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最終更新日:2024/6/5

遺族年金の受給期間はいつからいつまで?受給要件・金額も解説

本間 剛 (行政書士)
この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

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この記事でわかること

  • 遺族年金には2種類があること
  • 遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給できる期間
  • 遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件
  • 遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給金額

「年金」というと高齢者が受け取る老齢年金のイメージが強いですが、高齢者以外でも受給できる公的年金があります。

その1つが遺族年金です。

遺族年金は、被保険者が亡くなった後の遺族の生計の支えになってくれる公的年金です。

遺族年金は老齢年金と同様、基礎年金と厚生年金の2階建ての仕組みになっており、遺族基礎年金は支給対象者や受給期間・金額などが画一的に定められています。

これに対して、遺族厚生年金は被保険者と対象者それぞれの条件によって、支給条件が変わります。

今回は、遺族年金の受給期間について、遺族年金の仕組みや受給要件、受給金額などと合わせて解説します。

遺族年金とは

遺族年金とは、公的年金の被保険者が亡くなった時に、配偶者や子など、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金をいいます。

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

遺族年金の仕組みは老齢基礎年金と同じように、2階建ての仕組みになっています。

ではそれぞれのしくみについて、具体的に見ていきましょう。

遺族基礎年金

遺族基礎年金(国民年金法第15条3号、第37条~第42条)とは、国民年金の被保険者または被保険者であった方(主に自営業者は第1号被保険者、会社員や公務員は第2号被保険者、第2号 被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者となります。)が死亡したときに、18歳到達年度の末日(3月31日)まで※の子がいる場合に、配偶者または子に支給される年金です。

※障害年金1級または2級を受給している場合は20歳

遺族基礎年金は、2階建ての1階部分にあたります。

遺族厚生年金

遺族厚生年金(厚生年金保険法第32条3号、第58条~第68条)は、会社員や公務員として厚生年金の被保険者または被保険者であった方が死亡した際に遺族に支給される年金です。

遺族厚生年金は、2階建ての2階部分にあたります。

遺族年金を受給できる期間

ここでは、遺族年金を受給できる期間についてご説明します。

遺族基礎年金の受給期間は画一的に定められています。

これに対して、遺族厚生年金の受給期間は、被保険者または被保険者であった方が亡くなった時点での対象者の年齢や、子どもの有無などの条件によって異なります。

遺族基礎年金の受給期間

遺族基礎年金の受給期間は、子どもが18歳に到達する年度の末日(3月31日)までです。

ただし、子どもが障害等級1級・2級の子の場合は20歳になるまでとされています。

遺族厚生年金の受給期間

遺族厚生年金の受給期間のうち、支給開始時期については「被保険者が死亡した日の翌月」で共通しています。

一方、受給期間(被保険者が死亡した日の翌月からいつまでか)については、受け取る遺族によって異なります。

では、「妻」「夫・父母・祖父母」「子・孫」のそれぞれの場合に分けてご説明します。

妻が受給する場合

子がいる妻、または30歳以上の妻の場合、夫が亡くなった翌月から、原則として生涯受給できます。

ただし、再婚した場合は受給資格を失います。

30歳未満で子がいない妻の場合、夫が亡くなった翌月から原則として5年間受給できます。

この場合も、受給期間中に再婚した場合は受給資格を失います。

夫・父母・祖父母が受給する場合

被保険者が亡くなった時点で55歳以上の場合に限り、60歳から一生涯受給できます。

ただし、遺族基礎年金を受給中の子がいる夫の場合は、60歳未満でも受給できます。

子・孫が受給する場合

被保険者が亡くなった翌月から、18歳になった年度末まで(障害等級1級・2級の場合は20歳まで)受給できます。

遺族年金の受給要件

遺族年金は、厚生年金や国民年金に加入していた人が亡くなったとき、配偶者や子どもなど「亡くなった人によって生計を維持されていた遺族」が受け取れる年金です。

ここでは、受給要件について見ていきましょう。

遺族基礎年金の受給要件

遺族基礎年金を受給するためには、被保険者(亡くなった方)と対象者がそれぞれ、所定要件を満たしていることが必要です。

被保険者(亡くなった方)の要件

まず、被保険者が以下の1・2・3のいずれかに該当する必要があります。

  1. 国民年金の被保険者であること
  2. 国民年金の被保険者であった方で、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の方であること
  3. 受給資格期間(被保険者期間)が25年以上あること

このうち、1及び2に該当する場合は、次の「保険料納付要件」を満たす必要があります。

【保険料納付要件】

イ 死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、以下の期間が3分の2以上あること

  • 国民年金の保険料納付済み期間及び免除期間
  • 厚生年金保険の被保険者期間
  • 共済組合の組合員期間

ロ 死亡日が2026年3月31日までの場合は、亡くなった方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

3.に該当する場合は、上記の保険料納付要件は問われません。

対象者側の要件

遺族基礎年金の受給要件として、対象者側は以下に該当する必要があります。

  1. 18歳になった年度の3月31日を迎える前の子のある配偶者
  2. 18歳になった年度の3月31日を迎える前の子

ただし、いずれも子が障害年金の障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満であることが要件となります。

1に該当する配偶者が遺族基礎年金を受け取っている期間、または子と生計を同じくする父または母がいる間は、子は遺族基礎年金の支給対象外となります。

遺族厚生年金の受給要件

遺族厚生年金の受給要件については、特に対象者側の要件(受給資格)に優先順位が設けられているなど、複雑になっているため注意が必要です。

被保険者(亡くなった方)の要件

被保険者の要件は、次の1~5のいずれかを満たしている者とされています(厚生年金保険法第58条1項)。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡した場合
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に死亡した場合
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡した場合
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方(老齢厚生年金を受給中の方)が死亡した場合
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡した場合

このうち、1及び2に該当する場合については、さらに以下の保険料納付要件を満たす必要があります。

【保険料納付要件】

  • 死亡日の前日において、保険料納付済み期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること
  • 死亡日が2026年3月31日までの場合は、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと

また、4及び5に該当する方については、以下の期間を合算した期間が25年以上ある方に限られます

  • 保険料納付済み期間
  • 保険料免除期間
  • 合算対象期間※

※合算対象期間とは、年金の受給資格期間を計算する場合に「期間の計算にはカウントされるが、年金額には反映されない期間」を指します。

合算対象期間の例(いずれも20歳以上60歳未満の期間)

  • 1986年3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間
  • 1991年3月以前に、学生であるため国民年金に任意加入しなかった期間
  • 1961年4月以降海外に住んでいた期間
  • 上記のいずれかで、任意加入を行ったが保険料が未納になっている期間

対象者側の要件

遺族厚生年金は、被保険者に生計を維持されていた以下の遺族のうち、最も優先順位が高い方が受給できます。

優先順位は、以下のように定められています

  1. 子のある配偶者
  2. 子(18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級に該当する場合)※1
  3. 子のない配偶者 ※2
  4. 父母 ※3
  5. 孫(18歳になった年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級・2級に該当する場合)
  6. 祖父母

● 図解参考元: 「遺族厚生年金の受給対象者」|日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html#cms02


※1 子のある妻、または子のある55歳以上の夫が遺族厚生年金を受給している間は、子は支給対象外となります。

※2 子のない配偶者の受給要件について

子のない30歳未満の妻:5年間のみ受給できます。

子のない夫:被保険者死亡時点で55歳以上の方が受給対象となります。

ただし受給開始は60歳からとなります(遺族基礎年金を受給できる場合に限り、55歳~59歳の間受給可)。

※3 父母または祖父母の場合、被保険者死亡時点で55歳以上の方が受給対象となります(受給開始は60歳から)


遺族年金の受給金額

次に、遺族年金の受給額についてご説明します。

遺族基礎年金の受給額

遺族基礎年金の受給額は、子の人数によって異なります

2024年度の遺族基礎年金の受給額は、一律81万6,000円です※。

これに加えて、子が2人までは1人あたり23万4,800円、3人目以降は1人あたり78,300円が加算されます。

※1956年4月1日以前生まれの方の場合は81万3,700円

遺族基礎年金(2024年4月~) = 816,000円+子の人数加算

遺族の家族構成 遺族基礎年金の年間支給額
配偶者のみ なし
配偶者+子1人 100万5,800円
配偶者+子2人 128万5,600円
配偶者+子3人 136万3,900円

(参照元:日本年金機構  https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html#cms03

遺族厚生年金の受給額

遺族厚生年金の受給額は、原則として「被保険者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の金額」です。

つまり、65歳から支給される老齢厚生年金の受給額のおおむね4分の3です。

したがって、遺族厚生年金の支給額を調べる簡単な方法は「ねんきん定期便で老齢厚生年金の報酬比例部分を確認すること」といえます。

また、遺族厚生年金の受給者自身が老齢厚生年金(老齢共済年金)の受給資格がある場合は、次の1と2を比較して金額が多い方が遺族厚生年金の受給額となります。

  1. 被保険者(亡くなった方)の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額
  2. 「上記1の3分の2」と「本人の老齢厚生年金(退職共済年金)の受給額の2分の1」の合計額

引用:「遺族年金ガイド 令和6年度版」p4

遺族厚生年金の計算は複雑なので、正確な金額を知りたい場合はお近くの年金事務所または年金相談センターへの問い合わせをおすすめします。

遺族厚生年金が上乗せされる制度

遺族厚生年金の受給者が妻である場合、支給額が上乗せされる「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」の2つの制度があります。

1.中高齢寡婦加算制度

中高齢寡婦加算とは、以下の条件イ、ロのいずれかを満たす場合、40歳から65歳になるまでの期間、年額61万2,000円が加算される制度です。

イ 夫が亡くなった時点に40歳以上65歳未満で、生計を同じくする子(18歳になる年度の3月31日を経過していない子、または20歳未満で障害等級1級・2級の子)がいない場合

ロ 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受給していた妻(40歳到達当時、遺族基礎年金を受給している)で子があり、子の年齢制限などの理由で遺族基礎年金を受給できなくなった場合

引用:「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構)

2.経過的寡婦加算制度

経過的寡婦加算は、以下の条件ハ二のいずれかを満たす場合に適用されます。

ハ 生年月日が1956年4月1日以前の妻が、65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した

二 中高齢寡婦加算を受給していた1956年4月1日以前生まれの妻が65歳に達した

経過的寡婦加算の額は、1986年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせると、中高齢寡婦加算の額と同額程度になるように決められています。

引用:「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構)

【補足】遺族年金をめぐる新たな動き 

妻が優遇されている現行の遺族厚生年金制度は「夫が家計を支え、妻や子を養う」という従来型の家族モデルに基づいています。

これは現在の多様化する家族像に合わなくなっているため、2025年を目安に厚生年金保険法の法改正に向けた動きが進んでいます。

まとめ

遺族年金制度は、家族が主たる働き手を亡くしたときに、配偶者や子に支給されることを想定した年金です。

遺族年金は被保険者または被保険者であった方が亡くなった時点での対象者の年齢や、子どもの有無などの条件によって受給期間や要件、受給額が異なります。

特に遺族厚生年金は計算方法が複雑なので、支給額を正確に知りたい場合は年金事務所や年金相談センターに聞いてみましょう。

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