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最終更新日:2023/3/7

保佐人の権限やできること7つ【できないことも解説】

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

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保佐人の権限やできること7つ【できないことも解説】

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この記事でわかること

  • 保佐人となった人がどのような権限を持つのか知ることができる
  • 保佐人としてはできないことがあることがわかる
  • 保佐人を選任する方がいいケースがあることがわかる

判断能力が低下した人は、詐欺などの犯罪に巻き込まれる、あるいは必要のない商品を購入する可能性があります。

そこで、判断能力の低下した人を保護するために、保佐人が選任されることがあります。

ところで、保佐人となった人はどのような権限を持ち、何ができるのでしょうか。

また逆に、保佐人はどのようなことができないのでしょうか。

保佐人とは?

保佐人は、判断能力が低下した人のサポートをする権限を持った人です。

例えば認知症になり判断能力が低下した人が、詐欺にあったり、不要な契約をしたりするのを防ぐことができます。

具体的には、預金の払戻しや不動産の売買といった手続きに対して、保佐人の同意が必要になります。

判断能力の低下した本人だけでは手続きできず、保佐人の同意がないと手続きできません。

そのため判断能力が低下した本人を、不当な契約から守ったり、財産の使い込みを防げたりします。

保佐人の選び方

「自分の親が認知症で心配なので、保佐人になりたい」
「自分になにかあった時のために保佐人を決めておきたい」
という人もいるでしょう。

誰が保佐人になるかは、家庭裁判所が選びます。

そのため自分から裁判所に申立をしても、必ずしも自分が保佐人になれるとは限りません。

親族が保佐人になる場合もあれば、弁護士・司法書士といった専門家が選ばれる場合もあります。

保佐人の権限・できること7つ

保佐人となった人は、どのような権限を持っているのでしょうか。

ここでは、権限とできることについて説明します。

同意権を有する

保佐人は、保佐を受ける人(被保佐人)が重要な法律行為を行った場合、その行為についての同意権を有しています

そのため、被保佐人が自分の判断で行った契約について、保佐人が同意することで、本人の意思を尊重していることになります。

なお、重要な法律行為に該当するものは、民法13条1項に列挙されています。

これらの行為を被保佐人が行うためには、保佐人の同意が必要です。

主なものは、以下のとおりです。

  • 借り入れをする、あるいは第三者の借り入れを保証すること
  • 不動産などに関する重要な権利を取得し、あるいは手放すこと
  • 訴訟を行うこと
  • 贈与、和解、仲介合意をすること
  • 相続の承認や放棄、あるいは遺産分割をすること
  • 新築、改築、増築、大修繕を行うこと
  • 長期の賃貸借契約を行うこと

取消権を有する

保佐人となった人は、被保佐人が自身で行った重要な法律行為について、同意しないこともできます。

保佐人は、被保佐人の行った行為を取り消す権限を有しているためです。

代理権を設定できる

通常、保佐人は被保佐人の法律行為に同意するか、その行為を取り消す権限しか有していません。

ただ、家庭裁判所での審判において、特定の行為について保佐人に代理権を付すことができます

代理権の対象となる行為は、民法13条1項に列挙されている行為です。

ただ、代理権を設定するとそのすべてが対象となるわけではなく、審判でどの行為を対象とするのか決定します。

また、代理権を設定するためには、被保佐人の同意が必要とされます。

保佐人ができないこと

保佐人は、判断能力の低下した被保佐人の生活をサポートする役割を担っています。

ただ、保佐人であればどのようなことでもできるわけではなく、保佐人であってもできないことがあります。

ここでは、特に間違えやすいケースを2つ紹介します。

事実行為の同意や代理はできない

保佐人に認められる同意権や代理権は、いずれも法律行為に対するものであり、事実行為に対するものではありません。

そのため保佐人は、事実行為を被保佐人に代わって行う人ではありません

法律行為とは、売買やサービスの提供事業者と契約を締結することです。

一方、事実行為とは、実際にその行為を行うことです。

たとえば、自宅の清掃を必要とする被保佐人に対して、ヘルパーと契約するのが法律行為、清掃するのが事実行為となります。

保佐人として行うのは、あくまでも法律行為であることに注意しましょう。

身元保証や身元引受、連帯債務ではない

高齢者が被保佐人となる場合、入院することや介護施設に入所することがあるでしょう。

この時、病院や施設の方から、身元保証人や身元引受人になることを求められることがあります。

しかし、保佐人は法的に身元保証人などになる権限を与えられていません

そのため、保佐人だからといって、自動的に身元保証や身元引受を行う必要はありません。

保佐人の選任がおすすめのケース

保佐人の権限やできること・できないことを確認してきました。

ここまでの内容をふまえて、どのような場合に保佐人を選任するといいのか、その具体例をご紹介します。

重要な法律行為をしたい(したくない)

自宅の売却や介護施設への入所など、重要な法律行為を行う際には、保佐人の同意が必要となります。

判断能力の低下が疑われる状態で契約しても、その契約が有効に成立しないこともあります。

そのため、契約を確実に成立させるために保佐人を選任しておくとよいでしょう。

逆に、被保佐人が勝手に不動産の売買をしないように、保佐人を選任することもあります。

もし被保佐人が契約しても、後から保佐人が取り消しできるようにしておくことが重要です。

近い将来に相続が発生する可能性がある

相続に関する様々な行為は、重要な法律行為にあたります。

たとえば、相続人として相続を承認、あるいは相続放棄することも、判断能力がなければ適切に行うことはできません。

そのため、相続が発生する可能性がある場合には、保佐人を選任しておくと安心できます。

また、被保佐人自身の相続を考えて贈与しようとする場合も、保佐人が必要となることがあります。

そのため、判断能力の低下が疑われる場合には、保佐人を選任するとよいでしょう。

保佐人について気になること

ここからは保佐人について気になることを紹介します。

報酬は月2万程度

保佐人をつけると、報酬の支払いが発生します。

報酬は管理する財産によりますが、基本的には月2万円程度になります。

管理する財産が5,000万円以上ある場合は、月5〜6万円と高くなります。

追加で特別な作業が発生すれば、追加報酬を支払う場合もあります。

家庭裁判所が報酬金額を決めるため、月2万円はあくまでの目安の金額です。

「保佐人に依頼したいけど、お金がない」という人もいるでしょう。

自治体によっては保佐人への依頼費用を払ってくれる制度もあります。

「依頼費用がないから保佐人をつけられない」という場合でも、必ず自治体に確認して制度が利用できないかチェックしておきましょう。

成年後見制度との違い

保佐人と似ているものとして、成年後見制度があります。

成年後見制度とは、後見人を選び、本人に代わって財産の管理・契約の代行をします。

保佐人との違いは、成年後見制度の方がより広い権利を持っていることです。

成年後見制度の管理者を後見人といいますが、後見人は保佐人に比べて、強い法的な権利を持っています。

なぜなら保佐人に比べて、成年後見制度の方が「本人に判断能力が乏しい」と判断されているからです。

成年後見制度は、より判断能力の低い人が対象となっているので、その分後見人は強い法的な権利を持っています。

成年後見制度については、下記の記事をご覧ください。

→成年後見制度とは?利用の流れや必要性、メリット・デメリットをわかりやすく解説

親族よりも専門家がおすすめ

「保佐人は親族・専門家のどちらがいいの?」と思うかもしれません。

結論からいうと、専門家の方がおすすめです。

なぜなら財産の管理・契約の同意など、専門的な知識が必要になるからです。

親族でも保佐人になるケースはありますが、経験豊富な専門家に任せた方が安心です。

まとめ

判断能力が低下した人は、自身で適切な判断ができないことがあり、保佐人などを選任することで保護されます。

また保佐人を選任するのは、被保佐人を保護するだけでなく、被保佐人が重要な法律行為をできるようにするためでもあります。

保佐人の同意があれば、被保佐人も法律行為を行うことができます。

保佐人を選任することで、被保佐人の行動を広げる可能性があることも覚えておきましょう。

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