この記事でわかること
- 相続税をカードで支払うメリット・デメリットがわかる
- 相続税は6万円以上のときにカード利用するのがお得とわかる
- 相続税の支払いに適したカードがわかる
世の中は多種多様なキャッシュレス時代に突入し、精算方法の選択肢は広がるなか、税金の1つである相続税もカードで支払えるようになりました。
カードを使うと精算が簡単なだけではなく、「ポイント還元」「分割で払える」など、現金支払いにはない利点があるのです。
しかし、支払う金額によりお得か損か、手数料とポイント還元率の兼ね合いを把握する必要があるでしょう。
相続税をカードで支払っても損しない基準はあるのでしょうか。
それは、納付額が6万円以上かつポイント還元率1%以上のカードを選ぶこと。
こちらの記事では、カード支払いのメリット・デメリット、手数料シミュレーションについて解説します。
目次
相続税は専用サイトからクレジットカード払いが可能
相続税は、国税庁の専用サイトに限りカード支払いができます。
2016年に税法改正があり、2017年から国税の精算にカードが使えるようになりました。
これまでに、地方税はカード支払いに対応していましたが、この改正によりカード納税の幅は広がったのです。
何かと忙しい世代が支払うことが多い相続税も、納税額が1000万円以内であればカード納税ができることになりました。
カードなら、スマホやパソコンでいつでもどこでも手続きができるので、忙しくて税務署・銀行へ行けない人も簡単に支払えます。
ただし、カード支払いが使えるのは「国税庁の専用サイト」だけなので、専用サイトでの手続きが必須です。
また、納付書を税務署やコンビニエンスストアなどに持参して支払う際にも、クレジットカードは使えませんので注意しましょう。
相続税をクレジットカードで支払うメリット
相続税の精算をカード支払いにすると4つのメリットがあります。
こちらの章では、カード支払いで得られるメリットについて説明します。
カードのポイント還元がある
相続税をカード支払いにすると、ポイントが還元され節税効果も期待できます。
カード支払いで決済手数料はかかっても、付与される還元率が高いと現金支払いよりも得するケースがあるのです。
カードのタイプによってはポイントが貯まらず、付与の上限が設定されている場合もあるので、使う前に確認しておきましょう。
相続税の金額が多くなると、もらえるポイントは決して侮れません。
専用サイトでカード支払いするには、税額1万円につき76円(税抜)の手数料プラス消費税10%で83円以上かかります。
後述しますが、カードのポイント付与率が手数料を上回る場合、カード支払いを選択した方がお得です。
支払いを実質的に先延ばしにできる
カード支払いを選択すると、支払い日を先延ばしにできます。
カード支払いは、決済した日ではなくカードの引き落とし日が実質的に精算処理される日です。
現金の場合、手元にお金があり実際に支払った日=支払い日ですが、カードの場合タイムラグがあることはご存知でしょう。
一括払い・分割払いを問わず、どの方法であっても精算手続きした日からカードの引き落とし日まで、実際の支払いを先延ばしにできるのです。
納税額が6万円以上ならカードがお得
カード支払いは、「納税額が6万円以上かつ還元率1%以上」で利用するとよいでしょう。
納税額は1万円単位で区切られ、1円増えると83円が加算され大幅に手数料が変わるからです。
一般的に、カードの還元率は0.5%~1%のものが多数を占めますが、1.5%以上の高還元カードも存在します。
ポイント還元1.5%のカードでしたら100万円税金を支払うと、1.5万円分のポイントがもらえます。
カード支払いするなら、手数料がかかってもポイントを獲得することで差し引きプラスになるか見極めましょう。
以下は、納税額に加算される手数料から手数料率を計算しました。
金額が繰り上げられたときに手数料が上がり、繰り上がる前で1番小さい値の0.83%です。
金額が少ないほど支払う手数料率が上がり、6万円を上回ると手数料率は多くても1%未満です。
つまり、納税額が多くなるほど手数料率は下がる仕組みです。
【手数料率(消費税10%)】
納税額 | 決済手数料(税込) | 手数料の割合 |
---|---|---|
1円~10,000円 | 83円 | 0.83%~8,300% |
10,001円~20,000円 | 167円 | 0.84%~1.67% |
20,001円~30,000円 | 250円 | 0.83%~1.25% |
30,001円~40,000円 | 334円 | 0.84%~1.11% |
40,001円~50,000円 | 418円 | 0.84%~1.04% |
50,001円~60,000円 | 501円 | 0.84%~1.00% |
60,001円~70,000円 | 585円 | 0.84%~0.97% |
70,001円~80,000円 | 668円 | 0.84%~0.95% |
80,001円~90,000円 | 752円 | 0.84%~0.94% |
90,001円~100,000円 | 836円 | 0.84%~0.93% |
分割・リボ払いもできる
カード支払いにすると、相続税もお買い物と同じように分割払い・リボ払いが選べます。
金融機関や税務署の窓口では、現金一括払いしか取り扱いがなく、カードならではの使い方と言えるでしょう。
お買い物をするときと同じ仕組みで、カード会社が国税庁に税金を一括で立替払いするため、支払いする人が分割払いを選択しても問題ありません。
ただし、カード利用には所定の手数料があり、細かく分割すると多くの手数料がかかるので注意しましょう。
好きなタイミングで支払いができる
カード支払いは、ネット上の手続きとなるため時間や場所に影響されず決済できます。
パソコン・スマホどちらでも精算できるので、待ち時間もなく短時間で終わります。
現金で支払う場合、銀行の窓口や税務署まで支払うために出かけなければなりません。
カード支払いは、お家にいながら簡単に手続きできる、最も利便性の高い決済方法でしょう。
カードなら事前手続きがいらず即支払える
カード支払いなら、事前手続きが不要ですぐに支払えます。
カード以外の決済方法では、振替納税・e-tax・インターネットバンキングのペイジーがあります。
いずれの方法も、事前に開設手続きがいるため、開設してから1カ月程度経たないと使えません。
すでに保有しているカードがあれば、国税庁の専用サイトに情報を入力するだけなのですぐに使えます。
ただし、情報入力の際には納付情報が必要です。
お手元に納付書とクレジットカードを用意して専用サイトにアクセスしましょう。
相続税をクレジットカードで支払うデメリット
相続税をカードで支払うメリットはありますが、デメリットも存在します。
こちらの章では、カード支払い時に発生するデメリットについて説明します。
決済手数料がかかる
国税庁の専用サイトで精算するときは、必ず決済手数料がかかります。
この手数料は国税庁に支払われるものではなく、カード管理会社の代行費用です。
税金のタイプ・カードの種別に関係なく、一律で同じ手数料を精算します。
相続税が1,000万円以上の場合は、手続きを複数回行うことになりますので、その都度手数料がかかります。
また、カード支払いでは、一括払いだけでなく分割払いやリボ払いもありますが、所定の「分割払い手数料」がかかります。
現金支払いのときは、法定期限内に支払われた場合において、納付額以外に手数料はかかりません。
手数料がかかるのは、カード支払いならではのデメリットでしょう。
支払い額を間違うと取り消しに手間がかかる
カード決済時に納税額を間違うと、サイト上で取り消し処理はできません。
決済後に間違いを修正するには、税務署に出向いて依頼が必要です。
また、一度決済された手数料は返還されません。
修正が伴うと、手数料も戻らず税務署に足を運ばなくてはならないため、細心の注意を払って入力しましょう。
相続税の上限額は手続き1回につき990万円
カード支払いするときは、手続き1回につき990万円が上限と考えておきましょう。
国税庁専用サイトのシミュレーションで計算しますと、990万円にかかる手数料率は0.836%であり9,982,764円の支払いです。
相続税が1,000万円より多い場合は、手続きを数回に分けます。
また、カードの限度額が設定されている場合、利用限度額をオーバーすると使えません。
カードで精算する前に、利用限度額も確認しておきましょう。
カードの限度額までしか使えない
カード支払いするときは、所定の限度額までしか使えません。
これは税金の精算に限ったことではなく、限度額が設定されていると限度額以上は使えないためです。
支払いが無制限のカードでしたら問題ありませんが、一般的には上限が設定されていることが多いでしょう。
国税専用サイトでは、1回の手続きで支払える上限額が990万円です。
高額の精算をする場合、カード会社に連絡して上限枠を一時的に増やしてもらうなどの事前準備が必要でしょう。
領収書が発行されない
税金をカード支払いすると、ネットで精算が完結してしまうため、領収書がありません。
納税証明書の発行ができるようになるのは、手続きから3週間後です。
すぐに領収書が欲しい場合は、金融機関の窓口や税務署にて現金支払いで対応しましょう。
還元率が1%を超えるクレジットカードならお得
相続税の精算にカードを使う場合、ポイント還元率が1%以上のものがおすすめです。
こちらの章では、カード支払いをする前に知っておきたいことを説明します。
カードの還元率と維持費を確認する
カード支払いをする場合、利用するカードの「ポイント還元率」をチェックしましょう。
還元率とは、使った金額に準じてもらえるポイントの率を指します。
税金の手数料は最小0.83%(消費税込)であり、1%以上の付与があるカードなら手数料を支払っても損はしないでしょう。
ポイントと手数料を比較して、どちらがお得なのか判断することが大切です。
通常のお買い物では1%以上付与される要件でも、税金の精算は0.5%となるカードもあります。
アメックスやダイナースは、税金精算時の還元率は0.5%です。
また、ポイント還元率が高いカードでは、毎年「年会費」が必要なケースがあるでしょう。
相続税の精算に使うには「還元率が1%以上」で「年会費が無料」のカードを選ぶことをおすすめします。
カード支払いは支払う人が手数料を負担
カード支払いは、支払う人が手数料を全額負担しなければなりません。
カード支払いを利用する以上、決められたルールであり必ずかかる手数料です。
納税額が1万円以内なら83円(税込)で、それ以上は1万円ずつ金額が増えるごとに83円(税込)がプラスされます。
前述したように、国税庁のサイトでは、数字を入力すると実際に払う金額が一瞬で計算できます。
以下は、消費税率10%で納税金額が高額な場合の手数料を試算してみました。
納付金額に応じて、決済手数料が増える推移がおわかりいただけるのではないでしょうか。
納税金額 | 決済手数料 |
---|---|
1万円 | 83円 |
5万円 | 418円 |
10万円 | 836円 |
50万円 | 4,180円 |
100万円 | 8,360円 |
300万円 | 25,080円 |
利用者が手数料を負担する理由については、国税庁のQ&Aに掲載されています。
Q1-5 なぜ利用者が決済手数料を支払わなければならないのですか?
クレジットカード納付は、国税庁長官が指定した民間の納付受託者が、利用者から納付の委託を受けて、立替払いにより国に納付する仕組みとなっています。このため、納付受託者が国へ納付した後、利用者から代金が支払われるまでの間、一定のタイムラグが生じることとなり、納付受託者は貸倒リスクを負う一方、利用者は納付繰り延べなどの利益を得ることとなります。
決済手数料は、このような納付受託者のリスクや利用者自身が享受する利益に対して納付受託者が決定しているものであることから、利用者自身が負担していただく必要があります。
なお、決済手数料は、国の収入になるものではありません。
相続税をカード払いするときによくある質問
相続税をカード支払いするときによくある質問をまとめました。
こちらの章では、カード支払いにしたときに気になる点について説明します。
引き落とし日が納付期限後の場合はどうなる?
法的期限内に、国税の専用サイトにてカード決済が終了していれば問題ありません。
相続税の場合、相続開始から10カ月以内に自ら申告しなければならないため、納付期限を過ぎないよう注意が必要です。
カード支払いでは、国税通則法第34条の3の規定で「納付手続きが完了した日に延滞税・利子税を計算する」と定められています。
つまり、カード代の引き落とし日が10ヶ月の納付期限よりも後になってしまっても、延滞税等はかかりません。
カード支払いに利用できるカードは、以下の通りです。
- ・JCB
- ・Mastercard
- ・Visa
- ・Diners Club
- ・American Express
- ・TS CUBIC CARD(トヨタファイナンス)
納付期限が過ぎたあとに手続きした場合は?
指定の納付期限を過ぎたあと、カードで納付したときは延滞税がかかるケースがあります。
国税庁では、「原則として法定期限の翌日から納付した日の日数によって延滞税がかかる」と記載されています。
たとえ期限後であっても、早ければ早いほど延滞税が加算されないので早めに手続きしましょう。
まとめ
カードで相続税を支払うメリット・デメリットなどについて説明しました。
カード支払いは誰もが手軽に利用できる方法であり、高額な支払いに分割払いを利用できるなど、ポイントを得る以外の手段としても有効です。
ただし、実際に計算するとお得ではないケースもありますので、支払いをする前に「納税額・ポイント還元率」をしっかり確認しましょう。
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