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最終更新日:2023/5/5

タンス預金のメリット・デメリットとは?マイナンバーとの関係性

古尾谷 裕昭
この記事の執筆者 税理士 古尾谷裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士
東京税理士会 登録番号104851

東京、横浜、千葉、大宮、名古屋、大阪、神戸など全国の主要都市22拠点にオフィス展開し、年間2,200件を超える日本最大級の相続税申告実績を誇る。 業界最安水準となる明朗料金ときめ細かいフォローで相続人の負担を最小にすることを心がけたサービスが評判を得る。1975年生まれ、東京都浅草出身。

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書籍:今さら聞けない 相続・贈与の超基本
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昔から家庭にひっそりと存在していたタンス預金。

実はこのタンス預金、マイナンバー制度の進展によってさらに増加するのではないかと考えられています。

これに関連しているのでしょうか。

タンス預金のニーズが最近高まっているようです。

タンス預金は盗難・相続トラブルなどのリスクが高く、隠したとしても税務署にバレる可能性が高いのでおすすめできません。

こちらではマイナンバーとの関係性をはじめ、タンス預金のメリット・デメリットや相続税に関する注意点などをまとめました。

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日本のタンス預金の現状はこうなっている

金銭で収入を得た場合、多くの人は金融機関に預金として所有しているかと思います。

それには反対に、金融機関に金銭を預けず、現金や資産を自宅で保管することを「タンス預金」といいます。

日本はタンス預金大国とも揶揄されるほど、現金での資産保有率が高いと言われています。

ひっそりと保管されるのがタンス預金ですから正確な金額は把握されていませんが、推計では50兆円以上とも言われています。

これを世帯数で平均すると、平均額は1世帯につき約85万となります。

国の本音は「国民にタンス預金を消費させたい」

50兆円といえば、景気に大きなインパクトを与えるほどの額です。

国としては、溜め込むのではなくぜひとも消費に回して経済を活性化してほしいというのが本音といったところでしょう。

とはいえ、国民は将来の不安があるのでタンス預金をしているわけですから、タンス預金は一向に減りません。

そのため、国は消費を進めるための対策を打ち出しています。

代表的な対策のひとつが「結婚・子育ての一括贈与」「教育資金の一括贈与」の制度です。

制度の概要としては、「結婚・子育ての一括贈与」では、結婚・子育てのための贈与の場合1,000万円まで、「教育資金の一括贈与」では教育のための贈与の場合は1,500万円までは贈与税がかかりません。

タンス預金をしている層が高齢者であることに注目し、消費が必要だけれど資金のない年齢層へタンス預金がわたるように考えられた法律になります。

マイナンバー制度がタンス預金を助長する!?

現在預貯金のマイナンバー登録が実施されているのはご存じでしょうか?

今は任意なのですが、これが近い将来国民に義務化される動きがあります。

個人の銀行口座とマイナンバーを結び付けることで、国が国民の保有する資産を把握しようとしているのです。

資産がいくらあるのか、簡単に調べられてしまう…この状況に反発を覚える人は多いのではないでしょうか。

そこで今注目を浴びているのがタンス預金です。

誰にも知られない形で資産を持つ方法として、今後タンス預金の額が増えると考えられています。

タンス預金縮小を狙っている国が、かえってタンス預金を助長する結果となりつつあります。

タンス預金のメリット・デメリットはこれだ!

果たしてタンス預金は、した方がお得なのか?それとも危険があるのか?

こちらでは、タンス預金をすることのメリットとデメリットをまとめてみました。

タンス預金のメリット

金融機関が倒産してもなくならない

日本の現在の法律では、金融機関が倒産した場合は預金額が1,000万円まで保証されますが、それ以上の額は保証されません。

これをペイオフ制度と言いますが、経済状況が目まぐるしく変わっていく近年では、金融機関に預け入れていれば安心とは言い切れないため、1,000万円以上の預金がある人は一部の預金が消滅するリスクがあることは覚えておくべきです。

一方タンス預金であれば消滅の心配はありません。

金融機関の口座が凍結しても使える

金融機関の口座は、口座の名義人が死亡した場合には凍結されてしまいます。

所定の手続きを経て口座の凍結が解除されるまでは口座の預金は塩漬け状態になってしまうのです。

この所定の手続きは相続人が行うのですが、被相続人(口座名義人)・相続人の戸籍をはじめ様々な書類が必要となり、また金融機関の確認に時間もかかるため、しばらくの間口座の預金をおろすことができなくなります

こうなると、残された相続人がお葬式や相続税を一時的に支払わざるを得ないため、相続人の経済状況によっては頭の痛い問題になります。

一方タンス預金であれば凍結される心配がありません。

引き出しの制限や手数料がかからない

金融機関に預金している場合、まとまった金額をおろしたいときは窓口での本人確認が必要になります。

窓口の営業時間は平日15時まで、さらに混雑もしていますので、引き出すにも労力が必要です。

また、ATMであっても、営業時間外には引き出しの手数料が発生します。

一方タンス預金であれば時間や手数料を気にせずにすぐに使うことができます。

贈与税の目をかいくぐれる

金融機関の預金は、引き出すと出金記録がつきます。

大きな額の出金があると、税務署はその使い道を追及して贈与税の納付を要求します。

一方タンス預金であれば出金記録がつかないため贈与したことを確認する手段がなく、贈与税の目をかいくぐれる可能性があります。

とはいえ、贈与を受けた人が金融機関に預金すると贈与の証拠になりうるため、後日贈与税が発生する可能性がある点には注意しておきたいところです。

資産状況を隠しておける

先程述べた通り、マイナンバー制度で銀行口座の残高との連携が必須となった場合、預金額は全て国に簡単に把握されてしまいます。

一方タンス預金であれば国にその額を知られることはありません。

タンス預金のデメリット

利息がつかない

金融機関に預金をすれば、預けているとささやかな割合ではありますが利息がつきます。

一方でタンス預金には利息はつきません。

とはいえ、現在は利率が非常に低いため、それほど大きなデメリットにはならないでしょう。

災害や盗難にあったときのリスクがある

金融機関に預金するということは、金融機関が預金を管理してくれるということです。

もちろんセキュリティは強固ですし、万が一何の場合でも一定の保障がなされます。

一方でタンス預金は現金を自分の手で管理することになります。

火災や浸水などの災害や盗難の被害に遭った場合は何の保障もありません。

全て自己責任です。

リスク回避のためには災害でも壊れない頑丈な金庫、そして盗もうとしても運び出せないような重量の金庫を用意する必要があります。

保管場所を失念・紛失する可能性がある

タンス預金はそもそも普段出し入れするようなものではないかと思います。

そのため、人目につかない場所に保管したことが裏目に出て、保管した本人も場所を忘れてしまうことが起こりえます。

また、保管場所を知らない家族が、タンス預金が隠されていることを知らずに保管していた場所を破棄してしまう…という可能性もゼロではありません。

笑えない話ですが、タンス預金がまるごと消えてしまわないような保管場所や保管方法を考え抜く必要があります。

タンス預金を見過ごして相続税の申告をしてしまった場合の罰則が重い

タンス預金が相続財産の一部となった場合、相続人がその存在を知らずに相続税の申告時にタンス預金を含めないことが起こりえます。

もしそのまま税務署に気付かれずに相続税の時効を迎えられれば節税になって得かもしれません。

しかし、一方で税務署にバレてしまった場合は、タンス預金分の税金の追加だけでなく別途過少申告加算税等の支払いをする必要があります。

隠れているタンス預金であるがゆえに悪意なく気付かなかったとしても、通常より重い税金を負担しなければならない点は要注意です。

どこかのタイミングで相続人が気付けるよう、何か工夫をしておく必要があります。

タンス預金は相続税を免れる可能性が高いのか?

タンス預金のデメリットとして「タンス預金を見過ごして相続税の申告をしてしまった場合に罰則がある」とお伝えしました。

これを読んでこう考えた方もいるかもしれません。

「そもそもタンス預金は相続人すら見過ごしそうな隠し財産のようなものだから、税務署も見つけることが難しいのでは?だったらいっそ気付かないふりをしてしまおう。」

隠せるものなら…との考えが浮かんでしまうのが人情です。

しかし税務署に気付かれてしまえば、待っているのはさらに重い課税。

一か八かの賭けに出る前に、果たしてタンス預金の存在を税務署から隠し通すのは可能なのか、税務調査の詳細から見ていきましょう。

税務調査が実施されるまでの流れ

税務調査はすぐに実施が決定されるわけでなく、申告書を提出した後約1~2年経過後に実施の連絡が来るようになっています。

相続人が相続税の申告書を提出すると、税務署はまず申告の内容や計算が合っているかをシステムでチェックします。

この時点で間違いが見つかった場合に税務調査が行われるのはもちろんですが、実ははっきりとした間違いはなくとも税務署が「怪しいな」と判断すれば税務調査の実施を決定することができます。

税務調査が入る可能性は申告者の1~2割程度ですが、納税額が大きいと税務調査が入る可能性は高くなります。

税務署には恐るべき調査能力と権限がある…!

実際には、税務署には申告書に書かれていること以上の情報があるからこそ、税務調査をすべきかを判断することができるといえます。

一体その情報はどこから得ているのでしょうか。

実は、税務署には非常に強い調査能力が認められています。

そのひとつが、銀行や証券会社に対して、独断で照会をかける権利です。

照会の範囲は相続開始時点の残高だけにとどまらず、相続前の金銭の入出金や株式の売買の履歴まで確認することができます。

さらに、被相続人の口座に加えて相続人等の関係者の口座まで、相続人の了解なしで調べることができてしまいます。

そのため、口座情報から100万円以上の多額の出金がある場合には、税務署は何に使ったのかを追及していきます。

そしてその預金が使途不明であるとなった場合には、タンス預金の可能性を疑います。

こうして口座の出金情報に不審な点を発見すると、実地捜査として家宅捜索を行うこともできます。

調査官の目を欺くため、自宅から一旦避難させて家族や友人に預ける選択肢もありますが、一時的であっても大金を誰かに預けるのは現実的ではないでしょう。

出金したお金をタンス預金にする場合、税務署に突き止められてしまう可能性はとても高く、隠し通すのは困難であるといえます。

税務調査の現場で聞かれることは?

税務調査は調査官による質問や資料等の確認をもとに進んでいきます。

ちなみに、税務調査が入った場合は約8割超の人が何らかの指摘を受けていると言われています。

調査官からの指摘をそのまま受け入れてしまうと、追加で納税をしなければなりません。

とはいっても一般の人は調査官に反論することが難しいため、税務調査の実施が決まった場合には相続税専門の税理士に立ち合いを頼むことをおすすめします。

税務調査時の回答次第では相続人が一気に不利になってしまいますが、税理士がついていれば事前に最適な回答を準備して調査当日を迎えることもできます。

こちらでは簡単に、税務調査でよく聞かれる質問についてまとめてみました。

調査官がどのような質問をどのような意図でしているのかを把握しておきましょう。

被相続人について

「入院先や入院期間、死亡原因、医療費の支払い方法」
「被相続人の趣味や勤務先、退職時の役職」
「持ち家があるかどうか。あった場合、その家の詳細について」
「過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか」

→収入と生活費の額、財産の額を調査し、申告された額と相違ないかをチェック

「過去に贈与した経験の有無。あった場合、誰に贈与したか」

→配偶者と子供の預金が、実態が被相続人の財産になっていないかどうかをチェック

配偶者について

「収入額」
「住まいや生活費について」
「過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか」

→収入と生活費の額、財産の額を調査し、不自然な点はないかをチェック

「貸金庫の有無。持っていた場合、その場所」
→貸金庫をタンス預金として使っていないかをチェック

子について

「収入額」
「学生なら学費について」
「一緒に暮らしているか、離れて暮らしているか」
「過去に相続した財産の有無。あった場合、なにを相続したか」

→収入と生活費の額、財産の額を調査し、不自然な点はないかをチェック

「貸金庫の有無。持っていた場合、その場所」

→貸金庫をタンス預金として使っていないかをチェック

こういった質問を通して、タンス預金を含め、申告の漏れている財産がないかを徹底的にチェックしていくのです。

また、この場で嘘をついてしまうと、重い課税がなされるだけではなく、刑事罰にも問われる可能性があります

やはりタンス預金の存在を隠し通すのはリスクが高く、避けたほうがよさそうです。

タンス預金はおすすめできない

「国に知られない資産としてタンス預金したい」
「贈与や相続を隠すためにタンス預金を活用したい」
という人もいるでしょう。

自分の資産を現金化して手元に置いておきたい気持ちは分かります。

しかし、タンス預金はおすすめできません。

ここからは、タンス預金がおすすめできない理由について紹介します。

税金対策にはならない

贈与税や相続税の対策として、タンス預金を活用したいという人もいるでしょう。

生前贈与・死後の相続でも、一定金額を超えると、贈与税・相続税の支払いが発生します。

しかも贈与税・相続税は、他の税金に比べて税率が高く設定されており、結果的に高い税金を払うことになるかもしれません。

「贈与や相続で税金を払わないように、タンス預金で現金を隠して贈与・相続すればいい」と思う人もいるでしょう。

しかし、タンス預金も資産として扱われるため、税金対策にはなりません。

例えばタンス預金から500万円贈与したら、その500万円は資産の贈与になり、贈与税がかかります。これは相続でも同じく、相続税がかかります。

タンス預金から贈与・相続をしても、銀行口座の預金と同じ扱いになり、資産として扱われるため税金対策にはならないです。

税務署にバレるリスクが高い

「タンス預金なら、手元で現金を管理するから隠せる」と思うかもしれません。

しかし、タンス預金で資産を隠しても、税務署にバレる可能性が高いです。

税務署は銀行や証券会社に問い合わせて、個人の口座を調査できるからです。

そのためタンス預金するために、銀行口座から現金を引き出した場合に、出金履歴からタンス預金を発見できます。

贈与・相続を隠して税務署にバレると、ペナルティとして通常よりも高い税金を払うことになります。

さらに悪質な場合は、刑事罰に問われる危険性もあります。

つまり、タンス預金は税務署にバレる可能性が高く、正直に申告した方が安全です。

タンス預金よりも適切な節税

「税金対策としてタンス預金を使いたい」と思っている人は、法律の範囲内で適切な節税をするのがおすすめです。

贈与や相続では、特例といって非課税枠を増やす仕組みがあります。

例えば、教育資金の一括贈与という特例は、最大1,500万円までを非課税で贈与できます。

「子供にお金を残してあげたい」と思っている人は、タンス預金で資産を隠して贈与するよりも、教育資金の一括贈与で最大1,500万円までを非課税にして贈与した方が安全です。

このように適切な節税をすれば、贈与税・相続税は大きく抑えられます。

税務のプロである税理士に相談して、一番効果の高い節税方法を教えてもらうのが、安全で確実に節税できます。

相続サポートセンターでは、初回の相談を無料で受け付けています。

無料相談の範囲内ならキャンセルしても費用が発生しないので、まずは気軽に無料相談から利用しましょう。

まとめ

銀行口座の凍結対策や金融機関の麻痺(災害等)に備えて一定額をタンス預金しておくことにはメリットがあります。

いざというときにすぐに役に立つのが現金であることは間違いありません。

また、近い将来にマイナンバー制度によって国に預金額を把握される時代が来ると予想されますので、その目を逃れるにも有効でしょう。

一方で、タンス預金には盗難や紛失という物理的なリスクがあり、何かあっても保障がないというデメリットもあります。

また、相続税対策としてタンス預金を隠し財産にしておくのも、発覚する可能性の高さや発覚した場合のリスクを考えると賢明な判断ではありません。

これらを踏まえて考えてみると、タンス預金はあくまでひとつの資産の管理方法として活用してみるくらいがよさそうです。

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