受け取った香典は相続税の対象になる？香典・香典返しの税金上の扱いまとめ

葬儀や告別式の際には、参列者から香典を受け取り、逆に遺族からは香典返しを渡すのが一般的です。

特に香典は現金でのやり取りとなることが多く、税金の対象になるかどうかで迷うかもしれません。

そこで、香典を受け取った場合、香典返しを支払った場合の税金計算の考え方について解説します。

相続税だけでなく、所得税や贈与税に関係する場合もあるため、その内容について事前によく確認しておきましょう。

香典は相続税の課税対象に含まれない

香典を受け取った際に真っ先に疑問に思うのが、香典は相続財産に含めるのかどうかかもしれません。

この点については、相続財産とはどのようなものかを考えればその答えを導き出すことができます。

相続財産とは、被相続人が亡くなった時点で保有していた財産や債務のことです。

しかし、香典は亡くなった人が受け取ったものではなく、その遺族が被相続人の死後に受け取ったものです。

したがって、香典は相続財産には含まれません。

そのため、香典をいくら受け取っても相続税が課されることはないのです。

高額過ぎる香典は所得税・贈与税の対象になる

前述したように、香典を受け取っても相続税の課税対象になることはありません。

ただ、相続税以外の税金の対象となる場合があるため、注意しなければなりません。

香典を受け取って税金が発生する可能性があるのは、その香典の金額が高額過ぎる場合です。

普通には考えられないような高額の香典を受け取った場合、受け取った人に納税義務が生じる場合があるのです。

具体的には、高額すぎる香典を支払ったのが法人である場合、受け取った人に所得税が発生します。

また、高額すぎる香典を支払ったのが個人である場合には、受け取った人に贈与税が課されます。

ここで疑問となるのは、いくら以上の香典が所得税や贈与税の対象とされるかです。

ただ、この点については、税法上いくら以上という明確な基準があるわけではありません。

税法上規定されているのは、社会通念上相当と認められる金額であるかどうかです。

一般的に考えて、香典として受け取るのがおかしくない程度の金額であれば、課税されないものとされています。

そして、社会通念上不相当に高額であると認められる場合には、課税対象とされるのです。

いくらまでならいいという基準がないために判断が難しい上、亡くなった人によってその金額が変わることも考えられます。

ただ、所得税が課される場合は一時所得としての課税となるため、50万円を超えなければ税額は発生しません。

また、贈与税が課される場合も基礎控除があるため、110万円を超えなければ実際の税額は生じないこととなります。

このような金額を考えると、かなり高額な香典を受け取らない限りは、香典を受け取って税金が生じることはないといえるでしょう。

香典返しも葬儀費用には含まれない

葬儀や告別式に参列してくれた人に対して、香典のお礼として香典返しを渡すのが一般的です。

ここまで見てきたように、香典は亡くなった人の遺族に対して渡されるものであり、相続税の課税とはまったく関係のないものです。

ところで、相続税の計算では葬儀費用を相続財産の額から控除することができます。

これは、葬儀や告別式にかかった費用を相続財産の中から支払うことが多いためです。

葬儀費用の支払いをした相続人は、その分実質的に相続財産が減少することとなるため、相続税の支払能力が減少しています。

そのため、葬儀費用を支払った相続人については、その分相続財産の額から控除してもらうことができるのです。

ただ、受け取った香典は相続財産に含まれないため、支払った香典返しも葬儀費用には含まれません。

つまり、香典も香典返しも相続税の計算にはまったく無関係ということになるのです。

葬儀費用に含まれる費用・含まれない費用

相続税の計算を行う際に相続財産の額から控除することができる葬儀費用は税金計算に関係するため、その内容が明確に定められています。

そこで、葬儀費用に含まれる費用にはどのようなものがあるか、解説していきます。

また、葬儀費用になりそうでも実際には葬儀費用とならない費用もあります。

葬儀費用と間違えやすいものがいくつもあるため、そのような費用についても確認しておきましょう。

葬儀費用に含まれる費用

葬儀費用といってまず思い浮かぶのが、通夜や告別式などにかかった費用です。

葬儀会社に頼んでお通夜や告別式を行うケースが多いため、葬儀会社に支払った費用が葬儀費用となります。

葬儀会社に直接支払った費用以外にも、飲食代などが葬儀費用となります。

また、通夜や告別式の際にはお寺や神社などへの支払いも発生します。

読経料の他、戒名料、お布施などの支払いも葬儀費用に含まれます。

請求書や領収書などはもらうことができないため、メモなどで支払いの日付や金額をわかるようにしておくようにしましょう。

火葬場で火葬を行う際にかかった費用や埋葬、納骨にかかった費用も、葬儀費用に含まれます。

また、遺体や遺骨の運搬にかかった費用も、葬儀費用に含めることができます。

さらに、通夜や告別式の際に参列者に支払った心付けや、会葬御礼の品を購入した費用も葬儀費用となります。

葬儀費用に含まれない費用

一般市民からすると葬儀費用になりそうな費用の中にも、葬儀費用に含めることができないものがいくつかあります。

このような費用を葬儀費用に含めないことが、正しい相続税の申告に重要なことです。

葬儀費用にならないものとしてまずあげられるのが、最初にもご紹介した香典返しです。

参列者から受け取った香典が相続財産とならないのと同じく、香典返しも葬儀費用とはならないのです。

ただし、香典返しとは別に会葬御礼を行っている場合には、会葬御礼のみ葬儀費用に含めることができます。

次に、墓碑や墓地、位牌などの購入費用があげられます。

墓地や仏具などは相続税の対象とはならないため、これらの購入費用も葬儀費用とはならないのです。

なお、亡くなる前に墓地や墓石を準備しておいても相続財産に含める必要はないため、相続対策に利用することができます。

また、葬儀会社に支払った費用の中にも、葬儀費用とすることができないものが含まれている場合があります。

それは、初七日法要や四十九日法要にかかる費用です。

通夜や告別式を行った際に、一緒に初七日法要を行うことが多くなっています。

また、相続税の申告を行うまでに四十九日法要も行われます。

このような費用は、葬儀会社や寺院などに支払っても葬儀費用とすることはできません。

もし、通夜や告別式の費用と一緒に初七日の費用を支払っている場合は、その分だけ除いて葬儀費用の額を計算します。

まとめ

葬儀の際に受け取った香典は、相続財産に含まれないこととされています。

また、これと同様に香典返しも葬儀費用に含まれません。

この2つの点は、相続税の計算を行う際にとても重要であり、覚えておく必要があります。

ただ、葬儀の際に発生する費用であっても、相続税の葬儀費用に含まれるものとそうでないものがあります。

特に葬儀費用にならないものについては紛らわしいものも多いため、間違えないようにしましょう。

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