この記事でわかること
- 法定後見制度において補助人とはどのような人かわかる
- 補助人の権限が後見人や保佐人とはどう違うのかがわかる
- 補助人を選任するためにどのような手続きを行うかわかる
法定後見制度を利用すると、サポートを必要とする人の状態に応じて後見人、保佐人、補助人のいずれかが選任されます。
このうち補助人は、比較的軽度な支援を行う人とされていますが、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。
また、補助人はどのような権限によって支援を行うことになるのでしょうか。
補助人を選任する方法や必要になる書類も確認しておき、補助人についての理解を深めましょう。
補助人とは
補助人とは、判断能力が低下した人をサポートするために設けられた法定後見制度の1つです。
法定後見制度は、判断能力が低下した状態にある人が法律行為を行うための制度です。
家庭裁判所の審判により選任された人が、支援を必要とする人のために法的な権限を与えられて、活動を行います。
したがって、補助人は単に介護が必要な人を補助する人ということではなく、法律にもとづいた存在といえます。
法定後見制度を利用する際には、補助人の他に後見人や保佐人が選任されることもあります。
後見人が選任されるのは、本人の判断能力が失われた状態にある場合です。
また、保佐人が選任されるのは、本人の判断能力が著しく不十分な状態にある場合です。
これに対して、補助人が選任されるのは、本人の判断能力が不十分な状態にある場合とされます。
特に保佐人が選任される場合と、補助人が選任される場合の違いがわかりにくいでしょう。
これについては次の項で詳しく解説していきます。
簡単に言えば、補助人に判断を任される範囲が限定されている程度であるのに対し、保佐人が選任される場合の方が、補助人が選任される場合より本人の判断能力はより低下しているといえます。
補助人が持つ権限
補助人が判断能力の低下した人の支援ができるのは、法律にもとづいた権限が家庭裁判所から付与されるためです。
実際にどのような権限が与えられるのか、その内容を確認していきましょう。
また、後見人や保佐人とは、その権限にどのような違いがあるのかも解説していきます。
代理権
代理権とは、支援を必要とする人に代わって、その人のために法律行為を行うことです。
文字どおり、本人の代わりに法律行為を行うことであり、法律行為を行ったことを本人が知っている必要はありません。
補助人となった人に、自動的に代理権が付与されることはありません。
前述したように、補助人の対象となる被補助人は、判断能力の低下は見られますが、1人ですべての法律行為を行うのは不安な状態にあります。
裏を返せば、すべての法律行為を行うのに代理人が必要になるほど、判断能力が低下しているわけではないといえます。
そのため、補助人には原則として代理権は付与されません。
ただ、被補助人の中にも、特定の法律行為を行うのが難しい人がいる可能性はあります。
そこで、家庭裁判所の審判において、家庭裁判所が認めるものについては補助人にも代理権が付与されます。
この時、被補助人の同意も必要になることから、補助人が勝手に代理人になることはできません。
他の法定後見制度の中では、後見人はすべての法律行為についての代理権を有しています。
代理権を付す法律行為を定める必要もなく、すべての行為を後見人が代わりに行えます。
また、被後見人となった人は自身で法律行為を行うことができなくなります。
一方、保佐人は補助人と同じように、原則として代理権を持ちません。
家庭裁判所での審判において、代理権を付すことができるのも補助人と同様です。
同意権
同意権とは、支援を必要とする人が行った法律行為について、後からその行為を行ったことを承認することです。
法定後見制度では、同意権が定められた行為については、その同意がなければ有効に成立しません。
補助人となった人は、被補助人の行う法律行為に対して同意権を持ちます。
ただ、同意権の対象となる法律行為は家庭裁判所の審判により定められるため、その権限は限定的なものとなります。
具体的には、民法13条1項に定められた法律行為のうち、家庭裁判所が認めたものについて同意権が付されます。
なお、民法13条1項に列挙されている法律行為は以下のとおりです。
- 借金を返済してもらう
- 借金をするまたは保証人になる
- 不動産や有価証券などを売却する
- 訴訟を行う
- 贈与や和解を行う
- 相続の承認や相続放棄を行う
- 贈与を断る
- 新築や改築などの工事を行う
- 長期間の賃貸借契約をする
- 法定代理人として法律行為を行う
これに対して、保佐人も同意権を持ちますが、この同意権は補助人より大きなものとなります。
民法13条1項には、重要な法律行為として代理権の対象となるものが列挙されていますが、保佐人はそのすべての代理権を付与されます。
補助人の同意権が家庭裁判所の審判で認められたものに限定されるのと比較すると、より大きな権限を有しているといえます。
なお後見人について、同意権は定められていません。
被後見人はもともと、1人で法律行為を行うことができないためです。
そのため、後見人に同意権を付与する必要はなく、仮に被後見人が単独で行った行為に後見人が同意しても、有効にはなりません。
取消権
取消権は、他人が行った法律行為を取り消すことです。
同意権とは表裏一体の関係にあり、同意権が付された行為については、取消権も存在しているということになります。
補助人は、家庭裁判所の審判で同意権が付された行為について、取消権も有しています。
民法13条1項に記載された行為について、自動的に取消権が付与されるわけではないことに注意が必要です。
これに対して、保佐人は民法13条1項に記載された行為のすべてに対する取消権を有しています。
家庭裁判所の審判にもとづくというわけではなく、補助人に付与される取消権とは大幅に異なるものとなっています。
なお、後見人は同意権がないのと同様、取消権もありません。
被後見人は単独で法律行為ができないため、後見人は被後見人の行為を後から取り消す必要はないためです。
補助人の選任方法と必要書類
補助人を選任したい場合は、家庭裁判所の審判を行う必要があります。
そこで、どのように審判の申立てを行い、どのような書類が必要なのか、確認していきましょう。
補助開始の審判申立て
補助人を選任するために、家庭裁判所に補助開始の審判申立てを行います。
申立てを行うのは、本人や配偶者、親族などです。
必ず、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。
申立てに必要な書類
家庭裁判所に補助開始の審判申立てを行う際には、多くの書類が必要になります。
以下に、その書類を列挙します。
- 申立書
- 申立書申立事情説明書
- 財産目録
- 収支状況報告書
- 後見人等候補者事情説明書
- 本人の戸籍謄本
- 本人の住民票または戸籍附票
- 本人の成年後見に関する登記事項証明書
- 本人の診断書
- 後見人等候補者の戸籍謄本
- 後見人等候補者の住民票
- 後見人等候補者の身分証明書
- 後見人等候補者の成年後見に関する登記事項証明書
この他、本人の財産や収入に関する資料、本人の健康状態に関する資料なども必要になります。
まとめ
認知症などにより判断能力が低下した人は、周りの人の支援がなければ法律行為を行うことはできません。
また、そのような支援を受けることで、犯罪やトラブルに巻き込まれるのを防ぐことができます。
補助人の対象になるのは、比較的判断能力低下の程度が低い人です。
不安を抱えている人を支えていく制度となっているため、積極的に活用していきましょう。
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