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【コロナウイルス対策融資制度】セーフティネット保証制度4号・5号とは?

弁護士 石木貴治

この記事の執筆者 弁護士 石木貴治

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、ビジネスの実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/ishiki/

この記事でわかること

  • セーフティネット保証制度や信用保証のメリットが分かる
  • セーフティネット保証制度4号と5号の違いを知ることができる
  • セーフティネット保証制度を利用するための流れが分かる

新型コロナウイルスの感染拡大の影響や、感染防止のための非常事態宣言によって、飲食店や小売業にとどまらず多くの企業の収益は悪化し、資金繰りは著しく悪化しています。

そのため、国や地方自治体では税金を投入するなどして、資金繰りに苦しむ事業者が資金の手当てをする手段を準備しています。

ここではそのような方法の1つである、セーフティネット保証制度をご紹介します。

セーフティネット保証制度とは

セーフティネット保証とは、経営状態が不安定な中小企業や個人事業主を支援することを目的としたものです。

経営安定関連保証とも呼ばれ、信用保証協会が通常の融資とは別枠で融資を受けた金額について保証する制度です。

ここで重要なのは、信用保証協会による保証の持つ意味です。

まずは信用保証協会と、その保証を受ける意味について確認しておきましょう。

信用保証協会とは

信用保証協会は、昭和28年8月に制定された信用保証協会法にもとづいて設立された公的機関です。

その設立の理念は、中小企業や小規模事業者の金融(資金繰り)の円滑化にあります。

信用保証協会を利用すると、様々なメリットがあるとされていますが、その中でもおもなものは以下のとおりです。

(1)融資枠が拡大されます。

従来から取引のある金融機関から直接受ける融資のことをプロパー融資といいます。

金融機関が融資を受けようとしている会社や事業主の収益状況や資産状況を審査して、融資を行うことのできる金額を決定します。

しかし、信用保証協会で保証を受けることで、プロパー融資とは別枠で融資を受けることができる場合があります。

(2)法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です。

プロパー融資を受ける場合は、その条件によっては代表者以外の役員や親族などが連帯保証人にならなければならないことがあります。

しかし、信用保証協会を利用した場合、代表者以外の連帯保証人は原則不要とされます。

また、個人事業主が信用保証協会を利用した場合にも、保証人は原則不要となります。

(3)担保が不要です。

金融機関からプロパー融資を受ける際には、不動産などの担保を設定する必要に迫られることがあります。

しかし、信用保証協会を利用した場合、担保がなくても融資を受けることができます。

信用保証協会の保証とは

信用保証協会の保証を受けるとは、具体的にどのようなことをいうのでしょうか。

信用保証協会が「保証」しているのは中小企業や事業者ではなく、企業などに貸付をした民間の金融機関です。

借り入れをした企業や事業者が金融機関に債務の返済をすることができなくなった場合、その企業や事業者に代わり、信用保証協会が金融機関に対して債務の弁済を行います

このことを「代位弁済」といいます。

代位弁済を行った信用保証協会は、本来の債務者に代わって弁済を行っているため、その弁済した金額を本来の債務である企業や事業者に請求します。

信用保証協会を利用することで、民間金融機関が大きなリスクを負うことなく、融資を行うことができます。

ただ、信用保証協会の保証を受けているからといって、借り入れをした企業や事業者が債務の返済から免れることができるわけではありません。

信用保証協会を利用すれば、借入金の返済から逃れることができると勘違いしていることがあるため、間違えないようにしなければなりません。

セーフティネット保証制度4号・5号の概要

セーフティネット保証制度を利用すると、一般の融資とは別枠で信用保証協会を利用した融資を受けることができます。

ただ、一口にセーフティネット保証制度といっても、その要件などによっていくつかの種類に分かれており、それぞれに保証の割合が異なります。

新型コロナウイルス対策としてセーフティネット保証制度を利用する場合、経営の安定に支障をきたしているものとして、セーフティネット保証制度4号または5号を利用することができます。

セーフティネット保証4号の詳細

セーフティネット保証4号の対象になるのは、突発的災害が発生したことにより、経営の安定に支障が生じている中小企業者です。

どのような場合に利用できるのか、そして実際に利用した場合の保証内容はどのようになっているのかを確認しておきます。

セーフティネット保証4号の要件

セーフティネット保証4号を利用する際には、

  • ・特定の地域で3か月以上継続して事業を行っていること
  • 最近1か月の売上高が前年同月と比較して20%以上減少していること
  • ・かつ、その後の2か月を含む3か月間の売上高等が、前年同期に比べて20%以上減少することが見込まれること

が認定の基準となっています。

なお、特定の地域の要件については新型コロナウイルスの影響が全国に広がっていることから、47都道府県が対象になることとされているため、日本全国どこでも利用できる状況となっています。

セーフティネット保証4号の内容

セーフティネット保証4号を利用すると、2億8,000万円まで、通常の保証限度額とは別枠で信用保証協会の保証を受けることができます。

融資に対する保証割合は100%となっており、融資を受けた全額について保証されるため、金融機関としては融資しやすい環境が整っています。

なお、実際の保証料率については、信用保証協会や融資の制度により異なることとされています。

セーフティネット保証5号の詳細

セーフティネット保証5号は、業況の悪化している業種ごとに指定を受け、その業種に属する事業者の経営の安定に支障が生じている場合に適用されるものです。

具体的な内容は、以下のとおりです。

セーフティネット保証5号の要件

セーフティネット保証5号を利用することができるのは、

  • (1)指定業種に属する事業を営んでおり、最近3か月の売上高等が前年同期と比較して5%以上減少している中小企業者
  • (2)指定業種に属する事業を営んでおり、製品等原価のうち20%を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇しているにも関わらず、製品等価格に転嫁できない中小企業者
  • (3)上記のいずれかに該当し、市区町村長の認定を受けた者

とされています。

なお、新型コロナウイルスの影響による場合は(1)の要件にあるように、最近3か月の売上高等が前年と比較して5%以上減少しているかどうかで判定することとなります。

指定業種に該当しなければ、このセーフティネット保証5号の適用を受けることはできませんが、指定業種は新型コロナウイルスの感染拡大により追加されています。

新型コロナウイルスの感染拡大前では152の業種が指定されていましたが、新型コロナウイルスの影響が拡大したことで、その対象が広げられました。

令和2年5月1日以降は業種の中分類で85業種、細分類基準では1145業種となっています。

早くから影響を受けた旅館・ホテル、レストラン、フィットネスクラブなどに加えて、乳製品製造業、利用・美容業などその対象が広げられているため、関心のある方は確認しておきましょう。

参考:対象業種(中小企業庁)

セーフティネット保証5号の内容

セーフティネット保証5号を利用すると、通常の融資の保証枠とは別に最大2億8,000万円の保証を受けることができるようになります。

なお、この保証限度額はセーフティネット保証4号と同じ枠になっているため、4号と5号あわせて2億8,000万円となります。

また、4号と5号を併用することもできます。

セーフティネット保証5号を利用した場合の保証割合は融資の80%となっています。

残りの20%については信用保証協会の保証を受けることができないため、金融機関がそのリスクを負うことになります。

セーフティネット保証4号と5号の違い

セーフティネット保証4号と5号で大きな違いがあるのは、対象となる事業者の範囲と保証割合です。

まず対象となる事業者の考え方ですが、セーフティネット保証4号の場合は、突発的な災害に対応することを狙いとしているため、対象となる地域を指定しています。

これに対してセーフティネット保証5号の場合は、全国的に状況の悪化している業種を指定して対象にするものであり、業種によってその範囲が決められています。

もっとも、新型コロナウイルス対策としては、4号の指定地域については全国が対象とされていますし、5号の指定業種についてもかなり多様な業種が指定されています。

そのため、どちらも利用可能な事業者が増えているものと思われます。

また、保証の割合については、セーフティネット保証4号が100%、5号が80%と明確な違いがあります。

売上高などを比較して4号の適用を受けられる場合には、4号を利用する方がいいでしょう。

セーフティネット保証制度手続きの流れ

セーフティネット保証を利用する際には、まず市区町村の認定を受けなければなりません。

市区町村役場のホームページで要件を確認するとともに、認定申請書をダウンロードし作成します。

認定申請書を提出する際には、確定申告書や決算報告書、履歴事項全部証明書など多くの書類が必要となるため、事前に確認しておきましょう。

その後、市区町村の担当部署へ訪問する約束を取り、面談してセーフティネット保証の申請を行います。

いきなり窓口へ出かけても、新型コロナウイルスの感染リスクが高まるだけで意味はありません。

事前にホームページや電話を利用して、要件に該当することを確認したうえで次の行動に移りましょう。

まとめ

新型コロナウイルスの影響が拡大する中で、中小企業者を救済するための制度が多く設けられていますが、セーフティネット保証制度もその1つです。

新型コロナウイルスの感染が拡大する前に比べて、その対象は拡大し、融資を受けやすい環境が整っています。

資金繰りに不安を抱えたまま事業を行うのではなく、融資を利用して少しでも安心して事業を続けられるようにしておきましょう。

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