この記事でわかること
- 遺産分割で寄与分を請求した場合に上限があることがわかる
- 寄与分と遺贈、遺留分が同時に発生すると何が優先されるのかがわかる
- 寄与分を請求する際の流れや必要な書類について知ることができる
亡くなった人の残した財産は、原則として相続人がすべて相続することとなります。
ただ、遺産分割を行う際に、法定相続分に基づいて各相続人の取り分が決まるとは限りません。
中でも寄与分を主張する相続人がいると、どのように遺産分割するか、話し合いが長引くことも珍しくありません。
寄与分として主張できる金額の上限、寄与分と遺贈や遺留分との関係など、遺産分割における寄与分の注意点をご紹介します。
目次
寄与分とは
寄与分とは、被相続人の遺産の維持や増加に貢献した相続人が、他の相続人より多くの遺産を受け取れるようにする制度です。
各相続人には、遺産分割の際の取り分の目安となる法定相続分が定められています。
必ずこの割合に従う必要はありませんが、この割合を目安として遺産分割が行われることも多くあります。
しかし、この割合で遺産分割を行うことが平等というわけではありません。
被相続人の生前に、被相続人のために働いた相続人がいれば、その人がより多くの遺産を受け取るべきと言えるからです。
寄与分の制度に基づいて、相続人の貢献度合いに応じ、実際に受け取る遺産の額を増やすように主張できることとなっています。
遺産相続で受け取れる寄与分には上限がある
遺産分割で寄与分を主張するのは、被相続人に対して貢献したと考える相続人本人です。
寄与分を主張する相続人は、寄与分を認めてもらうように主張すると同時に、その金額も算定する必要があります。
ただ、寄与分として受け取れる金額には上限があります。
その計算方法は、「すべての遺産の額-遺贈により受けとる人が決まっている財産の額」です。
遺贈、つまり遺言によって誰が受け取るか決まっている遺産については、たとえ生前に特別な寄与があったとしても受け取ることはできません。
寄与分の金額を計算する際には、どのような計算を行うのでしょうか。
ここでは、寄与分の計算で特に多い3つのケースをご紹介します。
寄与分の計算①事業を手伝った場合
最初は、被相続人の行っていた事業を無償で手伝っていた場合です。
本来であれば、受け取っていたはずの給料を受け取らなかった結果、被相続人の遺産が維持されたこととなります。
そこで、本来であれば受け取っていたはずの給料の額を計算します。
ただ、被相続人と一緒に生活していた場合などは、相続人の生活費の負担は軽減されているはずです。
そこで、以下の計算式で寄与分の金額を計算します。
計算式
年間報酬相当額×(1-生活費控除割合)×寄与があった年数
この計算によって出た金額を、該当する相続人は寄与分として主張することができます。
寄与分の計算②金銭や財産を提供した場合
2つ目のパターンは、被相続人に金銭や財産などを提供した相続人の場合です。
本来であれば被相続人自身が購入するはずの不動産などを、相続人が代わりに購入し、あるいは不動産自体を提供するとします。
すると、被相続人はお金を使わずに不動産を手にしているため、その相続人により財産が増加した結果となるというわけです。
この場合、相続開始時、つまり亡くなった時における「不動産の価額×裁量的割合」により、寄与分の金額を計算します。
裁量的割合とは、様々な事情を考慮して寄与分の額を調整計算する際の割合です。
相続人と被相続人の関係、貨幣価値や不動産価格などの要因が、寄与分の金額に反映されるようにします。
寄与分の計算③介護を行った場合
3つ目は、被相続人の介護を行った相続人がいる場合です。
ただ単に面倒をみていただけでは認められず、相続人の介護の分は介護費用を業者に支払わなくて済んだといった貢献があると、寄与分が認められます。
この場合、「介護職員の日当相当額×療養看護日数×裁量的割合」により、寄与分の額を計算します。
相続人は介護に関する専門知識がないケースが多いため、日当の額がそのまま寄与分の額にはなりません。
寄与分と遺贈・遺留分の優先順位
1つの相続の事例で、寄与分を主張する相続人と遺留分を主張する相続人がともに現れる可能性があります。
また、相続が発生する前に遺言が作成されており、遺贈が成立することもあります。
このように、遺産の取り分に関する様々な主張がある場合、何が優先されるのでしょうか。
寄与分と遺贈はどちらが優先されるのか
寄与分は、遺産分割協議で相続人が遺産の分割方法についての話し合いを行う際に、主張することができます。
一方、遺贈は遺言がある場合に、その遺言に従って遺産を引き継ぐ人を決定することです。
この両者が同じ相続で発生した場合は、寄与分より遺贈を優先して考えることとなります。
これは、寄与分には上限があると紹介したことが大いに関係しています。
寄与分として受け取れる額の上限は、すべての遺産のうち遺贈される財産の額を控除した金額とされています。
つまり、遺贈により引き継ぐ人が決まっている遺産については、寄与分を主張してももらうことはできません。
まずは遺贈により遺産を受け取る人が決定され、残りの遺産について寄与分を主張することができます。
寄与分と遺留分はどちらが優先されるのか
遺留分は、遺産分割協議を行う際に、相続人が最低限受け取ることができる遺産の割合のことです。
誰が法定相続人になるかにより、その割合は変動するため、その都度計算する必要があります。
寄与分と遺留分が同時に発生した場合、寄与分が優先されます。
遺産から遺贈を控除した後の金額が寄与分の上限とされ、遺留分については考慮する必要がないため、このような結論になります。
寄与分を主張することで、他の相続人の遺留分が侵害される結果になっても認められる可能性があります。
寄与分を請求する流れ・必要書類
寄与分を請求するのは、被相続人の生前に特別の寄与に該当する貢献を行った相続人本人です。
自身で寄与分を主張するとともに、その証拠となる書類を提示しなければ、寄与分は認められません。
そこで、どのような流れで寄与分を主張するのか、またどのような書類が必要になるのか、ご紹介します。
遺産分割協議で請求する
寄与分を請求する時は、まず相続人全員による話し合いが行われる遺産分割協議で、主張しなければなりません。
遺産分割協議で、他の相続人が寄与分を認めてくれれば、裁判所での手続きを行う必要はありません。
すべてが決着するまでの時間が短く済むため、遺産分割やその後の手続きを完了するまでに要する時間も短くなります。
ただ、他の相続人が寄与分についてすんなりと認めてくれる可能性は、高いとは言えません。
寄与分を認めれば、その分自身の相続分が減ってしまう結果となるからです。
そのため、寄与分を全く認めない相続人もいれば、金額面で不満を訴える相続人もいるでしょう。
寄与分の存在を認めてもらうには、被相続人が生きている間に「特別の寄与」と呼べる貢献があったことを証明する必要があります。
寄与分の種類に応じて、家事への勤務状況、被相続人の介護の状況などを証明する書類を、他の相続人に提示します。
また、金額面での争いがある場合には、自身の主張する金額が妥当であることを証明する必要があります。
この場合は、従業員として受け取る給料、あるいは介護職の人に依頼した場合の日当の額を調べて、他の相続人に提示することになります。
遺産分割調停で請求する
遺産分割協議で遺産分割案にすべての相続人が同意しない場合、遺産分割は決着しません。
そこで、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
この時、寄与分について主張している相続人は、寄与分を定める処分の調停の申立てを行います。
裁判所の調停委員のもと、各相続人が自身の主張をしていくこととなります。
第三者を介しての話し合いになるため、互いに冷静な話し合いを進めることができ、調停で決着することもあります。
寄与分について認めてもらうには、他の相続人はもちろん、調停委員にも書類を提示する必要があります。
証拠書類を調停委員に認めてもらえれば、寄与分を認めてもらえる方向で話し合いを進められる可能性が高くなります。
より客観的で、わかりやすい書類を準備するようにしましょう。
遺産分割審判で請求する
遺産分割調停が成立しない場合、そのまま遺産分割審判の手続きに移ります。
遺産分割調停は、各相続人の主張を聞いた家庭裁判所が、遺産分割案を決定する流れとなります。
裁判所の判断には、すべての相続人は従わなければなりません。
そのため、寄与分を主張する人は裁判官に証拠書類を提示する必要があります。
まとめ
他の相続人が寄与分を認めてくれればいいのですが、多くのケースでは、他の相続人はすんなりと寄与分を認めてくれません。
そこで、寄与分を主張する人は、自身で証拠書類や金額の算定根拠を示す必要があります。
寄与分の主張は、何年前の事実に基づいて行うことも可能ですが、証拠がない場合も多くあります。
被相続人に対してプラスになるようなことを行った場合は、寄与分になるかどうかに関係なく、根拠となり得る書類を残しておくのがいいでしょう。
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