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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL40 一般社団法人における租税回避防止規定と課税関係について解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

一般社団法人を設立しておくと、節税に非常に効果的であるというお話を耳にしたことはありませんか。

この話は果たして本当なのでしょうか。

本記事では、この疑問を解消するために、一般社団法人に関する租税回避の仕組みについて、解説をさせて頂きたいと思います。

一般社団法人の財産の相続性について

一般社団法人の社員としての地位を有している者は、その者に相続が生じた場合でも、その地位や財産について財産の承継を受けることができるのでしょうか

一般社団法人の社員の地位の相続性について

一般社団法人の社員に相続が生じた場合に、その一般社団法人としての地位は、その相続人に承継されるのでしょうか。

これについては、一般社団法人の社員としての法的地位は「一身専属権」となっていますので、その性質上他の人がこれを相続するということはできないことになっています。

一般社団法人の社員が亡くなると、その社員は法人を退社するという扱いになってしまいますので、その相続人となる人が、そのまま被相続人の地位を承継したいと考えた場合には、新たに自己を社員として加えてもらうための手続きを行っていただかなければいけません。

また、一般社団法人というものは、「社団」という名称にもある通り、法的性質としても、人的構成が重視されることになりますので、その構成員が誰もいなくなってしまうと、法人自体が解散になってしまいます。

一般社団法人の持分の相続性について

一般社団法人の社員になると、その持分が相続されるのではないかという疑問があるそうですが、これは誤りです。

一般社団法人は、あくまで人的要素に着目した法人組織ですので、その持分の分配などを観念することはできません。

一般社団法人は、営利社団法人ではありません

したがって、もし仮に一般社団法人に収益が発生し、剰余金が生まれたとしても、それを社員に分配することはできないようになっています。

ということは、一般社団法人の社員に相続が生じたとしても、そこから金銭的な相続財産は、各社員に帰属されないことになっているという訳です。

株式会社等の法人では、手続き上、「定款」と呼ばれる法人規則に規定することにより、さまざまなルールを設けることができますが、一般社団法人によって認められている法律の制限に伴い、そのようなルールを設けることはできないとされています。

これに対して、株式会社の例で比較をしてみます。

株式会社の株主としての地位を有しているのであれば、その株式は相続対象財産として考えられることになります。

なぜならば、株式会社は、一般社団法人とは異なり、営利社団法人であるので、その法人組織の性質上、当然に、剰余金を分配することが想定されているためです。

一般社団法人に対して遺贈をする場合には注意が必要です

先ほど一般社団法人の相続性について検討をしてきましたが、類似の制度として「遺贈」を行うことの有効性について見ていきたいと思います。

相続の場合には、一般社団法人の相続財産とはなりませんでしたが、遺贈を利用して節税対策をすることができるのでしょうか。

遺贈の効果としては、売買等による財産の取得とは異なり、相続と同様取得のためのコストはかからないことになります。

ただし、一般社団法人がこれを原因として財産を取得する場合には、法人税等が発生することになりますので注意が必要です。

一般社団法人が遺贈をすると、法人税しか発生しないと聞くと、相続税が発生しないのだから、なんだかお得なのではないかと思われるかもしれませんが、残念ながら実情はそうではありません。

国税庁等は、一般社団法人を利用した租税回避に目を光らせており、そう簡単には節税をすることはできません

一般社団法人を租税回避目的に、自分の親族等が有している一般社団法人に対して、遺贈がなされた場合には、あたかもその法人を個人と実質的に同じものとみなして、相続税が2割加算で課されることになります。

また、この遺産取得のために発生するコストが少なく、利益が生じる場合には、遺贈を行った場合でも、被相続人に譲渡所得課税が発生することになります。

この場合には、遺贈があったにもかかわらず、財産を時価評価により算定し、収支を確認しなければいけないことになっています。

一方で、収支が同じであるならば、当然、譲渡所得課税は発生しませんので、相続人は純確定申告を行う必要もないことになります。

このように、一般社団法人の節税対策には気を付けなければいけません。

単に、相続をしたり、遺贈をしたりすれば良いのではないかという考えでは、結果的に負担する税金額が重くなってしまいます。

また、贈与等の類似する方法によっても同じ結果となります。

一般社団法人の租税回避を防止するための取り扱いについて

一般社団法人の租税回避を防止するために、以下のようなペナルティーが設けられています

一般社団法人は租税回避することが難しい

一般的に私たちが相続の場面で、相続税・贈与税について懸念すべきは、あくまで主体が個人のことであって、法人について検討することはありません。

ところが、一般社団法人の場合には、多くの人から租税回避目的で利用を検討されたことがあるようです。

もしも、一般社団法人によって、租税回避をすることができるとすると、遺贈等を行うことによって、法人体として利益のみ生じることになってしまいますが、現実には前述の通り、社員の財産は相続によって承継することはできないように設定されてしまっている訳です。

また、万が一、租税回避を目的として行動をしようとした者に対しても実質的にペナルティーを課しています。

すなわち、租税回避目的に行動をした者に対しては、法人に課すことのできない相続税・贈与税を課し、また法人体としての一般社団法人本体に対しても同様の税金の負担を強いることになります

したがって、租税回避目的に一般社団法人を利用しようとする場合には、これらのリスクを十分に認識しなければいけません。

特別に利益を受ける者に対する租税回避の仕組み

一般社団法人に対して、遺贈等が行われた場合には、それによって特別に利益を受ける者が誰であるか確認されることになります。

そうして、その特別に利益を受ける者に対しては、その利益相当金額に対して遺贈等を取得したものと擬制されることになります。

一般社団法人に対するペナルティー

一般社団法人は法人体ではありますが、そのような利益を受けた場合には、個人であるのと同様に捉えて、相続税等が発生することになります。

法人体としての一般社団法人は、取引価格が公正でなければいけませんが、それにもかかわらず低廉価格等で取引がなされたような場合には、そうした受贈利益に対して税金が課せられることになってしまいます。

ところが、この場合には二重課税が発生することになりますので、法人税等一定の税金が差し引かれる措置が取られています

まとめ

今回は、一般社団法人を利用した租税回避防止についてみてきました。

一見、これを利用するとうまく租税回避ができるような気がしますが、現実には難しいものですので、きちんと税金を納められるように安全策をとりましょう

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