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交通事故に精通している弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > 交通事故弁護士コラム > 示談・和解・裁判 > 略式起訴とは?流れからメリットについて【弁護士監修】

略式起訴とは?流れからメリットについて【弁護士監修】

略式起訴とは?流れからメリットについて

この記事でわかること

  • 通常の裁判と略式起訴の違いがわかる
  • 略式起訴の流れがわかる
  • 前科がつかない方法がわかる

人身事故による道路交通法違反などの加害者になってしまった場合、警察の取り調べを受けた後、検察に起訴されて刑事裁判にかけられる可能性があります。

犯罪の程度が軽微な場合は、通常の裁判ではなく略式起訴という手続きが行われることがあり、迅速に手続きが終わるため早期に身柄が解放されるメリットがあります。

また、相手の被害者の方と示談が成立している場合や十分に反省していると思われる場合などは、不起訴処分や起訴猶予となることがあり、その場合は有罪になりません。

この記事では、略式起訴の流れや、有罪にならない可能性について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

略式起訴の目的

略式起訴の目的は、あまり悪質でない軽微な事件を、簡易な手続きによって迅速に処理することです。

略式起訴ではない通常の起訴が行われる場合、正式な裁判が開かれることになりますが、判決が出るまでには早くても数ヶ月程度の時間がかかります。

社会では毎日のように多くの犯罪が発生していますが、一口に犯罪といっても、出来心のような軽微なものから多くの被害者が出る凶悪なものまで様々です。

罰金などの比較的軽い刑罰で済むような軽微な事件まで、時間のかかる正式な裁判で行うことは効率的ではなく、裁判に関わる人の負担や裁判を行うための費用も大きくなります。

そのような負担を軽減して費用を削減するために、略式起訴という手続きが設けられています。

略式起訴のメリット

略式起訴のメリットは、手続きが迅速に終了するため、被疑者(犯人の疑いがあるとして取り調べを受けている人)の身柄が早期に解放されることです。

通常の刑事裁判の場合、どんなに早くても判決まで数ヶ月かかりますが、被疑者が自分の罪を認めているような場合には、通常の裁判を行って判決が下されるまでの期間を長くしてもあまり意義がありません。

略式起訴であれば迅速な処分が可能なので、罪を認めている場合には、被告人の負担が軽くなるというメリットがあります。

通常の起訴との違い

通常の起訴による刑事裁判は、市民が傍聴できる公開の法廷で、細かい法律や規則による厳格な手続きによって裁判をし、事件の証人となる人の尋問も行います。

略式起訴は、法廷を開かずに処分を下し、証人の尋問も行わず書面を審理することで処分を決めます。

略式起訴の対象になる犯罪

略式起訴の対象となる犯罪は、100万円以下の罰金または科料に相当する犯罪です。

略式起訴の対象になるケースが多い犯罪の例としては、人身事故などの道路交通法違反、比較的被害の軽い傷害罪、軽微な迷惑防止条例違反、公然わいせつ罪などです。

罰金と科料の違い

罰金とは、犯罪を犯した者から金銭を強制的に取り立てる刑罰で、財産を没収する刑罰なので財産刑という刑罰の種類に分類されます。

科料も罰金と同様に、犯罪を犯した者の金銭を強制的に徴収する刑罰です。

罰金と科料の違いは、徴収される金銭の額によるもので、科料は1万円未満、罰金は1万円以上の金銭を徴収します。

簡易裁判所とは

略式起訴は、検察官からの請求によって簡易裁判所が行います。

簡易裁判所とは、罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗や横領など比較的軽微な罪の刑事事件について,第一審の裁判権を持っています。

社会の中で発生する軽微な刑事事件や民事事件について、簡易かつ迅速に処理するための裁判所で、略して簡裁と呼ばれることもあります。

刑事裁判においては略式起訴を処理するほか、罰金、拘留、科料などにあたる犯罪について、第一審を担当します。

略式起訴の流れ

略式起訴の流れ

略式起訴の手続きについては、刑事訴訟法という法律に規定されています。

刑事訴訟法とは、刑事裁判に関する手続きや、警察の捜査に関するルールなどが定められた法律です。

略式起訴を行うかどうかは、事件を担当する検察官の判断に委ねられているため、必ずしも略式起訴を行わなければならないわけではありません。

略式起訴を行う場合、検察官は被疑者(事件の犯人の疑いで取り調べを受ける人)に対して略式起訴の手続きを説明し、略式起訴に異議がないかを確認します。

略式起訴を受けるかどうかは被疑者の判断に委ねられており、略式起訴ではなく通常の裁判を希望する場合、被疑者は異議を申し立てることができます。

被疑者が略式起訴に異議がある場合は、検察官は通常の起訴を行うことになります。

略式起訴を認めるかは裁判所が決定する

略式起訴に同意する場合はその旨を証明する書面を作成し、その書面とともに、検察官が略式起訴を希望する旨の書面を簡易裁判所に提出します。

検察官から書面を受け取った簡易裁判所は、略式起訴の手続きを受け入れるかどうかを判断します。

略式起訴の手続きで科すことのできる刑罰は、100万円以下の罰金または科料に限られるため、それ以上の刑罰が相当であると判断した場合などは、略式起訴ではなく通常の手続きによることになります。

略式起訴を認めると判断した場合、簡易裁判所は略式命令を行います。

略式命令とは、略式起訴に対する簡易裁判所の判断で「いつまでにいくらのお金を納めなければならない」という内容が書面で通知されます。

略式命令に不服がある場合

簡易裁判所が行なった略式命令に不服がある場合、被疑者と検察官のどちらも、略式命令の通知を受けた日から14日以内に、通常の裁判を受けることを請求することができます。

期間内に通常の裁判を行う旨の請求があった場合、略式命令は効力を失い、請求がなかった場合は略式命令の内容が確定します。

罰金や科料を納めなかったら

期限までに罰金や科料を納めなかった場合、最終的には労役場留置という処分が行われます。

労役場とは刑務所や拘置所の内部に設置されている施設で、労役場留置については、刑法に規定されています。

労役場に留置して作業を行わせることで罰金や科料の代わりとするもので、お金が払えない代わりに、その分労働をさせるということになります。

労役場留置は刑罰に相当する処分なので、社会生活における通常の労働とは異なります。

留置されている間は帰宅することができず、強制的に働かされることになり、面会などの自由も制限されます。

労役場での労働については、通常は日当5,000円で計算され、土日は休みです。

例えば、罰金20万円の場合は、土日は休みで平日に40日間労働をすることになるので、約2ヶ月の間労役場に留置されることになります。

刑法の規定では、罰金を納めなかった場合は1日以上2年以下の期間、科料を納めなかった場合は、1日以上30日以下の期間、労役場に留置されます。

労役場留置が認められるのは最大でも2年間と規定されていることから、日当5,000円の計算では払いきれない額の罰金が科されている場合、実質的に日当の額が増えることになり、この仕組みには批判もあります。

略式起訴は前科がつく?

略式起訴は、有罪の判断を受けた場合は前科がつくことになります。

略式起訴は簡易な方法で迅速に起訴手続きを終えることができますが、無罪になるわけではなく、あくまで手続きが簡略化されるだけで、犯罪に対する処分が行われること自体は通常の起訴と同様です。

日本の刑事裁判の特徴は、起訴される事件の実に9割以上が有罪判決になることです。

起訴されたほとんどの事件が有罪になる理由は、そもそも事件を起訴するかどうかは検察の権限に委ねられており、検察は確実に有罪になると確信した事件のみを起訴するからです。

略式起訴の場合も同様で、検察は有罪になると確信した事件のみを略式起訴するため、略式起訴に同意した時点で、軽微とはいえ有罪の判断を受けて前科がつくことは覚悟する必要があります。

前科がつくことを防ぐことはできる?

不起訴処分となれば、有罪にはならず前科がつくのを防ぐことができます。

不起訴処分にするかどうかを判断するのは検察官で、被害者と示談が成立している場合や、証拠等が不足していて嫌疑不十分な場合などに不起訴処分となることが多いです。

そのため、事案によっては、起訴される前の早い段階で弁護士をつけて検察官と交渉することで、前科がつくのを回避できる可能性があります。

前科とは

略式起訴の処分が下った場合や、刑事裁判で有罪判決を受けた場合には、前科がつくことになります。

前科がある場合、一定期間特定の職業に就くことができない、金融機関などの身元調査が厳しい、仕事に採用されるのが難しくなる、海外に行く際にビザを取得する必要がある、などの不利益を被る可能性があります。

また、前科つきで次回に別の犯罪を犯してしまった場合には、重い刑罰が科される可能性もあります。

注意点としては、一度ついてしまった前科は消えることがなく、前科がつくと警察や検察の機関が使用するデータベースに登録され、それらの機関が簡単に照会できるようになります。

起訴猶予とは

略式起訴と似たものとして、起訴猶予があります。

起訴猶予とは、起訴すれば本来は確実に有罪になる見込みがあるものの、検察官の判断であえて起訴しないという処分です。

起訴猶予が行われた場合、起訴されて裁判にかけられることがなくなるので、有罪判決を受けることはなく、実質的に無罪と同じような効果があり前科がつきません。

どうしても前科をつけたくない場合は、略式起訴に同意せずに、起訴猶予を目指すという方法もあります。

起訴猶予が行われるケースは様々ですが、犯罪が軽微である、被疑者が真摯に反省している、被害者との示談が済んでいる、などの事情が考慮されます。

もっとも、略式起訴で手を打つべきか起訴猶予を目指すかは、どちらが良いかの判断は難しく、事案によっても異なります。

弁護士に依頼し、そのアドバイスをもとに判断するのがベストといえます。

まとめ

略式起訴とは、交通事故などの悪質でない軽微な事件を、通常の起訴とは異なる簡易な手続きによって迅速に処理するための制度です。

略式起訴が相当であると検察官が判断した場合、被疑者の同意を得ることを条件に簡易裁判所に対して申請を行い、簡易裁判所が申請を認めると、略式命令という形で罰金や科料が決定されます。

略式命令の内容に不服がある場合は、通常の裁判への移行を求めることもできます。

略式起訴は、事案を早期に解決することで被疑者の負担が軽くなるというメリットがありますが、罰金とはいえ前科がついてしまう点には注意が必要です。

詳しく知りたい方は、「徹底解説します!交通事故の「罰金、点数、生じる責任」」を参照してください。

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