この記事でわかること
- 確定拠出年金の種類と積み立てた資産の受け取り方
- 亡くなった方が確定拠出年金に加入していたとき、遺族が受け取れる「死亡一時金」を請求する方法
「亡くなった家族が確定拠出年金に加入していたようだけど、何か手続きは必要なの?税金に関する注意点は?」
このような疑問をお持ちの方へ向けて、本記事では「確定拠出年金の加入者が亡くなったときの手続きと税金」についてお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、ご不明なことがございましたら、下記からお気軽にご連絡ください。
目次
「確定拠出年金」とは?
確定拠出年金とは、加入者や勤務している企業が掛け金を拠出し、その資金を運用して将来の資産を形成する制度です。
いわゆる「私的年金」の1つで、掛金額(拠出額)が決められている(=Defined Contribution)ことから「確定拠出年金(DC)」と呼ばれています。
確定拠出年金の加入者は、制度を取り扱う金融機関が用意した運用商品のなかから、自身の方針に合ったものを選択し、掛け金を運用します。
そのため、積み立てた年金資産は、運用の成果によって総額が変動するのが特徴です。
この確定拠出年金には、次の2種類があります。
種類 | 概要 |
---|---|
iDeCo (個人型確定拠出年金) |
・加入者本人が、個人で金融機関に申し込んで加入する制度 ・自営業者や会社員、公務員、専業主婦(主夫)など、幅広い方がご自身の意思で加入する |
企業型DC (企業型確定拠出年金) |
・会社が福利厚生の一環として導入し、従業員が加入する制度 ・会社が掛け金の一部または全部を負担するほか、会社の掛金に上乗せして従業員も掛金を拠出できる |
また、積み立てた年金資産の受取方法は、次の3つから選べます。
受取方法 | 概要 |
---|---|
年金形式 | 積み立てた資産を「5年・10年・15年」など、あらかじめ決められた期間にわたって分割で受け取る |
一時金形式 | 積み立てた資産の全額を一度にまとめて受け取る |
年金+一時金の併用 | 積み立てた資産の一部を一時金として受け取り、残りを年金形式で受け取る |
加入者の遺族は「死亡一時金」を受け取れる
確定拠出年金の加入者が亡くなった場合、それまでに積み立ててきた年金資産は、遺族が「死亡一時金」として一括で受け取ることになります。
受け取れる金額は、「故人が年金の受給を開始していたかどうか」で、次のように変わります。
ケース | 受け取れる金額 |
---|---|
年金受給前に亡くなった | それまでに積み立てた資産の全額を受け取れる |
年金受給後に亡くなった | 亡くなった時点で残っていた資産を受け取れる |
なお、遺族が故人に代わって、「年金」として分割で受け取ることはできません。
確定拠出年金の死亡一時金を受け取る流れ
ここからは、確定拠出年金の死亡一時金を受け取るための流れを、次の4ステップでお伝えします。
なお、この手続きの流れは、加入者の亡くなったタイミングが「年金を受給する前」でも「受給していた最中」でも同じです。
ステップ1:「受取人」を確認する
まずは、「死亡一時金を受け取れるのが誰なのか」を確認しましょう。
死亡一時金の受取人は、確定拠出年金法に定められており、民法で定められた「法定相続人」の順位とは異なります。
「故人が生前に受取人を指定していた場合」は、その方が最優先で受取人になります。
一方で、「受取人の指定がなかった場合」の優先順位は、次のとおりです。
- 配偶者(事実婚のパートナーも含む)
- 故人の収入で生計を維持していた「子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹※1」
- 第2順位以外で、故人の収入で生計を維持していた「親族」
- 故人の収入で生計を維持していなかった「子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹※1」
- ※1
- 「子ども→父母→孫→祖父母→兄弟姉妹」の順に優先される
この優先順位では、「故人の収入で生活が支えられていたか」という「生計維持関係」が重視されるのが特徴です。
ステップ2:「運営管理機関」を調べる
手続きの窓口は、故人が加入していた確定拠出年金の「運営管理機関」です。
多くの場合、「銀行・信託銀行・証券会社」などが運営管理機関となっており、加入者の掛け金の管理や運用商品の提供を行っています。
運営管理機関は、以下の方法で特定できます。
方法 | 概要 |
---|---|
故人宛の書類を確認する | 「残高のお知らせ」や「加入者証」といった書類には、連絡先となる運営管理機関名や、個人ごとの詳細な記録を専門に管理している「記録関連運営管理機関(JIS&Tなど)」の名称が記載されている |
故人の勤務先に問い合わせる | 企業型DCの場合、故人の勤務先が契約している運営管理機関を把握しているため、直接問い合わせるのがもっとも確実 |
故人の預金通帳から掛け金の引き落とし先を確認する | iDeCoの掛金は口座振替で支払われるため、故人の預金通帳に毎月一定額を引き落としている金融機関名(銀行、証券会社など)があれば、そこが運営管理機関である可能性が高い |
「国民年金基金連合会」に問い合わせる | 会社の退職後などに本人が手続きをしなかった場合、資産が自動移換され、国民年金基金連合会で管理されていることがある |
ステップ3:請求手続きを進める
運営管理機関を特定できたら、加入者が亡くなったことを連絡して、死亡一時金の手続きに必要な書類を取り寄せましょう。
その後、金融機関から送られてきた「死亡一時金裁定請求書」の各項目を記入し、必要書類とともに提出します。
一般的に求められる提出書類は、次のとおりです。
なお、死亡一時金の請求権は、「加入者が亡くなった日から5年」で時効によって消滅しますのでご注意ください。
ステップ4:課される税金を確認する
受け取った死亡一時金には、「相続税」か「所得税」のいずれかが課されます。
どちらが課税されるかは、下記のように「請求のタイミング」によって決まります。
請求のタイミング | 課される税金 |
---|---|
加入者の死亡後「3年以内」 |
・死亡一時金は「みなし相続財産」として「相続税」の対象となる ・死亡退職金と同様に「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠がある※1 |
加入者の死亡から「3年経過後」 |
・死亡一時金は受取人の「一時所得」として「所得税」の対象となる ・ほかの一時所得と合わせて年間50万円の特別控除を超えると、確定申告が必要 |
- ※1
- 故人が亡くなったタイミングが「年金を受給する前」「年金を受給した後」のいずれのケースでも、死亡退職金の非課税枠の適用がある
確定拠出年金の相続に関するよくある質問
最後に、確定拠出年金の相続に関してよくある、次の質問にお答えします。
Q1:相続放棄をしても、死亡一時金は受け取れる?
死亡一時金は、相続によって受け取る財産ではなく「受取人固有の財産」です。
そのため、相続放棄をしたとしても受け取れます。
Q2:確定拠出年金以外の年金も、課税対象になる?
加入者が亡くなったことで遺族が受け取った年金の一時金などは、「加入していた制度」や「受け取った時期」によって、下記のように取り扱いが異なります。
制度 | 課される税金 |
---|---|
国民年金 厚生年金 共済年金 |
・遺族が受け取る「遺族年金」や「遺族一時金」は、相続税・所得税ともに非課税 ・「付加年金」制度を利用していた場合も、非課税 ・亡くなった人が生前に受け取る予定だったが、まだ支給されていなかった「未支給年金」は相続税の対象外だが、遺族の一時所得として所得税の対象 |
国民年金基金 | ・遺族が受け取る「遺族一時金」は、相続税・所得税ともに非課税 |
確定給付企業年金 (DB) |
・遺族が受け取る「遺族年金」や「遺族一時金」は、相続税の対象 ・加入者が年金を受取前だった場合に限り、相続税の死亡退職金の非課税枠を使える |
小規模企業共済 |
・遺族が受け取る「遺族共済金」は、相続税の対象 ・加入者が年金の受給を開始していたかどうかに関わらず、相続税の死亡退職金の非課税枠を使える |
個人年金保険 |
・故人が保険料を負担していて、遺族が「死亡給付金・死亡一時金」を受け取る場合は、相続税の対象(生命保険と同じ非課税枠あり) ・「年金受給権」を相続する場合、相続税の対象となり、非課税枠は適用されない |
財形年金貯蓄 |
・遺族が受け取る「払戻金(死亡給付金)」は、相続税の対象 ・非課税枠は使えない |
なお、中小企業の事業主が、従業員のiDeCo掛金に上乗せ拠出できる「iDeCo+(中小事業主掛金納付制度)」にかかる税金の取り扱いは、iDeCoと同じです。
Q3:死亡一時金が振り込まれるまで、どれくらい時間がかかる?
金融機関が請求書類を受理してから、「1〜2カ月程度」かかることが一般的です。
これは、故人が運用していた金融商品を売却し、現金化するための時間が必要なためです。
相続手続きでわからないことは、専門家に相談
今回は、確定拠出年金の死亡一時金について、その取り扱いや請求の手続きについてお伝えしました。
この記事を読んでもわからないことがありましたら、お気軽に税理士などの専門家にご相談ください。
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ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
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