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最終更新日:2023/8/1

遺産相続で預金はいつもらえる?各金融機関の最新情報

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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この記事でわかること

  • 被相続人が亡くなってもすぐに遺産は受け取れないこと
  • 金融資産を相続人が受け取るためには手続きが必要となること
  • 各金融機関でお金が振り込まれる所要期間について
  • 預金を相続する際の注意点

被相続人の死亡で相続が開始されます。

当然のことながら、被相続人を見送る葬儀費用等もかかってしまいます。

まずは相続人間で遺産分割を行う前に、被相続人(故人)の葬儀等が優先されるはずです。

ただし、親類縁者をはじめ被相続人の友人・知人等が参列することになれば、その費用は大きくなります。

親族からすれば、被相続人の預貯金から葬儀費用等へ回したいと思うのが本音でしょう。

一方、被相続人がお金を預けていた金融機関では、相続が開始されたのを知ると、被相続人の口座を凍結してしまいます。

これではお金を引き出すことができません。

そこで今回は口座凍結の解除方法や、どうしても遺産分割前に被相続人の預貯金が必要な場合の対応等を解説します。

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金融機関はどうやって訃報を知る?なぜ凍結されるのか?

銀行をはじめとした金融機関が被相続人の亡くなった事実を知るのは、その遺族からの報告による場合が多いです。

では、「口座を凍結されると面倒だから、黙っていれば良いのでは?」と思う方々も多いことでしょう。

しかし、仮にこの事実を黙っていても、金融機関は取引の過程で訃報を知ることがあります。

被相続人が亡くなったことを知れば口座は凍結されます。

凍結されると窓口でのお金の引き出し・預け入れ、自動引き落としはもちろんできません。

口座を凍結する理由は、被相続人の預貯金が遺産相続の対象となるからです。

遺産の中でも普通預金ならば、ATMで遺族が被相続人のキャッシュカード等を持参し暗証番号の入力すれば、本人でなくとも簡単にお金を引き出すことができます。

遺族の一人がこの様な方法で、勝手に遺産を引き出すことができるなら、他の相続人との間でトラブルが発生し、銀行等も責任を問われるおそれがあります。

そのため、銀行等は相続争いに巻き込まれるのを防ぐため、口座凍結で対応するのです。

凍結された口座を解除する方法について

被相続人の口座は通常、遺産相続手続きを終え、相続人の誰が遺産を取得するか確定した時に凍結が解除されます。

もちろん、凍結が解除されお金を受け取るまでには、然るべき手続きや金融機関が要求する必要書類を提出しなければいけません。

凍結された口座からお金を受け取るまでの流れ

まずは死亡届を、被相続人が亡くなったことを知った日から7日以内(国外で亡くなった場合は、その事実を知った日から3か月以内)に、①被相続人の本籍地、②死亡地、③届出人の所在地いずれかの市区町村役場へ届け出ます。

その後、被相続人の通帳・キャッシュカードをチェックします。

そうしないと、どの金融機関に口座を有しているか把握できないためです。

また、被相続人の口座へ引き落とし・入金の予定があるならば、口座変更を行います。

凍結後は出入金が不可能となり、公共料金・その他の引落しのある場合に支障が出るからです。

そのうえで、次のような手順を進めていきます。

  • 1.被相続人(口座名義人)の死亡を金融機関へ連絡する
  • 2.金融機関が被相続人(口座名義人)の口座を凍結する
  • 3.相続人間で遺産分割を完了させる
  • 4.金融機関に必要書類提出、凍結解除を要請する
  • 5.お金の払戻を受ける

必要書類に問題がなければ、金融機関から概ね数週間程度で相続人の指定口座にお金が払戻しされます。

各金融機関のお金が振り込まれるまでの目安の期間については後述します。

金融機関の口座凍結を解除する手続き

口座凍結の解除は、具体的に言えば相続人の誰かが口座を引き継ぎ名義変更するか、それとも解約するかを決めます。

いずれにしても必要書類は金融機関へ提出しなければいけません。

どのように遺産相続が決定されたかで、提出しなければならない書類は異なることがあります。

まず共通して必要とされる書類は次の通りです。

  • ・被相続人の出生~亡くなるまでの全ての戸籍謄本(改製原戸籍謄本または除籍謄本)
  • ・相続人全員の戸籍謄本
  • ・相続人全員の印鑑登録証明書
  • ・相続の対象となる預金口座の通帳や証書等

(1)遺言・遺産分割協議をしないケース

被相続人が記載した遺言がないうえに、相続人も子1人だけであるとか配偶者・子の2人のみ、遺産自体も多くないという理由で、単純に法定相続分で遺産分割する場合が該当します。

必要書類は上記の書類のみで十分な場合が多いです。

なお、相続人全員の戸籍謄本については、被相続人と同一の戸籍にいる人や、被相続人の戸籍から結婚等で除籍された場合でも、現在の姓が被相続人の戸籍から確認できる人は不要となります。

(2)遺言があるケース

被相続人が作成した遺言書の種類でも提出書類は異なります。

①自筆証書遺言・秘密証書遺言

被相続人が自分で作成した遺言である自筆証書遺言、そしてほとんど作成されませんが秘密証書遺言で遺産分割を決めた際、次のような書類が必要です。

  • ・自筆証書遺言書・秘密証書遺言書正本
  • ・検認調書(または検認証明書)

検認調書(または検認証明書)とは、家庭裁判所が遺言書の検認後に作成する書類です。

この書類がなければ、金融機関は信用するに足る遺言書と認めてくれません。

②公正証書遺言

信頼性の高い公証人が作成してくれる遺言書なので前述した検認は不要となります。

次のような書類が必要です。

  • ・公正証書遺言書の謄本の原本:公証人から受け取った遺言書の副本が該当します。

(3)遺産分割協議をしたケース

法定相続人間で遺産分割について協議し財産分与を決めた際は、その協議内容を書面化して金融機関へ提出する必要があります。

その書類は次の通りです。

  • ・遺産分割協議書:遺産分割の内容、日付、法定相続人全員の署名・捺印が必要です。

銀行や金融機関ごとの振り込まれるまでの目安の期間2019年度最新情報

みなさんが気になるのは、金融機関の口座凍結を解除する手続き後、どの位で指定口座へお金が振り込まれるかでしょう。

前述した通り、どの金融機関も概ね数週間程度で振り込みは完了します。

こちらでは、各銀行の所要期間について取り上げます。

所要期間をホームページ等で明記している主な銀行は次の通りです。

金融機関 所要期間
ゆうちょ銀行 遅くとも1ヶ月程度
三菱UFJ銀行 約2週間
新生銀行 約2週間
青森銀行 1~2週間
七十七銀行 1~2週間
千葉銀行 5営業日程度
群馬銀行 1~2週間
十六銀行 約1週間
京都銀行 1~2週間
中国銀行 約1週間
福岡銀行 約1週間

だいたいどの銀行も1~2週間程度で振り込みは完了するようです。

ただし、書類の不備等があればその分、所要期間は長くなってしまいます。

どうしても遺産分割完了前にお金を受け取りたいなら

遺産分割が完了し前述した手続きを行ったなら、問題なく被相続人のお金は指定口座に振込まれます。

ただし、何らかの理由でやむをえず、被相続人の口座からお金を取得したい場合もあることでしょう。

その場合は「仮払い」という方法をとることができます。

しかし、この方法さえとれば被相続人の預金口座にあるお金を全部受け取れるわけでなく、一定の上限額が決められている場合もあります。

こちらでは金融機関へ仮払いを願い出る場合と、家庭裁判所へ仮払いを申し立てる場合について解説します。

金融機関に仮払いを申込む

葬儀費用や生活費、被相続人がつくった借金等を返すため、銀行等で仮払いを受けることが可能です。

法務省の発表によれば「預貯金の払戻し制度」として創設され、2019年7月から施行されています。

家庭裁判所に申し立てることなく銀行等の窓口で手続きができます。

ただし、被相続人の口座から払い戻せるお金には上限があります。

仮払いの条件と上限金額

各相続人は被相続人の預貯金の内、口座ごと(定期預金は明細ごと)に、次の計算式で求められる金額以内ならば、家庭裁判所の判断を経ずお金が受け取れます。

「相続開始時の預金額×1/3×払戻しを希望する相続人の法定相続分」

事例を挙げて計算してみましょう。

(例)

  • ・1口座の普通預金額:810万円
  • ・相続人:配偶者・子2人(甲・乙)

相続人甲(法定相続分1/4)が払戻しを希望する場合、次のように計算します。

810万円×1/3×1/4=67.5万円

ただし、同じ銀行等の金融機関から払戻しできるのは150万円が上限です。

たとえ同じ金融機関の複数の支店に預金があっても、その全支店からの払戻しはやはり150万円が上限となってしまいます。

必要書類はこちら

手続きで必要となる書類は主に次の通りです。

  • ・被相続人の出生~亡くなるまでの全ての戸籍謄本(改製原戸籍謄本または除籍謄本)
  • ・相続人全員の戸籍謄本(または全部事項証明書)
  • ・払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書

各金融機関によっては追加の書類を要求する場合もあります。

預金を相続する際の3つの注意点

被相続人の預金を相続する際はいろいろと面倒な手続きが多いです。

しかし、これまで述べてきた手続きを省くと、後々相続人間でトラブル等が生じる場合もあります。

主に次の3点へ気を配る必要があります。

他の相続人とのトラブルに注意!

基本的に金融機関の口座凍結は、相続人の報告で行われる場合がほとんどです。

これで、他の相続人が勝手に預金を引き出すリスクは避けられます。

ただし、葬儀費用を被相続人の預金で賄いたくて、被相続人が口座を開設していた金融機関へ報告する前に、ATM等で預金を引き出すことも想定されます。

もっとも、葬儀費用として使用するためお金を引き出したのなら、他の相続人も納得するでしょう。

しかし、被相続人のキャッシュカードや暗証番号がわかっているのを良いことに、自分の遊興費等に使用したら、後々大問題となる可能性があります。

当然、この事実が発覚すれば他の相続人との間で、トラブルが起きる場合はあります。

浪費した当人の信頼すら大きく傷つくことでしょう。

また、誠実に葬儀費用へ全額を使用しても、その領収書は必ず取っておくべきです。

領収書さえあれば、紛れもない証拠となります。

預金の使用は単純承認につながる

前述したように、引き出したお金を葬儀費用に使うならトラブルは起きないですし、相続を単純承認したことにもなりません。

なお、単純承認とは相続においてプラスの遺産も、被相続人の借金も全て引き継ぐことを意味します。

ただし、引き出したお金を自分のために使えば、相続人間のトラブルの他、被相続人の借金も相続してしまう事態となります。

相続調査で不動産資産、預金等を含めた金融資産であるプラスの遺産より、借金等の負債が多くても、もはや相続放棄はできなくなります。

ネットバンクは要注意!

最近ではインターネットがどんどん普及し、高齢の皆さんもパソコンやスマートフォンに慣れ親しんでいることでしょう。

被相続人がインターネットを良く使用していたなら、ネットバンクも利用していたかもしれませんね。

ネットバンクは契約をするものの、通帳がなくキャッシュカードの存在を知らなければ、相続人が口座を発見できないケースもあります。

相続人がこの口座の存在を知らないまま、相続税申告すれば延滞税等のペナルティを受けるおそれがあります。

この様な事態にならないため、被相続人側も遺言でその存在を明記することや、エンディングノートへネットバンクの口座開設について記載しておいても良いでしょう。

なお、エンディングノートとは、ご自分が死亡または判断力喪失を伴う病気にかかる前、遺族へ知らせたい内容を記すノートのことです。

まとめ

被相続人が亡くなれば、いろいろな手続きに追われ、葬儀費用等でお金もかかってしまいます。

しかし、相続人達が協力すれば被相続人を悼みつつ、スムーズに遺産分割の作業が進むはずです。

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