この記事でわかること
- 贈与とは何か
- 贈与の種類や相続・遺贈との違い
- 贈与税の課税方法「暦年課税」「相続時精算課税」
相続税対策として用いられる方法の一つに、暦年贈与・相続時精算課税などの贈与が挙げられます。そもそも贈与とは何でしょうか。また、贈与にはどのような種類があり、相続や遺贈とはどのように異なるのでしょうか。
この記事では、贈与とは何か、贈与の種類や相続・遺贈との違い、贈与税に関する基本的な事項について解説します。
目次
贈与とは
贈与とは、「財産を無償で渡し、受け取ることに相手が合意する」ことです。
贈与の種類
贈与の種類には、次のようなものがあります。
暦年贈与
暦年贈与とは、暦年(1月1日から12月31日)の間に行う贈与です。年110万円の非課税枠を利用して、贈与税がかからない範囲で贈与を行う方も多くいます。
定期贈与
定期贈与とは、定期的に一定の財産を贈与することをいいます。たとえば、毎年100万円を5年にわたって贈与する、といった贈与です。このような贈与は、最終的に500万円の贈与をすることが目的とみなされ、毎年100万円ずつ贈与したのではなく、最初の年に500万円の贈与をしたものとして扱われます。
したがって、年110万円の贈与税の基礎控除額を超えるため、贈与税の課税対象となります。暦年贈与のつもりが、その実態から定期贈与とみなされた場合には、課税の対象となるため注意しましょう。
負担付贈与
負担付贈与とは、贈与契約において受贈者(贈与を受ける人)に一定の負担を課すことをいいます。たとえば、アパートを贈与すると同時に、アパート建築の借入金も引き継ぐといった贈与です。
死因贈与
死因贈与とは、贈与者(贈与する人)が亡くなったことを条件として成立する贈与のことをいいます。贈与であるため、財産をあげる人ともらう人の双方の合意が必要となります。
贈与と相続・遺贈の違い
贈与と相続・遺贈にはどのような違いがあるのでしょうか。
贈与と相続の違い
贈与と相続の違いを確認しましょう。相続とは、被相続人が亡くなった場合に、その被相続人が有している権利や義務を、相続人が引き継ぐことをいいます。
これに対して贈与は、特定の財産の贈与をするもので、相続のように所有権者・債権者・債務者の地位をまるごと引き継ぐ相続とは異なります。
贈与と遺贈の違い
贈与と遺贈の違いも確認しましょう。遺贈とは、遺言書によって財産を特定の人に譲り渡すことをいいます。他の人に財産を譲る旨の遺言を行うと、その人の承諾なく効力が発生します。
一方、贈与は契約行為であるため、贈与者の特定の財産を贈与する意思表示と、受贈者のその財産を譲り受けることを受諾するという双方の合意が必要です。
このように、遺贈は一方的な行為であるのに対し、贈与は双方の合意によって行われるという違いがあります。
贈与と相続はどちらが得なのか
贈与は、相続税対策として用いられることがあります。相続税は亡くなった時点で所有する財産にかかるため、財産をすべて生前に贈与しておけば相続税はかかりません。しかしながら、贈与すると贈与税がかかることがあります。
税負担を考えた場合、贈与と相続はどちらが得なのでしょうか。贈与税と相続税を比較するために、それぞれの基礎控除と税率を確認しましょう。
基礎控除の比較
基礎控除とは、ここまでなら税金が課されないとされている額のことです。非課税枠ということもあります。
まず基礎控除については、次のような違いがあります。
贈与と相続の基礎控除の違い
- 贈与:年110万円(暦年贈与)
- 相続:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
相続ですべての財産を引き継ぐ場合と、暦年贈与ですべての財産を引き継ぐ場合であれば、基礎控除という観点からは相続の方が圧倒的に有利であるといえます。
なお、相続人が6人いて、すべての相続人に暦年贈与の基礎控除まで毎年贈与をした場合は毎年660万円、12年で7,920万円を非課税で譲り渡すことができます。
税率
次に、税率を比較してみましょう。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
たとえば、総財産3,000万円の方で相続人1人という前提で、贈与と相続を比較すると、贈与では一般贈与財産用の場合の税率は50%、特例贈与財産用の場合の税率は45%、相続では基礎控除3,600万(3,000万+600万×1人)を引くと相続税はかかりません。
そのため、同じ金額の財産の贈与と相続では、贈与の方が税金は高いといえるでしょう。
贈与の際は贈与税が課されることも
ここまでお伝えした通り、贈与すると贈与税が課されます。
そこで、贈与税の課税についてさらに詳しく確認しましょう。
贈与財産の課税方式は主に2種類
贈与財産の課税方式は、主に次の2種類に分けられます。
暦年課税
暦年課税とは、通常の贈与税の課税方式で、その年の1月1日から12月31日までに受けた贈与に対して課税する方式のことです。暦年課税には年110万円までの基礎控除があり、この金額を超える贈与が行われた場合に課税されます。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、年110万年の基礎控除を差し引いた後、累計2,500万円の特別控除額まで贈与税が非課税となり、相続発生時に相続財産と贈与した財産を合計して相続税を算出する制度です。累計2,500万円を超える贈与については、超えた部分に一律20%の贈与税が課せられます。
相続時精算課税制度を利用すると、暦年課税は利用できません。相続時精算課税制度を利用するためには、最初に贈与を受けた年の翌年の贈与税の申告期限までに、相続時精算課税制度選択届出書を提出する必要があります。
贈与を行う際の注意点
贈与を行う際は、次のことに注意しましょう。
贈与税の申告・納付を忘れない
贈与税がかかる贈与を行った場合は、期限までに贈与税の申告および納付を忘れずにしましょう。贈与税は、贈与した旨の申告をして納税する申告納税方式となります。
そのため、基礎控除額を超える贈与を受けた場合には、贈与税の申告・納税が必要です。固定資産税のように、課税する側が税額を計算して、納付書が送られてくるわけではありません。
そのため、忘れずに贈与税の申告をきちんと行い、納付期限までに納付しましょう。贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日まで、納付も翌年の3月15日が期限となっています。
贈与を隠しても課税される恐れ
贈与の事実を隠しても課税される恐れがあります。現金の受け渡しであれば税務署にバレないと考える人もいますが、相続税の調査において、相続人と被相続人の入出金がチェックされ、無申告の贈与が発覚することもあります。
申告をしていない場合には無申告加算税・延滞税の対象となるため、きちんと贈与税の申告・納税をしましょう。
内容・履歴がわかるよう贈与契約書をつくる
贈与するときは、きちんと贈与契約書を作成するようにしましょう。贈与契約は当事者の意思表示が合致すれば成立するため、贈与契約書の作成は義務ではありません。
しかし、契約書を作成し、贈与者と受贈者の双方が自筆で署名することで、贈与が成立していたことを証明できます。
相続のときに他の相続人から、被相続人の預貯金を勝手に引き出したのではないかと疑われたり、相続税の税務調査において、贈与が成立していないとして相続財産に加算して相続税を計算し直すように処分を受けたりしないためにも、贈与の内容を明確にする贈与契約書の作成をしておきましょう。
相続税対策としての贈与では相続税額のシミュレーションをしよう
この記事では、贈与とは何か、その種類や相続・遺贈との違い、贈与税に関する基本的な事項について解説しました。相続税対策に用いられることの多い贈与ですが、贈与税率は高いため、相続税対策のつもりで行った贈与がかえって税負担を重くしてしまうことがあります。
また、相続開始前7年以内の贈与や相続時精算課税制度による贈与は相続財産に加算して相続税を計算する決まりがあり、贈与しても必ずしも相続税の負担が軽くなるわけではありません。相続税対策としての贈与は、税理士に相談し、相続税額のシミュレーションをしてから行うことをおすすめします。
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