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最終更新日:2024/4/1

亡くなった人の預金をおろすには?口座凍結前と凍結後のおろし方や注意点・トラブル回避方法について

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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亡くなった人の預金をおろすには?口座凍結前と凍結後のおろし方や注意点・トラブル回避方法について

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この記事でわかること

  • 亡くなった人の銀行口座は凍結され利用できなくなることがわかる
  • 凍結された故人の銀行口座から払い戻す方法を知ることができる
  • 亡くなる前後に預金をおろす場合の注意点を知ることができる

亡くなった人の銀行口座は、金融機関が死亡の事実を確認するとただちに凍結されてしまいます。

そのため、生前の入院費用や葬儀費用を払おうとした時に、預金が引き出せないということがあるのです。

故人の預金から葬儀費用などを支払うためには、どのような方法が考えられるのでしょうか。

また、故人の預金からお金をおろす際の注意点にはどのようなものがあるのか、確認していきます。

死亡届を出すと銀行口座は凍結される?

金融機関は、亡くなった人が口座名義人となっている銀行口座については、死亡の事実を確認しだい凍結してしまいます

口座が凍結されると、その口座名義人の家族や相続人であっても、引き出したり振り込みをしたりすることはできなくなります。

それでは、金融機関はどのようにして口座名義人が亡くなったという事実を把握しているのでしょうか。

実は、この点については、決まった方法があるわけではないのです。

亡くなった人の相続人や親族から連絡が入る場合が、もっとも確実に死亡を確認できる方法です。

そのほか、新聞のお悔やみ欄に故人の名前が載っていれば、それをきっかけに口座が凍結される場合があります。

また、葬儀や告別式の看板から、口座名義人が亡くなったということを確認するケースもあります。

さらに、別納取引先から亡くなったらしいという情報を得て、その情報がきっかけになることもあります。

なお、市区町村役場に死亡届を提出すると、その情報が金融機関に伝えられると勘違いしているケースがあります。

しかし、実際には死亡届を出したという情報が金融機関に役場から伝えられることはありません

そのため、銀行口座を凍結されるのを防ぐために、死亡届をわざと遅く出すということのないようにしましょう。

故人の預金を口座凍結前におろすのは問題ない?


亡くなった人の名義となっている銀行口座であっても、金融機関が死亡の事実を把握していなければ、凍結されることはありません。

そこで、亡くなってから口座が凍結される前に、葬儀費用などのお金を引き出しておく人がいます。

また、周りの人に相談すると、早いうちにお金を引き出しておく方がいいとアドバイスされることがあります。

しかし、死亡してから凍結されるまでに預金をおろすことには、大きく2つの問題があります

相続放棄することができなくなる

1つめの問題は、預金をおろしてそのお金を自分のために使ってしまうと、単純承認が成立してしまいます

単純承認が成立すると、その後、被相続人に多額の債務があるとわかっても、相続放棄することができなくなります。

引き出したお金について、葬儀費用などの支払いに使うだけであれば、問題になることはありません。

ただ、引き出した後の現金について、実際に何に使ったのかを証明するのは難しく、トラブルになりやすいのです。

相続放棄する可能性がまったくないのであればいいのですが、借金などがあるかもしれない場合は、預金をおろすのは避けましょう。

ほかの相続人からの反発がある

被相続人の保有する財産は、遺産分割が完了するまでは、すべての相続人の共有財産となります。

そのため、たとえ法定相続人であっても、勝手に銀行口座をおろすことは本来認められない行為です。

それでも一般的にこのようなことが行われるのは、葬儀費用など相続人全員で負担すべき支払があるためです。

被相続人の銀行口座から勝手にお金をおろし、わずかな金額であっても個人的に使ってしまえば、ほかの相続人は反発するでしょう

他の相続人とのトラブルを防ぐためには、亡くなった方の銀行口座はそのままにしておくのが望ましいのです。

※ゆうちょ銀行の口座引き出しについては「ゆうちょ銀行の名義人が死亡した場合の引き出し・相続手続きについて【少額の簡易手続きや口座凍結解除方法を解説】」に詳しく解説しています。

支払いのためにどうしてもお金が必要な場合は必ず、領収書でその金額と支払内容がわかるように証拠を残しておきましょう。

故人の預金を口座凍結後におろす方法

いったん凍結された故人の銀行口座は、いつまでも引き出すことができないというわけではありません。

凍結をされた状態でお金を引き出す方法もありますし、凍結を解除する方法もあります。

凍結された銀行口座を解錠するための方法について、解説していきます。

仮払いを受ける方法

仮払いとは、遺産分割が成立する前に個人の銀行口座からお金を引き出す制度です。

遺産分割協議が成立するためには、すべての相続人が同意する必要があるため、半年以上後になることも珍しくありません。

その間、預金を1円も引き出すことができないのは不都合であるため、このような制度が設けられています。

仮払いを受けるためには、相続人全員の同意書を提出する方法と、ほかの相続人の同意がない状態で申請する方法があります。

また、家庭裁判所での手続きを行い、仮払いを受ける方法もあります。

ただし、この方法は遺産分割調停や審判を行うことが前提となるため、あまり一般的ではありません。

相続人全員の同意書を提出する場合

凍結された銀行口座から仮払いを受けるには、基本的に相続人全員がその内容を知っており、かつ同意していなければなりません

これは、個人名義の財産は相続人全員の共有財産であるという法的な考え方を反映したものです。

また金融機関としても、相続人どうしのトラブルに巻き込まれる心配がありません。

ただし、相続人全員に同意書をもらうのは簡単なことではありません。

特に、遠方に相続人が住んでいる場合には、同意書を集めるだけでも一苦労となるでしょう。

ほかの相続人の同意なく申請する場合

2019年7月1日から、相続人全員の同意書がなくても凍結された銀行口座から仮払いを受けることができるようになりました。

この場合、同意書を用意する必要はありませんが、引き出すことのできる金額には制限があります。

預金の残高のうち1/3に相当する金額に法定相続分を乗じて計算した金額が、仮払いの上限額となるのです。

また、1金融機関あたりの上限額は150万円とされています。

たとえば、個人の銀行口座の残高が600万円、法定相続人が配偶者と子供2人の場合、それぞれの上限額の計算方法を確認しましょう。

配偶者の場合、600万円×1/3×1/2=100万円となります。

また、子供については600万円×1/3×1/4=50万円となります。

口座から引き出しをするときには、下記の4点が必要になります。

  • ・亡くなった方の戸籍謄本
  • ・亡くなった方の除籍謄本
  • ・相続人全員の戸籍謄本
  • ・引き出しをする相続人の印鑑証明書

スムーズに引き出すためにも、忘れずに準備しておきましょう。

相続手続きにより払い戻す方法

相続手続きにより、被相続人の財産を引き継ぐ人が確定すれば、凍結されていた銀行口座を払い戻すことができるようになります。

財産を引き継ぐ人が確定する場合には、遺産分割協議が成立した場合や遺言書がある場合があります。

また、家庭裁判所での調停や審判が成立した場合もこれに該当します。

故人の死亡後に預金をおろす場合の注意点


故人の銀行口座から預金を勝手におろしたとしても、そのこと自体が犯罪になったり、罰則を受けたりするわけではありません。

しかし、個人の財産をほかの相続人が知らないうちに個人的に使ってしまうことは、民事上の責任を問われる可能性があります

被相続人が残した財産は、いったん相続人全員が共有しているものとされます。

その後、遺言書があることがわかれば、その遺言書のとおりに財産を分割することとなります。

また、遺言書がなければ、遺産分割協議によりその財産を受け取る人を決めるのです。

しかし、このような過程を経ず、仮払いの手続きも行わずに預金をおろすことは、他人の財産を勝手に使ったのと同じなのです。

そのため、ほかの相続人やその財産を受け取るはずだった人から、受け取った金額を返還するように請求される可能性があります。

また、ほかの相続人などに損害を与えたと認められた場合には、損害賠償請求を受けることもあるのです。

また、故人の銀行口座からお金を引き出して使った後、故人に多額の借金があったことがわかる可能性もあります。

このような場合には、故人のお金を受け取った時点で単純承認が成立し、相続放棄ができなくなります。

わずかな金額を手にしたために、多額の借金を返済しなければならなくなるケースもあるため、注意しなければなりません。

口座の残高が少額だった場合

故人の口座残高が少額な場合もあるかもしれません。

「少額だった場合はどうすればいいの?」と思うかもしれませんが、結論からいうと放置しておくのがおすすめです。

なぜなら、凍結された口座からお金を引き出すのは手間がかかるため、少額だと割に合わないからです。

口座は10年以上取引をしていないと休眠口座になり、残高が民間公益活動に寄付されます。

少額であれば休眠口座になるまで放置して、寄付として活用するのがいいでしょう。

「少額であってもお金をおろしたい」という人は、手続きも可能なので、引き出し手続きをしてみましょう。

死亡直前・直後に預金をおろしてトラブルにならない方法

それでは、故人の銀行口座からお金をおろしてもトラブルにならないようにするには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。

一番いいのは、故人の銀行口座には手を付けないことなのですが、どうしてもお金が必要な場合もあります。

そのような場合の対処方法について、まとめてみました。

仮払い制度を利用する

まずは、遺産分割協議が成立しなくても利用できる仮払い制度を利用するようにしましょう

以前は、すべての相続人の同意書が必要でしたが、今では同意書がなくても払い戻しを受けることができます。

ただし、仮払いを受けた金額については自由に使っていいわけではありません。

葬儀費用や故人の借金の返済を行うのであれば問題ないのですが、相続人の個人的な支出に使えば、トラブルの原因となります。

仮払い制度を利用すれば、どのようにお金を使ってもいいと勘違いしないようにしましょう。

遺産分割協議を早く行う

遺言書があれば、その遺言書のとおりに払い戻しを受けることができますが、遺言書がない場合は遺産分割協議を行います。

遺産分割協議が成立するには相続人全員の同意が必要なため、成立まで何か月もかかるケースがほとんどです。

しかし、この期間が延びても相続人にメリットになることは何もありません。

そのため、できるだけ早く遺産分割協議を成立させて、個々の相続分を確定させるようにしましょう。

そうすれば、預金についても早く払い戻しを受けることができるようになるのです。

ほかの相続人に隠れて預金をおろさない

仮払い制度を利用する際には、ほかの相続人に伝えなくても払い戻しを受けることができるようになりました。

しかし、仮払いを受けた金額を本当に被相続人のために使ったのか、トラブルが発生する可能性はあります。

トラブルを防ぐためには、仮払いを受けることをほかの相続人に伝えるとともに、何に使うのかも明らかにしておきましょう

また、領収書などの書類を忘れずに保管しておくようにします。

死亡前に預金をおろした場合は使い道に注意

個人が死亡する前に、口座から預金をおろした場合は使い道に注意してください。

普通預金の引き出し・定期預金の解約も同様ですが「なにに使ったのか?」が重視されます。

例えば故人の生活費として口座から預金をおろした場合は、問題ありません。

故人のためにお金を使ったとしたら、相続の対象にもならず、トラブルは起きないでしょう。

しかし故人の死亡前に預金をおろして、自分の生活費として使っていたら、それは相続の争点になります。

もし故人の口座から10万円の預金をおろして、自分の家賃支払いに使ったとしたら、他の相続人には10万円を請求できる権利が発生します。

「自分のために故人のお金を使ったなら、その分をお金を賠償しろ!」と言われても、当然の状態になります。

このように、死亡前に預金をおろしたり定期預金を解約したりして、自分のお金として使うのは危険です。

使った分の請求を受けたり、それがきっかけで相続トラブルに発展するかもしれません。

故人名義のサービス・契約は名義変更する

故人の口座からの引き落としや、故人名義でサービスの支払いを契約しているケースもあるでしょう。

必ず故人名義から、名義変更してください。

なぜなら故人の口座で料金支払いを設定していると、口座凍結後に支払いができなくなるからです。

もし家賃・水道ガス電気代などを故人の口座で支払っていると、凍結後に未納になり問題になるかもしれません。

水道・ガス・電気などが未納になってしまうと、サービスの提供がストップする可能性もあります。

そのため、故人名義のサービス・契約に関しては、早めに名義変更を行いましょう。

相続税が発生したら必ず納税する

故人の預金が多額だった場合は、相続税が発生するかもしれません。

相続税は、相続財産の合計から基礎控除を引いて、残った金額に課税します。

基礎控除は法定相続人の人数によって異なりますが、最低でも3,600万円は基礎控除として非課税になります。

そのため、相続する財産が3,600万円以上ある場合は、相続税が課税されるかもしれないので確認しておきましょう。

「なるべく相続税を払いたくない」「隠したらバレないのでは?」と思うかもしれませんが、相続税が発生したら必ず納税してください。

なぜなら相続を隠しても税務署にバレるリスクが高く、もし相続税の未納がバレたときには、通常よりも高い税金を払うことになるからです。

相続は税務調査に入る可能性も高く、完全に隠すのは難しいです。

もし税務調査が入って、意図的に相続税を隠したことがバレてしまうと「悪質な脱税」と判断されるかもしれません。

相続では非課税枠を増やして節税する方法がたくさんあるので、法律の範囲内で可能な節税を選択しましょう。

うまく節税をすれば、相続税の支払い金額を大きく抑えられるため、まずは税理士への相談がおすすめです。

相続で悩んだら税理士相談がおすすめ

相続や故人の口座の扱いについて悩んだら、税理士への相談がおすすめです。

下記では、税理士に相談するメリットを紹介します。

相続トラブルを未然に防げる

税理士に相談することで、余計なトラブルを防げます。

相続が始まったら早い段階で税理士に入ってもらい、アドバイスをもらいながら手続きを進めることで、スムーズな相続ができます。

相続の実績がある税理士に相談することで、不安なポイントを解消できて、相続人全員が納得するような相続が可能です。

親族だけで相続の話し合いをすると、感情的になってしまい、トラブルに発展するかもしれません。

「相続のことでトラブルに発展したくない」という人は、税理士への相談がおすすめです。

相続税対策になる

相続では節税が重要になります。

なぜなら相続税は、他の税金に比べて税率が高く設定されています。

そのため節税をしておかないと、高い相続税を払い、結果的に損をします。

相続の実績がある税理士であれば「どうすれば最大限節税できるのか?」といったアドバイスをもらえます。

税理士に頼まず高い相続税を払うよりは、税理士に依頼して節税した方が総合的に得をするかもしれません。

まとめ

相続が発生すると、亡くなった人の名義となっている銀行口座は凍結されてしまいます。

そうすると、葬儀費用などの支払いができなくなるため、亡くなった直後にお金を引き出しておくべきという人もいます。

しかし、安易に預金からお金を引き出すことは、大きなトラブルの原因となる可能性もあります。

預金をおろす際には、仮払い制度として正式に認められた方法があります。

勝手に預金をおろすことは避け、ほかの相続人と話し合いながら手続きを進めるようにしましょう。

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