この記事でわかること
- 農地を相続する場合の手続きの流れや必要書類を知ることができる
- 農地を遺産分割する際に利用できる方法を知ることができる
- 農地を相続する際に発生しやすいトラブルとその対処方法がわかる
被相続人が残した農地は、子どもなどの相続人が相続することとなります。
相続人の中に農業の後継者がいる場合は、その後継者が農地を相続できるようにしようと考えるでしょう。
どのような方法で遺産分割するといいのか、その方法について事前に確認しておきましょう。
また農地を相続する際には、起こりやすいトラブルがいくつかあります。
そのようなトラブルにならないような注意点、対処法について解説していきます。
目次
農地の相続手続きの流れ・必要書類
被相続人が残した財産を相続した場合、相続人や財産の調査の他、相続税の申告・納付などの手続きが必要となります。
農地を相続した場合は、これに加えて農業委員会での手続きも必要となるため、さらにその手順は多くなることが考えられます。
農地の相続手続きを行う際の流れについて、ご紹介していきます。
1)相続人の調査と相続財産の調査
被相続人との関係で、誰が相続人になるのかを確認しておく必要があります。
中には隠し子がいる場合や養子縁組を行っている場合もあるため、必ず確認しなければなりません。
また、被相続人がどのような財産を保有していたのかを調べるのも、相続人の大事な作業です。
農地だけでなく農地以外の財産についてもすべて把握し、遺産分割協議を始める準備をしなければなりません。
2)遺産分割協議
すべての遺産について、誰がどの遺産を相続するのかを決める話し合いを行わなければなりません。
この話し合いを遺産分割協議といいます。
原則として、すべての相続人が遺産分割協議に参加し、分割方法が決定したら遺産分割協議書を作成することとなります。
3)農地の名義変更
農地の名義変更とは、具体的には法務局で行う相続登記を指します。
自宅の敷地を相続登記するのと同じように、農地についても相続人の名義に変更する必要があるのです。
4)農業委員会への届出
農地の相続が行われる際には、農業委員会への届出が必要となります。
農地以外の土地には一切関係のない手続きですが、農地だけは届出が必要となるのです。
農地がある市区町村の農業委員会に対して、所定の届出を行いましょう。
5)相続税の申告・納付
相続税が発生する場合や相続税の特例を利用する場合は、相続税の申告や納付が必要となります。
相続開始から10か月以内が期限となっているので、忘れないように申告・納付を行いましょう。
相続した農地を遺産分割する方法3つ
被相続人とともに農業経営に携わってきた相続人がいる場合、農業の後継者としてその事業を引き継ぐことがあります。
農業経営を引き継ぐためには、その後継者は農地をそのまま引き継ぎたいと考えるのが自然です。
仮に法定相続分のとおりに農地を分けてしまうと、1人あたりの農地は小さな面積となり、農業経営に支障が出てしまうからです。
そこで、後継者が農地をそのまま相続することができるような方法を考えなければなりません。
他の相続人にも理解を得られるよう、様々な角度から遺産分割の方法について検討しましょう。
代償分割を行う
すべての農地を後継者が相続すると、他の相続人とのバランスが取れなくなり、遺産分割協議で揉めることがあります。
そこで、農地を相続した後継者は、他の相続人に対して現金を支払うことがあります。
これが代償分割です。
遺産に農地以外の財産も多くあれば、このような方法を選択する必要はありません。
しかし、農地以外の財産がそれほど多くないケースでは、後継者が自分の財産から他の相続人に支払いを行うことがあり得ます。
特別受益を差し引く
農業の後継者以外の相続人についても遺留分があることから、最低限の相続分を計算することとなります。
ただし遺留分の計算を行う場合に、生前に行われた贈与などを相続分の前渡しに相当するものとして差し引くことができます。
この相続分の前渡しに相当する金額を、特別受益と呼びます。
亡くなる前10年以内に行われた生前贈与や住宅資金などの贈与については、特別受益に該当する可能性があります。
特別受益に該当する金額があれば、その金額を遺留分から差し引くことができるのです。
寄与分を考慮する
遺留分の計算を行う際に、もう1つ重要な要素となるのが寄与分です。
寄与分とは、被相続人の財産形成に貢献した相続人について、その貢献分を他の相続人より多く取得できるものです。
農業を一緒に営んできた人は、被相続人の相続財産の維持や増加に貢献しているため、寄与分が認められます。
寄与分が認められる場合、後継者の相続分が増える一方、同額を他の相続人の相続分から差し引くことができます。
このようにして、少しでも後継者の取り分が増えるよう考慮する必要があります。
農地を相続するときの注意点
農地を相続する場合、宅地の相続とは異なる注意点があります。
ここでは農地特有の注意点について、詳しく解説していきます。
農地を細分化しない
農地は農業を営むために利用される土地です。
その所在地域によっては、農業以外の用途に用いることができないなど、利用方法は厳しく制限される場合があります。
農地を今後も農地として利用するためには、農業に利用しやすい形を維持することが望ましいのです。
農業を営む上では、いかに効率的な経営ができるかがポイントとなっており、そのためには機械化は欠かせません。
機械化やAIの技術を利用して農業を行うためには、細分化された農地は非効率となってしまいます。
そこで、相続する農地はできるだけ細分化しないようにしましょう。
農業委員会への届出を失念しない
農地を相続する場合、宅地などの相続とは大きく異なる点があります。
それは、農業委員会への届出が必要になるということです。
この届出は絶対に必要なものですから、忘れないようにしなければなりません。
また、農業委員会への届出と同時に、農業委員会の許可が必要になる場合もあります。
法定相続人が遺産分割協議により農地を相続した場合は、農業委員会の許可は必要ありません。
遺言を作成し、法定相続人に対して遺贈した場合も、農業委員会の許可は必要ないとされています。
一方、法定相続人以外への遺贈については、農業委員会の許可が必要となるため、届出をしなければなりません。
誰が農地を取得するのかにより、農業委員会への許可が必要となるため、事前に確認しながら進めるようにしましょう。
農地の遺産分割で起きやすいトラブルと対処法
遺産の中に農地が含まれていると、どのようなトラブルが起こりやすいのでしょうか。
農地は宅地などの土地とは異なるので、トラブルを避けるための対処法を考えておきましょう。
遺産分割がまとまらない
遺産に農地を含む場合、その農地は農業を継ぐ人が全部相続したいと考えることが多いでしょう。
この場合、後継者以外の相続人が、他の財産を相続できれば何の問題もありません。
しかし、農地以外の財産がそれほど多くない場合には、他の相続人の取り分が少なくなってしまいます。
この場合、遺産分割協議が成立しないということも考えられるのです。
1つの対処法となるのが、遺言書を作成しておくことです。
後継者については遺言書で農地を引き継ぎ、他の相続人は別の財産を相続するか、遺留分を代償分割により受け取ります。
このようにすることで、後継者が農地を相続できない状態となるのを避けることができます。
一方で、他の相続人が遺留分を確保できない場合などは、遺言書があってもスムーズにいかないこともあるので注意しましょう。
農地を相続する人がいない
実は農地を相続する際の問題としては、農地を相続したい人がいないという問題の方が多いのかもしれません。
相続人は誰も農業を行っていない、あるいは相続人が農地の近くに住んでいない場合もあります。
このような状況では、農地を相続したいと考える人が誰もいないということも珍しくありません。
農地を相続したい人がいなくても、実際は誰かが相続しなければなりません。
売却する前提で相続することもありますが、簡単に売却できないケースもあり、注意が必要です。
他にめぼしい財産がない場合には、相続放棄するのも対処法の1つです。
相続後に転売することができない
先ほどご紹介したように、農地を相続したくなくても、相続人の誰かが相続しなければなりません。
そこで、農地を売却する前提で相続することがあります。
しかし、実際に相続した後に売却しようとしても、その売却は簡単ではありません。
農地を売却するには、農業委員会の許可が必要です。
また、そもそも農地をそれ以外の用途に転用できないケースも数多くあります。
そのため、売却できる可能性はあるのか、事前に確認しておきましょう。
その地域の農地の売買や転用に詳しい専門家に、その後の利用方法について確認しながら手続きを進める必要があります。
まとめ
被相続人が農地を保有していたというケースは、田舎では決して珍しいことではありません。
相続の対象となる農地をどのように相続するのかは、相続人にとってはその後の負担にも関わる大きな問題です。
農業を行うのか、農業は行わず売却したり転用したりするのか、あるいは誰も相続したくないのかで選択肢は変わってくるのです。
相続が発生してからトラブルに発展することのないよう、農地特有の問題について理解しておきましょう。
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