度超25度以下 | 55,500円 |
25度超30度以下 | 58,300円 |
なお、樹木の伐採・抜根費はこの金額に含まれません。
樹木を伐採等した傾斜地については、伐採・抜根費を別に計算することができます。
【ひな形付】市街地農地等の評価明細書の書き方
市街地農地がある場合には、相続税の申告を行う際に「市街地農地等の評価明細書」を記載し、申告書に添付しなければなりません。
では、市街地農地等の評価明細書の記載方法について解説します。
「市街地農地等の評価明細書」の記載例は、以下のようになります。
引用元:国税庁
- 1)一番上にある市街地農地、市街地山林、市街地周辺農林、市街地原野の別を選択します。
また、「所在地番」「現況地目」「地積」には、評価対象となる農地の情報を記載します。 - 2)「評価の基とした宅地の1平方メートル当たりの評価額」には、比準土地の相続税評価額の計算方法を記載します。
- 3)「評価する農地等が宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの評価額」には、倍率地域内の市街地農地等の場合に記載します。
路線価地域内の市街地農地等の場合には、記載する必要はなく空欄のままとなります。 - 4)宅地造成費の計算には、面積や土盛りの高さなど、その農地の状況にあわせて記載する必要があります。
- 5)1㎡当たりの整地費や土盛費などの金額は、都道府県ごと、年度ごとに異なるため、調べて記載しましょう。
- 6)宅地造成費には多くの項目が該当する場合もあるため、それぞれの計算を行ったら、1㎡当たりの金額を求めます。
最終的には、比準土地の1㎡当たりの評価額から造成費を控除し、市街地農地等の評価額を計算することになります。
まとめ
農地は現状、農作物の耕作に用いられている土地であっても、その区分によって経済的な価値に違いがあります。
そのため、農地が市街地農地に該当するのか、市街地周辺農地に該当するのか、あるいはそれ以外の農地なのか確認が必要です。
市街地農地に該当する場合は、その農地をどのように評価するのかも確認しておきましょう。
宅地造成費の計算にはその農地の面積や道路までの高さなどを知る必要があるので、実際に農地の状況を調査しておきましょう。
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