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最終更新日:2023/7/13

正しい相続手続きVOL34 事業用地の相続税対策でかなりの節税!その方法を解説

弁護士 中野和馬

この記事の執筆者 弁護士 中野和馬

東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/nakano/

昨今私たちの住む日本では、少子高齢化が問題となっています。

その中でも事業をされている方にとっては、事業承継が悩みの種の一つとなっています。

例えば、事業用不動産を相続する場面で、評価額の高い不動産の相続税を少しでも安く抑えることができるような対策はあるのでしょうか。

事業者が利用する小規模宅地等の特例について

事業経営者が事業用地として使用している不動産を事業承継のために相続させるという場合には、「小規模宅地等の特例」制度を利用することができます。

「小規模宅地等の特例制度」については、非常に有名な制度ですので、耳にしたことのある方もいるかもしれません。

そんな「小規模宅地等の特例制度」は、居住用の不動産については利用することができると認識されている方も多いかと思いますが、「事業用にも利用することができるの?」と疑問に感じている方もいるかもしれません。

ところが、事業承継の場面でも、この小規模宅地等の特例制度を利用することが非常に有効となるのです。

事業承継の場面において、小規模宅地等の特例制度を利用することの効果としては、対象土地の400㎡の範囲において、相続税評価額の80%まで減額することができます。

ただし、この特例を利用するためには、いくつかの満たすべき要件が用意されていますので、それらに当てはまらないようではいけません。

生計同一性の要件について

例えば、今回検討している小規模宅地等の特例制度は、事業承継の場面で利用されることを想定している訳ですから、対象者が事業を承継していないのであれば特例を利用することはできないことになります。

ところが、相続人となる者が相続時点において、被相続人と生計を同一にしていた場合には、小規模宅地等の特例を使用することができるようになります。

ここで、「生計を同一にする」という要件について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

小規模宅地等の特例は、多くのケースを想定していますが、その各ケースによって要件の程度は個別具体的に規定されています。

例えば、居住用不動産に関する小規模宅地等の特例制度の利用に関して言えば、同じ二世帯住宅に住んでさえいれば、スペースが完全に分離されていたとしても要件が充足されると考えられています。

しかしこれに対して、事業用不動産の小規模宅地等の特例制度の利用に関しては、同じ不動産に居住しているのみではなく、相互の世帯で自由に移動することができ、生活を共にするなどの「より強いつながり」があることまで求められています。

区分 特例の適用要件
被相続人の事業の用に供されていた宅地等 事業承継要件 その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業のように供されていた宅地等 事業承継要件 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

引用:国税庁HPhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

事業承継における小規模宅地等の同族関係者の要件について

事業承継をする上で、利用されうる小規模宅地等の特例における、「同族関係者」の要件について考えていきたいと思います。

本制度を利用して、400㎡までの範囲で80%減額の効果を享受するための要件として、以下に該当する者である必要があります。

  • (1)配偶者
  • (2)六親等内の血族
  • (3)3親等内の姻族

「血族」というのは、本人から見て、血縁上のつながりのある親族を言います。

これに対して、「姻族」というのは、配偶者の親族のことです。

配偶者の親族というのは、婚姻によって生じる親族ですから、法律上の親族という風に理解することもできるでしょう。

これらの者が生前に被相続人の有していた会社等の過半数を超える議決権数株式を保有していることが必要となります。

なお、この対象事業地は相続税申告期限満了に至るまで、事業用として利用していなければいけませんので、実質がないにもかかわらず、節税だけのために特例を利用するということは認められていません。

同族会社の有する借地権を交換する

事業承継のパターンとしてはさまざまなものがありますが、ここでは小規模宅地等の特例を効果的に活用するための一つの具体例として、同族会社が被相続人である事業者が経営する事業所の借地権を有しているとします。

ここで、この借地権を底地権と交換することにメリットがあります。

すなわち、同族会社が底地権を得ることによって、対象となる宅地の財産的価値が上昇することになります。

先述しておりますが、この事業承継の場面で用いられる小規模宅地等の特長としては、400㎡という面積上の制限が設けられており、その減額についても80%という割合によって定められているのであって、定額で減額されている訳ではないということです。

ここから言えることとして、面積当たりの価額が大きければ大きいほど、減額幅が大きくなるということを意味します。

例えば、対象面積における価額が100であれば、80減額されることになりますが、対象面積における価額が1万であれば、8000減額されることになります。

つまり、1万の価額であれば、100の場合と比べて、1,000倍減額されていることになるという訳です。

底地権の交換は複雑ですので専門家を有効活用しましょう

借地権と底地権を交換するということはメリットにはなりますが、実際に実施をすることは、決してそれほど容易なわけではありません。

例えば、借地権・底地権の財産的評価をどうすべきか、法律関係をどのように構成するかなど見るべき視点は数多くあります。

これを個人の判断だけで決定してしまうと、多くの場合、失敗してしまう可能性が高いことから、このような相続の分野に詳しい専門家に相談することが望ましいでしょう。

借地権などの財産的評価についてであれば税理士等、そして相続における法律関係であれば司法書士が詳しいといえます。

不動産を交換するということも法律行為の一種です。

また、この不動産の交換を原因として、不動産登記をしなければ、第三者に対抗することができないことになりますが、この登記をするためには登録免許税を支払わなければいけませんし、専門家である司法書士に依頼をした場合には、司法書士に対して支払う報酬も用意しなければいけません。

また、この法律行為によって、どのような租税公課が生じるのかを確認するためには税理士の見解を聞くことが有効ですが、不動産に詳しい司法書士に相談すると、提携先の信頼できる税理士を紹介していただけることでしょう。

まとめ

今回は、適切な事業承継を行うために小規模宅地等の特例制度を利用する方法をご紹介させていただきました。

本特例を利用するために必要な「生計の同一性」、「同族関係者」、「同族会社」などの要件の充足について検討してきましたが、少し難しかったという方もいるかもしれません。

最後にも申し上げましたが、より有効的に本特例を利用するためには、専門家に相談してみることも効果的と言えるでしょう。

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