この記事でわかること
- 後見監督人がどのような人かわかる
- 後見監督人になれない人がわかる
- 後見監督人の仕事やできることを理解できる
後見監督人とは「後見人を監督する人」のことです。
後見人を選定した上で、後見人の事務を監督する存在である後見監督人も選定されることがあります。
後見人制度への理解を深めるために、後見監督人とはどのような人でどのような仕事をするのか知っておきましょう。
後見制度の中の後見監督人について解説します。
目次
後見監督人の仕事とは
後見監督人の仕事は後見人の後見事務の監督になります。
後見監督人に就任するのは、弁護士や司法書士などの国家資格を持つ専門家などです。
後見人の役目は、被後見人の財産などを管理することになります。
預金や不動産などの被後見人の財産に多く接する関係上、後見人が私的流用などの不正を行う可能性はゼロではありません。
たとえば、多くの財産を持っている被後見人の預金額などを見て「少しくらいわからないだろう」と自分の生活費や娯楽にあててしまうかもしれません。
このようなことが起こらないよう、そして後見人が適切な管理や事務を行うように監督する人が後見監督人なのです。
後見人の監督は基本的に裁判所が行っていました。
しかし、少子高齢化により後見を必要とする人が増えたことや、裁判所だけでは細かなところまで監督することが難しいこともあり、後任監督人に監督を分担させるようになったのです。
また、後見監督人は後見人の相談役にもなります。
たとえば、認知症になった人の親族が後見人に就任したとします。
後見の財産管理や法律のことなどでわからないことが出てきた場合、後見監督人に相談することも可能です。
裁判所は一般の人にとっては敷居の高い場所でもあります。
後見監督人の方が相談する上での敷居が低いのではないでしょうか。
- ・後見監督人は後見人を監督することが仕事である
- ・後見監督人は後見人の相談役にもなる
- ・後見監督人には弁護士や司法書士などの専門家が就任する
以上の点を整理しておきましょう。
なお、後見監督人という言葉から誤解しがちですが、後見監督人は必ずしも個人である必要はありません。
法人も後見監督人への就任が可能です。
場合によっては複数が後見監督人になる場合もあります。
後見監督人が選任されるケースは少数
「そもそも後見監督人が選任されるケースはどれぐらい?」と思うかもしれません。
結論からいうと、全体の1割以下で、かなり少数です。
後見監督人が選ばれるのは、下記のようなケースです。
・管理する財産が多い
・管理財産のなかに収益不動産が多く含まれている
・家族内で後見人に反対意見がある
・このような場合に、家庭裁判所が判断して、後見監督人をつける場合もあります。
自分たちで後見監督人の申立をしない場合は、家庭裁判所が「後見監督人をつけるかどうか」を判断します。
2つの後見制度における監督人の違い
後見には「任意後見」と「法定後見」の2つの後見があります。
任意後見とは、本人(後見を受ける人、被後見人)の判断能力がしっかりしているときに、後見をして欲しい人にお願いしておく方法です。
自分の財産管理などを任せたい人に対して任意で後見を依頼するのが任意後見になります。
対して法定後見は、申立てにより裁判所が後見人を選んで選任する後見です。
任意後見の監督人を「任意後見監督人」、法定後見の監督人を「法定後見監督人」といいます。
後見監督人の扱いについては、任意後見と法定後見で異なるのです。
任意後見の後見監督人
任意後見では、後見監督人が必ずつくことになっています。
任意後見は後見を受ける本人が「いざというときは後見人になって欲しい」など、事前にお願いしておく後見です。
後見の範囲は契約によります。
任意後見を行う中で後見人が任意後見の範囲を逸脱する可能性があるはずです。
そのため、任意後見の範囲内で後見事務を行っているかなどを監督する必要があります。
後見監督人が必ずついて、後見事務そのものや後見の範囲を逸脱しないかを監督するのです。
具体的には、後見監督人が後見の報告を受けたり、財産関係の書類や報告書などを確認したりします。
任意後見人が家族や親族の場合、本人と利益が相反することも少なくありません。
本人と任意後見人の利益が相反する場合は、後見監督人が本人側に立つことになります。
任意後見監督人の手続き
任意後見の開始は裁判所への申立てによって行います。
任意後見監督人も申立てによって選任されるのです。
任意後見監督人が選任されることにより、任意後見がスタートします。
任意後見の申立てができるのは、本人や配偶者、四親等内の親族、任意後見人になる人などです。
任意後見監督人の必要書類と費用
任意後見監督人の申立てには必要書類の添付を要します。
必要な書類は以下の通りです。
- ・申立書
- ・診断書
- ・戸籍謄本
- ・住民票
- ・後見登記事項証明書 など
他にも裁判所の指定があれば準備する必要があります。
任意後見監督人の選任に必要な費用は、印紙代や切手代、登記費用などです。
目安としては合計で数千円程度ですが、裁判所やケースによって変わってくることがあるため確認が必要になります。
なお、精神鑑定を要する場合は、他に数万円~20万円ほどの費用が必要になることがあるため注意が必要です。
費用が心配な場合は、事前に弁護士などにも目安を確認しておくといいでしょう。
法定後見の後見監督人
法定後見においては、必ず後見人がつくわけではありません。
裁判所が必要だと判断した場合や申立てがあった場合に後見監督人が選任されることになります。
必ず後見監督人が選任される任意後見とは、この点が大きな違いです。
後見監督人が後見人の報告を受けたり、書類などの監督をしたりする点は任意後見と同じになります。
法定後見で後見監督人の選任が行われるのは次のようなケースです。
- ・家族や親族などが後見人になったケース
- ・家族や親族内に揉め事や反発があるケース
- ・管理する預金や不動産が多いケース
- ・財産状況に不明瞭な部分があるケース
- ・後見人と被後見人に利害の対立(利害相反)があるケース
- ・選任された後見人が高齢で事務に不安があるケース
- ・選任された後見人が若く事務をサポートする存在が必要なケース
- ・後見人が法律などの専門的な知識を有しないケース
以上のようなケースでは、後見監督人をつけることがあります。
後見監督人は後見人を監督する存在ですが、相談役やサポート的な役目も負っています。
たとえば家族が後見人に就任した場合、不動産や契約に深い知識を持つ弁護士や司法書士などが後見監督人に就任し、後見人を監督すると共にサポートすることなどは、実際によくあるのです。
必ず後見監督人が選任される任意後見に対して法定後見は「サポート役が必要である」「監督の必要性がある」と裁判所が考えたケースになります。
法定後見監督人の手続き
法定後見監督人の選任には2つのケースがあります。
1つは申立てによって選任する場合と、裁判所側が必要だと判断して選任する場合です。
裁判所が必要だと判断して選任するケースの場合、特に手続きは必要ありません。
選任してもらう場合は、申立てが必要になります。
選任の申立てができるのは、後見人や被後見人、被後見人の親族などです。
法定後見監督人の必要書類と費用
法定後見監督人の選任申立てには、以下の書類が必要になります。
- ・家事審判申立書
費用については、後見監督人への報酬などが必要になります。
弁護士などに申立ての相談や代理を依頼する場合は別途費用が必要になるため、あらかじめ確認しておきましょう。
監督人になれない人
後見監督人には、欠格事由に該当する人は就任できません。
後見監督人の欠格事由は次の通りです。
- ・後見人の配偶者
- ・後見人の直系血族や兄弟姉妹
- ・未成年者
- ・過去に後見人を解任された人
- ・破産者
- ・行方不明の人
- ・本人に対して訴訟をした人
- ・本人に対して訴訟をした人の配偶者や直系血族
後見監督人は後見人を監督することが仕事なので、後見人と近しい人はなれません。
後見人の配偶者や直系血族、兄弟姉妹などが後見監督人になってしまうと、なれ合いのような関係になってしまうからです。
また、後見監督人は本人に対して訴訟をした人やその配偶者、直系血族もなれません。
訴訟という敵対的な関係にあったからです。
この他には、未成年や過去に後見人を解任された経験のある人は欠格事由に指定されています。
財産を管理するという後見事務の性質上、お金に困っている可能性がある破産者もなれません。
行方不明の人が後見事務の監督ができるはずがないため、当然ですが欠格事由になります。
監督人がすべきこととできること
後見監督人に就任したら何をすべきで、何ができるのでしょうか。
後見監督人への理解を深めるために、後見監督人が「すべきこと」と「できること」について具体的に知っておきましょう。
後見監督人がすべきこととできることは次の通りです。
- ・後見人の監督
- ・家庭裁判所への報告
- ・後見人の解任の請求
- ・報酬の受け取り
- ・辞任
後見人を監督する
後見監督人がすべき最たることは、後見人の監督です。
後見監督人は後見人が財産の管理などを正しく行っているか監督します。
後見人の後見事務に対して報告を受けたり、後見人が作成した書類を確認したりするのです。
後見人の後見事務に関する書類(領収書など)の提出を求めることも可能です。
後見人に判断がつかないことなどがあった場合は、相談を受けることもあります。
後見人を監督し、サポートする。
それが後見監督人のすべきことです。
家庭裁判所へ報告する
後見監督人は後見人の監督について裁判所に報告しなければいけません。
後見監督人は後見人の監督を行いますが、後見事務の総合的な監督を行うのはあくまで裁判所です。
後見監督人の監督をさらに裁判所が監督することになります。
後見監督人は、後見人から提出された後見に関する領収書や収支報告書などの書類類についても、裁判所に報告と提出の義務を負います。
後見人の解任を請求できる
後見監督人は後見人の不正などを理由に、後見人の解任を請求できます。
たとえば、後見人が管理すべき被後見人の財産を私的な目的で使い込んでいたとします。
この場合、後見人の不正です。
このまま後見人を続けていると、被後見人にとってもマイナスになることでしょう。
このようなケースでは、後見監督人は裁判所に後見人の解任を請求できるのです。
なお、解任は裁判所が行います。
後見監督人自身が解任するのではなく、あくまで解任の請求ができるに留まるのです。
報酬の受け取りができる
後見監督人は後見の監督という仕事の報酬を受け取ることが可能です。
ただし、好きな金額を請求できるわけではありません。
報酬額は後見監督人という仕事に対して全国一律に決まっているわけでもありません。
後見監督人の報酬は裁判所が判断して、額が決定されます。
ただ、後見監督人には報酬額の目安があるのです。
報酬の目安は管理財産の額によって変わります。
5,000万円以下の場合は月10,000~20,000円。5,000万円超の場合は、月25,000~30,000円が目安です。
正当な理由があれば辞任できる
後見監督人は正当な理由がある場合は辞任できます。
ただ、辞任できるといっても、勝手に辞任できるわけではありません。
辞任のためには裁判所に申し出て、許可を受ける必要があるのです。
勝手な辞任が許されてしまえば、監督されるべき後見人の監督人がいつの間にかいなくなっていたという事態に陥りかねません。
後見事務の総合的な監督をするのは裁判所なので、裁判所に申し出て辞任という流れになります。
後見監督人が辞任するための正当な理由は、病気や年齢などです。
他には、後見人が不正を行う可能性がないことも辞任の理由になり得ます。
気になる報酬金額について
後見監督人として、弁護士・司法書士などの専門家が選任された場合は、毎月の報酬を支払うことになります。
報酬の金額は下記の通りです。
- ・資産500万円以下:月1~2万円
- ・資産500万円以上:月2.5~3万円
資産の金額が500万円を超えるかどうかで、目安金額が変わってきます。
年間だと12〜36万円程度の報酬支払いが発生します。
「後見監督人の報酬を支払うお金がない」という人もいるかもしれません。
市町村によっては、後見監督人の報酬費用を支給してくれる制度もあるため、費用が出せそうにない人は問い合わせてみましょう。
不安なことがあれば専門家に相談しよう
もし後見監督人について分からないこと・不安なことがあれば、専門家への相談がおすすめです。
贈与・相続の対策もできる
後見監督人について悩んでいるなら、財産の贈与・相続も考えているかもしれません。
贈与・相続があると、金額に応じて税金が発生します。
財産の金額が多いと、それだけ支払う税金も多くなるため、対策が必要です。
相続に精通している専門家であれば、節税対策もできます。
「なるべく税金で損をしたくない」という人は、専門家に依頼して節税しましょう。
初回の相談は無料で利用できる
「専門家に相談したいけど、費用が気になる」という人もいるでしょう。
専門家への依頼費用が気になるなら、初回の相談を利用するのがおすすめです。
相続サポートセンターでは、初回の相談を無料で受け付けています。
まずは無料相談して、自分が分からないこと・不安に思っていることを聞いてみるのがいいでしょう。
まとめ
後見監督人とは「後見人を監督する存在」です。
後見人は被後見人の財産管理などを行います。
財産管理などの事務をする際に、不正に手を染めないとも限りません。
また、家族や親族などが後見人に就任した場合は後見事務に不慣れで、疑問点が出てくるかもしれません。
後見監督人は後見人を監督すると共にサポートとしての役目を負っています。
ただし、後見監督人も裁判所に監督されることになるのです。
後見監督人は、任意後見において必須になります。
法定後見では、申立てや裁判所の判断によって選任されるのです。
後見監督人の仕事や後見人との関係を理解して、後見制度への理解を深めましょう。
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