この記事でわかること
- 特別縁故者とはどのような人か
- 特別縁故者が遺産を受け取るための手続きの流れ
- 特別縁故者が遺産を受け取った場合の相続税の申告方法
被相続人に法定相続人がいない場合、特別な関係がある人に財産を残したいと考えることがあります。
遺産を受け取ることができる「特別な関係がある人」を特別縁故者といいます。
この記事では、特別縁故者とは具体的にどのような人か、特別縁故者に相続税がかかる場合の申告方法や注意点、手続きの流れについて解説します。
目次
特別縁故者とは
特別縁故者とは、被相続人に配偶者や子どもなどの法定相続人がいない場合に遺産を受け取ることができる人です。
特別縁故者になるには、家庭裁判所によって相当の関係があると認められる必要があります。
したがって、誰でも特別縁故者になれるわけではありません。
また、特別縁故者が認められるのは、法定相続人がいない場合のみです。
法定相続人に遺産を渡したくないという理由では、特別縁故者は認められません。
特別縁故者になれるのは、次のような人です。
- 被相続人と生計を同じくしていた人
- 被相続人の療養看護に努めた人
- 被相続人と特別の縁故があった人
これら3つの要件のうち1つを満たせば、特別縁故者と認めてもらうよう、家庭裁判所に申立てを行うことができます。
特別縁故者にかかる相続税
特別縁故者が遺産を受け取ると、 特別縁故者に相続税がかかります。
もともと相続税の計算は非常に複雑ですが、特別縁故者が相続する場合にはさらに注意する必要があります。
ここでは、特別縁故者の相続税を計算する上で注意すべきポイントを解説します。
相続税は2割加算される
特別縁故者が相続して相続税を負担する場合、その 相続税額は2割加算された金額になります。
被相続人の配偶者、あるいは被相続人と1親等の血族 以外の人が相続した場合、納付する相続税額が2割加算されます。
法定相続人が相続した場合でも、兄弟姉妹が相続した場合は2割加算の対象です。
特別縁故者となる人は法定相続人ではないため、2割加算の対象となります。
そのため、相続税額が想定より大きな金額になる可能性がある点に注意しましょう。
基礎控除の金額は3,000万円
相続税では、基礎控除の金額が常に計算されます。
基礎控除の金額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」とされ、法定相続人が多いほど基礎控除の額は大きくなります。
基礎控除額よりも相続財産の額が少なければ、相続税はかかりません。
相続財産の額が基礎控除額を上回る場合は、基礎控除額を差し引いた後の金額で税額を計算します。
このように、基礎控除額の計算は、相続税の計算に大きく影響します。
特別縁故者が相続をするのは、法定相続人がいない場合のみです。
そのため、 特別縁故者が相続する場合の基礎控除額は必ず3,000万円になります。
法定相続人が相続するケースと比較すると、基礎控除額は少なくなり、そのぶん課税対象となる財産の額は大きくなります。
財産分与があったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告する
通常、相続税の申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から10カ月以内です。
しかし、特別縁故者が財産を受け取る時点で、すでに相続開始から10カ月以上が経過しているケースも考えられます。
そのため、特別縁故者が財産を受け取った場合は、 財産分与があったことを知った日の翌日から10カ月以内に申告しなければなりません。
適用できない特例制度がある
相続税には多くの特例制度が設けられており、要件を満たせば負担する税額が少なくなるようになっています。
しかし、 特別縁故者には適用できない特例があるため、そのぶん相続税の負担が大きくなることもあります。
たとえば配偶者の税額軽減は、法律上の配偶者でなければ適用できないため、特別縁故者は適用を受けられません。
そのほか、相次相続控除や未成年者控除、障害者控除、小規模宅地等の特例も、特別縁故者は適用を受けることができません。
特別縁故者が遺産を受け取る流れ
特別縁故者は法定相続人ではないため、通常は遺産を受け取ることはできません。
特別縁故者が遺産を受け取るためには独自の手続きが必要です。
以下では、その手続きの流れを解説します。
- 相続財産清算人選任の申立て
- 相続財産清算人の選任
- 債権者や受遺者の清算
- 相続人の捜索
- 特別縁故者への財産分与審判の申立て
相続財産清算人選任の申立て
相続人がいない場合、あるいは相続人全員が相続放棄をした場合は、、遺産相続の手続きを行う人がいません。
そのような場合、 相続財産を最終的に国庫に帰属させる役割を担う「相続財産清算人」を選任する必要があります。
特別縁故者となる人は、家庭裁判所に相続財産清算人選任の申立てを行います。
相続財産清算人が選任されなければ、特別縁故者が相続財産を受け取ることはできません。
相続財産清算人の選任
家庭裁判所が相続財産清算人選任の申立てを受理すると、相続財産清算人が選任されます。
相続財産清算人には、弁護士が選任されるのが一般的です。
その後、家庭裁判所は公告を行い、相続財産清算人が選任されたことが明らかにされます。
公告期間は、後述する「相続人の捜索」と同時並行で6カ月以上です。
債権者や受遺者の清算
上記の公告がなされた後、相続財産清算人は相続財産の債権者や受遺者を確認するための公告を行います。
この公告期間は2カ月以上です。
債権者とは、被相続人にお金を貸していた人で、残された債権は相続財産から返済する必要があります。
また受遺者とは、遺言によって相続財産を受け取る権利を有する人のことです。
債権者や受遺者がいる場合は、その人たちに対して必要な金額を支払うための清算手続きを行います。
相続人の捜索
家庭裁判所は、相続財産清算人選任の公告と同時に相続人を探すための公告を行います。
この公告期間は6カ月以上です。
この期間内に法定相続人が現れた場合、その人に財産を受け取る権利が発生します。
逆に、この期間内に法定相続人が現れない場合、相続人の不存在が確定します。
特別縁故者への財産分与審判の申立て
相続人の不存在が確定したら、その日から3カ月以内に家庭裁判所に 特別縁故者への財産分与審判の申立てを行います。
特別縁故者となった人は、財産分与を受けることができます。
ただし、特別縁故者でもすべての遺産を受け取れるわけではありません。
相続財産の内容は家庭裁判所の判断によって決定されます。その決定に対して異議申立てをすることは認められません。
特別縁故者による相続税の申告方法
特別縁故者が相続税を申告する場合、法定相続人による相続と同様の方法で申告します。
ただし、相続人やすべての相続財産の確認は必要ありません。特別縁故者がすべき手続きは、以下のようになります。
必要書類の収集
特別縁故者が相続する場合、被相続人と特別縁故者の戸籍謄本、特別縁故者の印鑑証明書、遺言書の写しなどが必要です。
また、相続した財産に関する書類として、土地や建物の登記簿謄本、預貯金の残高証明書などを準備します。
ほかの財産についても、その評価額のわかる書類を準備しておきましょう。
申告書の作成
相続税申告書は、国税庁のホームページや税務署の窓口で入手できます。
受け取った財産の評価額を計算した後、基礎控除額を差し引き、残額から相続税額を計算します。
なお、相続税額は2割加算の対象となるため、忘れないようにしましょう。
申告
相続税申告書と添付書類を税務署に提出します。
税務署の窓口に直接提出するほか、郵送や電子申告という方法もあります。
申告期限に間に合わないと追徴課税により負担が増えてしまうので、注意が必要です。
特別縁故者による相続税申告の注意点
特別縁故者の相続税を計算する場合、法定相続人が相続する場合とは異なる点があります。
とくに注意すべきポイントを確認しておきましょう。
相続税以外の負担が生じる
相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税とされています。
金額が大きくなりがちな不動産取得税がかからないことは、相続人にとっては大きなメリットです。
しかし、特別縁故者が不動産を受け取った場合は、不動産取得税がかかります。
そのため、相続した後にさらに多額の税負担が発生することに注意しなければなりません。
すべての手続きを専門家に任せることもできる
期限内にさまざまな書類を準備したり、家庭裁判所に出向いたり、やるべきことが膨大にあります。
間違った手続きをしてしまうと、期限内に手続きが完了しない可能性もあります。
専門家に依頼して、確実に特別縁故者の申立てや相続税の申告をすると良いでしょう。
特別縁故者の申立てや相続税申告は専門家に相談しよう
被相続人に法定相続人がいない場合、残された財産を相続する人がいないことになります。
その際に、特別縁故者が選任されれば、その特別縁故者が遺産を引き継ぐことが可能になります。
被相続人と特別な関係にあった人は、自身が特別縁故者になりうるかを確認しましょう。
特別縁故者に該当する場合は、家庭裁判所に申立てを行うための手続きを順に進めていきましょう。
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