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最終更新日:2022/5/20

相続で預金解約手続きをするには?遺産分割前の預金払い戻し制度も解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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相続で預金解約手続きをするには?遺産分割前の預金払い戻し制度も解説

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この記事でわかること

  • 相続が発生した時に預金を解約するための手続きの流れがわかる
  • 相続の預金解約手続きを行う際に必要な書類を知ることができる
  • 遺産分割協議の間にも預金を解約し払戻しができることがわかる

相続が発生した後に被相続人の口座から勝手に預金を引き出すと、遺産分割の際に大きなトラブルとなる可能性があります。

また、被相続人の預金口座が凍結されてしまうため、相続人の中には支払いに困る場合もあります。

ここでは、相続の際にトラブルとならないよう、解約手続きの流れについて確認しておきましょう。

また遺産分割協議中に、預金口座から払い戻しを受ける手続きについてもご紹介します。

相続が開始したら銀行に連絡する

相続が発生した時には、必ず銀行に連絡をしなければなりません。

銀行に連絡すると、被相続人の口座は凍結され、勝手に引き出すことはできなくなります

預金口座が凍結されるのは、遺産分割の際に相続人同士のトラブルを避けることが要因として挙げられます。

また、相続が発生した際には、被相続人の預金口座から勝手に引き出してはいけません。

もし被相続人の預金から勝手に引き出してしまうと、その時点で単純承認が成立するためです。

「単純承認が成立する」とは、その相続人が被相続人の財産も債務も引き継ぐと決めたことを意味します。

そのため、単純承認が成立すると、相続放棄することができなくなります。

その結果、相続財産に多額の借金が含まれていたとしても、その借金を相続するしかなくなってしまいます。

単純相続を避けるため、被相続人の預金口座から勝手に引き出すことは避けなければなりません。

相続の預金解約手続きの流れ

相続が発生した際に、預金口座を解約するために銀行で行う手続きは以下のとおりです。

相続の預金口座解約手続きの流れ

  • ①必要な書類を集める
  • ②必要事項を記載して銀行に提出する
  • ③口座が解約され払い戻しが行われる

必要な手続きの内容を順番に確認していきましょう。

①必要な書類を集める

相続が発生したことを銀行に伝えても、すぐに解約手続きを進められるわけではありません。

解約手続きには必要な書類があるため、それらの書類をそろえる必要があります。

相続手続の進め方により必要な書類は異なるため、何が必要になるか手続き前に確認しておくことをおすすめします。

詳しくは「【ケース別】相続の預金解約手続きの必要書類」でご紹介します。

②必要事項を記載して銀行に提出する

相続届出書類は、銀行ごとにその書式は異なります。

ただ、記載しなければならない事項は、おおよそ以下のとおりです。

  • 被相続人の氏名や亡くなった日
  • 相続手続を依頼した人の氏名
  • 被相続人の名義となっている預金口座
  • 払戻金を受け取る相続人の預金口座

遺言書や遺産分割協議書で相続する人が明確になっている場合、相続届は受取人となる相続人の署名と実印だけで構いません

すべての書類をそろえて相続届に必要な事項を記載したら、銀行に郵送または提出します。

③口座が解約され払い戻しが行われる

すべての書類がそろい提出書類が受理されると、指定した相続人の口座に預金が振り込まれます。

払い戻しまでの期間は、申請から1か月程度かかります。

【ケース別】相続の預金解約手続きの必要書類

相続にあたって預金口座の解約手続きを行う際には、どのような方法で遺産分割をするかによって必要な書類が変わります。

ケース別に、必要な書類をご紹介します。

①遺言書なし・遺産分割協議書なしの共同相続の場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合に、複数の相続人が共同で相続を行う場合があります。

このような場合に、必要となる書類は以下のとおりです。

書類の種類 内容
戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • すべての法定相続人を確認できる戸籍謄本
    ※法務局が発行した法定相続方法一覧表がある場合は不要
印鑑証明書 法定相続人全員の印鑑証明書
通帳 証書やキャッシュカード、貸金庫の鍵もあわせて準備

②遺言書あり・遺言執行者なしの場合

遺言書があるものの、遺言執行者が定められていない場合に必要となる書類は以下のとおりです。

書類の種類 内容
遺言書 自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれか
家庭裁判所の検認済証明書
  • 自筆証書遺言については、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する検認が必要
  • 検認を終えたことを証明する書類
遺言執行者選任審判書 遺言執行者を家庭裁判所に選任してもらう際に交付される
戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • すべての法定相続人を確認できる戸籍謄本
    ※法務局が発行した法定相続方法一覧表がある場合は不要
印鑑証明書 受取人となる人の印鑑証明書
通帳 証書やキャッシュカード、貸金庫の鍵もあわせて準備

③遺言書あり・遺言執行者ありの場合

遺言書があり、遺言執行者も遺言書で定められている場合の必要書類は以下のとおりです。

書類の種類 内容
遺言書 自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれか
家庭裁判所の検認済証明書 自筆証書遺言については、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認する検認が必要
※検認を終えたことを証明する書類が必要
戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • すべての法定相続人を確認できる戸籍謄本
    ※法務局が発行した法定相続方法一覧表がある場合は不要
印鑑証明書 受取人となる人の印鑑証明書
通帳 証書やキャッシュカード、貸金庫の鍵もあわせて準備

④遺言書なし・遺産分割協議書ありの場合

遺言書はないものの、遺産分割協議が成立し遺産分割協議書がある場合、以下のような書類が必要です。

書類の種類 内容
遺産分割協議書 銀行預金を誰が受け取るか明記されているもの
戸籍謄本
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • すべての法定相続人を確認できる戸籍謄本
    ※法務局が発行した法定相続方法一覧表がある場合は不要
印鑑証明書 法定相続人全員の印鑑証明書
通帳 証書やキャッシュカード、貸金庫の鍵もあわせて準備

遺産分割協議中に相続預金を引き出すには?

遺産分割協議が成立するのは相続が発生してから数か月後であり、中には1年以上かかるケースもあります。

ところが、それまでの間にまとまったお金が必要になると、相続人は支払いに困ることとなるでしょう。

特に被相続人の扶養に入っていた相続人などは、自身で十分なお金を持っていないことも少なくありません。

そこで、遺産分割協議が成立していなくても、相続人が被相続人の預金を引き出すことが認められています

トラブルを避けるために手続きや書類が必要となるため、どのような手続きを行うのか、その内容を確認しましょう。

家庭裁判所の仮処分が不要な場合

引き出そうとする金額が一定額以下であれば、家庭裁判所での手続きは必要ありません。

この一定額という基準の計算は、以下の計算式で行います。

相続開始時点の預金残高×1/3×払い戻しを行う相続人の法定相続分

なお、この計算式にかかわらず150万円が上限額とされます。

この時に銀行に提出しなければならない書類には、以下のようなものがあります。

銀行に提出する書類

  • 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または出生から死亡までの連続した全部事項証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
  • 払い戻しを希望する人の印鑑証明書

場合によっては、この他にも書類が必要となるケースがあるため、事前によく確認しておきましょう。

家庭裁判所の仮処分が必要な場合

払い戻しを受けようとする金額が一定額を超える場合は、家庭裁判所の仮処分が必要となります。

他の相続人の利益を侵害しない範囲内で、家庭裁判所の認める金額まで引き出すことができます。

家庭裁判所の仮処分を受けるためには、遺産分割の調停または審判の申立てを行う必要があります。

その上で、払い戻しを受けようとする金額が必要となることについて、認めてもらわなければならないのです。

なお、この時に銀行に提出する書類には、以下のようなものがあります。

銀行に提出する書類

  • 家庭裁判所の審判書謄本(審判書に確定表示がない場合は、審判確定証明書も必要となる)
  • 払い戻しを希望する人の印鑑証明書

相続の預金解約手続きでよくある質問

相続に関する手続きは複雑で、様々な書類を用意しなければならないため、どうしても後回しになってしまいがちです。

また、相続人が被相続人の近くに住んでいないなどの状況も考えられ、すぐに解約できないことも少なくありません。

ここでは、預金口座を相続した場合に起こり得る様々な疑問について、お答えいたします。

相続した預金口座はいつまでに解約しなければならない?

相続した預金口座をいつまでに解約しなければならないという、はっきりとした期限はありません

そのため、放置しておいたからといってペナルティを科されるということもありません。

ただし、口座は凍結されたままとなるため、そのまま放置しておいても預金は利用できないこととなります。

なお、預金には休眠口座という制度があります。

これは、10年以上使用していない口座については、銀行によって別に管理されることとなる状態をいいます。

休眠口座になると、引き出す際に特別な手続きが必要となるため、その前には解約手続きをしておくといいでしょう。

相続人がすべて遠方に住んでいて銀行に行けないが?

相続人が被相続人に近くに住んでおらず、銀行の営業時間に出向くことが難しいケースがあります。

このような場合には、ほとんどの銀行で郵送による解約手続きを受け付けています

事前に銀行の支店などに電話で問い合わせを行い、遺言状や遺産分割協議書の有無、相続人の状況などを伝えましょう。

その上で、銀行から送られてくる書類に必要事項を記載し、相続人が用意する書類と一緒に返送します。

また、貸金庫などの利用があることも考えられるため、一緒に手続きできないか確認するといいでしょう。

毎月の引き落としは被相続人の口座からできるか?

銀行が相続の発生を確認した段階で、被相続人名義の口座はすべて凍結されます。

すると、窓口で引き出しができなくなるだけでなく、公共料金の引き落としや振替などもできなくなります

そのため、被相続人の口座から引き落としが発生している場合は、早めに別の支払い方法に変更しなければなりません。

この時、被相続人の口座にある残高をすぐに使うことはできないため、その点も注意が必要です。

まとめ

相続が発生すると、相続人や遺言書の有無の確認、遺産分割協議など様々な手続きが必要となります。

ただ、その前に葬儀や病院・介護施設などへの支払いが発生し、被相続人の口座が使えず支払いに困ることがあります。

そこで、遺産分割の手続きとは別に、相続人が払い戻しを受けることができる制度が設けられています

また、その後に預金口座を解約するためには、そのパターンに応じて様々な書類が必要となります。

自分がどのパターンにあてはまるのかを確認し、事前に銀行に連絡するなどして手続きを進めるようにしましょう。

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