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最終更新日:2024/7/30

成年後見人の手続きは自分でできる?流れ・必要書類・費用を解説

田中 千尋 (司法書士)
この記事の執筆者 司法書士 田中千尋

ベンチャーサポート司法書士法人 司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。

相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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成年後見人の手続きは自分でできる?流れ・必要書類・費用を解説

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この記事でわかること

  • 成年後見人の種類による手続きの違い
  • 成年後見制度の手続きを自分でできるかどうか
  • 法定後見制度と任意後見制度の違いや手続きの方法
成年後見制度とは、判断力が低下した人に成年後見人を設定し、身上監護や財産管理をサポートするしくみです。認知症などで判断力が衰えると、法律行為が制限されるため、必要な契約を結べなくなり、財産も凍結状態になってしまいます。成年後見人は本人の法定代理人になれるため、家族が認知症になったときは、成年後見制度の利用を検討しましょう。

この記事では、自分で成年後見制度の手続きができるかどうか、手続きの流れや必要書類をわかりやすく解説します。

目次

関連動画

成年後見制度とは?利用対象者と制度の注意点などをわかりやすく解説!

動画の要約成年後見制度は判断能力が低下した人を家庭裁判所が選任した後見人が支援する制度です。

成年後見人の種類による手続きの違い

成年後見制度の概要
成年後見制度には「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があり、大きな違いは本人に十分な判断能力があるかどうかです。十分な判断能力があれば自分で任意後見人を選び、任意後見契約を結べますが、認知症を発症した場合のように判断能力が不十分な状態になった後は法定後見制度しか選択できません。

手続きの方法も異なるため、以下の比較表を参考にしてください。

法定後見制度 任意後見制度
後見 保佐 補助
対象となる人 判断能力が欠けているのが通常の状態の人 判断能力が著しく不十分な人 判断能力が不十分な人 十分な判断能力を有する人
本人の同意 不要 不要 ただし、代理権を付与する場合は必要 必要 必要 ただし、本人の判断能力が低下し意思表示できない場合は不要
手続きの方法 家庭裁判所への申立ての後、審判により選任する 任意後見契約の締結後に登記する(任意後見契約は公正証書によることが必要)
後見人の選任方法 家庭裁判所により選任される 任意後見契約により本人が選任する
代理権が付与される行為 財産に関するすべての法律行為 申立ての範囲内で家庭裁判所の審判により決定された特定の法律行為 任意後見契約で定めた法律行為
成年後見人等の同意が必要な行為 なし (日常生活に関することを除いて本人は法律行為ができない) 民法13条1項に定める行為 家庭裁判所の審判により追加することもできる 申立ての範囲内で家庭裁判所の審判により定められた行為 ただし、民法13条1項に定める行為に限る なし
成年後見人等が取り消せる行為 日常生活に関することを除くすべての法律行為 民法13条1項に定める行為 家庭裁判所の審判により追加することもできる 申立ての範囲内で家庭裁判所の審判により定められた行為 ただし、民法13条1項に定める行為に限る なし

成年後見制度の手続きは自分でできる?

成年後見制度の申立てができる人

成年後見制度を家庭裁判所に申立てる場合、以下の人が申立人になれます。

申立人になれる人

  • 法定後見制度:本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、市町村長など
  • 任意後見制度:本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者

四親等内の親族には以下の人が含まれます。

四親等内の親族

  • 一親等:父母、子ども
  • 二親等:祖父母、兄弟姉妹、孫
  • 三親等:曽祖父母、伯父伯母・叔父叔母、甥姪、曾孫
  • 四親等:高祖父母、伯叔祖父母(祖父母の兄弟姉妹)、従兄弟姉妹、玄孫、姪孫(兄弟姉妹の孫)

四親等内の親族に該当する範囲は広いため、ほとんどの親族が成年後見制度の申立人になれるでしょう。

なお、本人や四親等内の親族による法定後見の申立てが難しいときは、市長村長が申立人になるケースもあります。

成年後見人の申立て手続きを自分でするメリット

自分で成年後見制度の申立て手続きをする場合、以下の費用負担のみでよいため、必要最低限の出費に抑えられます

自分で手続きを行うメリット

  • 申立手数料:800円
  • 後見登記手数料:2,600円
  • 郵便切手代:概ね4,000円分程度
  • 医師の診断書:2,000~1万円程度
  • 本人の戸籍謄本や住民票など:1通につき数百円程度
  • 後見登記されていないことの証明書の発行費用:300円
  • 鑑定費用:5万~10万円程度(「後見」「保佐」は鑑定が必要になることがある)

判断能力の鑑定が必要なければ、合計2万円程度の費用になるでしょう。

なお、専門家に手続きを依頼した場合、法定後見制度では10万~30万円程度、任意後見制度では公正証書作成に10万円、手続き代行に20万円程度の費用がかかります。

成年後見制度の手続きの流れと必要書類

法定後見申立て手続きの流れや必要書類について解説します。

法定後見人になる手続きの流れ

法定後見申立て手続きは、以下の流れに沿って進めます。

法定後見申立て手続きの流れ

  1. 裁判所で申立書類の入手
  2. 診断書の取得
  3. その他必要書類の収集
  4. 申立書類の作成
  5. 面接日の予約
  6. 家庭裁判所への申立て
  7. 審理開始(面談・精神鑑定)
  8. 審判・成年後見人の選定
  9. 後見の登記
  10. 財産目録の作成

本人の判断能力の状況などにより、法定後見申立て手続きに必要な期間は異なります。

一般的に、申立てから登記まで1~4カ月程度を要します。

裁判所で申立書類の入手

法定後見制度を自分で手続きする場合、家庭裁判所の窓口や裁判所のWebサイト、郵送で申立書類を入手します。

裁判所で申立書類

  • 後見・保佐・補助開始等申立書
  • 代理行為目録(保佐・補助用)
  • 同意行為目録(補助用)
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 親族の同意書
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 財産目録
  • 収支予定表
  • 本人情報シート
  • 診断書・診断書付表(成年後見制度用)

窓口で書類を受け取る場合はどの家庭裁判所でも構いませんが、場所の確認も含め、申立先となる「本人の住所地または居住地を管轄する家庭裁判所」に出向くとよいでしょう。
成年後見等の申立てに必要な書類等について(裁判所)
親族の同意書(裁判所)
各地の家庭裁判所の所在地(裁判所)

診断書の取得

法定後見制度の申立てに必要な診断書は、医師に作成を依頼してください。家庭裁判所が補助・保佐・後見のいずれかを判断する場合、医師の意見と診断結果を参考にするため、診断書は必ず提出しなければなりません。

なお、診断書の作成は、精神科医に限らず、かかりつけの内科医等に依頼することもできます。

その他必要書類の収集

法定後見制度を自分で手続きするときは、以下の書類も準備してください。

市区町村役場で入手する書類

  • 本人の戸籍謄本:1通450円
  • 本人の住民票または戸籍附票:1通300円程度
  • 後見人候補者の住民票または戸籍附票:1通300円程度

東京法務局で入手する書類

  • 後見登記されていないことの証明書:1通300円

本人が準備する書類

  • 介護保険被保険者証、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写し

すでに後見人が登記されている場合、法定後見制度は利用できないため、「後見登記されていないことの証明書」を東京法務局、または全国の法務局・地方法務局の本局から取り寄せる必要があります。郵送で「後見登記されていないことの証明書」を取り寄せるときは、必ず東京法務局の後見登録課あてに請求してください。

なお、四親等内の親族が「登記されていないことの証明書」を東京法務局に請求する場合は、本人との関係がわかる戸籍謄抄本や住民票等を添付し、親族である証明をしなければなりません。
東京法務局の住所と連絡先(法務局)

申立書類の作成

申立書類を自分で作成する際は、本籍地と住民票上の住所などを間違えないように注意しましょう。
本人に関する資料や、収入印紙・郵便切手の購入は以下を参考にしてください。

その他本人に関する資料の作成

本人に関する資料とは、収入・支出や財産状況がわかる以下の書類を指しています。

本人に関する資料一覧

  • 収入に関する資料:年金通知書、株式配当金の通知書など
  • 支出に関する資料:施設作成の領収書(2カ月分)、住居費(住宅ローン)の領収書(2カ月分)、納税通知書など
  • 金融資産に関する資料:預貯金通帳や株式・投資信託等の残高報告書など
  • 不動産に関する資料:全部事項証明書、固定資産税の納税通知書など
  • 保険に関する資料:生命保険などの保険証券など
  • 債権や負債に関する資料:金銭消費貸借契約書など

不動産関係の資料は原本を準備し、その他の資料はA4用紙に原寸大のコピーを取っておきましょう。預貯金通帳は、銀行名・支店名、口座名義人、口座番号および直近2カ月分の残高が記載されたページをコピーします。

なお、コピーの際にはマイナンバーが写り込まないように注意してください。

収入印紙や郵便切手の購入

法定後見制度の申立書類を準備できたら、以下の額面で収入印紙と郵便切手を購入します。

必要な費用

  • 収入印紙(申立手数料):800円分
  • 収入印紙(後見登記手数料):2,600円分
  • 連絡用の郵便切手:概ね4,000円分程度

収入印紙や郵便切手は、家庭裁判所や郵便局、コンビニエンスストアなどで購入してください。

なお、郵便切手の内訳には指定があり、東京家庭裁判所では、後見の場合は500円×3枚、100円×7枚、84円×15枚、20円×10枚、10円×5枚、2円×5枚の合計3,720円分を準備し、保佐・補助の場合は500円×5枚、100円×9枚、84円×15枚、20円×10枚、10円×5枚、2円×5枚の合計4,920円分を準備する必要があります。

郵便切手は、家庭裁判所によって必要な金額が異なるため、事前に確認しておきましょう。申立手数料分の収入印紙は申立書に貼付し、登記手数料分の収入印紙および郵便切手は、封筒に入れて家庭裁判所に提出します。

面接日の予約

法定後見制度の利用を家庭裁判所に申立てると、申立人や成年後見人候補者との面接が行われます。面接日の予約は申立ての後でも構いませんが、家庭裁判所の繁忙状況によっては1カ月以上先になる場合があるため、事前予約をおすすめします。なお、申立書類は面接日の1週間前までに提出します。
家庭裁判所に面接日を予約するときは、余裕のあるスケジュールにしておくとよいでしょう。

家庭裁判所への申立て

申立書類などを準備できたら、家庭裁判所へ成年後見人等の選任を申立てます。申立書類は、家庭裁判所の窓口に持参または郵送で提出します。申立書などのコピーを手元に残しておけば、面接もスムーズに進むでしょう。

なお、申立書類を提出した後は、審判前であっても家庭裁判所の許可を得なければ、申立てを取り下げることはできません

たとえば、「指定した候補者が成年後見人等に選任されそうにない」などの理由では、原則として申立ての取り下げはできず、候補者が選任されなかった場合には、家庭裁判所が弁護士などを成年後見人等に選任します。

審理

家庭裁判所は、法定後見制度の申立ての受理後、審理を開始します。審理とは、裁判官が申立書類の内容をみて事実確認し、本人が置かれた状況などを総合的に考慮した上で、審判を下すかどうかを判断する手続きです。

審理の期間は1~3カ月程度ですが、以下のように面接や親族への意向照会なども行われます。

面接

法定後見制度の審理が始まると、家庭裁判所が指定した参与員が申立人や後見人候補者と面接します。事前に予約した面接日時に、申立先の家庭裁判所で面接が行われます。

また、面接の内容は申立てに至る経緯や本人の判断能力、財産状況などの確認になっており、所要時間は概ね1~2時間程度です。資料があるとスムーズに受け答えできるため、申立書類のコピーや印鑑、財産関係の資料や本人確認書類を準備しておきましょう。

なお、裁判官が必要と認めた場合は、本人との面接が行われるケースもあります。体調不良などの理由で本人の外出が難しいときは、裁判所の担当者が自宅や入院先の病院などを訪問してくれます。

親族への意向照会

法定後見制度を利用する場合、裁判官が親族への意向照会も行います。意向照会では、後見人の申立てや後見人候補者について、親族がどのように考えているか確認されます。法定後見制度に反対している親族がいると、申立時に指定した後見人候補者が選任されない可能性もあるでしょう。

なお、申立て時に親族全員から同意書が提出されている場合、意向照会の手続きが省略されるケースもあります。

医師による精神鑑定

申立書類や医師の診断書だけでは本人の判断能力を判定できない場合、裁判所が医師による精神鑑定を決定します。精神鑑定が必要になると、5~10万円程度の費用がかかるでしょう。一般的には家庭裁判所が本人の主治医に鑑定依頼しますが、何らかの事情で引き受けてもらえなかったときは、別の医師が鑑定するケースもあります。

ただし、診断書の内容や親族との面接により、本人の判断能力を判定できるようであれば、精神鑑定は省略される場合があります

審判・成年後見人の選定

審判とは、申立書類や面接の内容に基づき、裁判官が後見等の開始と成年後見人等の選任を決定する手続きです。裁判官が適任者だと認めた場合、申立ての際に指定した候補者が選任されます。

また、必要に応じて、成年後見人を監督・指導する成年後見監督人が選任されるケースもあります。
成年後見人等に審判書が送付され、到着から2週間以内に不服申立てがなければ審判が確定します。ただし、誰が成年後見人等に選任されたかについては、不服申立てすることはできません。

後見の登記

審判が確定すると、家庭裁判所が東京法務局に後見登記を依頼します。審判が確定すると約1週間で登記が完了し、家庭裁判所から「登記番号通知書」が成年後見人等へ送付され、登記事項証明書の発行が可能になります。登記事項証明書には成年後見人等の氏名や権限の記載があり、金融機関などに提示すると、預貯金の払出しや解約などに応じてもらえるため、必ず取得しておきましょう。

登記事項証明書を取得するには、全国の法務局・地方法務局の本局戸籍課の窓口(東京法務局は後見登録課)において交付請求、郵送の場合は東京法務局の後見登録課に交付請求し、発行手数料は1通につき550円となります。

財産目録の作成

成年後見人等に選任された人は、審判確定後約1カ月以内に、本人(被後見人等)の財産状況を調査し、財産目録と年間収支予定表を作成して資料とともに家庭裁判所に提出しなければなりません。

なお、成年後見等監督人が選任されている場合は、成年後見人等による財産調査に成年後見等監督人の立ち会いが必要です。

ただし、実務上は作成済みの財産目録を後見監督人が確認する、または財産目録の原案を後見監督人が清書するケースが多いでしょう。

任意後見制度の手続きの流れと利用方法

任意後見制度の手続きの流れ
任意後見制度とは、本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人になって欲しい人と「任意後見契約」を結び、任意後見人を決めておく制度です。

本人の判断能力が低下し、任意後見事務を開始する必要が生じた場合は、「任意後見監督人の選任申立て」を行います。任意後見制度の手続きの流れは、以下のようになります。

判断能力低下前

  1. 任意後見受任者の決定
  2. 任意後見契約の内容の決定
  3. 任意後見契約公正証書の作成
判断能力低下後

  1. 任意後見監督人選任の申立て
  2. 審理
  3. 審判・任意後見監督人の選任
  4. 任意後見人の代理権行使

任意後見受任者の決定

任意後見受任者とは、委任者本人の判断能力が低下した際に、任意後見業務を引き受けてくれる人のことです。なお、任意後見人として、以下の事由がある人はふさわしくないとされています。

適さない者の例

  • 家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を解任された者
  • 破産者・行方不明者・未成年者
  • 本人に対して訴訟をし、またはした者並びにその配偶者および直系血族
  • 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適さない事由がある者

任意後見人は契約行為などを代行するため、ある程度の実務経験や法律の知識が求められます。

家族や親戚にふさわしい人がいないときは、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家に任意後見受任者を依頼するとよいでしょう。

任意後見契約の内容の決定

任意後見受任者が決まったら、任意後見契約の内容を決定します。

判断能力が低下した際に、どのようなサポートをして欲しいのか、以下のような後見事務の範囲や証書等の保管方法、任意後見人の報酬金額などを決めます。

後見事務の範囲の決定

後見事務の範囲は、任意後見人の権限に直結するため、どのようにサポートしてもらいたいのかを任意後見契約書の代理権目録に明記します。

取り決め事項の例

  • 将来的に在宅または施設のどちらでケアを受けたいか
  • 病気になった際、治療や入院を希望する病院
  • 財産の管理・保存・処分に関する取り決め
  • 各種費用の支払いや納税に関する取り決め
  • 生活に必要となる物品購入などの取り決め
  • 預貯金の払出しや解約などに関する取り決め
  • 相続に関する取り決め(相続を承認するかどうかなど)
  • 保険に関する取り決め

任意後見人の業務は身上監護と財産管理に限られるため、食事・入浴・排せつなどの身の回りのケアや、医療行為の同意などは任意後見契約の代理権目録には記載できません

証書の保管について決定

任意後見人は、委任者本人の財産管理を行うため、以下の証書等の保管ルールを決めておきます。

保管のルール

  • 預貯金通帳やキャッシュカード
  • 年金関係の書類
  • 登記済権利証
  • 保険証書
  • 有価証券
  • 土地・建物の賃貸借契約書
  • 実印や預貯金口座の届出印
  • 印鑑登録カード
  • 住民基本台帳カード
  • マイナンバーカード

任意後見人に証書や印鑑などを引き渡したときは、必ず預り証の交付を受けてください。

また、任意後見契約書を作成する際には、証書使用時のルールや、保管方法・保管場所も定めておく必要があります。株式の取引残高報告書など、被後見人の財産に関する郵便物についても、開封する権限を定めておくとよいでしょう。

任意後見人への報酬の決定

任意後見契約書において、任意後見人の報酬も決めておきます。報酬の支払日や支払方法、報酬の変更方法などを定めて任意契約書に記載すると、支払いに関するトラブルを防止できます

また、不動産などを処分する予定があれば、特別報酬の支払いも取り決めておくとよいでしょう。家族が任意後見人となり、無報酬で後見業務を行う場合でも、任意後見契約書には必ず無報酬である旨を記載してください。

任意後見契約公正証書の作成

公正証書とは、公証人が公証役場で作成する公文書のことです。公証人は、法務大臣から任命された法律の専門家(元裁判官や元弁護士など)であり、法律に精通しているため、法的にも問題のない文書を作成してもらえるため、トラブルを回避できるでしょう。公正証書を作成するときは、以下の流れで手続きを進めてください。

判断能力低下前

  1. 任意後見契約書の原案を作成する
  2. 公証役場に原案を持ち込み、公証人にチェックしてもらう
  3. 公正証書の作成日時を決める
  4. 本人と任意後見受任者が公証人の前で契約内容を確認し、公正証書に署名捺印する

本人が公証役場に出向けない場合、公証人が自宅や病院まで出張してくれます。
公正証書の作成を依頼するときは、以下の書類を準備してください。
公証役場一覧(日本公証人連合会)

必要な書類 ・本人の印鑑登録証明書および実印、戸籍謄本または抄本、住民票(発行後3カ月以内のもの)

・任意後見人となる人の印鑑登録証明書および実印、住民票(発行後3カ月以内のもの)

費用 ・公証役場の公正証書作成手数料:1契約につき1万1,000円(それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算される)

・法務局に納める収入印紙代:2,600円

・登記嘱託手数料:1,400円

・書留郵便料:約570円(重量によって異なる)

・正本謄本の作成手数料:1枚250円×枚数

※任意後見契約と併せて、財産管理契約等を締結する場合、公証役場の手数料が加算される

任意後見契約書の署名捺印まで完了すると、公証人が法務局へ後見登記を依頼します。登記情報には任意後見人の氏名や権限が登録されるため、任意後見契約の効力が発効した後、法務局で登記事項証明書を取得し、金融機関などに提示すると、預貯金の払出しが可能になります

後見登記は公証人の依頼から2~3週間程度かかりますが、すぐに登記事項証明書が必要になるケースはあまりないでしょう。

ただし、任意後見の内容が正しく登記されているかどうか、チェックしておく必要があります。

任意後見監督人選任の申立て

任意後見監督人とは、任意後見人がきちんと任意後見契約に定められた財産管理などを行っているかどうかチェックする人です。任意後見契約の効力は、任意後見監督人が選任されてから生じます。任意後見監督人の申立人になれる人は、本人や配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者であり、以下の流れで申立て手続きを進めてください。

判断能力低下後

  1. 申立人になれる人と管轄家庭裁判所の確認
  2. 必要書類の準備
  3. 申立書を作成して必要な郵便切手や収入印紙を購入する
  4. 家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立てる

なお、任意後見監督人は家庭裁判所が決定するため、一般的には弁護士や司法書士などの専門家が選任されるでしょう。

申立書類・その他必要書類の収集

任意後見監督人の選任を申立てるときは、以下の書類を収集します。

家庭裁判所の窓口または裁判所ホームページで入手する書類

  • 任意後見監督人選任の申立書
  • 本人の申立事情説明書
  • 財産目録
  • 親族関係図
  • 収支予定表
  • 任意後見受任者の事情説明書

市区町村役場で入手する書類

  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 任意後見監督人の候補者がある場合には、その住民票または戸籍附票

法務局の本局で入手する書類

  • 本人の成年後見等に関する登記事項証明書

病院で入手する書類

  • 本人の診断書および診断書付票

本人や家族などが準備する書類

  • 本人の財産に関する資料(預貯金および有価証券の残高などがわかるもの)
  • 任意後見契約公正証書のコピー

不動産に関係する書類は必ず原本を準備し、その他の書類はA4用紙に原寸大でコピーしてください。

マイナンバーが表示された書類があれば、番号が写り込まないようにコピーしておきましょう。

収入印紙や郵便切手の購入

任意後見監督人の選任を申立てる場合、以下の収入印紙と郵便切手が必要です。

収入印紙と料金

  • 収入印紙(申立手数料):800円
  • 収入印紙(後見登記手数料):1,400円
  • 連絡用の郵便切手:3,720円分(家庭裁判所により異なる)

郵便切手は、家庭裁判所によって必要な金額が異なり、東京家庭裁判所では以下のように内訳が指定されています

郵便切手の料金

  • 3,720円分の郵便切手の内訳:500円×3枚、100円×7枚、84円×15枚、20円×10枚、10円×5枚、2円×5枚

郵便切手を購入するときは、あらかじめ家庭裁判所に確認してください。

審理

任意後見監督人の審理とは、任意後見契約の効力を発生させるかどうか、裁判官が総合的に判断する手続きです。任意後見人に不正行為や著しい非行などがある場合、任意後見監督人などの請求によって、家庭裁判所は任意後見人を解任するケースもあります

任意後見監督人は極めて重大な責務を負うため、以下のように申立人調査や任意後見受任者調査などを行い、裁判官が審理する際の判断材料となります。

申立人調査・任意後見受任者調査

任意後見監督人を選任する場合、家庭裁判所によって申立人調査と任意後見受任者調査が行われます。申立人と任意後見受任者は家庭裁判所に出向き、本人の状況や申立てに至った経緯、任意後見受任者の適性などを説明します。

本人の意向調査

任意後見制度は、本人の意思を尊重するため、本人調査を行います。本人調査とは、申立ての内容について、本人を聴取し本人の同意の確認を得るための手続きです。

審判・任意後見監督人の選任

申立書類や調査結果から総合的に判断し、裁判官が審判を下すと、任意後見監督人を選任した旨や、申立てを却下する旨の審判書が任意後見人に郵送されます。任意後見監督人が選任された場合、家庭裁判所が法務局へ連絡し、登記簿上に任意後見監督人の氏名などが登録されます。

なお、任意後見監督人選任の申立てが却下された場合は、審判結果の告知日から2週間以内に限り、即時抗告による異議申立てが認められます

任意後見人の代理権行使

任意後見監督人が選任されると、任意後見受任者は任意後見人となり、委任者本人についての代理権を行使できます。任意後見人の業務には財産目録の作成、市区町村役場や金融機関への届出、本人への定期報告などがあります。本人や任意後見人の住所などが変わったときは、必ず法務局に変更登記を申請しておきましょう。

なお、弁護士や司法書士などが任意後見監督人に選任された場合、後見監督報酬が発生します。管理する財産が5,000万円以下であれば月額1~2万円程度、5,000万円を超えると月額2万5,000円~3万円程度の後見監督報酬になるでしょう。

任意後見人や任意後見監督人の報酬については、原則として本人の財産から支払います。

自分で成年後見人等の手続きをするときの注意点

成年後見人等の申立て手続きは自分でもできますが、以下の点に注意しましょう。

任意後見契約は必ず公正証書化する

私文書の任意後見契約書には法的効力がないため、必ず公正証書にしてください。任意後見契約を結ぶときは、まず自分で契約書の原案を作成し、公証人に公正証書化してもらう必要があります。口約束の任意後見契約や、自分で作成した契約書では任意後見契約が成立しないため、できるだけ早めに公正証書を作成してもらいましょう。

書類の収集から申立てまで手間と時間がかかる

成年後見人等の申立てを行う場合、書類収集から申立てまでにかなりの手間と時間がかかります。家庭裁判所や法務局などは平日しか開庁していないため、会社勤めの方や、介護に専念している方は書類収集が難しいでしょう。後見人の選任までに時間がかかると、家族の負担が大きくなります。特に、任意後見制度の場合は「急がなくても大丈夫だろう」などと先延ばしにすると、任意後見契約を結ぶ前に認知症を発症するかもしれません。任意後見制度は、本人の判断能力が低下すると利用しにくくなるため、書類収集などに対応できないときは、専門家に代行してもらいましょう。

成年後見制度の手続きを自分でやる場合・専門家に依頼した場合の費用

自分で成年後見人等の選任の申立て手続きをした場合、かかる費用は2万円程度です。弁護士や司法書士に依頼した場合、事務所によって代行報酬は異なりますが、概ね15万円程度の費用がかかるでしょう。

また、各自治体の成年後見制度利用支援事業を利用すると、家庭裁判所への申立て費用や、後見報酬の一部または全額を助成してもらえます。成年後見制度利用支援事業の利用には一定条件があるため、役所の担当窓口に相談してみましょう。

専門家のサポートで成年後見制度をスムーズに利用しよう

成年後見制度は自分でも手続きできますが、時間や手間がかかります。平日に仕事をされている方や、介護などで長時間の外出が難しい方は、家庭裁判所への申立て準備がなかなか進まない可能性があります。

自分で任意後見契約書の原案を作成すると、将来必要となるサポートや、後見人に付与する権限などを漏らしてしまう恐れがあります。また、家族や親戚を成年後見人の候補者にする場合、判断が難しい法律行為に対応できるかどうか、適切に財産管理できるかどうか熟考する必要があります。

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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。

我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております

具体的なご相談は無料面談にて対応します。弊社にてお手伝いできることがある場合は、その場でお見積り書をお渡ししますので、持ち帰ってじっくりとご検討ください。

対応エリアは全国で、オフィスは東京、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、神戸の主要駅前に構えております。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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業界トップクラス。ベンチャーサポート相続税理士法人ならではの専門性

日本最大級の実績とノウハウで、あなたにとって一番有利な相続アドバイスを致します。気軽なご質問だけでも構いません。
ご自身で調べる前に、無料相談で相続の悩みを解決して下さい。 [親切丁寧な対応をお約束します]

当サイトを監修する専門家

古尾谷 裕昭

税理士:古尾谷 裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士。
昭和50年生まれ、東京都浅草出身。
相続は時間もかかり、精神や力も使います。私たちは、お客様の心理的な負担や体力的な負担を最小にして、少しでも早く落ち着いた日常に戻れるように全力でお手伝いします。
プロフィール

三ツ本 純

税理士:三ツ本 純

ベンチャーサポート相続税理士法人税理士。
昭和56年生まれ、神奈川県出身。
相続税の仕事に携わって13年。相続税が最も安く、かつ、税務署に指摘されない申告が出来るよう、知識と経験を総動員してお手伝いさせていただきます。
プロフィール

税理士・元国税調査官:桑原 弾

ベンチャーサポート相続税理士法人税理士。
昭和55年生まれ、大阪府出身。
大卒後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した税理士としての知識」と「元税務調査官としての経験」を両輪として活かした相続税申告を実践中。
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行政書士:本間 剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。
昭和55年生まれ、山形県出身。
はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。
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司法書士:田中 千尋

ベンチャーサポート司法書士法人 代表司法書士。
昭和62年生まれ、香川県出身。
相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。
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弁護士:川﨑 公司

ベンチャーサポート相続税理士法人運営協力/弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所(https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/) 所属弁護士。
新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。
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税理士:高山 弥生

ベンチャーサポート相続税理士法人 税理士。
相続は、近しい大切な方が亡くなるという大きな喪失感の中、悲しむ間もなく葬儀の手配から公共料金の引き落とし口座の変更といった、いくつもの作業が降りかかってきます。おひとりで悩まず、ぜひ、私たちに話してください。負担を最小限に、いち早く日常の生活に戻れるようサポート致します。
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