500万の遺産にかかる相続税はいくら？課税対象になる財産・ならない財産

亡くなった人が残した相続資産があると、相続税の課税対象になります。

相続税の負担は相続人にとって大変大きいため、相続が発生する前から大きな不安を抱えている人もいるでしょう。

そこで、たとえば500万円の遺産がある場合にいくらの相続税が発生するのか、確認しておきましょう。

また、相続税の計算方法や節税を行う方法も、確認しておきます。

500万円の遺産にかかる相続税はいくら？

遺産が500万円あると、相当大きな相続税が発生するのではないかと心配な方もいるのではないでしょうか。

しかし、遺産が500万円であれば相続税は発生しません。

これは、相続税の計算には基礎控除というものがあり、その基礎控除の額内に遺産がおさまる場合には納税は不要となるためです。

基礎控除の金額は、「3,000万円＋600万円×法定相続人の数」で計算されます。

この基礎控除より遺産の金額の方が少ない場合には、相続税は発生しません。

また、基礎控除より遺産の方が少ない場合は、相続税の申告も必要ありません。

つまり、遺産が500万円だけであれば納税も申告も必要ないということです。

相続税の課税対象になるもの・ならないもの

遺産が500万円だけであれば、相続税は発生せず申告も必要ないことがわかりました。

しかし、遺産が500万円だけというのは、相続税の課税対象になる金額としてはやや少ないようにも思う人もいるでしょう。

というのは、相続税の課税対象となる遺産は、預貯金などの目に見えてわかりやすい財産だけではないからです。

何が相続税の対象となる財産で、また何が相続税の対象にならないのかを確認しておきましょう。

相続税の対象になる財産

相続税の対象になるものは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産のすべてです。

あらゆる財産のすべてが対象となりますが、主に以下のような種類の財産があげられます。

また、これ以外にも相続税の対象になる財産として、注意が必要なものがいくつかあります。

①死亡保険金

被相続人が亡くなったことで受け取る死亡保険金は、その受取人が契約によって定められており、遺産ではないとされています。

ただし、亡くなったことでその給付が確定することから、死亡保険金も相続税の対象となる財産とみなされます。

そのため、死亡保険金も相続税の計算に含めなければならない資産です。

②相続発生前3年以内の贈与

相続が発生する前3年以内に行われた贈与については、贈与された財産を相続税の計算対象に含めなければなりません。

これは、贈与税を支払った場合だけでなく、贈与税を支払っていない場合も含みます。

なお、贈与を行った時に贈与税を支払った場合には、その贈与税額を計算で求められた相続税額から控除できます。

相続税の対象にならない財産

被相続人が残した遺産の中にも、相続税の対象にならないものがいくつかあります。

まずは、墓地や墓石、仏壇や仏具などです。

亡くなる直前に自分のお墓などを準備していた場合、その墓地や墓石は相続税の対象になりません。

また、死亡保険金を受け取る場合、その金額のうち「500万円×法定相続人の数」で計算される金額まで非課税となります。

死亡保険金の金額によっては、相続税の対象額が0円となり、1円も相続税が発生しないこともあり得ます。

相続税の計算方法

相続税の計算方法は、他の種類の税金と比較してわかりにくくなっています。

そこで相続税の計算方法を確認し、相続税額を自身で計算する方法を解説していきます。

流れに沿っての解説となるので、順番に見ていきましょう。

1）遺産の総額を求める

あらゆる遺産が相続税の課税対象となります。

そこで、その遺産の種類ごとに相続税評価額を求め、その合計額を計算します。

現金や預貯金は、亡くなった日の残高が相続税評価額となります。

また、土地は路線価方式または倍率方式のいずれかでその評価額を計算しなければなりません。

さらに、建物は固定資産税評価額がそのままその相続税評価額とされます。

有価証券については、亡くなった日の終値の他、その月の終値の平均などを算出し、最も低い額を相続税評価額にできます。

このように、相続税評価額の算出方法も、財産の種類に応じて多種多様になっています。

死亡保険金を受け取る場合は、その保険金額が相続税の対象になります。

ただし、500万円×法定相続人の数の計算で求められた非課税枠を差し引き、残りの金額を課税対象とします。

また、相続前3年以内に贈与により財産を受け取った人がいる場合は、贈与された金額を相続財産に含めます。

たとえば、ここまでの説明のように、預貯金500万円、土地5,000万円、建物800万円、有価証券2,500万円の場合、預貯金だけだと500万円ですが、正しい遺産総額は8,800万円になるということです。

2）基礎控除額を求める

相続税の基礎控除額は、「3,000万円＋600万円×法定相続人の数」で計算を行います。

法定相続人の数によって基礎控除額が大きくなるため、法定相続人の人数を間違えないようにしなければなりません。

たとえば法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、基礎控除額は以下のように求められます。

3,000万円＋600万円×3人＝4,800万円

3）課税遺産総額を求める

遺産総額と基礎控除額を求めたら、「遺産総額－基礎控除額」の計算を行いましょう。

この段階で、遺産総額より基礎控除額の方が大きくなるのであれば、相続税の課税遺産総額はゼロとなります。

この場合は、相続税の納税も申告も必要ありません。

一方、遺産総額の方が基礎控除額より大きい場合には、課税遺産総額の金額が計算されます。

この金額を使って相続税の計算を行います。

遺産総額8,800万円、基礎控除額4,800万円の場合、課税遺産総額は以下のようになります。

8,800万円－4,800万円＝4,000万円

4）相続税の合計額を計算する

相続税を計算する際は、まず課税遺産総額を法定相続分に分割します。

先ほどの事例では、4,000万円を配偶者が2,000万円、子ども2人がそれぞれ1,000万円となります。

その後、法定相続分に分割した金額に税率を乗じて相続税を計算します。

相続税の計算を行う際は、速算表を用います。

法定相続分で分割した金額	税率	控除額
1,000万円以下	10%	－
3,000万円以下	15%	50万円
5,000万円以下	20%	200万円
1億円以下	30%	700万円
2億円以下	40%	1,700万円
3億円以下	45%	2,700万円
6億円以下	50%	4,200万円
6億円超	55%	7,200万円

参考：国税庁

2,000万円については、2,000万円×15%－50万円＝250万円となります。

また1,000万円については、1,000万円×10%＝100万円となります。

最後に、法定相続分に分割した金額から計算された相続税額を合計します。

この事例の場合では、以下のようになります。

250万円＋100万円＋100万円＝450万円

5）相続人ごとの納税額を求める

相続税の合計額を求めましたが、その金額を実際に相続する遺産の割合に按分して、それぞれの納付額を計算します。

先ほどの事例で、遺産分割を3人の相続人が均等に行う場合にはその納付額はそれぞれ150万円ずつとなります。

相続税を節税する方法

相続税の納税額は、遺産の金額によっては大変大きな負担になってしまいます。

そこで、相続税の負担を少しでも軽減するための節税を考える人もいるでしょう。

どのようにしたら相続税を節税できるのか、その方法をご紹介します。

控除や特例を適用する

相続税の負担が少しでも軽減できるよう、控除や特例の制度が設けられています。

特に対策をしないまま相続が発生しても、要件を満たせば控除や特例が適用できます。

たとえば自宅の敷地について最大8割減額できる小規模宅地等の特例は、適用できれば大幅に相続税の負担が軽減できます。

また、配偶者が相続した遺産が法定相続分か1億6,000万円のいずれか大きい方の金額までであれば、配偶者の相続税はゼロとなります。

このような特例を上手に利用して、相続税の負担を軽減することができます。

相続発生前から税理士に相談する

相続税の税額を抑えるために最も有効なのは、相続が発生する前から相続税対策を始めることです。

そうすることで、生前贈与や遺産の中身の見直しなど、様々な相続税対策を実行できるからです。

また、どれだけの相続税が発生しそうか知っておくことで、納税資金を準備することもできます。

少しでも不安に思う人は、早めに税理士に相続税についての相談をするといいでしょう。

まとめ

相続税の負担が大きくなるのではないかと不安を感じていても、実際に何か対策をしている人は少ないのではないでしょうか。

相続税の負担を少しでも減らすには、控除や特例を利用することも大事ですが、それ以上に財産の見直しや贈与の活用が重要です。

そして、そのような見直しを行うためには、早い段階から相続税対策を実行することが欠かせません。

相続について不安を感じたら税理士に相談し、現状把握とその対策を実行するようにしましょう。

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