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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL32 分割方法によって変わる土地の評価額と損しないための対策

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

相続手続きにおいては、相続税を支払うことになるのかどうかについて気になるものです。

そのため相続税の計算の基準となる「相続財産評価額」が少しでも安くなることが望ましいといえます。

今回は、不動産の評価額を抑えるために、遺産分割の方法についてみていきたいと思います。

遺産分割手続きの場面で、不動産の評価額が気になるという方は是非最後までお読みください。

土地の評価の仕方

不動産の財産評価は、それが取得当時の財産評価を踏襲するのではなく、相続当時の状態で評価をすることになります。

具体的には、例えば、1つの土地に対して、二つ分の区画を使用している場合には、二つ分を対象として評価されることになります。

今、土地を「一つ」として数えましたが、厳密にいうと、土地の数え方は「一つ」、「二つ」ではありません。

あまり聞きなれないかもしれませんが、土地は「1筆」、「2筆」という風に数えます

土地は目には見えませんが、その地理的状況を参考に法務局にて、土地の区画ごとに情報が登録されています(この登録のことを「登記」といいます)。

また、区画ごとの判断の例としては、以下のように判断してください。

  • (1)「所有する宅地を自ら使用している場合には、居住の用か事業の用かにかかわらず、その全体を1画地の宅地」とする
  • (2)「所有する宅地の一部について借地権を設定させ、他の部分を貸家の敷地の用に供している場合には、それぞれの部分を1画地の宅地」とする

引用元:国税庁 「https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4603.htm」

このように、実質で評価されますので、1筆の土地を1筆として利用しているのであれば1筆分の評価となりますが、1筆の土地を2筆分として利用しているのであれば、その利用単位毎の評価がなされることになります。

一人の者が相続した場合と均等に相続した場合

ここでは、被相続人に二人の子供がいた場合を考えてみたいと思います。

子供たちは各々自分たち名義の住宅を構えていましたが、その土地は被相続人の土地を共通で使用していました。

ここで、不動産の相続の方法として、(1)単独相続が行われ、被相続人の土地を相続しなかった者は、相続をした者より使用貸借により土地を無償で使用する場合と、(2)それぞれの子供が住宅における土地について、被相続人の不動産を相続により取得し、使用する場合とでどのような違いがあるのかについて考えてみたいと思います。

一人の者が単独ですべて相続した場合について

この場合、被相続人の土地が誰に、どのように使われているのかを慎重に判断する必要があります。

ここでは、一人の者が被相続人の土地を相続しており、残りの者は使用貸借により無償で使用することができているという訳ですから、一人の者が土地全体を自己所有地として使用していると判断されることになります。

各相続人が均等に自分の住宅に対する土地を相続した場合について

被相続人が持つ各相続人を含んで住宅を敷地とする土地を、それぞれの相続人が相続した場合について考えてみます。

なお、子供は長男と次男がいるものとし、長男は長男名義の自宅を相続し、次男は次男名義の自宅を相続するものとしますが、被相続人が有していた自宅敷地については、長男が相続することになっているとします。

土地の相続財産評価を行うときには、路線価方式又は倍率方式によりますが、ここでは路線価が設定されていますので、路線価を元にして評価額を算定することになります。

先ほどの異なる住宅の敷地を一人の者が単独で相続する場合とは異なり、各相続人が自分たちの名義をそれぞれ登録するような場合には、路線価の価額によって、土地の評価額が変動することになります。

例えば、一人の者が単独で相続することになっていた場合で基準となった路線価の値よりも各相続人が相続することになった場合において、当該相続人が相続することになる土地の基準となる路線価の方が低い価額であれば、全体として、土地の合計評価額は下がるということになります。

分割する土地の状態によっても評価額は変わります

他の場合についても考えてみましょう。

分割の対象となる土地の状態によっても評価額は変動することになります。

例えば、更地である土地を分割する場合と、建物が建築されている敷地を分割する場合とで土地の評価額はどのように変わるのでしょうか。

更地である土地を分割する場合について

冒頭でも申し上げた通り、土地は「1筆」、「2筆」という単位によって区別がなされています。

そのため、更地である場合については、その土地が1筆ごとに評価されることになります。

したがって、遺産分割によって、被相続人の土地を2区間で相続した場合には、その区間ごとに相続評価がなされるということになります。

建物が建築されている敷地を分割する場合について

先ほどの更地の場合とは異なり、土地の上に建物が建築されており、かつこの建物が2区間にまたが立って建築されているような場合を考えてみましょう。

この場合には、土地を相続人二人で二区間の分割をしたとしても、土地に対して建物が一体として使用されている状態になっている訳ですから、財産評価も一体として評価されることになります。

なお、このことを「不合理分割」と言います。

上手に相続対策を進めるためには遺言書を作成することが重要

今回取り上げましたように、被相続人が他の相続人の住宅の敷地を含む土地の所有権を有しており、相続を境に、その土地の所有権を分割することになるような場合には、その相続人の数に応じて、土地の区画を分けることが必要になります。

つまり、被相続人が全体で1筆の土地を保有している場合に、3人の相続人に対して、平等に分けるためにこの1筆の土地を3筆に分けるということです。

これを分筆という風に表現します。

この分筆を行う際には、隣地との間の境界の所有権に関して、将来争いが生じる可能性があることから、しっかりと境界に関して測量等を行い、区画の確定をさせておく必要があります。

しかしながら、この境界画定のために要するコストは、それほど安い訳ではありません。

ところが、被相続人が亡くなった後に、初めて境界の確認を考えていくのであれば、この境界画定のために要するコストが相続税課税対象に含まれることになってしまいます。

相続税対策として、この境界画定のための分筆手続きも被相続人の生前に行っておけば、相続税課税対象に含めないで済むことになります。

今回の事例でご紹介しましたように、被相続人の所有の敷地に、他の相続人となるような人が住宅を構えているような場合には、早期の段階で分筆を行わなければいけない可能性があることは容易に想像できることかと思います。

分筆手続きを生前にきちんと行い、また、その分筆後に誰に自分の土地を相続させるのかということを遺言書できちんと残しておくことが生前の相続対策としては有効でしょう。

まとめ

今回は、不動産を相続する場合に、分割方法によって相続税評価額が変動する可能性があることについて説明しました。

相続を通じて1筆の土地が複数に分割される場合に、評価額が変わることもありますので、分割をしてしまう前に評価額のシミュレーションを行い、入念な相続対策をしっかり行うことが重要です。

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