この記事でわかること
- 4,000万円のマンションの相続税評価方法がわかる
- 相続税の計算方法がわかる
- マンションを相続税対策に使うメリットやデメリットがわかる
- マンションを相続したときの注意点がわかる
住宅金融支援機構の2020年度調査によると、フラット35を利用したマンションの購入価格は、約4,500万円が全国平均となっています。
首都圏や近畿圏、東海圏を除くエリアでも平均価格は4,000万円(約3,840万円)に近いため、将来的な価値が2,000万円に半減したとしても高額な相続財産です。
特に首都圏では6,000万円以上や1億円のマンションも珍しくありませんが、相続税の評価額は一体いくらになるでしょうか?
マンションには廊下やエレベーター、エントランスなどの共用部があり、戸建住宅よりも相続税評価が複雑な印象もあります。
しかし現金や預貯金よりも節税効果は高いため、マンション購入が相続税対策になる可能性も十分にあるでしょう。
今回は4,000万円のマンションにかかる相続税や、節税効果をわかりやすく解説します。
マンション購入や、相続税対策を検討しておられる方はぜひ参考にしてください。
目次
4,000万円のマンションの相続税評価方法
マンションは土地と建物を別々に評価して相続税を計算します。
土地は路線価、建物は固定資産税評価額をベースにしますが、基本的な考え方がわかれば自分でマンションの相続税を計算できるようになります。
では、税額計算の具体例として、土地+建物で4,000万円になるマンションの相続税を計算してみましょう。
土地部分の相続税評価額
分譲マンション(区分所有マンション)のほとんどは市街地にあるため、「路線価」を使った相続税評価が一般的です。
路線価とは市街地の道路に設定された価格であり、その道路に面した土地1㎡あたりの相続税評価額を表しています。
つまり「路線価×土地面積」が相続税評価額となりますが、マンションの土地には敷地権割合があるため、以下のように計算すると土地の相続税評価額がわかります。
相続税評価額
路線価×マンション全体の敷地面積×敷地権割合
路線価は国税庁ホームページ、敷地権割合は登記事項証明書からわかるので、管轄法務局で取得しておきましょう。
参考:令和3年分の路線価図(国税庁)
参考:法務局の所在地一覧(法務省)
路線価を使った相続税評価額の計算
路線価は各道路に1,000円単位で表示されるので、仮に路線価が350Eと表示されていたら、1,000倍の35万円が1㎡あたりの相続税評価額になります。
また、敷地権割合は登記事項証明書に「○○○○分の○○」と表示されています。
ではマンションの土地が以下の条件だった場合、相続税評価額がいくらになるのか計算してみましょう。
- 路線価:250E
- マンション全体の敷地面積:1,800㎡
- マンション全体の敷地権:120,000
- 自分の敷地権:4,000
- マンションの土地の相続税評価額:25万円×1,800㎡×(4,000÷120,000)=1,485万円
なお、路線価末尾のアルファベットを「借地権割合」といい、マンションの賃貸借に関係するため、ここでの計算には反映させていません。
建物(専有部分)の相続税評価額
マンションの建物部分は「固定資産税評価額=相続税評価額」になります。
計算方法もいたって簡単なので、固定資産税評価額が2,500万円程度であれば、先ほど計算した土地と合わせて4,000万円のマンションになります。
マンションの建物部分の相続税評価額
固定資産税評価額×1.0
固定資産税評価額は納税通知書に同封される課税明細書、または役所で取得できる固定資産評価証明書で確認できます。
なお、固定資産税評価額は「価格(評価額)」の欄に記載されるので、「課税標準額」を参照しないように注意してください。
同額になっている例もありますが、本来は別物の項目なので、課税標準額から相続税評価額を計算すると、申告ミスになる恐れがあります。
相続税の計算方法
土地と建物を合わせて4,000万円になるマンションの場合、相続税は以下のように計算します。
なお、マンション単体ではなく、他の財産も含めて計算するので注意してください。
- (1)遺産総額の計算:相続財産をすべて合計する
- (2)正味の遺産総額の計算:借金や葬儀費用などを控除する
- (3)課税遺産総額の計算:上記の(2)から基礎控除を差し引く
- (4)相続税の総額計算:上記の(3)に税率を乗じて相続税の総額を計算する
- (5)財産の取得割合に応じて税額を按分する
相続税の基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算できます。
従って、4,000万円のマンションだけが相続財産の場合、法定相続人が2人(基礎控除は4,200万円)いれば相続税はかかりません。
マンションの相続税を抑える方法
「マンションを相続したけど、税金をなるべく抑えたい」という人もいるでしょう。
相続税は他の税金に比べて税率が高いため、対策をしておかなければ、高い税金を払うことになります。
ここからは、マンションの相続時に使える税金対策を紹介します。
税理士に相談する
相続では、非課税枠を増やして相続税を抑える「特例」という仕組みがあります。
節税のためには、特例をいかに活用するかが重要になります。
そこで相続に精通している税理士に依頼すれば、相続の状況を見ながら、一番節税できる方法を教えてくれます。
数ある特例の中から、条件に適していて節税に効果的な特例も教えてくれるでしょう。
また面倒な手続き・書類の準備なども任せられるため、まずは税理士へ相談するのがおすすめです。
相続サポートセンターでは、初回の相談を無料で受け付けています。
無料の範囲内なら費用はかからないため、気軽に相談してください。
配偶者控除を利用する
配偶者からの相続なら、配偶者控除を利用しましょう。
配偶者控除とは、亡くなった被相続人の配偶者が使える特例です。
1億6,000万円・配偶者の法定相続分、どちらかの多い方を選んで、非課税で相続できます。
配偶者控除が利用できれば、非課税枠をグッと増やせるため、マンションの相続があっても節税効果が期待できます。
ただし配偶者控除を利用した場合は、2次相続に気をつけましょう。
2次相続とは、1回相続を受けた配偶者が亡くなって、その子供・両親・兄弟などが再度相続することです。
2次相続では、法定相続人が減っており、1回目の相続に比べて非課税枠が少なくなります。
そのため、1回目の相続では相続税を抑えられたのに、2次相続で高い相続税を払うケースもあります。
不安な人は、税理士に相談するのがおすすめです。
小規模宅地等の特例を利用する
マンションの相続では、小規模宅地等の特例が利用できるかもしれません。
小規模宅地等の特例は、評価額を80%減額できます。
例えば5,000万円のマンションを相続したときに、小規模宅地等の特例が適用できれば、マンションの評価額を1,000万円まで抑えられます。
上記の場合だと、4,000万円も減額されるため、節税効果が大きいです。
小規模宅地等の特例を利用できるのは、亡くなった被相続人の配偶者・同居していた相続人などが対象になります。
その他にも適用の条件があるため、くわしく知りたい人は、下記の記事をご覧ください。
→小規模宅地等の特例はマンションも適用!条件・適用時の注意・手続きの流れ
マンションを相続税対策に使うメリット・デメリット
マンションには相続税対策として十分なメリットがある反面、維持・管理コストが発生するデメリットもあるため、双方を比較しながら購入を検討してください。
マンションを相続税対策に使うメリット
マンションは路線価と固定資産税評価額から土地・建物を評価します。
従って、土地は実勢価格(実際に売買される価格)の8割程度、建物は5割~7割程度になるため、同じ4,000万円でも現金や預貯金より相続税評価額が低くなります。
賃貸用であれば、土地には借地権割合(60%~80%程度)と借家権割合(全国一律30%)、賃貸割合も適用できるので、自用地の8割程度に評価額が下がります。
建物にも借家権割合と賃貸割合を適用できるため、評価額は自用建物の7割程度になります。
さらに、マンション相続には小規模宅地等の特例も使えるので、居住用は土地部分が8割引き(330㎡まで)、賃貸用は5割引き(200㎡まで)で評価できます。
マンションを相続税対策に使うデメリット
相続税対策として有効なマンション購入ですが、以下の維持・管理コストが発生します。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 管理費や修繕積立金
建物部分は年数とともに価値も下落するため、いずれ売却する予定があっても、希望額では売れない可能性もあります。
賃貸マンションには空室リスクもあり、予定どおりに投資額を回収できないこともあるので、銀行から借入れしている場合は返済計画に支障をきたすかもしれません。
マンションを相続したときの注意点
親のマンションを相続した場合、相続人がそのまま住む、または賃貸や売却のいずれかを選択することになります。
いずれも運用面や税金の知識が必要になり、財産状況によっては相続トラブルの原因にもなるので、次のような点には十分に注意してください。
維持コストや管理コストが増加する
相続したマンションに住む場合、固定資産税や都市計画税が毎年課税されます。
マンションの管理費や修繕積立金も発生するので、親が払っている税金や管理費用は必ず確認しておきましょう。
賃貸マンションであれば、不動産会社や管理会社に支払う手数料がかかり、家賃収入に対して所得税や住民税も課税されます。
他にもハウスクリーニングや残置物の処分など、想定外の費用が発生するケースもあるので、収支計画には余裕を持たせておく必要もあります。
高額な修繕費用が発生する
居住用・賃貸用マンションともに、いずれ大規模修繕が必要になります。
費用は安くても1戸あたり70万円程度かかるので、賃貸マンション1棟には1千万円以上の修繕費が必要になるでしょう。
分譲マンションであれば各入居者で分担できますが、自己所有のマンションは全額負担になるので、入念に資金計画を練っておかなければなりません。
ある程度築年数が経過しているマンションの場合、親の代で修繕を済ませる、または子供に任せるといった話し合いもしておくべきです。
納税資金が不足する可能性がある
マンション購入は現金から不動産への資産組み換えになります。
自己資金を投入すると現預金は減少しますが、相続税対策になる一方で納税資金が不足する可能性もあります。
相続税がいくらになるか計算し、自己資金の投入額を調整する必要もあるでしょう。
遺産分割で揉めてしまう
主な相続財産がマンションだけであり、相続人が複数いる場合は、各自が取得する財産に偏りが出てしまいます。
所有権を共有すれば不公平は解消されますが、売却・活用には共有者全員の同意が必要になり、マンションの処分に制限がかかってしまいます。
遺産分割のトラブルが想定される場合は、以下の対処法も検討してください。
- 代償分割:現金を支払って不公平を解消する方法
- 換価分割:マンションの売却代金を分割する方法
- 生命保険の活用:保険金によって不公平を解消する方法
なお、生命保険の活用はマンションの所有者が生きている間しかできません。
売却できない可能性がある
中古マンションには一定需要もありますが、築年数によっては買い手が付きにくく、売却できない可能性もあります。
また、入居者がいる賃貸物件は立退料を支払う必要があるので、高額な資金を準備しなければなりません。
居住用マンションの場合も、確実に売却したいときはリフォームが必要になるケースもあります。
売却による利益には譲渡所得税もかかりますが、所有期間によって適用税率が変わるため、売却時期も考慮する必要があります。
譲渡所得の計算
売却額-(取得費+譲渡費用)
税率はマンションの所有期間が5年以内(短期譲渡所得)、5年超(長期譲渡所得)によって変わります。
- 短期譲渡所得の税率:39.63%
- 長期譲渡所得の税率:20.315%
まとめ
現金や預貯金は額面どおりに評価されるため、マンション購入による資産組換えが相続税対策には効果的です。
現預金を不動産に換えただけで評価額が下がり、小規模宅地等の特例も使えるため、4,000万円のマンションでも相続税の基礎控除内に納まります。
賃貸マンションの購入・建築も王道的な節税対策ですが、所有している間は維持・管理コストもかかるので、収支計画を練り込んでおかなければなりません。
相続税対策としてマンション購入を検討する場合、不動産会社だけではなく税理士への相談も重要ポイントになります。
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