この記事でわかること
- 死後離婚の概要
- 死後離婚をするメリット・デメリット
- 死後離婚によって起きる影響・起こらない影響
- 死後離婚の手続き方法・必要書類
- 死後離婚をする際の注意点
配偶者が亡くなった際、死後離婚によって姻族との関係を終了させるケースがあります。
姻族には配偶者側の父母や兄弟姉妹などが含まれており、婚姻で生じた親族関係になるため、「配偶者の死亡後は関係性を終わらせたい」と考える方もおられます。
義父や義母の介護に不安がある方や、同居にストレスを感じている方は、死後離婚で悩みを解消できるかもしれません。
ただし、配偶者の法要や、自分が亡くなったときの埋葬などを考えておく必要があるでしょう。
今回は、死後離婚のメリットやデメリット、死後離婚の影響や手続きの方法などをわかりやすく解説します。
死後離婚とは
死後離婚とは、市区町村役場への届出により、姻族との親族関係を終了させる手続きです。
義父母や義理の兄弟姉妹など、配偶者側の血族を姻族といい、配偶者が亡くなっても姻族関係は続きますが、死後離婚すると姻族関係が終了します。
なお、死後離婚は法律上の呼称ではなく、正式には役場へ提出する「姻族関係終了届」の手続きを指しています。
また、生前の離婚と死後離婚は法律上の扱いが異なるため、あくまでも姻族関係の終了であり、亡くなった配偶者との関係が断たれるわけではありません。
死後離婚と生前の離婚との違い
生前に離婚する場合、婚姻関係の解消によって戸籍が別々になるため、元配偶者の相続人にはなれません。
一方、死後離婚の場合は亡くなった配偶者と同じ戸籍に残るため、生前の離婚とは身分上の扱いが異なります。
死後離婚という呼称からネガティブな印象を受ける方もおられますが、性格不一致などを理由とした離婚ではないため、後ろめたさなどを感じる必要はないでしょう。
死後離婚をするメリット・デメリット
死後離婚には以下のメリット・デメリットがあるため、十分な検討が必要です。
姻族関係の終了によってストレスから解放されるケースもありますが、義父や義母の支援を受けにくくなり、子どもとの関係が悪化することも想定されるでしょう。
死後離婚のメリット
死後離婚した場合、以下のメリットがあります。
メリット
- 義父や義母の介護に関わる必要がない
- 義父や義母との同居を解消できる
- 折り合いが悪い姻族との付き合いがなくなる
- 祭祀承継者にならなくてよい
具体的な内容は以下のようになっており、姻族関係が終了すると介護の不安も解消されるでしょう。
義父や義母の介護に関わる必要がない
死後離婚すると、義父や義母の介護に関わる必要がありません。
法律上、義父母等の姻族を介護する義務はありませんが、「義父母の面倒をみて当然」という慣習的な考え方も少なくないようです。
しかし、死後離婚すると姻族側の慣習に従わなくてもよいため、義父や義母を介護する不安は解消されるでしょう。
義父や義母との同居を解消できる
死後離婚によって姻族との関係が終了すると、義父や義母と一緒に暮らす理由がなくなります。
義父や義母との同居にストレスを感じている方は、死後離婚を検討してもよいでしょう。
折り合いが悪い姻族との付き合いがなくなる
死後離婚すると、折り合いが悪い姻族との付き合いがなくなります。
配偶者が生きている間は円満な付き合いができても、死亡と同時に関係性が悪化するケースは珍しくありません。
義父母や義理の兄弟姉妹と良好な人間関係を構築できす、今後の付き合いに悩んでいる方は、死後離婚で関係を断つことも一つの方法でしょう。
祭祀承継者にならなくてよい
死後離婚した場合、祭祀承継者になるケースはほぼないでしょう。
祭祀承継者になると、お墓や仏壇などを管理しなくてはならず、法要も取り仕切るため、大きな負担がかかります。
法要の参加者が多くなると、葬祭場や宿泊先のホテル、交通手段などの手配が必要になるため、準備だけでも1週間以上かかる場合があります。
また、自宅から離れた場所に墓地がある場合、定期的な管理が難しくなります。
法要や配偶者の命日が近付くと、墓掃除のために仕事を休まなければならないケースもあるでしょう。
お墓や仏壇などの管理が負担になる方は、死後離婚によって悩みを解消できます。
死後離婚のデメリット
死後離婚を検討するときは、以下のデメリットを考慮しましょう。
デメリット
- 義父母の支援を受けられなくなる
- 引っ越し先を見つけなければならない
- 子どもとの関係に悪影響が出る可能性がある
デメリットの詳細は以下のようになっており、中には子どもに影響が出る場合もあります。
義父母の支援を受けられなくなる
死後離婚すると義父母からの経済的支援を受けにくくなるため、子どもの学費や結婚費用などの支援は期待できないでしょう。
仕事で出張する際に子どもを預かってもらうなど、義父母の日常的なサポートも期待できなくなる可能性があります。
引っ越し先を見つけなければならない
死後離婚によって義父母との同居を解消するときは、引っ越し先を見つける必要があります。
引っ越し先が賃貸物件であれば、転居費用や今後の家賃も発生するため、経済的な余裕がなければ同居の解消は難しいでしょう。
子どもとの関係に悪影響が出る可能性がある
死後離婚はあくまでも大人の事情になるため、子どもが幼いと姻族との関係終了を理解できない場合もあります。
「なぜ離婚する必要があるのか?」や「なぜお爺ちゃんやお婆ちゃんに会えなくなるのか?」など、親に対して不信感を抱く可能性も考えられるでしょう。
子どもが幼く、大人の事情を理解できないようであれば、死後離婚のタイミングを数年後にずらしてみるのもよい手段かもしれません。
死後離婚の手続きには期限がないため、子どもの成長を待ってからでも遅くはないでしょう。
死後離婚によって起きる影響・起こらない影響
死後離婚するときは、影響があるもの・影響がないものをよく理解しておく必要があります。
「名字はどうなる?」や「配偶者の財産は相続できる?」など、以下のような疑問を解消しておけば、死後離婚するかどうか判断しやすくなるでしょう。
死後離婚しても遺産相続には影響なし
役場に死後離婚を届出しても、夫婦関係が解消されるわけではないため、法定相続人の地位に影響はなく、配偶者の遺産を相続することができます。
配偶者側の血族から「離婚したのだから財産を返してくれ」と言われても、返却する必要はないため安心してください。
死後離婚しても遺族年金の受け取りには影響なし
死後離婚は婚姻関係の解消ではないため、遺族年金は問題なく受け取れます。
遺族年金の受給権は消滅しないため、すでに受給している遺族年金を返還する必要もありません。
子どもとの血縁関係や子どもの相続権には影響なし
死後離婚しても、子どもとの血縁関係には影響がありません。
また、子どもの相続権にも影響がないため、亡くなった配偶者の法定相続人になります。
代襲相続の制度もそのまま適用されるため、配偶者が亡くなった後に義父母が亡くなった場合でも、子供は義父母の遺産を代襲相続できます。
配偶者の父母の扶養義務には影響なし
死後離婚するかどうかに関わらず、配偶者側の父母を扶養する義務はもともとないため、老後の面倒をみるように頼まれても応じる必要はありません。
つまり、義父や義母の扶養を強制するものではなく、当事者間の協議によって扶養する・しないを決めて構わないということです。
ただし、義父母や義理の兄弟姉妹が調停を申し立て、家庭裁判所が「特別な事情」と判断した場合は、扶養・扶助の義務が発生する可能性もあります。
死後離婚をすることで、扶養義務が発生する可能性をなくすことができます。
自分が亡くなったときの埋葬には影響なし
死後離婚は夫婦関係に影響しないため、自分が亡くなったときには配偶者と同じお墓に入れます。
また、死後離婚と埋葬には関係性がないため、妻が夫と同じお墓に入らず、実家のお墓に埋葬されても法律上は何の問題もありません。
ただし、妻は夫側の宗教に属するものとされており、嫁ぎ先と実家の宗教・宗派が異なっていると、実家側の菩提寺が納骨を認めないケースがあります。
また、亡くなった配偶者と同じお墓に入る場合、死後離婚していると、義理の兄弟姉妹などが難色を示す可能性もあるでしょう。
死後離婚するときは、どのお墓に入りたいのか、あるいはお墓ではなく散骨にするかなどをよく考え、埋葬に問題がないかどうかも調べておく必要があります。
義理の親や兄弟姉妹との関係には影響が出る可能性あり
死後離婚は、配偶者との婚姻関係を解消するものではありませんが、「離婚」という文字が付いていることから、一般的な離婚と同じように捉えられることがあります。
義父母や義理の兄弟との関係が悪化することはもちろん、「離婚して縁を切ったのだから法要には来てほしくない」と言われ、
配偶者の法要やお墓参りにも影響が出るかもしれません。
旧姓に戻る場合は復氏届が必要
死後離婚しても配偶者と同じ戸籍に残るため、姓に影響はありませんが、旧姓に戻したいときは復氏届が必要です。
市区町村役場に復氏届を提出すると、婚姻前の戸籍に戻って旧姓になる、または新たな戸籍を作成して旧姓になることができます。
ただし、子どもの戸籍には影響しないため、復氏届を提出すると親子が別々の姓になります。
子どもの姓を自分と同じ旧姓にしたいときは、「子の氏の変更許可申立書」を家庭裁判所に提出して許可を受け、市区町村役場に「入籍届」を提出してください。
子どもが15歳以上になっていれば自分で家庭裁判所に申立てできますが、15歳未満の場合は親権者が法定代理人となって申立てを行います。
新たに祭祀承継者を決める場合がある
死後離婚した場合、基本的には祭祀承継者になる必要がありません。
しかし、亡くなった配偶者の遺言書で自分が祭祀承継者に指定されていたりすると、義父母などの利害関係者と話し合い、新たな祭祀承継者を決める必要があります。
遺言書で祭祀承継者に指定された場合、「死後離婚したから無関係」というわけにはいかないため、新たな承継者の決定協議がストレスになる可能性もあるでしょう。
死後離婚の手続き方法・必要書類
前述したように、死後離婚は姻族関係を終了させる手続きになるため、市区町村役場に「姻族関係終了届」を提出します。
手続き方法の流れや、必要書類は以下のようになっています。
死後離婚する際の必要書類
死後離婚するときは、現在の住所地、または本籍地の市区町村役場に以下の書類を提出することで手続きできます。
必要書類
- 姻族関係終了届
- 届出人の本人確認書類
姻族関係終了届には提出期限はありません。
また、死後離婚は届出人が単独で手続きできるため、姻族側の同意を得る必要はありません。
本人以外が届出する場合は使者扱いになるため、委任状の作成も不要です。
役場側の手続きが完了すると、戸籍には「姻族関係終了」と記載されますが、姻族への通知などはありません。
死後離婚をする際の注意点
死後離婚には以下の注意点があるため、姻族関係終了届を提出するかどうか、十分な検討が必要です。
亡くなった配偶者の財産をよく調べていなかった場合、高額な借金を相続する可能性があるため、注意しましょう。
死後離婚の取消しはできない
姻族関係終了届の提出後は撤回が認められないため、死後離婚は取消しできません。
自分の都合では死後離婚がベストな選択であったとしても、義父母と子の親族関係が消える訳ではないため、子どもと義父母が良好な関係であれば、お互いがつらい思いをすることになるでしょう。
死後離婚すると姻族との関係は回復しないため、親族関係を復活させたい場合は養子縁組をすることになります。
死後離婚しても相続放棄にはならない
死後離婚しても残された配偶者には相続権があるため、相続放棄したことにはなりません。
亡くなった配偶者に高額な借金があり、返済義務を引き継ぎたくないときは、死後離婚とは別に家庭裁判所へ相続放棄を申述する必要があります。
相続放棄の期限は相続開始を知った日から3カ月以内になっており、期限後の申述は原則として認められないため注意が必要です。
また、3カ月の熟慮期間中でも相続財産の預貯金を使ったときや、不動産などを売却したときは、相続の単純承認をしたものとみなされます。
単純承をしたとみなされた場合、家庭裁判所は相続放棄を認めてくれません。
3カ月間で相続財産や借金を調査できないときは、弁護士などの専門家に依頼した方がよいでしょう。
戸籍を見られると死後離婚が発覚する
死後離婚は単独の届出が可能になっており、姻族への通知もありません。
ただし、戸籍には「姻族関係終了」が記載されるため、義父母や義理の兄弟姉妹が戸籍謄本を見る機会があれば、死後離婚が発覚します。
死後離婚は姻族の同意も必要としませんが、何らかの形で義父母などのお世話になっているケースが多いため、姻族関係終了届の提出前に連絡しておく方が無難でしょう。
死後離婚せずに再婚した場合は姻族関係が増える
死後離婚せずに再婚した場合、亡くなった配偶者側との姻族関係が続き、新たな配偶者側との姻族関係も発生します。
姻族関係が増えると、しがらみも多くなってしまい、精神的な負担も大きくなるため注意しましょう。
義父母への特別寄与料が認められるケースは少ない
長男の妻が義父母を介護するケースや、義父母の事業を手伝うケースはよくありますが、特別寄与料を認めてもらえる可能性はほぼないでしょう。
特別寄与料を主張する場合、無償かつ専従的な介護であったことや、財産の維持・増加に貢献するなど、親族に通常期待される程度を超えていなければなりません。
死後離婚の前に義父母の介護などに専念しており、特別寄与料を請求したいときは、まず弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
死後離婚によって姻族関係が終了すると、しがらみや慣習から解放されます。
婚姻関係にも区切りが付くため、今後の人生を一人で過ごしたい方や、再婚を考えている方は死後離婚を検討してもよいでしょう。
しかし、死後離婚は子どもに影響する可能性があり、手続き完了後は義父母からの支援も期待できません。
相続財産の調査に対応できない場合、高額な借金を見逃す恐れもあるため、死後離婚に迷ったときはベンチャーサポート相続税理士法人の無料相談を活用するとよいでしょう。
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