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最終更新日:2024/7/23

相続税から葬儀費用は控除できる!控除対象になるもの・ならないものを解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
Twitter:@tax_innovation
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相続税から葬儀費用は控除できる!控除対象になるもの・ならないものを解説

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この記事でわかること

  • 葬儀費用の相場がわかる
  • 葬儀費用と相続税の関係を理解できる
  • 控除できる費用、できない費用の違いがわかる

課税遺産総額を算出する際には、預貯金などの財産から借金や葬儀費用を差し引いて「正味の財産」計算し、さらに基礎控除額を差し引くことになります。

他の相続財産評価額も含め「葬儀費用がいくらであったか」によって相続税額が変わることもあるため、相続税対策の一つとして葬儀費用にも注目しておきたいところです。

ただし、葬儀に関係する費用の全てが控除できるわけではなく、相続税の控除対象にならない相続人もいるため、葬儀費用の内訳などについてあらかじめ把握しておく必要があるでしょう。

今回は相続税にも関連する葬儀費用について、控除対象となるもの・ならないものを解説します。

葬儀費用の平均額は約200万円

一般財団法人・日本消費者協会が2017年に行ったアンケート調査によると、葬儀費用の平均額は195万7千円(約200万円)となっており、大まかな内訳は以下のようになっています。

  • ・葬儀一式の費用:120万円程度
  • ・寺院費用:45万円程度
  • ・飲食および接待費用:30万円程度

葬儀一式には通夜、葬儀、火葬などがあり、寺院費用は読経や戒名の料金となります。

飲食および接待費は通夜や葬儀の際の飲食代であり、合計すると200万円程度になります。

地域性や葬儀内容によっては100万円以下になる場合もありますが、都市部では200万円以上の葬儀費用も少なくはないでしょう。

相続税の計算では取得した相続額に応じた税率が設定されており、葬儀費用などの控除額によっては相続税率が変わる場合もあります。

葬儀費用が相続税額に影響する

相続税の総額は「相続税の速算表」を用いて計算しますが、取得した相続額に応じて以下のように税率が設定されています。

【相続税の速算表】

  • ・1,000万円以下:税率10%
  • ・3,000万円以下:税率15%
  • ・5,000万円以下:税率20%
  • ・1億円以下:税率30%
  • ・2億円以下:税率40%
  • ・3億円以下:税率45%
  • ・6億円以下:税率50%
  • ・6億円超:税率55%

単純計算になりますが、取得した相続額が900万円であれば相続税はかからず、1,100万円であれば10%の税率が適用され110万円の相続税が発生します。

両者の差額は200万円なので、葬儀費用の控除によって相続税額は低くなるということです。

葬式費用で相続税の控除対象になるもの

相続税から差し引く(控除)ことのできる葬儀費用は以下のように決められています。

  • (1)死亡診断書の発行料金
  • (2)葬儀一式の費用(通夜、葬儀および告別式)
  • (3)通夜振る舞いなどの飲食代
  • (4)葬儀場までに交通費
  • (5)遺体の搬送料
  • (6)火葬および埋葬費用
  • (7)手伝ってくれた方への心付け
  • (8)運転手への謝礼(車代)
  • (9)寺院へのお布施、読経や戒名の料金
  • (10)納骨にかかる費用
  • (11)その他の諸費用

遺体の納骨には各自治体が発行する埋葬許可証が必要であり、手続きの際に提出する死亡診断書の発行料金は控除可能な葬儀費用となっています。

通夜振る舞いや告別式での飲食代も控除の対象となり、火葬場などで会葬者に振る舞ったジュースやお菓子などの代金も葬儀費用として差し引くことができるので、それぞれの領収証やレシートは失くさないように保管しておいてください。

領収書がなくても控除できるもの

僧侶など宗教者にかかる費用では一般的に領収書を発行することがなく、また慌ただしい葬儀の中で領収書をもらい忘れたり紛失してしまったりすることもあります。

前述の11項目についてはメモ書きを代用することができるので、支払日時や支払対象者、費目や金額を記録するようにしてください。

支払いを分担する場合には注意が必要

遺族は葬儀終了まで多忙を極めることが多いため、全ての支払いを喪主1人で行うことは困難なケースもあります。

各種支払いについては遺族同士で分担することも多いのですが、領収書を必要とする理由がわからない方や、うっかりもらい忘れてしまうかたもおられます。

支払いを分担する際にはあらかじめ必要項目を伝えておき、適当なメモ用紙などに記録するよう依頼しておけばよいでしょう。

葬式費用で相続税の控除対象にならないもの

葬儀に関連する費用であっても相続税の控除対象にならないものがあり、具体的には以下のようなものが該当します。

  • (1)墓地、墓石などの購入費
  • (2)仏壇や位牌の購入費
  • (3)墓石への彫刻費
  • (4)香典返し
  • (5)供花やお供え
  • (6)初七日等の費用
  • (7)医学および裁判上の処置費用(司法解剖など)

墓地や墓石の購入費など、葬儀に直接関係ない費用は控除対象外であり、墓地の借入料金も同様となっています。

納骨の際には墓石や墓誌に名前を刻みますが、納骨に必要とされる費用ではないため控除対象とはなりません。

また、香典返しは必ずしも葬儀に必要な費用とは考えられていないため、控除の対象外となります。

初七日法要に必要な費用は葬儀費用として認められていませんが、近年では葬儀の後(同日)に行うことが多く、葬儀社からの請求書で代金が区別されていない場合は、通夜・告別式に含められることになり、葬儀関連の費用として控除対象となります。

高すぎる葬儀費用には要注意

相続税対策を意識し過ぎるあまり、高額な葬儀にしてしまうのも問題があります。

国税庁では葬儀費用については「被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められる費用」と定めているため、身分不相応となる高額な葬儀では「葬儀費用」が認められない可能性もあります。

また相続放棄を考えている方の場合、必要以上に高額な葬儀を行えば「相続承認」とみなされることがあるので注意してください。

相続人によっては葬式費用が相続税の控除対象にならないことも

相続人の中には葬儀費用の控除が認められない方もいるので注意が必要です。

葬儀費用の控除ができない相続人には「制限納税義務者」と「特定受遺者」の2種類があるので、それぞれについて解説します。

制限納税義務者とは?

相続発生時、また相続発生時から遡って5年以内に国内住所を有していない人を「制限納税義務者」といいます。

つまり海外在住の相続人ということになり、国内に所在する財産のみ課税されるよう制限されています。

制限納税義務者は葬儀費用を相続税の控除対象にすることができません。

特定受遺者とは?

「相続財産の○○%」といった割合ではなく「○県△市の土地」など遺言によって特定財産を相続する人を「特定受遺者」といいます。

一般的には法定相続人以外の方へ遺贈(遺言で財産を承継すること)するケースが多く、葬儀費用を支払う立場にない方が特定受遺者となるため、葬儀費用の控除も認められないという考え方になっています。

葬儀費用を控除したい人が知っておくべきこと

ここからは、葬儀費用を控除したい人が知っておくべきことを紹介します。

葬儀費用をそのまま相続税から引けるわけではない

葬儀費用は相続税の控除に利用できますが、注意が必要です。

例えば相続財産が3,000万円・相続税が1,000万円あった場合に、葬儀費用が200万円だったとします。

このとき「相続税1000万円ー葬儀費用200万=相続税800万円」とはなりません。

控除とは税金の計算するときに、課税金額から差し引ける金額のことです。

そのため上記の例だと、相続財産3,000万円ー葬儀費用200万円=課税対象2,800万円となり、2,800万円の相続財産に対して相続税がかかります。

つまり、葬儀費用の控除は相続税からそのまま差し引くわけではないと覚えておきましょう。

領収書・レシートを必ず保管しておく

葬儀費用の控除では、支払いの領収書・レシートを保管しておく必要があります。

相続税の申告時に、領収書・レシートを添付して、控除を利用するからです。

そのため、葬儀費用の支払いに関する領収書・レシートを必ず保管しておきましょう。

もし領収書・レシートがない場合は、自分で日付・支払い先・金額・内容をメモしておけば、領収書の代わりとして使用できます。

ただし自分でメモした場合は、自己申告となるため、虚偽の報告をしないように気をつけてください。

相続税の申告時に葬儀費用を記載する

葬儀費用を控除するときには、相続税の申告用紙に詳細を記載する必要があります。

葬儀費用が自動的に控除されるわけではなく、自分で申告用紙に金額を記載して、領収書を添付しなければいけません。

申告が正しく受理されることで、初めて葬儀費用の控除が利用できます。

相続税の申告には期限がある

相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内が期限になります。

この期限を超えてしまうと、申告ができなくなる可能性もあるため、注意しましょう。

相続税の納付期限も同様に10ヶ月以内となっています。

相続する財産が少なく相続税がかからない場合は、申告自体が不要となっています。

「自分は申告が必要なのか?」と迷ったら、専門家である税理士への相談がおすすめです。

相続税対策なら税理士への相談がおすすめ

相続税は他の税金に比べて、税率が高く設定されています。

そのため、しっかりと節税しておかなければ、高い税金を払うかもしれません。

「相続税を損をしたくない」という人は、プロである税理士へ相談しましょう。

税理士であれば、専門的な知識・経験から一番節税できる方法を教えてくれます。

初回の相談を無料で受け付けている税理士も多いため、まずは無料相談から利用してみましょう。

まとめ

葬儀費用の一部は課税遺産総額から差し引き(控除)できるため、相続税の負担を軽減する要素となります。

財産の状況や家族構成によっては相続税を0円にすることも可能でしょう。

しかし控除対象となる費用にはグレーゾーンもあり、素人の判断では危険な場合もあります。

まずは領収書やレシート、メモなどの記録をきちんと残しておき、相続に精通した税理士へ相談してみてください。

相続に強い税理士であれば、相続税対策を考慮した上で控除対象や対象外を分類してくれます。

ちなみに、相続税申告にかかった税理士費用は相続税計算から控除できるか?これらの専門家報酬については誰が負担すべきか?について気になる場合はこちらの記事を参考にしてください。

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