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最終更新日:2024/6/17

遺族年金受給者はローンを組める?審査に通りやすくするコツとは

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

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遺族年金受給者はローンを組める?審査に通りやすくするコツとは

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この記事でわかること

  • 遺族年金受給者はローンを組めるか
  • 遺族年金受給者がローンを組むのが難しいケース
  • 遺族年金受給者がローン審査を通過する方法

遺族年金受給者が、住宅ローンや自動車ローンなどの高額のローンを組むことはできるでしょうか。

老齢年金と異なり、遺族年金の場合(特に妻が受給者の場合)は、受給者の年齢が65歳未満のケースも少なくありません。
配偶者が死亡した時点で賃貸に住んでいた場合などは、家賃を払い続けることと比較して、住宅を購入するという選択肢を考えることもあるでしょう。

また、地域によっては買い物や通院などの必要な外出にも徒歩や公共交通機関利用が難しいということもあります。
そのため、遺族年金受給者で自動車購入を希望される方も多いのではないでしょうか。

今回は、遺族年金受給者がローンを組んで住宅や自動車などを購入できる可能性について、ローンの審査に通りやすくするコツなどとあわせて解説します。

遺族年金受給者もローンを組める可能性がある

一般的には、遺族年金受給者がローンを組んで家や自動車などを購入することは難しいといえます。

しかし、借り入れの条件は金融機関の商品によって異なるので、ローンを組むことは不可能ではありません。

住宅ローンの場合、住宅金融支援機構の「フラット35」では公的年金も「収入」の対象となります。
この公的年金には、老齢年金に限らず、遺族年金や障害年金も含まれます。
自動車ローンの場合も、銀行ローンやディーラーローン、信販会社などによって借入の条件が異なります。

したがって、個別の状況によっては審査条件をクリアできる可能性があります。

遺族年金受給者がローンを組むのが難しいケース

遺族年金受給者がローンを組むのが難しいケースとしては、以下が挙げられます。

収入が遺族年金のみで返済比率が30%を超える場合

住宅ローンの場合、住宅ローンを含めたすべての借り入れの年間合計返済額の年収に対する割合(返済比率)が条件になっています。

「すべての借り入れ」には、申し込む住宅ローンの他、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどが含まれます。
返済比率はローンを提供する金融機関や申込者の年収によって異なりますが、おおむね25%~35%とされていることが多いでしょう。

たとえば住宅金融支援機構のフラット35の場合、年収400万円未満の返済比率は30%、400万円以上では35%となっています。
収入が遺族年金のみであっても、他に借り入れがない場合は返済比率の条件はクリアできます。

しかし、遺族年金以外に収入がない場合は、住宅ローンを含めて借り入れの月額が5万円以上あると返済比率の上限を超えてしまう場合が多いです。

そのため、他に1つでも借り入れがあると、返済比率の条件をクリアできなくなる可能性が高く、ローンを組むのが難しくなるでしょう。

申込時の年齢が70歳近い場合

住宅ローン・自動車ローンとも、完済時の年齢が条件になっています。

住宅ローンの場合は、完済時の年齢に加えて、借入時の年齢の上限も設定されています。
多くの場合、借入時の年齢の上限が65歳~70歳、完済時の年齢が75歳~80歳となっています。

したがって、退職金などから多額の頭金を用意できない限り、申込時点で70歳に達している場合はもちろん、70歳近くの場合は審査を通ることは難しいでしょう。

自動車ローンの場合、返済完了時の年齢について、ディーラーローン65歳、銀行ローン70歳、信販会社は75歳に設定しているといわれます。

年齢条件の一番緩いローンを申し込むとしても、収入が年金のみの方が申込時に70歳近くになっていると、審査に通ることは厳しいといえます。

受給者自身が金融事故情報リストに登録されている場合

遺族年金の受給者自身が、過去に債務整理(自己破産・任意整理・個人再生)を行っていた場合、一定期間信用情報機関の事故情報(いわゆるブラックリスト)に登録されています。
ブラックリストに登録されている間は、住宅ローンや自動車ローンの審査に通らなくなります。

登録される期間は、信用情報機関によって異なります。

債務整理の手続ごとの、各信用情報機関のブラックリスト登録期間をまとめると以下のようになります。

債務整理手続の種類 CIC JICC 全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
自己破産 免責許可決定確定日
(=破産手続終了時)から5年
免責許可決定確定日
から5年
免責許可決定確定日
から10年
任意整理 完済から5年 完済から5年 完済から10年
個人再生 完済から5年 完済から5年 完済から10年

たとえば、カードローンなどの借金について、債権者3社の任意整理手続を行ったとします。

この場合、ブラックリストに登録されるのは3社すべての債務の支払いが完了した時点から5年または10年となります。

ローンを提供する会社は、審査の際に信用情報を確認しますが、銀行の場合は事故情報登録期間10年の全銀協を利用することになっています。
このうち、

これに対して、ノンバンク系は5年間で事故情報記録が抹消されるCICまたはJICCを利用することが多いといわれています。

過去に債務整理手続を行った方がローンの申込をする場合は、上記の期間は審査に通らなくなります。

特に任意整理・個人再生を行っていた場合、債務の完済までに3年~5年ほどかかります。
したがって、債権者との和解手続を行ってから最低8年、銀行系の場合は13年~15年ほどの間はローンの審査に通らないことになるでしょう。

このように、過去に債務整理を行った場合は債務整理手続から長期間を経過していない限りローンを組むことは難しいでしょう

受給者自身のクレジットカード延滞履歴がある場合

債務整理手続を行った場合以外でも、受給者自身の信用に問題があると、ローンの審査に通らない可能性が高くなります。

クレジットカードの延滞履歴が複数回ある場合や、利用を停止されているカードがある場合などは、それらの情報についても信用情報機関に登録されている可能性があります。

遺族年金受給者が住宅ローン審査に通過する方法

収入が遺族年金のみの場合、住宅ローン審査を通過することは難しいですが、不可能ではありません。

以下のような方法をとることによって、審査を通過できる可能性があります。

家族との収入合算でローンを組む

収入が遺族年金のみの場合、審査に通ったとしても、借りられる枠はどうしても少なくなります。

この場合に、「収入合算」という方法によって、借入可能額を増やせる可能性があります。

収入合算とは、本人の配偶者や親・子どもなどの収入を合算して住宅ローンを組む方法です。
収入合算における合算者の要件は、多くの場合「原則として同居する配偶者または親子」となっています。
遺族年金受給者が収入合算を行う場合は通常、親または子どもが合算者となります。

また、合算できる金額についても金融機関によって異なっており、本人の収入の50%までとするところから、合算者の収入全部まで認めるところまで様々です。

収入が遺族年金のみの方が収入合算を利用する場合は、認められる合算金額が多い金融機関を選ぶことをおすすめします。

連帯債務型と連帯保証型

収入合算による債務の負担方法として、連帯債務型と連帯保証型の2タイプがあります。

1.連帯債務型

連帯債務型は、名義人本人と合算者のいずれかが主たる債務者となり、他方がその連帯債務者となる方法です。
連帯債務型の場合、名義人本人・合算者の両方が債務者となるため、それぞれに返済義務が生じます。
したがって、一方がローンを返済できなくなった場合には、他方に2人分の返済義務が発生します。

2.連帯保証型

連帯保証型は、契約者本人・合算者のいずれかが債務者となり、他方がその連帯保証人となる方法です。
遺族年金受給者が申込みをする場合、通常は受給者が債務者となり、合算者が連帯保証人となります。
連帯保証型の場合、債務者がローンを返済できなくなった場合は、債務者の返済能力の有無にかかわらず連帯保証人に返済義務が生じます。
遺族年金受給者が収入合算の方法をとる場合、連帯債務型・連帯保証型で違いが出るのは「合算者も住宅ローン控除の適用を受けられるか否か」です。
連帯債務型を選ぶと、住宅ローン契約者本人と連帯債務者となる合算者2人が、住宅ローン控除の適用を受けられます。
これに対して、連帯保証型では債務者は契約者本人のみであるため、住宅ローン控除の適用を受けられるのは契約者本人に限られます
連帯債務型で申し込みができる住宅ローンの例としてはフラット35の「デュエット」という商品があります。
民間金融機関の住宅ローンでも連帯債務型の商品がありますが、数は多くありません。

収入合算を利用する場合の注意点

住宅ローンを借り入れる際に、団体信用生命保険に加入する人が多いでしょう。

団体信用生命保険は、住宅ローン契約に含まれる生命保険契約です。
完済前に契約者が死亡した場合や、重度の障害により返済不能になった場合に、生命保険会社が残債務を返済するしくみになっています。
団体信用生命保険の保険料は、ローンの金利に含まれています。

収入合算を利用する場合、団体信用生命保険に加入できるのは「主たる債務者」である契約者本人に限られることに注意が必要です。

したがって、返済の途中で合算者が死亡しても、保険金はおりないので契約者本人の返済は継続します。

ただし、上記のフラット35「デュエット」は、合算者も契約者とともに団体信用生命保険の加入対象となることを認めています。

しくみ

親子リレーローンで二世帯住宅を建てる

遺族年金受給者が、成人した子どもと二世帯で同居したい場合に特におすすめできる方法として、親子リレーローンの利用があります。

親子リレーローンとは、親が契約者となって住宅ローンを組み、子どもと2世代に渡ってローンを返済する方法です。
「親子」という名称がつけられていますが、祖父母と孫(またはその配偶者)の関係でも利用できるローンがあります。
多くの場合、親子の子どものほうが先に契約者になることもできます。

親子ローンの申込条件は金融機関によって異なりますが、通常は以下のような条件があります。

  1. 親子が同居しているか、同居を予定している
  2. 契約時の子どもの年齢が18歳以上70歳未満、最終返済時が80歳未満
  3. 定期的で安定した収入がある
  4. 団体信用生命保険に加入できる

親子リレーローンを利用するメリット

親子リレーローンのメリットとしては、以下が挙げられます。

  1. 収入合算ができること
  2. 返済期間を長く取れること

遺族年金受給者が親子ローンを申し込む場合も、これらは大きな利点となりえます。
「収入合算」ができる点では、前述した連帯債務/連帯保証型の収入合算ローンと共通しています。
しかし、親子リレーローンでは、完済時の年齢上限について子どもの年齢を基準にするため、2世代で長期の返済期間を設定できる点に違いがあります。

長期になるほど返済額を抑えることができるので、無理のない返済ができます。

親子リレーローンを利用する場合の注意点

親子リレーローンでは、団体信用生命保険に加入できるのが子どものみである点に注意が必要です。
したがって、親が死亡等により返済できなくなった場合は、子どもが返済義務を引き継ぐことになります。

また、以下の点にも注意してください。

  1. 条件として親子の同居(同居予定)が含まれている場合があること
  2. 子どもが親の住宅ローンを引き継ぐために、自身が別のローンを組むことが難しい(審査を通りにくい)こと

まとめ

収入源が遺族年金のみの方が住宅ローンや自動車ローンを組むことは、一般的には決して容易ではありません。

しかし、個別の事情によっては、審査を通過できる可能性があります。

住宅ローンの場合、家族との収入合算、親子リレーローンなども検討することをおすすめします。

自動車ローンの場合は、申込時の年齢が高くなるほど審査を通過することが難しくなります。
遺族年金以外に収入がないとすれば、返済期間が長くなるため、申込時点で65歳を超えている方が審査を通るのは厳しいでしょう。

遺族年金受給者の方が住宅や自動車をローンで購入することを希望する場合は、専門家に相談した上で慎重に検討してください。

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