東京弁護士会所属。
「専門性を持って社会で活躍したい」という学生時代の素朴な思いから弁護士を志望し、現在に至ります。
初心を忘れず、研鑽を積みながら、クライアントの皆様の問題に真摯に取り組む所存です。
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法人・会社が破産した場合、それだけでは社長や経営者は個人の資産について経済的な負担は生じませんが、法人や会社の債務について連帯保証人等になっている場合は、個人としても債務を引き受けることになります。
中小企業が破産し、連帯保証人等になっていた経営者の個人資産では債務を支払い切れない場合の手続きの方法の1つとして、経営者保証ガイドラインという制度があります。
今回は、経営者保証ガイドラインについてご紹介します。
経営者自身が債務整理を行わなければならない場合の1つの方法として、経営者保証ガイドライン(経営者保証に関するガイドライン)があります。
経営者保証ガイドラインとは、保証債務について債権者である金融機関と保証人である経営者個人が適切な取り決めをするためのガイドラインです。
ガイドラインにおいては、主たる債務者、保証人、債権者のそれぞれについてあるべき対応方法の指針を規定するほか、保証契約の見直し、事業承継の対応、保証債務の整理を図る場合の手続きや対応方法などについて記載しています。
保証債務の整理において経営者保証ガイドラインの適用が実現した場合、自己破産した場合の手続きに準じて、処分して債権者に配当しなくてもよい財産、当面の生活に必要な費用、居住のための相当といえる住宅、などを手元に残せる可能性があります。
法人や会社が破産した場合、当該法人・会社の残りの資産が債権者に配当されて法人・会社は消滅します。
その際、法人・会社の社長などの経営者であった個人については、単に経営者であったという理由だけでは個人的な責任の対象にはならないのが原則です。
例えば、会社Aが倒産して債権者への未払いが2,000万円あったとしても、会社Aの経営者であったB個人が当該2,000万円について個人として有している資産から支払わなければならないということにはなりません。
法人・会社が破産しても経営者個人が原則として責任を負わない理由は、法人・会社と経営者はあくまで別人格であるからです。
法人・会社が破産した場合に経営者は個人資産で責任を負わないのが原則ですが、経営者が法人・会社の債務について連帯保証人等になっている場合には、当該経営者は当該債務について責任を負うことになります。
上記は、制度上は例外的な位置づけになっていますが、実際には法人・会社の債務について経営者が連帯保証人等になっていることは、特に中小企業の場合において少なくありません。
例えば、会社Aが破産して未払いの債務が合計2,000万円あり、そのうち800万円について会社Aの経営者Bが連帯保証人にである場合、会社Aが破産したとしても、800万円の債務については、Bはなお連帯保証人としての責任があります。
法人・会社の債務について経営者が責任を負う場合に、経営者個人の資産だけで完済することができればよいのですが、個人資産だけでは支払いきれない場合には、経営者自身も何らかの債務整理の手続きを行う必要が生じてきます。
経営者保証ガイドラインの目的は下記の通りです。
日本においては、銀行や信用金庫などから法人・会社が資金調達として融資を受ける場合、当該法人・会社の経営者は連帯保証人としての保証契約を結び、返済の確実性を担保することが多くなっており、特に中小企業の場合においては顕著です。
その一方で、経営者が連帯保証人になることが当たり前になってしまうと、万が一経営が上手くいかず会社が潰れてしまった場合に、個人としての生活や資産までも失ってしまうことを恐れ、起業すること自体が忌避されて経済が活性化しない危険性があります。
また、連帯保証人になるリスクを受け入れた起業した場合、事業が上手く行かずに事業再生を図るべき段階になっても、個人資産を喪失するリスクを懸念しすぎて事業再生のタイミングを逃してしまい、結果として企業自体が潰れてしまうというケースもあります。
そこで、経営者の保証による上記のようなリスクや弊害を解消し、中小企業の事業の各取り組みにおける意欲を増進し、中小企業を対象とする金融の実務を円滑化し、中小企業と日本経済全体の活性化に資することを目的として、経営者保証に関するガイドラインが設けられました。
経営者保証ガイドラインは法規ではないため、債権者である金融機関が同意しない場合に適用を強制できるものではありません。
強制力がないことから、ガイドラインを適用するためには債権者である金融機関の同意が必要になりますが、ガイドラインを利用しての債務整理の事例は積み重ねられていることから、金融機関が協力してくれる可能性は決して低くないと言えます。
金融機関の同意によって手続きが可能な場合には,経営者保証ガイドラインを利用して効率よく保証債務を整理することが重要です。
経営者保証ガイドラインの概要は、下記のように設定されています。
このように、経営者保証のデメリットを打ち消すようなガイドライン設定がされています。
保証人を守ることで、思い切った事業展開・事業再生の確率を上げたりと、経営がしやすいように設定されています。
会社が債務を返済できずに破産するとき、連帯保証人は残った債務を返済しなければいけません。
会社の経営者が連帯保証人になっているケースも多いため、会社の破産によって経営者個人の財産を失う可能性もあります。
会社の債務金額が大きかった場合、個人の資産では返済できないこともあります。
例えば会社の債務が1000万円あったとき、保証人の個人資産が500万しかなければ、個人資産をすべて売却して返済に当てるしかありません。
ただ個人の資産をすべて売却してしまうと、今後の生活に影響があります。
そこで個人の場合は、99万以下の現金などを「自由財産」として扱い、破産後の保持が認めれてます。
法人破産すると、個人の資産もすべて没収されるイメージがあるかもしれませんが、自由財産の保持ができるので覚えておきましょう。
債権者である金融機関が同意してくれる場合は、他の手続きに組み込む形でガイドラインを利用することも可能です。
例えば、商工会議所が実施する中小企業再生支援協議会の支援を受けつつ、経営者保証ガイドラインを利用して債務整理するなどです。
一方、私的な手続きでは透明性が担保できないとして、金融機関が応じてくれない場合があります。
そのようなケースにおいては、裁判所が実施する特定調停などの手続きの中でガイドラインを利用するという方法もあります。
金融機関がどうしても経営者保証ガイドラインに応じない場合には、自己破産や個人再生などのガイドライン以外の手続きを検討することになります。
経営者保証ガイドラインが適用されるためには、以下の要件を満たす必要があります。
経営者保証ガイドラインの対象となるのは原則として金融機関と締結した保証債務です。
それ以外の個人間の借入れなどの債務については、ガイドラインの対象外である点に注意する必要があります。
そのため、経営者が法人・会社のために個人として負担した負債の内訳として、保証債務以外の債務の割合が大きい場合などは、金融機関がガイドラインの適用に同意しないことがあります。
逆に、上記のような場合も金融機関の同意さえあれば、保証債務以外の債務についての債権者を手続きに加えて、経営者保証ガイドラインに基づいて債務整理を実施できる可能性もあります。
会社の連帯保証人になっている経営者がガイドラインによって守れています。
しかし負債の金額があまりにも多かったり、資金が枯渇したりしていると、債務整理・破産などの手続きが必要になります。
会社経営をしていてお金について悩んだら、弁護士への相談がおすすめです。
会社の破産手続き・債務整理などを得意としている弁護士なら、資金運用についてアドバイスをもらえて、法的な疑問も相談できます。
多くの弁護士事務所では初回相談を無料で行っているので、ぜひ気軽に相談してみてくださいね。
日本において法人・企業が金融機関から融資を受ける場合、当該法人・企業の経営者個人が連帯保証人となって保証契約を締結することが、特に中小企業において通例化しています。
それに基づく萎縮や弊害を防止するものとして、経営者保証ガイドラインという制度が設けられています。
強制力のあるものではありませんが、金融機関の同意を得られれば保証について円滑な債務整理がしやすくなります。