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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL37 節税しながら子や孫を支援するには?贈与で非課税になる特例を解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

被相続人が自身の財産を用いて、自分の子供・孫たちに対して何か世話をしてあげたいと考えるものです。

ところが、相続における税金を考えると、あまりに世話を行うことで、多額の税金を支払うことになってしまうかもしれません。

この疑問を解消するために、本記事では、扶養義務者に対する支援制度についてみていきましょう。

基本的に税金の心配なく支援をすることができます

税制上、支援をする者とされる者との関係が扶養義務者である場合には、非課税のまま支援をすることができるようになっています。

ここで、「扶養義務者」が誰であるかを確認しなければいけないでしょう。

扶養義務者とは、本人から見て、配偶者、兄弟姉妹、そして両親・子供等の直系血族のことを言います。

例えば、母親もしくは父親である「本人」が、その子供に対して日々の生活に必要なお金を援助したからと言って税金がかかる訳ではないということです。

だからと言って、生活費という名目であまりにも過剰な援助を行っていると、それは疑いの目が向けられる原因となってしまいますので、注意も必要です。

両親だけではなく、祖父母からの援助ももちろん有効です。

つまり、祖父母が孫に対して、教育資金に関する援助を行ったとしても、それが正当なものである限り、有効な非課税の支援として認められることになります。

この「正当な」範囲については、単なる金額の大小によって決定されるわけではありません。

通常その支出として要求されている金額に対して、きちんと支払う分であれば、たとえ1,000万円ほどの大金となろうが、問題はありません

しかしながら、新生活に必要だからと言って、祖父母が孫に対して、支援の一環として車を贈与することは、これには当たりません。

なぜならば、車を使用するということは、もちろん使用することができれば便利ではありますが、別に使用しなくても問題なく生活することは可能であるからです。

また、支援を受ける人は、支援を受けなければいけないだけの財政状態であることが必要となります。

つまり、本来支援が必要でないような裕福の者に対して、お金を分け与えるとしても、それはその者にとって「支援」とはならないからです。

支援を受けるべき人は、財政状態があまり芳しくなく、その支援を受けないことによって、自律的に生活することの妨げになる等の一定の条件に当てはまっていることが必要でしょう。

このような者に対して、支援であると称して、一方的に贈与を行ったとしても、結果的に税金が課せられることになりますので、注意が必要です。

そこで、支援される者の財政状態に疑われる余地がある場合には、後から指摘がされることのないように、しっかりと証拠を揃えておくことが必要となります。

通常、相続対策として利用される生前贈与については、その基礎控除として、毎年110万円までと限度額が決まっていますが、この扶養義務者に対する支援では、そのような制限はありませんので、きちんと支援内容を確認することによって、効果的な節税対策となりうるでしょう。

結婚・子育ての場面における非課税支援について

先程ご紹介しました生活費と同様に、結婚・子育てのための支援を行うことも非課税の対象になります。

ということは、例えば、親が子供のために結婚式費用を支出したとしても、それは形式的には贈与の一種であると考えられますが、贈与税は課税されないことになっています。

ところが、結婚関連費用だからといって、新居の費用の援助をしてあげることは、この対象とはなりません。

なぜならば、新居の費用を購入するということは、動機としては結婚を祝うためとはなるかもしれませんが、その実質は不動産を購入するということに他なりませんから、そこまで範囲を広げて非課税を認めることはできないようになっているという訳です。

そうではなくて、あくまで結婚に対する支援であることが直接的に認められるような結納等の費用に限るということになります。

また、結婚・子育て資金の援助に関する特例も用意されています。

これは、直系尊属(両親・祖父母)から20歳以上50歳未満の直系卑属(子・孫)に対して、その支援として信託機関に、結婚・子育て資金の信託をした場合において、その受益金1,000万円までは非課税とされる仕組みがあります(ただし、結婚等に関する資金は300万円までとされています)。

結婚・子育てに関する資金援助とはいえ、これも生活費と同じく、相応の程度を超える支援を行っているようであれば、「通常の範囲を超える」資金提供になっているのではないかと疑われてしまいます。

そこで、そのようなデメリットを解消するためにも、このような信託制度を有効に利用するようにしましょう。

教育の場面における非課税支援について

この他には、教育のための資金援助についても非課税とされる特例が設けられています

すなわち、直系尊属(両親・祖父母)から30歳未満の直系卑属(子・孫)に対して、信託銀行との契約に基づき、教育資金の受益権を得ることについて、一人1,500万円まで非課税枠が認められています(ただし、学校等以外に使用されるのは、500万円までとされています)。

援助を行う贈与者が途中で亡くなった場合について

贈与者がその支援の途中で亡くなってしまった場合には、押さえておくべき取り扱いがあります。

例えば、贈与者が毎年贈与を行っていた場合には、その死亡した時から3年間よりも前に行った贈与は依然として有効ですが、3年以内に行った贈与については相続財産に含めて計算をしなければいけないことになっています。

ただし、ここで支払うべき相続税については、その3年以内にすでに支払っている贈与税の分だけ控除されることになります。

一方で、結婚・子育て支援、ならびに教育のための支援については、制度上非課税であることが保障されていますので、通常の贈与のような3年以内の贈与が含められて相続財産が計算されるということもありませんのでメリットがあります。

ところが、デメリットもあります。

受贈者が信託契約に伴う受益金を引き出す最中に、贈与者がなくなってしまった際には、その残額を相続税算定のための財産として含めなければいけません

しかしながら、この残額の加算についての相続財産額については、いわゆる2割加算が生じません。

生前贈与の取り扱いについては、前述の通り死亡時から3年以内の贈与が加算されることがありますので、この点について十分に気を付けなければいけません。

生前の相続対策として、きちんと特例を利用して、結婚・子育て支援を行ったという場合には、その受贈者はこの3年以内の贈与が相続対象財産に加算されることがありませんので、効果が高い対策といえるでしょう。

まとめ

今回は、生前における相続対策として、主に贈与による非課税の支援の手法についてご紹介させていただきました。

生活費の援助だけではなく、結婚・子育てのための援助、そして教育のための援助など目的に応じてさまざまな特例が用意されていますので、少しでも有効な相続対策を行いたいという方は、是非一度このような特例に目を通していただき、少しでも非課税による方法で相続対策を行っていただければと思います

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