この記事でわかること
- 法定相続情報一覧図の概要がわかる
- 法定相続情報一覧図を入手するメリットとデメリットがわかる
- 法定相続情報一覧図を使用するケースがわかる
- 法定相続情報一覧図を入手するまでの流れがわかる
- 法定相続情報一覧図の作成方法や書き方がわかる
相続手続きには預貯金解約や不動産の名義変更、相続税申告などがあり、いずれも手続きする人が相続人であることを証明しなければなりません。
銀行や法務局では、被相続人(亡くなった方)と相続人の関係を戸籍から確認するので、必要な戸籍謄本はすべて揃える必要があります。
また、戸籍謄本は膨大な量になるケースが多く、相続手続きの度に役所へ出向かなくてはならないため、相続人にとって大きな負担となっていました。
しかし2017年スタートの「法定相続情報証明制度」を活用すると、戸籍収集の負担を軽減できるので、効率的な相続手続きが可能になります。
今回は法定相続情報証明制度や「法定相続情報一覧図」をわかりやすく解説しますので、相続手続きを控えている方はぜひ参考にしてください。
目次
法定相続情報一覧図とは
被相続人と相続人の関係を家系図方式で表したものが「法定相続情報一覧図」です。
2017年開始の法定相続情報証明制度に導入された仕組みですが、あらかじめ戸籍謄本を取得して法定相続情報一覧図を作成し、法務局に提出します。
内容が正しければ登記官が認証した法定相続情報一覧図の写しが発行されるので、戸籍謄本の代わりとして相続登記などの手続きに使用できます。
法務局では法定相続情報一覧図を5年間保管しますが、保管期間中であれば再発行は無料です。
相続関係説明図との違い
遺産分割するときには相続人の調査が必要となりますが、調査結果を図式化したものが相続関係説明図です。
法定相続情報一覧図と混同されがちですが、相続関係説明図はあくまでも被相続人や相続人の関係をまとめた補足資料であり、以下の点が一覧図と異なります。
- 記載する情報
- 法務局(登記官)による認証の有無
法定相続情報一覧図は戸籍謄本の代わりとして単独機能しますが、相続関係説明図は戸籍謄本とセットで使う書類です。
なお、相続手続きが完了しないうちに次の相続が発生(数次相続といいます)した場合、法定相続情報一覧図は被相続人別に分けて作成します。
法定相続情報一覧図を入手するメリット・デメリット
法定相続情報一覧図を使うと相続手続きは効率化されますが、次のようなデメリットもあるので、特徴を十分に理解した上で活用してください。
法定相続情報一覧図を入手するメリット
法定相続情報一覧図を入手しておけば、以下のようなメリットがあります。
- 戸籍謄本が不要になる
- 複数の相続手続きを同時進行できる
- 何回でも無料で再発行できる
戸籍謄本を揃えて相続手続きする場合、謄本の返却と提出を繰り返すため、手続きの同時進行が困難でした。
手続きに必要な通数を揃えると費用もかさみますが、法定相続情報一覧図は無料で複数枚入手できるので、相続手続きの同時進行が可能になり、費用も抑えられます。
また、法務局の保管期間中(5年間)であれば、何回再発行しても料金はかかりません。
法定相続情報一覧図を入手するデメリット
法定相続情報一覧図を入手するときは、以下のようなデメリットもあります。
- 入手までに時間と手間がかかる
- 正確に作成しなければ認証されない
- 相続人に変更があれば再作成が必要
- 法定相続情報一覧図を使えない機関もある
一覧図の作成には戸籍謄本一式が必要なので、一度は役所に出向いて戸籍を揃える必要があります。
作成を間違えると認証されず、相続人に変更があれば再作成も必要です。
法定相続情報一覧図を使えない金融機関等もあるので、作成前に確認しておくとよいでしょう。
法定相続情報一覧図を使用するケース
法定相続情報一覧図は以下のような相続手続きに使用します。
- 被相続人名義の預貯金解約や払い戻し
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 株式や投資信託等の名義変更
- 自動車や船舶等の名義変更
- 税務署への相続税申告
- 未支給年金の請求
相続財産の種類が多い方や、相続税申告が必要な方には、法定相続情報一覧図の取得をおすすめします。
特に相続税申告は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」の期限があるので、同時進行する相続手続きがある場合に一覧表が役立ちます。
法定相続情報一覧図を入手する方法
法定相続情報一覧図は法務局で入手しますが、事前に戸籍謄本などを取得する必要があります。
具体的な流れは次のようになるので、必要書類を漏れなく準備し、作成ミスがないように注意してください。
必要書類の準備
法定相続情報一覧図を入手するときは、市町村役場で以下の書類を揃えます。
必要な書類
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍や改正原戸籍も含む):1通450円
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票:1通300円程度
- 相続人全員の戸籍謄本または抄本:1通450円
除籍や改正原戸籍は謄本・抄本ともに750円程度の料金です。
被相続人の戸籍謄本は本籍地のある役所から辿っていくため、すべて揃うまでに1ヶ月以上かかるケースもあります。
また、戸籍謄本の取得には本人確認書類(運転免許証など)や印鑑(認印)も必要なので、忘れずに持参してください。
戸籍謄本等は郵送請求も可能
戸籍謄本等は郵送でも請求できるので、役所に出向く時間のない方はぜひ利用をおすすめします。
発行手数料は窓口扱いと同じですが、支払いには定額小為替を使うため、同額分を郵便局やゆうちょ銀行で購入しておきます。
本人確認書類も必要なので、マイナンバーカードまたは運転免許証などの写しも忘れずに同封してください。
返信用封筒や郵便切手も同封しますが、発行する通数が多くなる場合は、切手も多めに入れておきましょう。
なお、返信先は住民登録している住所に限られるため、勤め先などは指定できません。
法定相続情報一覧図の作成と提出
戸籍謄本等が揃ったら、次に法務局ホームページから法定相続情報一覧図の様式を入手しましょう。
一覧図は手書き・パソコン入力のどちらでも構いませんが、記載が完了したら以下の管轄法務局(登記所)のいずれかに提出します。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の死亡時の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の住所地
郵送でも申出できますが、戸籍謄本等の返却が必要な場合は、返信用封筒や切手を同封しましょう。
また、申出の際には以下の書類も必要です。
必要な書類
- 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書
- 本人確認書類の写し(運転免許証など)
なお、申請から交付までは1~2週間程度かかり、戸籍の附票以外は返却されます。
参考:法定相続情報一覧図の様式と記載例(法務局)
参考:申出書の様式と記載例(法務局)
参考:法務局の所在地一覧(法務省)
相続人が多忙な場合は専門家へ依頼する
法定相続情報一覧図の提出は以下の人に依頼できるので、多忙な方は早めに相談しておくとよいでしょう。
- 弁護士
- 司法書士
- 税理士
- 行政書士
- 社会保険労務士
- 土地家屋調査士
- 弁理士
- 海事代理士
- 被相続人の親族(配偶者、3親等以内の姻族、6親等内の血族)
いずれも委任状が必要になるため、以下のリンク(ページの最下部)から様式や記載例をダウンロードしてください。
なお、弁護士や司法書士、税理士などには戸籍謄本の収集も依頼できますが、必ず相続に強い専門家を選ぶようにしてください。
相続の専門家以外に依頼すると戸籍収集に時間がかかり、漏れが生じるリスクもあります。
法定相続情報一覧図を再交付する方法
法定相続情報一覧図は無料で再交付してもらえますが、当初の申出人しか申出できないので注意してください。
また、再交付を申出する際には以下の書類も必要になります。
必要な書類
- 法定相続情報一覧図の再交付の申出書
- マイナンバーカードの表面の写し
- 運転免許証の表裏両面の写し
- 住民票の写し
法定相続情報一覧図の再交付は、当初の申出をした法務局(登記所)のみで受け付けています。
法定相続情報一覧図の作成方法・書き方
法定相続情報一覧図は印刷した様式に手書き、またはエクセルファイルに直接入力して作成します。
作成方法や各項目の書き方にはいくつか注意点があるので、次の解説を参考にしてください。
法定相続情報一覧図の見本
法定相続一覧図は以下のようなイメージで作成します。
用紙サイズや各項目の書き方は次の解説を参考にしてください。
家族構成に応じた様式を使用する
法定相続情報一覧図は相続人の状況に応じた様式を使ってください。
代襲相続が発生している場合や、前妻・前夫との間に認知した子どもがいる場合など、特殊な相続にも対応した様式が用意されています。
また、印刷するときは必ずA4サイズの用紙を使用してください。
様式下部の余白に注意する
法定相続情報一覧図には認証印が押印されるので、下部5cmの余白には何も記入しないようにしてください。
なお、上部や左右の余白は適宜調整して構いません。
被相続人情報の書き方
被相続人の最後の住所は、住民票の除票または戸籍の附票と同じ内容で記載します。
最後の本籍の記載は任意ですが、住民票の除票が廃棄されているときは、被相続人の最後の住所の代わりとして本籍を記載します。
氏名も戸籍謄本や住民票に合わせるので、略字は使わないようにしてください。
出生と死亡の欄には生年月日と死亡日を記載しておきましょう。
記載例
- 最後の住所:東京都港区麻布○丁目○番地○○
- 最後の本籍:東京都品川区大崎○丁目○番地○○
- 出生:昭和○年○月○日
- 死亡:令和○年○月○日
相続人情報の書き方
法定相続情報一覧図にはあらかじめ「申出人」の文字が入力されているので、申出人となる相続人氏名は最上段に記載してください。
出生には生年月日を記載し、その下のカッコ内には被相続人との続柄(長男など)を記載します。
住所の記載は任意ですが、記載しない場合は「住所」の文字を削除し、記載するときは住民票の内容に合わせます。
なお、住所を記載したときは住民票(写し)の添付も必要です。
住所が長くなるときは、読み取りに可能な範囲で文字サイズを下げる、または様式を調整して2段書きにしても構いません。
記載例
- 氏名:相続太郎(申出人)
- 住所:東京都目黒区祐天寺○丁目○番地○
- 出生:昭和○年○月○日
- 続柄:長男
続柄を記載するときの注意点
被相続人との続柄は「妻」や「長男」のように記載しますが、「配偶者」や「子」と記載しても認証には影響ありません。
ただし、配偶者や子と記載した場合、相続税申告の手続きには使えないので注意してください。
まとめ
相続手続きに戸籍謄本を提出する場合、金融機関や税務署でも内容をチェックするため、相続人が多いほど手続きに時間がかかります。
一方、法定相続情報一覧図は法務局が認証してくれるので、相続人だけではなく各機関の事務手続きも効率化されるでしょう。
ただし、法定相続情報一覧図は自分で作成するため、必ず見本(記載例)を参照して誤りが無いように記載しなければなりません。
また、1回だけは必要な戸籍謄本等をすべて収集しなくてはならないため、多忙な方は対応できない可能性もあります。
特に古い戸籍は読み解きが難しいものもあるので、戸籍収集や相続手続きに不安がある方は、早めに相続の専門家へ相談しておきましょう。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。
対応エリアは全国で、オフィスは東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸の主要駅前に構えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。