この記事でわかること
- 遺産を相続人で公平に分割するための方法を知ることができる
- 特定の人が遺産を独り占めできないようにするための対処法がわかる
- 二次相続を考えて配偶者の相続分を考えることの重要性がわかる
ほとんどの人にとって自分自身が相続人になることは、親や配偶者が亡くなった時に限られます。
そして、親が亡くなる場合の多くでは、財産を保有する父親が先に亡くなるのです。
父親の財産を母親と子供で公平に分割するためには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
また、二次相続に起こりやすいトラブルについても、その内容を確認しておきましょう。
目次
公平に遺産分割をする方法
財産を保有している父親が先に亡くなると、母親と子供が法定相続人となります。
遺言書がない場合には、すべての法定相続人で遺産分割協議を行い、財産を相続する人を決めます。
また、遺言書がある場合は、基本的にその遺言書のとおりに財産を引き継ぐこととなるのです。
しかし、相続人の中には、勝手に相続財産を自分のものにしてしまおうと考える人がいるかもしれません。
ただ、実際には他の相続人に黙って財産を入手することは難しいのです。
まず金融機関の預金口座については、その名義人が亡くなった時点で口座が凍結され、取引が停止されます。
そのため、相続人であっても勝手に預金の残高を引き出すことはできません。
また、土地や建物などの不動産については、原則として遺言書や遺産分割協議書がなければ相続登記をすることはできません。
このように、相続人が他の相続人に知らせずに、すべての財産を手にすることはできないようになっているのです。
ただ、不動産の相続登記は、遺産分割協議書がなくても相続人が単独で、法定相続分どおりに登記することは可能です。
そのため、独り占めはできなくても、法定相続分を相続登記したうえで、後日その相続分を他の人に売却することは可能です。
遺産を独り占めされそうになった場合の対処法
遺産を独り占めしようとする相続人がいる場合、具体的にどのような方法で独り占めを防ぐことができるのでしょうか。
ここでは、遺産を独占しようとする人がいる場合の対処方法について、ケースごとに考えていきます。
遺言書がない場合
遺言書がない場合、遺産は遺産分割協議を経て、その遺言書で指定された人の者となります。
遺産分割協議は、すべての相続人が参加し、すべての相続人が同意をして初めて成立するものです。
そのため、基本的に誰か1人の相続人だけが勝手に独り占めすることはできないのです。
一方、相続人が勝手に独り占めするのではなく、遺産分割協議を行ったうえで1人の相続人が相続する場合もあります。
このようなケースは、特に父親が亡くなって母親が財産を相続する際にあります。
この場合は、他の人も同意しているため独り占めとは言わない方が適切ですが、1人ですべてを相続しない方がいい理由があります。
それは、二次相続での際に納めなければならない相続税の額が大きくなることです。
トータルの相続税額を考えると、一次相続の段階で計画的に遺産分割する方が有利になることが多いのです。
遺言書がある場合
一方、被相続人が遺言書を作成している場合は、その遺言書の作成段階から関わることで、独り占めをすることが可能となります。
遺言書が作成されていて、その遺言書が有効に成立すると、遺言書に書かれたとおりに遺産分割を行うこととなるためです。
また、遺言書の内容は財産を保有する遺言者が自由に決めることができます。
そのため、他の相続人が知らない間に、すべての財産を1人の相続人が承継するという内容の遺言書を残すことができるのです。
遺言書がある場合のポイント1 遺言書は本当に有効か
ただし、遺言書があるからといって、すべてそのとおりになるとは限りません。
まず、その遺言書が有効に成立しているのかどうかが、大きなポイントとなります。
遺言書にはいくつかの種類があります。
その中で、最も多く利用されているのが「自筆証書遺言」と呼ばれる遺言書です。
この遺言書は、文字通り遺言者が自筆で作成した遺言書のことです。
自宅から発見された遺言書は、すべてこの自筆証書遺言に該当するのですが、有効に成立するためにはいくつもの条件があります。
まず、遺言書の本文が自筆されていない場合は無効となります。
平成30年7月6日以前に作成された遺言書については、財産目録もすべて自筆していなければなりません。
さらに、遺言者が署名・押印をしていなければなりませんし、作成した日付も記載していなければなりません。
このような条件をすべて満たして、初めて遺言書は有効に成立するのです。
疑わしい点がある場合は、その遺言書が有効に成立しているのか争うことができます。
作成された時期と筆跡などから判断して、疑わしいと思うのであれば、裁判所でその遺言書の有効性を争うことができるのです。
さらに、その遺言自体は有効でも、それより後に作られた遺言書が見つかった場合、最後に作られた遺言書が有効なものとなります。
部屋の中や貸金庫などをくまなく探すことで、別の遺言書が有効となる可能性もあるのです。
遺言書がある場合のポイント2 遺留分侵害額請求
遺言書を作成する際には、遺留分を無視して作成されたものも多くあることでしょう。
この遺留分とは、法定相続人のうち配偶者・子供・親に対して認められる、最低限相続することができる財産の割合のことです。
本来、一定の割合の相続が見込まれた相続人については、何も相続できないということのないよう、遺留分が認められているのです。
遺留分がある相続人は、遺言書にしたがうと遺留分が侵害される場合には、その侵害された金額を請求することができます。
黙っていても認められる権利ではないため、遺留分が侵害された場合は侵害した人に対して請求する必要があるのです。
なお、遺留分侵害額請求は、いきなり裁判所に提訴するのではなく、内容証明郵便を送り、話し合いで解決するのが一般的です。
遺産相続トラブルになりやすい二次相続
最初に父親が亡くなって発生する相続を一次相続、次に母親が亡くなって発生する相続を二次相続と言います。
この場合、二次相続にトラブルが発生することが多いのですが、それはなぜなのでしょう。
また、そのようなトラブルを避ける方法はないのでしょうか。
二次相続がトラブルになりやすい理由
二次相続がトラブルになりやすい理由はいくつかあります。
1つめに考えられるのは、一次相続の段階で、父親の財産をとりあえず母親が全部相続することとしているためです。
母親が1人になっても不安のないように、財産をすべて相続するというのは心情的には理解できます。
また、相続税の計算を行う際に配偶者控除があり、法定相続分を超えて相続しても1億6,000万円までの財産には相続税がかかりません。
しかし、一次相続の段階で遺産分割についての話し合いをしていないために、二次相続で兄弟どうしの争いになってしまうのです。
また、一次相続で配偶者控除を最大限利用した場合、逆に二次相続での相続税額は非常に大きくなってしまいます。
したがって、母親がとりあえず全部相続すればいいという遺産分割の方法にはメリットはないのです。
2つめにあげるのは、兄弟だけでの話し合いは揉めやすいということです。
一次相続の段階では母親がいるため、その母親のことも気遣いながら話し合いをすることとなります。
しかし、二次相続では母親もいないために、兄弟げんかのように激しい争いになってしまう場合があるのです。
二次相続でのトラブルを避けるには
二次相続で揉める可能性を少しでも下げるには、一次相続が発生した段階できちんと話し合いを行うことです。
父親が残してくれた財産がどれくらいあるのか、母親はこの先どれくらいの財産が必要なのか、みんなで考えてみましょう。
また、母親の意見も聞きながら、子供たちが一次相続で相続する財産と二次相続で相続する財産について話し合っておきましょう。
当然、このような話し合いを行えば、母親がすべての財産を独り占めすることもできなくなります。
この時、遺産分割についての話をするだけでなく、母親の生活の面倒を誰がみるのかといったことも話しておくといいいでしょう。
そのことを前提に、遺産分割の割合を変更したり、財産を変更したりすることもできるのです。
全員で話し合いを行う機会は、それほど多くないはずです。
母親が健在なうちに、全員で話し合いを行うことが、トラブルを避けるためのポイントになります。
まとめ
相続は、人生の中で何度も経験するものではありません。
そのため、前もって何をしたらいいのかわからなかったり、相続が発生した時の対処法が分からなかったりするのです。
相続や遺産分割、遺言書といった制度については、ある程度基礎知識を身につけておく必要があります。
また、そのような知識が不足していると感じる場合には、専門家に相談するのも解決方法の1つとなります。
大切なのは、相続の関係者どうしできちんと話し合いを行うことです。
そのような話し合いを行うことで、トラブルを回避することが可能となるのです。
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