この記事でわかること
- 相続税申告書の提出先がわかる
- 相続税申告書の提出方法がわかる
- 相続税申告書の提出に必要な添付書類がわかる
- 相続税申告書を提出するときの注意点がわかる
相続手続きの中でも特に複雑なのが相続税申告です。
相続税申告には「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」の期限もあり、期限を過ぎると延滞税などのペナルティも科されます。
しかし相続は生涯に1~2回程度しか経験しないため、「相続税申告に手慣れた人」はまずいないでしょう。
毎年確定申告をしている人でも間違えやすく、必要書類の添付漏れも発生しやすいので、慎重かつスピーディに準備を進めなければなりません。
今回は相続税申告を控えている方のガイドラインとして、申告書の提出先や提出方法、添付書類などをわかりやすく解説します。
目次
相続税申告書の提出先
相続税申告書は、「被相続人が亡くなったときの住所地を管轄する税務署」へ提出します。
どこの税務署に提出しても構わないと勘違いされているケースもあり、相続人の住所地の管轄税務署へ提出する例があるので注意してください。
ただし、被相続人が海外で亡くなり、国内に住む相続人が相続税申告する場合は、相続人の住所地を管轄する税務署が申告書の提出先になります。
管轄税務署の所在地がわからないときは、国税庁ホームページから検索してください。
引用:税務署の所在地(国税庁)
相続税申告書の提出方法
相続税申告書は税務署への直接持ち込みだけと思われがちですが、郵送提出や電子申告(e-Tax)も受け付けています。
それぞれ次のような違いがあるので、自分に合った提出方法を選択してください。
税務署へ直接提出する
切手代などの費用がかからないため、提出先の税務署が近ければ直接提出がよいでしょう。
ただし、申告内容や添付書類をその場でチェックするわけではないので、正しく記入しているか、添付書類に漏れはないか、などの事前チェックは必要です。
提出後は返還されないので、念のため控え(写し)を用意しておき、税務署の受領印をもらっておくとよいでしょう。
なお、相続税申告書の入手だけであれば最寄りの税務署でも構いませんが、国税庁ホームページからダウンロードするときは、必ず最新様式を選択してください。
税務署へ郵送提出する
郵送で相続税申告書を提出するときも、宛先は被相続人の最後の住所地の管轄税務署です。
相続税申告書は「信書」になるため、郵便局の定形外郵便、またはレターパックのどちらかを使い、郵送記録が残る特定記録郵便にしておきましょう。
定形外郵便物
- 50g以内:120円
- 100g以内:140円
- 150g以内:210円
- 250g以内:250円
- 500g以内:390円
- 1kg以内:580円
レターパック
- レターパックライト:370円(4kg以内、ポストへの配達)
- レターパックプラス:520円(4kg以内、対面手渡しの配達)
特定記録郵便
- 基本の郵便料金に160円加算(オプションによって異なる)
郵送の場合も提出後の返還はありませんが、返送用の封筒と郵便切手、控え(写し)を同封しておけば、後日返送してもらえます。
e-Tax(電子申告)を利用する
相続税申告にe-Tax(電子申告)を利用する場合も、指定する税務署は被相続人の最後の住所地の管轄税務署です。
パソコンとインターネット環境さえあれば利用できますが、初期設定が複雑で添付書類のデータ容量制限もあるため、一部郵送提出になるケースもあります。
すでに所得税申告で利用している方もおられますが、相続税申告に使うと所得税関係のデータ(過去の送信履歴など)が消えてしまいます。
e-Taxで相続税申告するときは、操作経験のある税理士に任せた方がよいでしょう。
相続税申告書の提出に必要な添付書類
税務署に相続税申告書を提出するときは、以下の添付書類も必要になります。
- 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(死亡日から10日経過後に作成されたもの)
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日から10日経過後に作成されたもの)
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書を提出する場合)
- 相続時精算課税を適用した相続人がいるときは、被相続人と相続時精算課税適用者の戸籍の附票の写し(相続開始日以降に作成されたもの)
上記はあくまでも基本的な書類なので、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合は、次の書類も添付してください。
配偶者の税額軽減を使うときの添付書類
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が1億6,000万円まで非課税相続できる制度です。
配偶者控除とも呼ばれますが、適用する際には前述した基本的な添付書類に加えて以下の書類が必要になります。
- 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に遺産分割が終了しない場合)
小規模宅地等の特例を使うときの添付書類
小規模宅地等の特例を使うと、特定居住用宅地(自宅の敷地)の評価額が8割減額になります。
相続税額にも大きく影響するので、適用する際は基本的な添付書類に加えて以下の書類を添付してください。
- 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に遺産分割が終了しない場合)
- 被相続人の戸籍の附票の写し(相続開始日以降に作成されたもの)
- 特例の対象者が居住していることを証明できる書類等
相続税申告書を提出するときの注意点
相続税申告書は第1表から第15表まであり、すべてを使うわけではありませんが、添付書類も含めるとかなりの量になります。
税務署側に整理を任せると処理が遅くなり、添付書類に関する問い合わせが入る可能性もあります。
相続税申告書は次の要領で製本し、見やすい状態にして提出することをおすすめします。
相続税申告書と添付書類は分別しておく
製本するときのポイントですが、各書類が入り混じると整理やチェックに時間がかかるので、相続税申告書と添付書類は分けて製本するようにしましょう。
相続税申告書はクリップやホチキスで綴じる
相続税申告書の第1表~第15表をまとめるときは、クリップまたはホチキスで綴じてください。
ただし、申告書第1表や第15表など、機械処理(OCR読み取り)する様式は、四隅にある四角形のマークの上から綴じると読み取りできなくなるので注意しましょう。
添付書類は種類別の表紙を付けて製本する
添付書類は遺産分割方法や財産関係など、種類別の表紙を付けて製本します。
また、それぞれが同じ相続に関連する書類だとわかるよう、被相続人や相続人の氏名、相続発生日も表紙に記入しておきましょう。
種類別の表紙が用意できたら、次のように添付書類を分類して綴じてください。
預貯金や現金の関係書類
預金通帳や証書以外は金融機関に発行依頼すると入手できます。
- 被相続人名義の預金通帳
- 被相続人名義の定期預金通帳または証書
- 残高証明書および取引履歴
- 経過利息計算書
建物の関係書類
賃貸借契約書や図面以外は、法務局や市町村役場で入手します。
【法務局】
- 登記事項証明書
【市町村役場】
- 固定資産税の課税明細書
- 固定資産評価証明書
- 名寄帳
【自宅保管】
- 建物図面および各階の平面図
- 賃貸借契約書
土地の関係書類
路線価図や評価倍率表は国税庁ホームページにアクセスして印刷できます。
【法務局】
- 登記事項証明書
- 公図および地積測量図
【市町村役場】
- 固定資産税の課税明細書
- 名寄帳
【自宅保管または相続人が準備】
- 路線価図または評価倍率表
- 住宅地図
- 賃貸借契約書
- 建築計画概要書
生命保険の関係書類
保険証券以外は保険会社から入手してください。
- 保険証券
- 保険金支払通知書
- 解約返戻金に関する資料
株式の関係書類
以下の書類は証券会社に発行依頼できます。
- 配当金の支払通知書
- 残高証明書
- 取引明細書
生前贈与の関係書類
以下の書類は自宅保管されているはずです。
紛失している場合は税務署に閲覧を申し込むか、情報開示請求を行います。
- 贈与契約書
- 贈与税申告書
- 非課税申告書
- 相続時精算課税制度選択届出書
債務の関係書類
以下の書類は自宅に保管されていますが、なければ関係機関等へ発行依頼してください。
- 借入金残高証明書
- 金銭消費賃借契約書
- 未納の税金や未払い医療費などに関する書類(請求書など)
葬儀費用の関係書類
以下の書類はすべて自宅保管しておきましょう。
- 葬儀会社の領収書
- 火葬料や納骨費用がわかる書類
- その他費用のメモ書き(心づけ、お布施など)
その他の財産の関係書類
基本的に自宅保管の書類ですが、なければ関係機関等へ発行依頼してください。
【家庭用財産】
- 車検証(自動車検査証)
- 船舶検査証書
- その他家庭用財産の購入価格がわかる資料
【退職金】
- 退職金手当等受給者別支払調書
- 支払調書
【事業用財産】
- 所得税の確定申告書
【その他】
- ゴルフ会員権またはリゾート会員権
- 電話加入権の関係書類
- 山林などの立木の評価証明書
- 骨董品や美術品などの評価額がわかる書類
- 準確定申告の関連処理
- 老人ホームの入居に関する書類
- 未収の家賃や地代等に関する書類
まとめ
相続税は期限内に申告できなければペナルティの対象になります。
税務署は「初めてだから」と大目にはみてくれないので、できるだけ早めに申告書作成に取り掛かりましょう。
相続税は計算間違いや申告漏れも起きやすいので、税務署は特に厳しくチェックしています。
しかし関係書類を分類して製本すれば、計算間違いなどの自己チェックがしやすくなり、税務署の心象もよくなります。
書類の添付漏れや重複にも気付きやすいので、自分自身のためにも製本しておくとよいでしょう。
ただし、財産評価を間違えると申告額や納税額に影響し、多忙な方は期限内に添付書類が揃わない可能性もあります。
相続税申告で困ったときは、早めに相続専門の税理士へ相談してください。
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