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最終更新日:2024/10/7

小規模宅地等の特例の計算方法をわかりやすく解説

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilefuruoya/
書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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小規模宅地等の特例の計算方法をわかりやすく解説

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相続税を節税するためには、相続財産の評価額を減少させることが最も有効な方法です。

相続財産の評価額を減少させる方法の多くは、相続開始前に被相続人が行う対策ですが、相続開始後に利用できる対応が小規模宅地等の特例の活用です。

今回は、この小規模宅地等の特例の計算方法について、具体的に解説します。

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小規模宅地等の特例を受けるための要件

小規模宅地等の特例の制度趣旨

相続財産の中に被相続人が自宅として使用していた土地や、店舗や事務所のように事業に使用していた土地がある場合、それらは相続人が引き続き居住したり、事業を承継する場合に必要不可欠な財産といえます。

そのため、これらの土地について高額な相続税が課せられると、相続人は相続税の支払いのためにこれらの土地を手放さなければならなくなる危険が生じるなど、相続人の生活や事業の承継に大きな支障を生じさせることになりかねません。

そこで法律は、一定の要件が満たされる場合には、これらの土地についてその評価額を減額するという制度を認めました。

これが小規模宅地等の特例の制度です。

小規模宅地等の特例を適用した場合の実際の計算

小規模宅地等の特例の効果

小規模宅地等の特例が適用された場合、その上限面積までの範囲で、宅地の評価額が以下の通り減額されます。

種類 上限面積 減額割合
居住用 特定居住用宅地 330㎡ 80%
事業用 不動産貸付以外の事業用宅地 特定事業用宅地 400㎡ 80%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%
不動産貸付用宅地 200㎡ 50%

被相続人の居住用宅地を配偶者が相続する場合

この場合、特定居住用宅地の特例が適用され、330㎡までの範囲で80%が減額されます。

減額される金額の計算式は、以下の通りです。

①地面積が上限以下の場合

土地の評価額×80%

②地面積が上限を超える場合

土地の評価額×330㎡/土地面積×80%

・土地の面積が200㎡、価格が1億円とした場合
面積は上限の330㎡以下ですので全体について80%が減額されることになります。

その結果、土地の評価額は、
1億円-(1億円×80%)=2,000万円
となります。

・宅地の面積が500㎡、価格が2億5,000万円とした場合
この場合、宅地の面積が上限である330㎡を超えるため、330㎡については80%減額、残りの170㎡については本来の評価額で計算することになります。

その結果、評価額は、
2億5,000万円-(2億5,000万円×330㎡/500㎡×80%)=1億1,800万円
となります。

特例の適用を受ける相続人が複数いる場合

・被相続人の相続人が子供2人(兄弟)のみで、2人とも被相続人と同居していた場合
この場合、相続人である兄弟2人とも、特定居住用宅地の特例を受けることができます。

ただ、この場合、それぞれについて330㎡ではなく、2人合計で330㎡について減額を受けることができます

その場合、兄弟いずれにつきいくらについて特例を認めるかは、兄弟で協議して決定することになります。

土地の面積が500㎡、評価額が5,000万円、兄弟それぞれ1/2ずつ相続する場合において、兄について200㎡、弟について130㎡の合計330㎡について特定を適用するとした場合、以下のように計算することになります。

兄弟それぞれが相続する財産の価額
250㎡×5,000万円/500㎡=2,500万円

兄の評価額
2,500万円-(2,500万円×200/250×80%)=900万円

弟の評価額
2,500万円-(2,500万円×130/250㎡×80%)=1,460万円

合計で2,360万円となります。

特定事業用宅地の場合も、その上限面積が400㎡となるだけで、それ以外の計算方法は同様となります。

不動産貸付事業用宅地の場合

不動産貸付事業用宅地の場合は、その上限面積が200㎡の範囲で、評価額の50%が減額されます。

減額される金額の計算は以下のようになります。

①土地面積が上限以下の場合
土地の評価額×50%

②土地面積が上限を超える場合
土地の評価額×200㎡/土地面積×50%

土地面積が150㎡、評価額が1,500万円の場合は
1,500万円×50%=750万円 が減額されるため、その評価額は、 1,500万円-750万円=750万円となります。

土地面積が300㎡、評価額が3,000万円の場合の減額される金額は、
3,000万円×200㎡/300㎡×50%=1,000万円
となるため、その評価額は3,000万円-1,000万円=2,000万円となります。

特定居住用宅地と特定事業用宅地がある場合

この場合は、特定居住用宅地について330㎡、特定事業用宅地について400㎡を上限とし、合計で最大730㎡まで、80%の減額を受けることができます。

居住用宅地が300㎡で3,000万円、事業用宅地が400㎡で4,000万円の場合、減額される金額は、
居住用宅地について:3,000万円×80%=2,400万円
事業用宅地について:4,000万円×80%=3,200万円
合計5,600万円となります。

その結果、評価額は
(3,000万円+4,000万円)-5,600万円=1,400万円
です。

居住用宅地が400㎡で4,000万円、事業用宅地が500㎡で5,000万円の場合の減額される金額は
居住用宅地について、
3,000万円×330㎡/400㎡×80%=2,640万円

事業用宅地について、
5,000万円×400㎡/500㎡×80%=3,200万円
となり、合計で5,840万円が減額されることになります。

その結果、評価額は、
(4,000万円+5,000万円)-5,840万円=3,160万円
です。

居住用宅地、事業用宅地、不動産貸付地が混在している場合

この場合は、上限200㎡までの範囲で、減額されることになります。

この場合、それぞれの面積については、以下の算式に当てはまる範囲で、任意に決定することができます。

特定居住用宅地の面積×200/330+特定事業用宅地の面積×200/400+不動産貸付事業用宅地の面積≦200

特定居住用宅地の面積が200㎡で2,000万円
特定事業用宅地の面積が300㎡で3,000万円
不動産貸付事業用宅地の面積が100㎡で1,000万円
とした場合、

特定居住用宅地で200㎡を使うとして、上記の計算式に当てはめると、

200㎡×200/330+特定事業用宅地の面積×200/400+不動産貸付事業用宅地≦200

よって、
121.21㎡+特定事業用宅地の面積×200/400+不動産貸付宅地≦200
特定事業用宅地×200/400+不動産貸付宅地≦78.79㎡

不動産貸付宅地に特例を使わないとすると、

特定事業用宅地×200/400≦78.79㎡
特定事業用宅地≦157.58㎡

となり、特定事業用宅地についても、157.58㎡について、特例を利用することが可能となります。

「限度面積」の拡大

小規模宅地等の特例が適用される場合、一定の面積までに限って、その土地の評価に際して、本来の評価額の80%または50%が減額評価されます。

この減額評価を受けることができる上限の面積、及び、複数の用途に適用する場合の面積の計算方法が、平成27年の改正により変更されました。

特定居住用宅地について

従来は、その上限面積が240㎡でしたが、改正により330㎡に拡大されました。

複数の用途に該当する土地があった場合の面積の計算方法

従来は、特定居住用宅地、特定事業用宅地があった場合、その有利判定をして、400㎡という適用限度内で特例が適用されることとされていました。

その際の計算式としては、
特定事業用宅地面積+特定居住用宅地面積×5/3+貸付事業用宅地面積×2≦400㎡
として計算されてきました。

これが、改正により、以下のように変更されました。

①定居住用宅地と特定事業用宅地が存在する場合については、それぞれの上限面積まで特例が適用できることとなりました。

その結果、最大、特例居住用宅地の330㎡、特定事業用宅地の400㎡の合計730㎡まで適用の余地があることになります。

②対象となる土地の中に、貸付事業用宅地と特定居住用宅地、特定事業用宅地がある場合には、その上限面積は200㎡に限定され、以下の算式が成立する範囲で、貸付事業用宅地、特定居住用宅地、特定事業用宅地としての特例を受ける面積を任意に決定できます。

特定居住用宅地×200/330+特定事業用宅地×200/400+貸付事業用宅地≦200㎡

建物の所有者や用途によって評価が異なる

小規模宅地等の特例の適用に関して、法律上は、特定同族会社事業用宅地の場合を除き、その宅地上の建物の所有者を限定していません。

その結果、宅地上の建物の所有者如何によって、小規模宅地等の特例のいずれの形式が適用されるのか、又、適用されないのかが異なる場合が出てきます。

ここでは、代表的なパターンを確認しておきましょう。

①被相続人が所有する土地上に被相続人が建物を所有している場合

→被相続人、又は、被相続人と生計を一にする親族が居住または事業に使用していた場合については、小規模宅地等の特例が適用されます。

②被相続人所有宅地上に被相続人と生計を一にする親族が所有する建物があった場合

→宅地所有者である被相続人と建物所有者である親族との土地利用についての権利関係によって取扱いが変わってきます。

  • ・使用貸借の場合:当該生計を一にする親族が居住または事業の用に供していた場合には、特定居住用または特定事業用宅地として小規模宅地等の特例が利用できます。
  • ・貸借の場合:被相続人から当該親族への土地の賃貸自体が貸付事業となり、その結果、不動産貸付用宅地としての小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。

③被相続人所有宅地上に、被相続人と生計を一にしない親族が所有する建物がある場合

→この場合も、宅地所有者である被相続人と建物所有者である親族との土地利用についての権利関係が大きく影響します。

  • ・使用貸借の場合:建物の使用者が生計を一にする親族の場合には、建物所有者が別居の親族や第三者であっても、当該生計を一にする親族が宅地を取得するのである以上、小規模宅地等の特例の適用があります。一方、生計を一にしない親族等が居住・事業の用に供している場合には、小規模宅地等の特例の適用はありません。
  • ・賃貸借の場合:被相続人から当該親族への土地の賃貸自体が貸付事業となるため、不動産貸付用宅地としての小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。

面積の按分が必要となるケース

複数の種類の特例が適用される場合

5階建て賃貸マンションのうち、1階から4階を賃貸し、5階を自宅として使用している場合(各階の床面積は100㎡、敷地面積は120㎡とします)
この場合、1階から4階部分については、不動産貸付用宅地としての小規模宅地等の特例の適用の余地があり、5階部分については特定居住用宅地としての小規模宅地等の特例の余地があります。

この場合、敷地面積120㎡に対して、特定居住用宅地として利用している床面積の割合(120㎡×1/5=24㎡)について特定居住用宅地の特例が適用されます。

一方、賃貸している部分の床面積の割合(120㎡×4/5=96㎡)については、不動産貸付用宅地の特例が適用されます。

さらに、ここでは、特定居住用宅地と不動産貸付用宅地とが適用されるため、適用面積の上限規制がありますので、それを計算します。

24㎡×200/330+96㎡=110.54<200㎡

本件の場合、すべてを合算しても200㎡に満たないため、それぞれ全面積について特定居住用不動産としての適用、不動産貸付用宅地としての適用いずれも認められます。

仮に、敷地面積が500㎡とすると、特定居住用宅地としての対象面積は、
500㎡×1/5=100㎡
不動産貸付用宅地の対象面積は、
500㎡×4/5=400㎡
となります。

その結果、複数の宅地の併存として計算した場合、
100㎡×200/330+400㎡=460.6㎡
となり、上限の200㎡を超えてしまいます。

この場合、特定居住用宅地の特例を提供する面積と、不動産貸付用宅地の特例を適用する面積とを、以下の算式が成り立つ範囲で任意に選択できます。

特定居住用宅地×200/330+特定事業用宅地×200/400+貸付事業用地≦200㎡本件の場合、80%の減額をできる特定居住用宅地の特例について100㎡を適用し、残りを不動産貸付用宅地による特例に利用することが合理的でしょう。

そこで、先の算式から、不動産貸付用宅地に利用できる面積を算出すると、
100㎡×200/330+0㎡×200/400+貸付用宅地面積=200
その結果、貸付用地賭して特例を受けることができる面積は、
貸付用宅地面積=139.4㎡
となります。

つまり、この139.4㎡について不動産貸付用宅地の特例を適用するとすることが合理的といえることになります。

共同相続の場合

被相続人と長男が200㎡の敷地上の家屋に同居していて、次男が独立していた場合で、相続人が長男と次男のみ、長男と次男がそれぞれ1/2で自宅敷地を共有し、自宅には長男が継続して居住する場合。

この場合、長男については、特定居住用宅地として特例が適用可能です。

一方、次男は独立しているため、特例の適用は受けられません。

その結果、敷地200㎡のうちの長男が相続する1/2である100㎡分についてのみ、特定居住用宅地等の特例が適用されることになります。

小規模宅地等の特例の注意点について

ここからは小規模宅地等の特例を利用したい人が、知っておくべきこと・注意点を紹介します。

  • ・手続きは相続開始を知った翌日から10ヶ月が期限
  • ・特例を使って税金が0円になっても申告は必要
  • ・申告期限前に土地を売却しない
  • ・適用の判断が難しいので専門家への相談が確実

それでは、くわしく説明していきましょう。

手続きは相続開始を知った翌日から10ヶ月が期限

小規模宅地等の特例には、手続きの期限が定められています。

手続きの期限は、相続開始を知った翌日から10ヶ月です。

小規模宅地等の特例が適用できる状況であったとしても、手続き期限を過ぎてしまうと、特例は利用できないかもしれません。

小規模宅地等の特例は適用できれば、土地の評価額を80%も減額できる節税効果の大きい仕組みです。

小規模宅地等の特例を適用したい人は、必ず期限内に手続きを終わらせましょう。

もし手続きについて不安があれば、税理士といった専門家に任せるのが確実です。

特例を使って相続税が0円になっても申告は必要

相続税は、相続財産から控除金額を引いて、残った金額に課税されます。

控除金額は最低でも3,600万円はあるので、相続財産が3,600万円以下なら、相続税がかからず申告も必要ありません。

ただし相続税の申告が必要ないのは「特例を使わずに、基礎控除だけで相続税がかからない場合」のみです。

小規模宅地等の特例を使って、相続税がかからなくなったとしても、特例を使うなら申告をしなければいけません。

もし小規模宅地等の特例を使ったのに申告を抜かっていた場合は、特例が使われない状態での相続税が課税されるので注意しましょう。

申告期限前に土地を売却しない

小規模宅地等の特例では、土地の用途によって、相続税の申告期限まで土地の所有をしていないといけないケースもあります。

「不動産を売って現金化したい」という思いから、相続税の申告期限までに土地を売却してしまうと、小規模宅地等の特例が利用できないかもしれません。

小規模宅地等の特例が使えなければ、それだけで土地の減額がなくなり、相続税が高くなる可能性が高いです。

小規模宅地等の特例は、適用するための要件が細かく決まっているので、要件をしっかり守るようにしましょう。

適用の判断が難しいので専門家への相談が確実

小規模宅地等の特例は、適用するための条件が複雑です。

そのため相続の知識がない人が、小規模宅地等の特例について正しく判断するのは難しいかもしれません。

自分だけで手続きを進めて、もし間違っていた場合に、取り返しのつかないことになる可能性があります。

そこで最初から税理士といった専門家に相談することで「小規模宅地等の特例が適用できるのか?」を正しく判断できます。

特例以外の節税方法・相続の手続きもすべて相談できるため、相続に関する困ったことを解決してくれます。

ベンチャーサポート相続税理士法人では、初回の相談を無料で受け付けています。

無料の範囲内であれば費用も発生しないので、まずは気軽に無料相談から利用してください。

まとめ

今回は、小規模宅地等の特例の計算方法について解説しました。

小規模宅地等の特例は、評価額を大幅に減少することが可能となるため、有効に使えば大きな節税効果をもたらすことが可能です。

ただ、計算については複数の土地がある場合などには複雑になり分かりにくい場合があります。

そのような場合には、専門家に相談するなどして、特例を最大限に有効活用することをおすすめします。

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